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Lnamaria-IF_523第23話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 08:15:50

「よく来た、アスラン」
「はっ、父上」
「なんだ、それは」
「失礼致しました! ザラ議長閣下!」
「状況は認識しているな? やはり、地球軍のモビルスーツ、侮るべきではなかった。短時日で実戦配備してくるとは……」
「……」
「クラインら穏健派も騒いでおる。もう、失敗はできん。パナマのマスドライバーをなんとしても破壊するのだ! アラスカで失敗しようとパナマを叩く事が出来ればオペレーション・ウロボロスの目的は達成できる!」
アスランは、父の焦りを感じていた。そして、それにも関わらず父の心の底に自信があるように感じる。
なぜだろう?
「お前は、パナマのマスドライバーの破壊と、地球軍パナマ司令部の破壊をやってもらおう」
「隊を持つのでありますか?」
「いや、単機でやってもらう」
「……単機とは!?」
「お前は工廠でX09Aジャスティスを受領し、準備が終わり次第任務に就くのだ。ジャスティスはそれが可能な機体だ。ニュートンジャマー・キャンセラーを搭載した核動力機なのだ!」
「……ニュートロンジャマー・キャンセラー!? そんな……何故そんなものを! プラントは全ての核を放棄すると……」
「勝つ為に必要となったのだ! あのエネルギーが。お前の任務は重大だぞ。心して掛かれ!」
アスランは敬礼し、踵を返した。
「アスラン……」
後ろから声が掛かる。
「は。なんでしょう?」
「真に信頼できる者は少ない。だからお前に核動力機を託すのだ。頼むぞ」
アスランは、やや弱気な父の声に統治者としての悲哀を見た。
せめて自分が父を楽にしてやらねば……
「わかりました。ご安心下さい。アスランは信頼を裏切りません! ……父上!」
アスランは意識して『父上』と言った。
「頼むぞ……」
パトリックも、息子の言葉に何かを感じたのだろう。もう言い直しを求めるなどと言う無粋なことはしなかった。




6日ばかりの航海で私達はパナマ基地に着いた。
アメリカ大陸の西沿岸を航海した事もあって、のんびり安心した航海だった。
シャムスさんは、なんでビリヤード台がないんだとぶつくさ言ってた。
元々宇宙艦だもん、しょうがないよね。


「君がホーク中尉かね」
廊下を歩いていると、声をかけられた。
「はい、そうですけど……」
声をかけてきた人は、大尉の階級章だった。この艦で大尉って事は――
「私はこの艦の副長のイアン・リー大尉だ」
やっぱり!
「君の事はアルスター事務次官からよろしくと頼まれている。私も期待しているよ」
そう言うとイアンさんは去って行った。
嬉しい。アルスターさん、ちゃんと私の事気にかけてくれているんだ。
イアン・リー大尉は、ナタルさんより物静かだけど、冷静な所がナタルさんに似ている。冷静に、マリューさんを補佐している。いいコンビなんだろうな。




「ギャバン隊長!」
パナマ基地に降りたギャバン隊長を見つけて声をかけた。
「おお、お嬢ちゃん!」
「これ! 持ってて」
「これは、なんだい?」
「千人針って言って、オーブに伝わる武運長久のお守りなの。お腹に巻いたり、帽子に縫いつけたりするらしいわ」
「……ありがとう! 俺は今猛烈に感動している!」
情が移るって、こう言うのかな。なんか、ギャバン隊長が微笑ましく感じた。


それから一週間ばかりは、また新しい地球軍のモビルスーツ部隊の教育に頑張った。
そんな中、コーディネイターでありながら地球軍で戦っているというジャン・キャリー少尉と言う人に会った。
『煌めく凶星J』とも呼ばれているすごい人だ。
「やぁ。地球軍に私以外にコーディネイターの兵士がいるとは聞いていたが、君のような少女がそうだったとはね」
「お会いできて光栄です!」
「何、ナチュナルでも扱えるモビルスーツもできたと言う事だし、私もそろそろお払い箱だよ」
「そんな事ありませんよ!」
「いや、部隊で疎まれているのを感じるんだよ。最近ね。なに、軍を辞めたら、また元の工学博士に戻ればいい」
「……私は、恵まれてるんでしょうか? 一緒に戦う度に、ナチュラルとの垣根が無くなっていく気がしてるんです」
「恵まれているのかもな。あるいは、私の戦い方に問題があるのかもしれない」
「?」
「私は、プラントでも暮らしていたからね。敵の戦闘力のみを奪う戦い方を旨としている」
「――! それって、すごい腕前じゃないですか!」
「君は、プラントに知り合いはいないのかい?」
私は俯く。
「……います。その人、ザフトに入ってて、私と戦う事になっちゃって……」
「それは、辛いな。軍を辞めようと思った事は?」
「地球軍にも友達がいるんです。だから、今は、私が戦わなくちゃって」
「……戦争が早く終わって、無事だといいな。プラントの友人も、地球の友人も」
「はい……」


