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Lnamaria-IF_523第11話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 07:45:10

「あぁー! あなたは! やっぱり!」
私は駆け寄って来た金髪の少女を見つめる。
間違いない、カガリ様だ!
「お前……お前が何故あんなものに乗っている!?」
「あなたこそ、何やってんですか! こんな所で!?」
「あ、ちょっとお前、待て!」
「待ちません!」
私はカガリ様の手を引いて物陰に連れ込んだ。
「カガリ様? なーに、やってるんですか!? こんな所で?」
「『様』はいらないと言ったろう……ずっと心配していた。お前は無事にシェルターに入れただろうかと」
「それが入れなくって。左のシェルターはもう扉しかなくって……成り行きでアークエンジェルに乗る事になって、成り行きでストライクを操縦してます。カガリは?」
「ヘリオポリスを脱出した後、考えたんだ。私の視野は狭い。もっと大きな世界を知りたいと。そしたら、お父様がここを紹介してくれた」
「それでこれですか!? わかってるんですか? レジスタンスなんて言うと聞こえはいいですけどね、ゲリラは問答無用で殺されても文句言えないんですよ? それにカガリがレジスタンスに加わっているなんて知れたら……オーブも巻き込まれるんですよ?」
「その点なら心配ない。お父様は、もしそんな事になれば、私は病死した事にして見捨てる。だそうだ」
あっさり、カガリは言う。でもそれが為政者としての厳しさと言う物なのだろう。
「カガリの正体は、何人に知られているんですか?」
「サイ―ブだけだ。お父様の古い知り合いだそうだ。あと、お父様が付けてくれた護衛が一人。キサカ一佐だ」
ふぅ。世界を広く知る事が、なんでザフトと戦う事になったのやら。
「ザフトは非道い。お前もこれを聞けば考えが変わるぞ」
声を潜めてカガリが語った事は、衝撃的な事だった。
「3日前、ビクトリアが陥落した」
「え!」
「驚くのはこれからだ。ザフトは捕虜を取らず、降伏した者も殺害したらしい」
「――そんな!」
「歴然としたコルシカ条約違反だ!」
「でも、そんな情報、どうやって知ったの?」


「――ビクトリア付近の部族の者が、太鼓通信で伝えて来おった。……馬鹿にするなよ? 意外なほど正確で早いぞ」
あ、サイーブ、さん? だっけ? こちらに顔を出して言った。
「もう話は終わったか? カガリ」
「あ、ああ、大体」
「こちらのお嬢ちゃんは? 知り合いか?」
「ああ、ヘリオポリスで知り合ったんだ。私の正体も知ってる」
「そうか。言うまでもないが、カガリの正体が知られる事がないようにな」
「はい」
「じゃあ、しばらくの間よろしくな。俺達はアークエンジェルと協力する事になった」
「そうなんですか!」
こうしてアークエンジェルはレジスタンスの隠れ場所に行く事となった。


「ご苦労だったな」
着いた所では、テントや洞穴を利用してアジトが作られていた。こんな所によく……
「ここに住んでる訳じゃないぞ」
カガリが言う。
「ここは、前線基地だ。皆家は街にある。……まだ焼かれてなけりゃな」
「街?」
「タッシル、ムーラン、バナディーヤから来てる奴も居る。私達は、そんな街の有志の一団だ」
……向こうにみんながいる。
声が聞こえてくる……

「はぁ……レジスタンスの基地に居るなんて……なんか、話がどんどん変な方向へ行ってる気がする……」
「はぁ……砂漠だなんてさ……あ~ぁこんな事ならあん時、残るなんて言うんじゃなかったよ」
「これから……どうなるんだろうね……私達……」
……私の、せいかな。
ぼりっ。久しぶりにデパスを取り出し、齧る。


「どうしたんだ? ルナ」
「ううん、なんでもない、カガリ。……みんな、ここにいたの?」
「ルナ! そう言えば、この子は? レジスタンスの子に知り合いなんていたの?」
「やだな。みんなも一緒だったじゃない。カト―教授のお客さんだった子よ」
「ええー!? でも、そう言えば……」
「でも、なんでこの子がこんな所でレジスタンスやってるんだ?」
「カガリにも、色々事情があるのよ」
「そうか、カガリって言うのか」
「ああ、よろしくな」
やばい! 色々ばれない内に引き上げようっと。
「じゃ、私モビルスーツの調整があるから。さ、カガリも向こうに用があるんでしょう?」
「あぁ、じゃあ、またな、みんな」


