Top > Lnamaria-IF_523第17話
HTML convert time to 0.007 sec.


Lnamaria-IF_523第17話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 08:01:28

『第6作業班は、13番デッキより作業を開始して下さい』
『機関区、及び外装修理班は、第7ブースで待機』
「驚きました。もう作業に掛かってくれるとは」
「ああ。それは本当にありがたいと思うが」
「おはよう」
「おはようございます、艦長」
「御苦労様です」
「既にモルゲンレーテからの技師達が到着し、修理作業に掛かっております」
「そう。ありがたい事だわ。ヘリオポリス組は?」
「は、すでに集めてあります。」


「家族に?」
マリューさんが、家族に会える事を伝えると、ヘリオポリス組の皆の顔が紅潮した。
「ええ。状況が状況だから、家にも帰してあげられないし、短い時間だけど、明日午後、軍本部での面会が許可されました」
皆大騒ぎになった。
「あーー」
「わーいやったー!」
サイ やったよかった!」
「トール、どうしよう!」
「どうしようってミリィ、今から泣くなよ。」
「だって嬉しくって…会えるのよ?」
「元気かなぁ?」
「細かい予定は明日通達……ちょっと、聞きなさい!」
私は……ちょっと複雑だった。なんで私をコーディネイターにしたのか。前々から思っていた疑問。それが心に淀んでいた。


「ホークご夫妻、ですな?」
「ウズミ様……二度とお目に掛からないという約束でしたのに……」
「運命の悪戯か、子供等が出会ってしまったのです。致し方ありますまい」
「……う……ぅ……。どんな事態になろうと、絶対に私達があの子に真実を話すことはありません」
「姉妹の事も。ですな?」
「可哀相な気もしますが、その方がルナの為です。全ては最初のお約束通りに……ウズミ様にこうしてお目に掛かるのも、これが本当に最後でしょう」
「わかりました。しかし、知らぬというのも怖ろしい気がします。現に、子供達は知らぬまま、出会ってしまった」
「因縁めいて考えるのは止めましょう。私達が動揺すれば、子供達にも伝わります」
「わかりました。さあ、会って来なさい。ルナマリアさんは、だいぶ頑張ってきたようだ」
「はい……」


「「あぁー!」」
「「あぁ!」」
「カズイ!」
「トール!」
「母さん!父さん!」
「母さん!」
「カズイ!」
「トール! うっううう……」
「父さん!」
「ミリィ!」
「よく無事で……」
「うん……」
「サイ!」
「よく頑張ったな」
「父さん、母さん!」
皆、家族と会えて嬉しそうだ。でも、私の両親は?……どこにもいない。
私が暗い想像をしていると、部屋の扉が開いた。
「ルナ!」
「パパ! ママ!」
「遅くなってごめんなさいね、ウズミ様とちょっとお話をしていたのよ」
「よく、頑張っているようだな」
ママが私を抱きしめる……安心する。
最近思っていた、どうして私をコーディネイターにしたのかなんて、どうでもいいや。今は、この暖かさを感じていたい。
「まぁ、ルナ!」
「え?」
「この傷は?」
あ……!
「一回だけ、切っちゃった。でも、もう切らないよ。自信、ある」
「そう……離れていても、ママはいつもあなたのそばにいるからね」
「うん……ありがとう」


「はぁ、もう時間なんて……」
「仕方ないよ……」
「カズイ、船はいつまでここに居るんだ?」
「数日らしいよ」
「ミリィ、どうしてお前が行かなきゃならないの?」
「しょうがないわよ。志願しちゃったんだもん……」
「サイ、お前が決めたことならば仕方ないが……」
「大丈夫だよ。父さん」


親子の対面は、長いようで短かった。
もっと話したい事いっぱいあったのに。でも、いい。私は絶対帰ってくるんだ。両親の元へ。


「こっち! あなたにに見て貰いたいのは」
その後、私はカガリと一緒に格納庫のような場所に案内された。
「ぁぁ!」
これは、モビルスーツ!
「これを、オーブはどうするつもりなんですか?」
「これはオーブの守りだ。お前も知っているだろ? オーブは他国を侵略しない。他国の侵略を許さない。そして、他国の争いに介入しない。その意志を貫く為の力さ」
「でも、カガリ様の言うことは事実よ。だから、私達はあれをもっと強くしたいの。貴方のストライクの様にね」
「え!?」
その日一日、私はオーブのモビルスーツ――M1アストレイのサポートOSの作業に没頭した。でも、私の目から見ると、やっぱり基礎OSが不完全だ。ナチュラル用だと言うけどこんなもので本当に戦闘ができるのだろうか? これなら私が組み上げた奴の方が……


