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Lnamaria-IF_523第36話

Last-modified: 2008-01-18 (金) 20:40:49

一体プラントに何が起こったと言うんだ? まぁいい。これからの会見でわかるだろう。
ドアが開く。アズラエルは立ち上がった。
開いた扉の向こうには、テレビなどで見知った顔、パトリック・ザラとエザリア・ジュールが立っていた。
「どうぞ、中へ。ああ、ルナマリアさん、ありがとうございました」
「いえ。では私はこれで」
扉が閉まる。
「ようこそ、と言うべきでしょうかね。パトリック・ザラ前プラント評議会議長に、エザリア・ジュール国防委員長、そして……」
「アスラン・ザラにイザーク・ジュール。私達の息子達だ」
「どうぞ、おかけになってください。こちらは……」
アズラエルは壁際のソファの後ろで立っている次郎と三郎を指し示す。
「僕の護衛です。お気になさらず」
「ああ、では座らせてもらおう」
四人が座るのを待って、アズラエルもソファに腰を下ろす。
「で、今回は何用で来られたんですか? まさか亡命?」
「……近いかな。プラントに対する責任感は1mmたりとも失ってはおらん。だが、命を狙われる危険が出てきたのだ」
「誰にです?」
「……シーゲル・クラインにだ」
「詳しく、聞かせてもらえますね?」
「無論、そのつもりだ」
パトリックは自身が探り出した秘密結社ターミナルとシーゲル・クラインとの関係について語った。
「ちょっとすぐには信じられませんねぇ。秘密結社、ですか」
「私も、すぐには信じられなかった。だが、証拠が出てきたのだ。まず、ユニウス7への核攻撃……」
ここで、パトリックは亡き妻の事を思い出したのか、目頭を押さえた。
「攻撃したのは無論そちらだ。だが、こちら側の防備がユニウス7周辺だけ故意に薄くされていた事が判明した。私が探り出した所、その原因はシーゲルが直々に出した防備命令だった」
アズラエルは先を促すようにうなずいた。
「続いて地球上へのニュートロンジャマー投下だ。本来これは、遠隔操作によりスイッチのオンオフが出来ると説明されていた。それを持って連合に交渉を迫ると聞かされていた。だが、実は試験段階で、ニュートロンジャマー自体の作用で遠隔操作が出来ない事が判明していた……そのデータはシーゲルの所で握り潰されていた。試験の担当者は不審死を遂げていたため、発覚しなかった」
「うーん。何かをシーゲルさんが企んでいる事は確かなようですが、一体、ターミナルの目的とはなんなんです?」
「難しい質問だ。一応地球圏を支配する事ではないかと想像しているが、あるいはもっと非論理的な目的かもしれん」
「わからないと言う事ですね。……ところで、ザフトでジェネシスって兵器、開発してます?」
「……掴んでおったか。確かに、開発している。強力なガンマ線で地球のオゾン層を破壊し、地上に被害を与えるものだ。無論通常のガンマ線ビーム兵器としても使えるがね。私はこれをもって連合に妥協を迫るつもりだった」
「実際には使うつもりはなかったと?」
「ああ。旧世紀の冷戦時代の核と同じだよ。抑止力であってこそ意味がある。使ってしまえば終わりだ。なにしろプラントは未だに食料を地球に頼っているのだ。地球が滅べばプラントも滅びる。だが、シーゲルは何をやるかわからん。奴の思考が読めんのだ……」
「教えてくださってありがとうございます。では、ぶっちゃけてお聞きしますが、貴方がここへ来た目的はなんですか? こちらに情報を教えてくれるためだけに来た訳じゃないでしょう?」
パトリックの顔が一瞬ゆがむ。
「……もはや、プラントに残された道は敗北か、地球人類全てを巻き込んだ心中しかない。どうかプラント市民に寛大な条件で和睦を……そしてもう、CE63年のような、プラントのエネルギー事情を無視したような過大なノルマを課すような事は止めて欲しい。それがきっかけでプラント内で独立論が声高に叫ばれ始めたのだから」
「……確か、その年はプラントエネルギー部門が故障したんでしたっけ。まぁ、こちらにもプラント運営に関して不手際があった事は認めましょう。……和睦ですか。プラント本土までザフトを押し込めた所で名目上講和、としてあげても構いませんけどね、僕としては。プラント市民が武装を放棄してまともな労働者に戻ってくれればねぇ。ニュートロンジャマーによる被害なんて天文学的な数値になるだろうし、とてもプラントに払えるとは思えない。締め上げすぎて新たなヒトラーを生む原因にもしたくない」
「おお……」
「でも、足りませんね。まだまだ。これまで貴方がしゃべってくれた事だけではとても、釣り合わない。持ってるんでしょう? 交渉材料?」
「……ニュートロンジャマーの効果を打ち消す装置、ニュートロンジャマーキャンセラーが、プラントでは開発されている」
「やっぱり開発されていましたか!」
「一つ、条件がある」
「なんです?」
「この技術を、軍事転用はしないで欲しい。例えば核ミサイル、核動力モビルスーツ……」
「まぁ、いいですけど? まずは各地のエネルギー事情の改善に使いたいですからねぇ。でも、その好転したエネルギーで兵器を生産して戦場に送れば同じ事ですよ?」
「それはしょうがないでしょうな。ともかく、プラントには過敏すぎるほどの核アレルギーがあると理解頂きたい。どのような形であれ、兵器として核を使われれば、それはプラントを皆殺しにする意思と取る者が多いでしょう。皆殺しになるならばいっそジェネシスを撃ってしまえ――そうなる事を私は怖れる」
「わかりました。ザフトが核兵器を使わない限りこちらから先制して核兵器は使用しないと約束しましょう。では、データを渡して頂けますね?」
「……今までに貴方が言った言葉、信用してよろしいのですな?」
「僕は商人です。取引の信義は守りますよ」
アズラエルはにぃっと笑った。
「では……」
パトリックは懐からデータチップを取り出した。
「全てはここに……」
「確かに」
アズラエルは慎重にデータチップを受け取った。
「さて、これからのあなた方ですが。とりあえずは僕の家の別荘にでも隠れて頂こうと思うのですが、いかがです?」
「結構だ。場所は?」
「北アメリカ、スコットランドとありますね。ああ、この間オーブの小島も買いましたね。なかなかいい所ですよ、オーブは」
「では、オーブにお願いする。コーディネイターがいても目立たぬでしょうから」
「わかりました。それで……」
ここで、アズラエルはいたずらっぽく笑った。
「安全のために偽名を名乗って頂きたいのですが、どうします?」
「う……む、偽名か……。そうだな、パトリック・コーラサワーで」
「コーラサワー?」
「コーラサワー」
「おいしそうな名前ですね」
「なに、子供の頃に見たアニメの登場人物さ。確か『ガンダムOO』とか言ったかな」
「ふむ。機会があれば見てみましょう。ジュールさんはどうされます?」
「え、ええと……」
話を振られて口ごもるエザリアに、パトリックが口を挟んだ。
「エザリアは、私の妻と言う事でいいだろう。私達は家族と言う事で。それが一番自然だろう」
「つ、妻……?」
「嫌かね? エザリア?」
「い、いいえ! とんでもありません! それでかまいません!」
少女のように頬を赤らめてかぶりを振るエザリア。
それをイザークは複雑そうな、なんともいえない表情で見つめていた。
ふと、アスランと目が合う。
「兄弟かよ……」
イザークは小さくため息をついた。それを見てアスランが口を開く。
「イザークお、お兄ちゃん?」
「……貴様ー! 気持ち悪い呼び方をするな!」
「あはは。ごめんごめん」
「ぷ。ふふふ」
「ははは」
パトリックも、アズラエルも笑い出す。部屋は笑い声に包まれた。