「そらぁザフトの勢力圏と言ったって、こんな土地だ。砂漠中に軍隊が居るわけじゃぁねぇがな。だが、3日前にビクトリア宇宙港が落とされちまってからこっち、奴等の勢いは強い」
「ビクトリアが?」
マリューは驚いた。確か一回は撃退したはず……場合によっては頼ろうと思っていたのに。
「3日前?」
「あ~らら」
「ここ、アフリカ共同体は元々、プラント寄りだ。頑張ってた南部の、南アフリカ統一機構も、遂に地球軍に見捨てられちまったんだ。ラインは日に日に変わっていくぜ?」
「そんな中で頑張るねぇ、あんたらは」
「……」
「俺達から見りゃぁ、ザフトも、地球軍も、同じだ。どっちも支配し、奪いにやって来るだけだ」
「あっ……」
「……だが、地球軍がましだと思うのはな、あんたらは、少なくとも投降した兵を殺害したりはせんだろう?」
「え、ええ。個人的にそのような犯罪を犯してしまう者はいるでしょうが」
「だが、ザフトは軍全体でそれをやりやがった。投降した者も残らず殺害した。ビクトリア大虐殺よ」
「何て事……」
ザフト――Zodiac Alliance of Freedom Treaty=自由条約黄道同盟。結局彼らはまともな軍隊ではないのだった。
建前上はあくまでも政治結社。旧世紀にナチスドイツが保有していた突撃隊に近いのかもしれない。
そんな物に、まともに振舞え、と言っても無駄な話かも知れない。コルシカ条約を教えられてすらいないかもしれないのだ。
マリューは歯軋りをして戦友の悲劇を噛み締めた。
「それにエイプリルフール・クライシスだ。ここいらは一応親プラントが強い地域だった。にも係らず、ニュートロンジャマーをぶち込まれた。砂漠の虎は今の所いい子にしているようだがな、到底信用できんさ。……あの船は、大気圏内ではどうなんだ?」
「そう、高度は取れない」
「山脈が越えられねぇってんなら、あとはジブラルタルを突破するか……」
「この戦力で? 無茶言うなよ」
「……んー。頑張って紅海へ抜けて、インド洋から太平洋へ出るっきゃねぇな」
「太平洋……」
「地中海北岸を目指してユーラシアの勢力圏内に辿り付く訳には行かないのでしょうか?」
「地中海は残念ながらザフトのバスタブになってる。途中で撃沈されるのが落ちさね」
「……そうですか。紅海から太平洋、補給路の確保無しに、一気にいける距離ではありませんね」
地中海艦隊がザフト軍に敗北したのはマリューも聞いていた。無理は出来ない。
「大洋州連合は完全にザフトの勢力圏だろ? 赤道連合はまだ中立か?」
「おいおい、気が早ぇな。もうそんなとこに心配か?」
「ん?」
「ここ! バナディーヤにはレセップスが居るんだぜ?」
「あ……頑張って抜けてって、そういうこと?」
「……はぁ……」


「おー、また何やってんだ?」
私がストライクの調整をしていると、マードックさんが顔を出した。
「昨夜の戦闘の時、接地圧弄ったんで、その調整とかですよ」
「ほぉー、なるほどねー。便利なパイロットだよなぁ、お前って。なんか俄然やる気じゃねぇかよ! ホーク少尉。はっはっはっはっは」
私はさっきのみんなの言葉を思い出していた。
私が巻き込んだも同然だもん。私がみんなを守らなくちゃ……
最近、私は自室に居るよりコクピットで過ごす事が多くなっていた……




夜になって私はアークエンジェルの外へ連れ出された。食事は外で取れ、との事だ。
ミリィ達もそうだ。気分転換、させようとしてくれているのかな?
こうしてぼーっと火を眺めていると、キャンプみたいだ。
カガリも私の向かい側でぼーっと火を眺めている。アフメドって子が色々話し掛けてる。
「……ごめんね、ミリィ」
「え、なに? ルナ?」
「私が残ったせいでみんなも巻き込んじゃって」
「やだなぁ。昼間の事気にしてるの? みんな自分で選んで自分で決めたんだから。気にする事ないよ」
「……ありがとう」
私はミリィの肩にそっと頭を寄せた。


――! 警笛がなる!
「どうした!」
サイーブさんが叫ぶ。
「空が燃えてる!」
「ううっ!」
「タッシルの方向だ!」
のんびりしていた空気が一変した。
カガリの話なら、タッシルに家がある人もいるはず!
私達は顔を見合わせると、マリューさん達の所へ走った。