「目下の情勢の最大の不安材料は、パナマだ。ザフトに大規模作戦有りという噂のおかげで、カーペンタリアの動きは、かなり慌ただしい」
キサカが、現状を完結に説明する。
「どの程度まで分かっているのですか?」
「さぁな。オーブも難しい立場にある。情報は欲しいが、薮蛇はごめんでね。だが、アラスカに向かおうという君等には、かえって好都合だろう」
「万一追撃があったとしても、北回帰線を超えれば、すぐにアラスカの防空圏ですからね。奴等もそこまでは、深追いしてこないでしょう」
ノイマン少尉が言う。確かにそうだろう。マリューも納得する。そこまで行ってしまえば、いくらザフトとて簡単に手はだせないはずだ。心配なのは……
「ここまで追ってきた例の部隊の動向は?」
「昨日から、オーブ近海に艦影はない」
「引き揚げた、と?」
「また外交筋では、かなりのやり取りがあったようだからな。そう思いたいところだが」
「アスハ前代表は当時、この艦とモビルスーツのことはご存知なかったという噂は、……本当ですか?」
「バジルール中尉……」
なにをわざわざ……とマリューは思う。だが、地球連合とオーブは手を組んでいたのになにをいまさら……と言う思いはアークエンゲルクルーの中にも多いだろう。
「確かに、前代表の知らなかった事さ。一部の閣僚が大西洋連邦の圧力に屈して、独断で行ったことだ。モルゲンレーテとの癒着も発覚した。オーブの陣営を明らかにするべき、と言う者達の言い分も分かるのだがな、そうして巻き込まれれば、火の粉を被るのは国民だ。ヘリオポリスの様にな」
「ぁ……」
「それだけはしたくないと、ウズミ様は無茶を承知で今も踏ん張っておられるのさ。君等の目には、甘く見えるかもしれんがな」
「いえ……」
口ではそう言ったが、マリューは懸念を感じていた。旧世紀のスイスのように周囲から中立国と認められているのではなく、ただオーブが中立を宣言しているだけ。そんな物はいざとなったら第二次世界大戦のベルギーのように簡単に破られてしまうのではないのだろうか? 中立を守ると言うその信念自体が国民に被害を生んでしまうのではないのだろうか? マリューは憂慮した。アークエンジェルのヘリオポリス組のためにも。
「修理の状況は?」
「明日中には、と連絡を受けております」
「あと少しだな。頑張れよ」
「キサカ一佐!」
「ん?」
「本当にいろいろと、ありがとうございました」
「いや、こちらも助けてもらった。既に家族はないが、私はタッシルの生まれでね」
「ぁ……」
「一時の勝利に意味はない。とは分かってはいても、見てしまえば見過ごすことも出来なくてな。暴れん坊の家出娘を、ようやく連れ帰ることも出来た。こちらこそ、礼を言うよ」




もうオーブに入ってから3日目。修理の方も大体終わったらしい。明日、出港だそうだ。
カガリがいきなり、アークエンジェルへやって来た。
「おーい、みんなー」
「あ、カガリ」
「でも、カガリがお姫様だったとはねぇ」
「お姫様って言うな! 今までどおりカガリでいいんだ、カガリで」
「おーけー、カガリ」
「本当はもっと、万全に修理してやりたいんだがな。アラスカ本部の命令なら仕方ない」
「気持ちだけで、充分よ」
あ! 私は思いついた事があった。
「カガリ、ちょっと待ってて!」


私は、私室から戻って来るとカガリの手に小さなチップを何枚か滑り込ませた。
「これは」
私はカガリの耳元で言った。
「ストライクの基礎OSにサポートOS。それからいざ私がいなくなった時のためにって作ってた、ナチュラル用の基礎OSよ。ストライクの物だから、M1アストレイでどこまで使えるかわからないけど、私の判断じゃずっとましよ」
「いいのか? こんな事して?」
「いいのよ。カガリの手柄にして頂戴」
「お前……」
カガリは涙を拭った。
「わかった! 必ず役に立てて見せる! ルナも、無事でいろよ」
「うん! 私、結構しぶといから」
カガリは艦を降りると名残惜しそうに手を振っていた。
次に会えるのはいつだろう? 全てが終わってからかな……