「おーおー。コーディネイターが御揃いで」
「コーネル隊長!」
キャリーさんと話していると、目つきの悪い将校が入って来た。
「やっぱりコーディネイター同士は気が合うのかねぇ? ん?」
何? この嫌味な言い方?
「隊長、そのような言い方は!」
「ん~? 私はただ聞いただけだよ? それとも何かやましい事でもあるのかね?」
やっぱり、嫌な奴!
「ところでお嬢さん、君は敵と戦う時、ちゃんととどめを刺しているかね?」
「はあ? 少なくとも相手が降伏するか戦闘能力を奪ったと確信できるまでは攻撃してますけど」
「はははぁ! こいつはいい! キャリー少尉、このお嬢さんはお前よりよっぽど戦争がわかっておいでだぞ!」
「……」
「お前も少しは見習えよ? 敵に情けかけて中途半端な攻撃してるから逆襲されて怪我なんぞするんだよ」
そう、キャリーさんに声をかけると、コーネル隊長は出て行った。
「あの人が隊長? 苦労するわね。キャリーさんも」
「はは……あの人の言ってる事も、わかるんだけどね……」
キャリーさんは気弱に笑った。




ザフト軍がパナマに攻撃を仕掛けてきたのは次の日だった。
アークエンジェル隊――実質フラガ教導隊はアラスカと同じように援護に当たる。
だけど、だんだん、救援を呼ばれる時間が間遠になり、アラスカと同じように、このまま守れるかな? と私は思い始めていた。


「なんだ? あいつは?」
ギャバンは、空中から落ちて来る『何か』を見つけ思わず口を開けた。
「わかりません、空中から落ちてきて……」
「ギャバン隊長! ザフトの奴ら、あれを目指しています!」
「何かしらねえが、邪魔すりゃいい事がありそうだな! 行くぞ!」


ギャバン達がその機械に辿り着いた時は、一機のジンがテンキーのような物を操作していた。
「戦場で敵に後ろを見せるってのは油断だぜ! そらよ!」
ギャバンはジンの背中を袈裟懸けにする。
「く、くそう……だが、もう遅い! 低脳の地上の猿など滅びてしまえ……」
ジンは崩れ落ちた。
「なんだぁ? こいつは? カウンターが……おい! とにかくこいつを壊した方が良さそうだ!」
ギャバンはその機械に向かって射撃を始める。
――その時、衝撃が、走った。


「何が起こったの!?」
「わかりません! 本部、各部隊との通信途絶! 強力な電磁パルスの発生が確認されています! まるで地上でローエングリンを発射したような!」
「そう……核……まさかね」
マリューは何が起こったのか思い悩んだ。
「無人偵察機を本部、マスドライバー方面に出して!」
『艦長! 私を偵察に出してください! 第1モビルスーツ隊なら、先ほど救援したばかりで、至近です!』
「……わかりました。ではホーク中尉、アーガイル少尉、ケーニヒ少尉、偵察に向かってください。報告は密に!」
「はい!」