「どうした!」
「空が燃えてる!」
「ううっ!」
「タッシルの方向だ!」
「くっそー! 駄目だ、通じん!」
「急げ! 弾薬を早く!」
「まいったなぁ……お袋は病気で寝てんだよ!」
「街がやられた!?」
「早く乗れ! モタモタすんな!」
「急いで戻るぞ!急げ! 早く!」
「サイーブ!」
「半分はここに残れと言っているんだ! 落ち着け! 別働隊が居るかもしれん」
せっかくのんびり和んでいたのに!
マリューは舌打ちする。事態は急変した。
アークエンジェルの皆が指示を求めてマリューの元へと集まって来る。
「どう思います?」
マリューはフラガに尋ねた。
「んー……、砂漠の虎は残虐非道、なんて話は聞かないけどなぁ。でも、俺も彼とは知り合いじゃないしね。どうする?俺達も、行くか?」
「アークエンジェルは動かない方がいいでしょう。確かに、別働隊の心配もあります。少佐、行っていただきます?」
「あ? 俺?」
「スカイグラスパーが、一番速いでしょ?」
「だわねぇ。んじゃ、行って来るわ」
「出来るのはあくまで救援です! バギーでも、医師と誰かを行かせますから!」
マリューは振り向く。皆が、指示を待っている。彼女の責任感は高まる。
「総員! 直ちに帰投! 警戒態勢を取る!」
「「はい!」」




私はコクピットで待機を命じられた。タッシルへの攻撃は囮かも知れないからだ。
状況が伝わってくる。タッシルの人達は無事らしい。
焼かれたのは弾薬に食糧に家……ニュートロンジャマーで地球の人達をじわじわ苦しめるシーゲル・クライン。
クライン派らしいやり口だ。
即効性でなければ良しとでも思ってるのかしら?
……! レジスタンスの人達が、ザフトを追撃したらしい。馬鹿な事を! 無駄死にしたいの!?
『ルナ! ストライク、発進願います!』
「了解」
『APU起動。カタパルト、接続。ストライカーパックはエールを装備します。エールストライカー、スタンバイ。システム、オールグリーン。進路クリアー。ストライク、どうぞ!』
こんな馬鹿らしい戦いで死にたくないな、と思った。


敵は3機。一機は動けない。まず、あれから。……!?
「静止目標なのに、逸れた? そうか、砂漠の熱対流で……ジョン少尉! 砂漠の熱対流に注意してください! 逸れます」
『了解!』
私は熱対流をパラメータに入れ、再び撃った。よし、撃破!
着地。
バクゥはミサイルを山のように撃って来る!
PS装甲を信じて! 私はエールストライカーの追加ブースターも吹かし、身を低くして遮二無二突進する。上はジョン少尉が押さえてくれる!
ストライクのビームサーベルは見事にバクゥの脚部を断ち切った。動けなくなったバクゥへ上空からアグニが放たれ止めを刺す。
残ったバクゥは撤退を開始した。
そう簡単に逃がさない!
「ジョン少尉!」
『ああ!』
以心伝心! ジョン少尉が上からアグニで牽制する。鼻先にアグニをぶち込まれて、ジャンプして後退するバクゥ……
「そこ!」
ビームライフルのビームは見事にバクゥを貫いた――
「だいぶ追いかけて来てしまったわ。撤退しましょう」
『了解』


私が先ほどの戦場に戻ると、そこかしこに破壊されたバギーが散らかっていた。そして、死体。
――アフメド! 先ほどまで私達に陽気な姿を見せていた彼も、動かぬ骸となって横たわっていた。
「……死にたいんですか?」
私は我慢できず言った。
「ぅ……」
「こんなところで……なんの意味もないじゃないですか! 気持ちだけで……一体何が守れるって言うんです!」
戦いの去った戦場に、すすり泣きが満ちた。


男達は粛々とキャンプに引き上げて来た。
「カガリ!」
キャンプにカガリを見つけると、私は駆け寄った。
「カガリ、無事だったのね。よかった」
「……アフメド、死んだんだってな」
「ええ」
カガリは俯いていた。
「止めても、止まってくれなかった」
「しょうがないわよ。それが彼らの選択なら」
「私は、卑怯かな? アフメドが出て行った時、こんなつまらない事で死ぬ訳には行かない、と思ってしまったんだ」
「卑怯じゃ、ないわよ。死んだ彼らにも言い分はあるでしょう。でも、あなたはこんな所で死んじゃだめ!」
「……私も、思ったんだ。ここでは死ねない、と」
「そうよ。カガリはこんな所で死なないで。そして、このくそったれな世界を何とかして頂戴」
「できるかな?」
「力を貸すわ」
「ちょっと、胸を貸してくれ」
そう言うと、カガリは私の胸にすがり付いてきた。
「……ぅ……えぐ……ぃ……」
私は泣き出したカガリの頭を優しく撫でた。







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