「……そう。あなた達は地球軍が作り出した戦闘用コーディネイター……」
七郎から七郎達の素性を教えられた私は、気分が暗くなった。
「アズラエルさん、そんな事してたの……」
クロト達強化人間の事は、知ってたけど……
「ああ、勘違いしないでください。アズラエル様と自分達の年齢差を考えてください。私達が生まれた時、アズラエル様はほんの子供です。これは、彼の父、ブールーノ・アズラエルが始めた事で、彼は事業としてそれを引き継いだに過ぎません」
「でも、ナチュラルに攻撃できないようにされてるんでしょう? もしナチュラルから攻撃されたらどうするのよ?」
一方的に攻撃されるしかないなんてひどすぎる!
「服従遺伝子ですか? ふふふ、そんな不完全な物、とっくに効果は切れてますよ。アズラエル様もご存知です。でなければ、同じナチュラルからも攻撃される危険があるお立場と言うのに、我々を身近な護衛になど使いません」
「……服従遺伝子、効いてないの? なら、なんであなた達……」
「アズラエル様に従っているか、ですか? 洗脳が解けたからと言って、反抗するだけが取る道ではありません。洗脳が解けたと言っても、ナチュラルのためになりたいと言う欲求は残っているのですよ。……アズラエル様は、面白い方だ。ナンバーで呼ばれていた我々に名前を付けようと考える人など今までいなかった。我々は見守っているのですよ。彼が世界のためになるか否かを」
「もし……ためにならないと判断したら?」
不安げな表情が出てしまったのだろうか、七朗は私を安心させるように微笑んだ。
「さぁて。遠くに逃げ出して高みの見物と言うのも一つの手ですが。どうせなら関った方が面白そうですね。身近にいればお互いに影響も与えられますし」
「そうよね。人が、間違っていたら、それを正せばいい……」
「私も一時悩んだ時期がありまして。そしたらある人に言われたんですよ。『なんのための耳だ口だ脳だ!! 人体は正しく使え!!』とね」
「正しく使え?」
どう言う事だろう? よく、わからない。
「わかりませんか。実は私もよくわからなかったです。そしたら、『口は、思いを伝えるために、頭は考えるためにある、耳は人の話を聞くためにある。言葉にして伝えなきゃ伝わるもんか。伝えずにして『分かってもらおう』なんて、甘い!』ってね」
「あは。いい台詞ね」
確かに、確かに、言わずともわかってもらえるはず、と思うのは遠回りな場合もある。それより口に出して言ったほうがわかってもらえることもある。
「逆も、言えるんです。相手の事をイメージだけでこうだと決め付けて何もしないのは、だめなんです。直接知らなきゃ、わからない。叱られましたよ『知らない・知らなかったこと』は恥でも罪でもないが、『知ろうとしないこと』は大きな恥であり、罪だと。で、思い切って当たってみたんです、アズラエル様に。そしたら思ったよりユニークな方だったので今に至ると」
「そう、あなた達自分の意思でアズラエルさんのそばにいるのね。なんか嬉しいな」
「……ふふふ。それは、あなたもアズラエル様に好意を持っているからでしょうね」
「え……やだ! 好意って!?」
ああ、なんで!? 顔が紅潮するのがわかる!
「ふふふ。好意と言うのは恋愛以外でも使いますよ?」
「……あ……もうっ! 七郎ったらいじわるね。……でも、ユニークな人ね、その人も」
「ええ、ユニークな変わり者でした」
「会ってみたいな。何て言うの? その人?」
「それが……名前は聞かず仕舞いで」
残念そうに七朗は言った。
「でも、縁があればいつかまた会えるでしょう。そう思わせる人でした。ああ、そうだ! 確か、連れていた犬の名前をマイフレンドと……」
「犬の名前がマイフレンド? ほんと、ユニーク」
「ええ、ユニークです」
そう言うと七朗は目を閉じ懐かしむようにかすかに微笑んだ。