私が目的地点に着いた時、ザフトのジンが2機向かって来た。
私は一機を切り払う。残りの一機は、トールとサイの砲撃を受けて爆発した。


そこには、トラックが停まっていた。そして、地球軍兵の死体の群れ……何が起こったの!?
あれは――! 第一モビルスーツ隊の!
「エイムズさん! ジョンさん! 大丈夫ですか!」
「その声はホーク中尉か!? 大丈夫だ! だいぶやられちまったが……ザフトの奴ら、降伏をした奴に銃撃をしてきたんだ!」
「何が起こったの!? ギャバン隊長は!?」
「何しろ突然機体が動かなくなっちまった! 隊長は、コクピットを開けて、手を上げた所を撃たれた! ジンの機銃で!」
「……ギャバン隊長!」
『ルナ、どうする?』
サイから通信が入る。
「……この人達を保護して、アークエンジェルまで戻りましょう。……あなた達、トラックに乗って!」
生き残りの兵がトラックの荷台に乗る。……十人もいるかどうか。
「サイ、トラック、頼むわ!」
『わかった!』
サイがトラックを持ち、私達はアークエンジェル目掛けて走る。
途中で、ディンが私達を見つけて銃撃して来る!
やらせない!
ハイジャンプしてディンを撫で切りする。
――! あれは!
ディンを片付けた私を見つけたのか、一機の赤いモビルスーツが飛行してこちらにやってくる!
――ジャスティス。アスランの乗機……そんな言葉が脳裏を過ぎる。
「私が防ぐ! サイとトールはアークエンジェルに行って!」
『無事でな! ルナ!』
『後で必ず!』
赤いモビルスーツは地上に降りると、私と相対する。
『ルナか!?』
「アスラン!?」
やっぱり!
「アスラン! これは一体どう言う事よ!? 降伏した兵を虐殺するのが、ザフトのやり方なの!? ビクトリアでも、パナマでも!」
『……くっ。行け!』
「え!?」
『いいから行け! 俺が受けた命令はマスドライバーの破壊と地上本部の破壊だ!』
「……ありがとう、アスラン……」
『……そういえば、俺達がオーブに寄った時、アークエンジェルの避難民だったと言うエルと言う子どもに会った』
「え?」
『ルナお姉ちゃんにありがとうと伝えてくれと』
「そう。ありがとう……」
『これで約束が果たせた。ディンに見つからないように行け』
「わかったわ」
エールストライカーを使用せず、地上をひた走る。
ジャスティス……ザフトはディンの他にも次々に飛行ができるモビルスーツを開発している。悔しい。
戦闘の場所らしい場所を見つける度に叫んだ。
「誰か生存者はいないの!?」
返事は無かった。
あ、あれは白いロングダガー! キャリーさん!
「キャリーさん! 無事ですか!?」
その声に答えて、白いロングダガーから人が降りてきた。
キャリーさん!
「無事だったの!?」
「ああ、お嬢ちゃんか。なんとか無事だよ。何が起こったんだ? 突然機体が動かなくなっちまった」
「よかった! ザフト、降伏した兵も皆殺しにしてるから心配していたんです!」
「なんだって!?」
「こちらのコクピットに乗ってください!」
「ああ、わかった」




無事アークエンジェルに到着した時には、ほっとした。
アークエンジェルが、私達の到着を待っていたかのように最大戦速でパナマを離脱すると聞いた時には唖然とした。


「艦長、どうしてなんです!?」
「これ以上、私達がパナマにいる意味はないわ」
怒鳴り込んだ私に、無人偵察機が送ってきた、マスドライバーとパナマ本部が崩壊した映像が示された。
降伏した兵隊さん達が撃たれる光景も……
続いて、リニアガンタンク部隊が何発弾丸を送り込もうと、平気な顔をして現れ、駆逐する一機のモビルスーツが画面に映った。
ジャスティス――アスランだ!
「これ以上ここに留まると、アークエンジェルも危険なのよ」
「……わかりました」




「これは……これは……非道な!」
ジャン・キャリーは歯軋りしていた。
彼の目の前には、降伏した地球軍兵がザフトの銃撃で殺されていく光景が映し出されていた。
その中にはコーネル隊長も――そして同じ部隊の仲間も含まれていた。
「許せん。許せんぞ! ザフト軍!」
コーネル隊長は嫌味な奴で、反りが合わずとうてい好きになれなかったが、このような死に方をしていい訳ではない。
ジャンは憎しみを広げないための不殺と言う自分の行動を汚され裏切られたかのように感じていた。
不殺についてはあれこれ嫌味も言われもしたが、少なくとも一旦捕虜になった物を虐殺など地球軍はしなかった。
それに対してザフトはなんだ……!?
除隊などと言う考えはすっかり彼の頭から消えていた。残ったのは、ザフトに対する純粋な怒り……




「ギャバン隊長……」
落ち込んでいる所に、第一モビルスーツ隊のジョンさんがやって来た。
「ルナ中尉、ギャバン隊長は、中尉からもらったお守りを、それは嬉しがっていました」
「……せっかく作ったお守りも、効かなきゃ同じよ……」
「中尉……」
「ごめん。でも、今はそっとしておいて」
「……わかりました」


パナマから離脱して行くデッキから私は叫んだ。
「ギャバーン!」
答えは、返って来なかった。








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