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Lnamaria-IF_523第22話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 08:13:36

「うひょー! 島だぜ! これを人間が作ったとはなぁ」
陸上戦艦レセップスを修理した、ロウ・ギュール一行の移動基地「ホーム」は人口島ギガフロートへと到着した。
……モルゲンレーテでレッドフレームの改修を行い、OSの改良も行ったロウは、新しく付けたフライトユニットの試験飛行も兼ねてオーブの小島に住むと言うマルキオ導師を訪ねた。なんでも頼みたい事があると言う。
それが、マスドライバーを備えたギガフロート建設への協力の依頼だった。
マルキオ導師は連合にもザフトにも顔が利き、ジャンク屋組合にとっては創設者の一人と言ってよい。申し分の無い依頼だ。ロウは一も二も無く承諾した。


「気に食わんな」
オーブのある邸宅の一室で、長髪の男が口を開いた。
「気に食わん。こんな物が出来ればカグヤ・マスドライバーの価値は減じてしまうではないか」
「では、どうする?」
こちらも長髪の、しかし女性が問う。
「ギガフロートを完成する前に破壊する」
「簡単に言うな」
「ほら、この間アズラエルが寄こしてくれた技術があったろう」
「ミラージュ・コロイドか? しかし一機で大丈夫か? 連合にやったのが我らだと知られてもいかんのだぞ」
「私を誰だと思っている。ロンド・ギナ・サハクだぞ」
「……まぁ、いい」
女の声が少し笑いを含んだ物に変わる。
「PO1を預けよう。やってみるがいい、弟よ」




アラスカ防衛戦から10日程経って、アラスカ戦の跡もだいぶ片付いた頃、私達は新たな命令を受けた。
私達フラガ教導隊が次に受けた命令はなんと! アークエンジェルへの乗り組みだった。
パナマへ向かう地球軍初のモビルスーツ部隊である第1モビルスーツ隊の護衛を命じられたのだ。
彼らは、パナマで編成されつつあると言うモビルスーツ隊の教導隊としての役割も期待されて、パナマに赴く。
「またよろしく頼むぜ!」
ギャバン隊長が挨拶に来た。
「こちらこそ。パナマの奴らはまだひよっこだ。お互いしっかり教育してやろうぜ」
「ああ!」
そしてギャバン隊長は少し戸惑って言った。
「お嬢ちゃんを、ちょっと借りてもいいですかね?」
「ルナですか? 彼女がよければ」
「はぁ。いいですけど」
隊長は、私を物陰へ誘った。
「なぁ、お嬢ちゃん。結婚してくれ! 一目ぼれなんだ!」
「……ええ!?」
私は絶句した。
「いきなりだと思うか?」
「いきなりですよ!」
「今時は何でもいきなりだよ。敵の出現も、エネルギー不足も、命のおしまいもな。だから、俺は後悔はしたくない」
「でも……私は……私、コーデーネイターですよ」
「関係ないさ。そんな事。返事は今でなくてもいいんだ。じゃ!」
ギャバン隊長は去って行った。
どうしよう。私、好きな人がいる訳じゃないけど、でも……


「トール!」
アークエンジェルに乗り込むと、ミリィが駆けて来る。
「ミリィ!」
トールも駆け寄ってミリィを抱き締める。
「また、無事なトールを見られるなんて……」
「な、泣くなよ」
「熱いねーお二人さん」
「ミューディー、邪魔しないの!」
「はいはい。休憩室はどこ?」
「あ、案内するわ」


「ここよ」
休憩室には、誰もいなかった。
「ここの自動販売機の飲み物は自由に飲めるから」
「ありがとさん」
ミューディーはグレープフルーツジュースを取り出した。
「ねぇ、中尉さん?」
「なに?」
「人を好きになった事ってある?」
「あるような、ないような……」
アスラン……仲良かったけど、あれを好きって言うんだろうか?
……なんか引っかかる。抱きあってキスまでした人がいたような……
目が。目が浮かんでくる。真っ赤な、鋭い眼光をした目。夢に出てくる人? でも、夢に出てくる人は、顔はわからないけど夢の中で私はまるで弟のように感じてた。こたえが出ないようで、もどかしい。もやもやする。でも、今までそんな人に会ったかな? 気のせいよね。
「あたしはないんだぁ。あたしがこれから言う事誰にも言わないでよ?」
「うん、言わない」
「あたしは孤児で、小さい頃から施設で軍事教練ばかりで、そんな暇なかったし……」
やっぱり。 フラガさんの推測は正しかった。
「でもね、さっきのようなの見せ付けられちゃうと、こう、あたしの心の中にぽっかり穴が空いた気がするのよ」
「……」
「いつもは賑やかにしてるのにさぁ、ふっと、全て空しくなっちゃうんだよね」
「ミューディー!」
私はたまらなくなってミューディーを抱き締めた。
「ちょっと、中尉……」
「大丈夫、大丈夫よ。大丈夫だから」
いつかカガリにやったように、ミューディーの背中を撫ぜた。
「不思議……なんか安心する」
「ミューディー……」
しばらく私達は抱き合っていた。
ミューディーが静かに身体を離す。
「ふふ、今日は中尉にみっともないとこ見られちゃった」
ミューディーの頬には、涙の跡が残っていた。
「これから、明るいミューディーにもどりまーす!」
軽く敬礼すると、ミューディーは休憩室を出て掛けていった。