「注水始め!」
「注水始めー!」
アークエンジェルのドックに水が注ぎ込まれていく。
「オーブ軍より通達。周辺に艦影なし。発進は定刻通り」
「了解したと伝えて」
「護衛艦が出てくれるんですか?」
「隠れ蓑になってくれようってんだろ? 艦数が多い方が特定しにくいし、データなら後でいくらでも誤魔化しが効くからな」

「 間もなく領海線です」
「周辺に敵影なし」
「警戒は厳に! 艦隊離脱後、離水、最大戦速」
「艦隊旗艦より入電。我是ヨリ帰投セリ。貴官ノ健闘ヲ祈ル」
「エスコートを感謝する、と返信を」


オーブ艦隊は帰って行く。
「心細いなぁ」
すぐ愚痴、弱気が出ると言ったらカズイだ。やっぱり、この子は戦争には向いてない。アラスカで降りられればいいけど。
かと言って、サイやトール達が戦争に向いてるとも私は言えない。艦橋にいるから冷静になれている部分も多いのだろう。サイやトールは、度々、モビルスーツの操縦に興味を示す。私が組み込んだナチュラル用のシミュレーションを面白がってやっている。本当は、みんなアラスカで降りてくれた方が気が楽だ、とも思う。でも、そうなったらそうなったで、寂しがるんだろうな、私は。


翌日深夜、人目のない海岸に半漁人のような格好で4人の人影が海から上がってきた。
「クルーゼ隊、アスラン・ザラだ」
「ようこそ、平和の国へ」
彼らは誰にも知られずに、オーブへ潜入を果たした。


「見事に平穏ですね。街中は」
「ああ。つい先日自国の領海であれだけの騒ぎがあったって言うのに」
「中立国だからですかねぇ?」
「平和の国、か」
「おおっと。お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
ディアッカが、小さな少女とぶつかっていた。
「ほら、ディアッカ、前を見てないから。大丈夫? なんて名前かな?」
「エルって言うの」
「エルちゃんか、いい名前だね。ずっとここに住んでいるの? なにか、最近変わった事なかった? 知らない船が入って来たとか?」
それは、ニコルが小さな子供を通じて情報を得ようと言う行為だったかもしれない。だが、返ってきた返事に彼らは言葉を失った。
「ううん、エルはヘリオポリスにいたんだよ。ザフトの奴ら、ひどいんだ。ヘリオポリスをめちゃくちゃにして。それからもひどいんだ。私のお船、何度も何度も襲って来て……」
「……そうか」
彼らは、改めて思い知らされたのだ。もし、成功していたならと。もし宇宙でアークエンジェルを撃沈する事に成功していたら、この子も殺していた……。
相手が見えなかったならば、さほど気にはしなかったろう。だが、その相手が目の前にいる。
アスラン達は居心地の悪さを感じた。
「でもね! ルナお姉ちゃんが助けてくれたの! いつも!」
「ルナお姉ちゃん? まさかそいつがモビルスーツのパイロット……」
イザークが反応した。
「うん、避難民のお姉ちゃんで、モビルスーツも操縦できるんだよ!」
「……なんてこった。俺らは素人の女にきりきりまいさせられていたのかよ」
ディアッカが天を仰ぐ。
「エルちゃんねぇ、心残りがあるんだぁ」
「ふーん、なんだい?」
「だいはちかんたいでお船から離れる時、きちんとルナお姉ちゃんにお礼言えなかったの。お兄ちゃん達、ルナお姉ちゃん知らない?」
「いいや。だが、会ったら、伝えておいてやるよ」
「ほんと? きっとだよ?」
手を振って向こうに駆けて行くエル。脇から出てきて、エルの頭を撫でているのはおそらく母親だろう。
ニコルがぽつりと言った。
「……パイロットが避難民なら、もう足付きを降りましたよね」
「わかんねぇなぁ。バルトフェルド隊長もモラシム隊長もやられた。そんなパイロットがぽんと配属されるかな?」
「そう、ですよね……」
「ニコル、やらなきゃ、こっちがやられるんだ!」
「アスラン、泣いて……?」
「違う!」
アスラン達は無言で歩き続けた。







】【戻る】【