「やあ、お嬢ちゃん」
「あ、フラガさん」
自室に戻ろうとすると、フラガさんがいた。
「驚いたよなぁ。いきなりザフトの大物が亡命だなんて」
「声が大きいですよ」
「はは。誰もいないさ、ここには。んー、お客さんのおかげで言いそびれちまったんだがなぁ」
「なんですか?」
「まー、なんと言うか。模擬戦の時、お嬢ちゃん何か感じなかったか?」
「――!」
「そんな顔するって事は、なにか感じたんだな?」
「あ、はい。その、フラガさんを……んー、何してるかが見てないのにわかるみたいな。フラガさんだけじゃない、他のみんなの動きもです。これからどう動くかわかっちゃうような。今までにもすごい集中して、相手の動きを予測してってのはありましたけど、それとも違う感じなんですよね」
「そうか……お嬢ちゃん、俺の同類かもなぁ」
フラガさんはなんか嬉しそうだった。
「同類、ですか?」
「メビウス・ゼロ部隊ってあったろ」
「あ、はい」
「そこにはなぁ、ガンバレルを扱える特殊な空間把握能力を持つ奴ばかり集めた部隊でな、隊員同士でなんかいきなり相手の事がわかっちまう、みたいな感じがよくあったんだ。模擬戦の時、いきなりお嬢ちゃんの事が見えた感覚がしてな、念のために聞いてみたのさ」
「そっか、もしかしてプレアのオリジナルもそこに……」
「ん?」
あ、つい口に出ちゃった。フラガさんが怪訝な顔をしている。
「あ、いえ、ナチュラル、コーディネイター関係ないんだ?」
「みたいだな。お嬢ちゃん、ガンバレル使えるかも知れないぜ」
「ガンバレル……」
「ま、機会があったら試してみようや。引き出しがいっぱいあるに越した事はないからな」
ぽん、と私の肩を叩くとフラガさんは去って行った。
ガンバレルか……簡易なガンバレルはディープストライカーで試してみたけど、本式のガンバレル、私に使えるかな?
不安なような、楽しみなような。






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