「ルナー! どこに行ってたのよ」
格納庫に戻るとミリィがやって来た。
「あら、トールとのせっかくの再開、お邪魔しちゃ悪いかと思って」
「ルナもそういう事言うの?」
ミリィの頬が膨れる。
「ごめんごめん。会いたかったわ! ミリィ!」
「私も! ルナ!」
私達は手を広げてハグしあった。
「いっぱい、話したい事あるんだけど、何から話していいかわからないわ」
「私も。教導隊に入ってから色々あったの」
あ、そうだ。思いついた事があった。
「ねぇ、ミリィとトールって、結婚とか、そう言う話、してる?」
「ぶっ」
ミリィが吹き出す。
「け、結婚!?」
「した事、ないのね」
「だって、私達まだ16歳よ!?」
「だよねぇ」
「何かあったの? そんな事突然言うって事は?」
「……プロポーズ、されちゃった」
「えええぇぇ!」
さすがに驚くよねぇ。
「誰によ!?」
「ミリィの知らない人。モビルスーツ隊の隊長よ」
「いい人そう?」
「うん。いい人そう」
「……ルナって好きな人いないよね? じゃあ、試しに付き合ってみたら」
「付き合うかー。ミリィと遊んでた方が気楽だなぁ」
「お子様なんだー」
「なによー。自分は彼氏がいるからってえらそうにー」
でも、そうね。試しに付き合ってもいいかも知れない。戦争が終わったら。


戦争が終わったら、付き合ってみてもいい。その事を伝えたら、ギャバン隊長は大喜びしていた。
絶対、生き延びてやると言ってウインクした。
本当に、無事に生き残って欲しい。自分の知り合いが死ぬのは、いやだ。


「ルナ、何してるの?」
「うん、ちょっとね、お守り作ってるの。協力してよ」
「うん、いいけど、どうやるの?」
「この赤い糸で一針ずつ縫って結び目作るの。本当は千人にやってもらうんだけど」
「千人!? アークエンジェルにはそんなにいないわよ」
「うん、残りは私がやるわ。要は、気持ちよ」




「な、何だ!? 何が起こっているんだ!?」
ロウ・ギュールはギガフロート各所で起こる爆発に慌てふためいた。
「マルキオ導師、こちらへ!」
山吹樹里がマルキオ導師を安全な所に案内しようとするが、彼は動かずじっとして耳をすませているようだ。
そして叫ぶ。
「ロウさん! あちらです! あちらに私の知らないモビルスーツの足音が!」
「なんだって?」
ロウは、マルキオの指差した方向に目を凝らす。が、何も見えない。
「何もいませんよ」
「しかし! 感じるのです!」
「しかたねえな」
ロウはマルキオの指指した方向に向かってビームライフルを撃つ。
――と、霧が晴れるように、奇妙な形のシールドを構えた漆黒のモビルスーツが姿を現した。
「な、なんだぁ! アストレイみてぇな、いや、ちょっと違うか」
その漆黒のモビルスーツはいきなり走り出すとレッドフレームに向かって右腕を装着された盾ごと振り下ろす。
振り下ろされた瞬間、ビームサーベルの刃が出現するのをロウは見た。
「うわっと――あぶねぇ!……消えた? どこだ!?」
ロウはガーベラ・ストレートを抜き、辺りの気配を探る。
――! 後ろに突然漆黒のモビルスーツが現れ、レッドフレームを締め上げる。
「くっ、後ろだったのかよ。おい! お前は何者だ! なんでこんな事をする!?」
返事はなかった。レッドフレームがガーベラストレートを取り落とすと、漆黒のモビルスーツは足払いをかけ、転がるレッドフレームの四肢にビームライフルを打ち込む。


「ふ、他愛もない」
ギナは一人ごちた。
「さあ、止めだ」
右腕を上げコクピットに狙いを付ける。
「やめてー!」
「うん?」
赤毛の女の子が、倒れこんだレッドフレームのコクピットに立って、コクピットを守るかのように手を広げる。
「興が削がれると言うに……まぁいい。一緒に死ね!」
あらためてギナは狙いを付ける。
――! 衝撃がPO1を揺らす!
「うぅ!」
なんだ? 手早くモニターをチェックする。海中からミサイル攻撃を受けている!
「くそう! 邪魔しおって!」
ギナは海中に飛び込んだ。
「これは……PO3か!」
海中用の装備を身につけているようだが、自分で開発した物だ。すぐにわかる。
PO3はスーパーキャビテーティング魚雷を撃ってくる。スケイルシステムによって水中の機動性もPO3の方が上だ。
「く、ここまでか。まぁいい。あれだけ壊せばもはやギガフロートの崩壊は止められまい」
ギナはすばやく判断を下すと撤退して行った。


「もう! ロウったら! 心配したんだから!」
崩壊寸前だったギガフロートの応急処置が済み、一安心した安心感からか、樹里がロウの胸をポンポン叩く。
「悪い悪い。しかし、今回はあんたらに助けられたぜ!」
ロウは劾の方を振り向くと礼を言う。
「なに。ギガフロート建設の護衛が俺達の任務だからな。礼を言われる事でもない」
「でも、このギガフロートが完成したら、狙う者は多いでしょうね」
「ああ、連合にザフト。どっちも狙ってくるだろう」
劾は妙な顔をした。なにしろ彼にギガフロート建設の護衛を頼んだのは連合なのだ。
「心配には及びません」
マルキオ導師が言った。
「このギガフロートは移動可能でもあるのです。戦時中で監視衛星が使えない現在、正確な位置などつかめませんよ。このマスドライバーは、戦争に関係ない民間専用のマスドライバーとして使用したいと思っています」
感銘を受けたようにロウがうなづく。
まぁ、いいか。劾は無責任に思った。
俺が受けた仕事はギガフロート建設の護衛だ。ミッションコンプリートだ。余計な事に首を突っ込みたくない。
うん。余分な苦労などごめんだ。料金は前金でもらってある事だし。
劾は、マルキオ導師の話を聞かなかった事にした。







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