Top > Lnamaria-IF_523第42話
HTML convert time to 0.006 sec.


Lnamaria-IF_523第42話

Last-modified: 2008-02-29 (金) 17:58:49

「おー! 見事なもんだ。姉ちゃんやるなぁ」
ダナは呟いた。
ルナマリアの出撃はドミニオンでも確認されていた。ルナマリアの突入した地点からザフト艦隊の動揺が波のように広がっていくのがわかる。
ハルバートン提督から指示が届く。
――その地点に向けて、一斉射撃の後、集中攻撃、突破せよ――
「行くぞ、お前ら!」
「わーってるって」
「うぜー」
っとにこいつらブーステッドマンは。ダナは苦笑する。
「了解」
「はい!」
反対にソキウス、そしてジョン、エイブズからは素直な返事が返ってくる。
ダナは出撃の命令を待った。


地球軍艦艇は、ハルバートンの指示通り、ルナマリアの突入した地点に向けて己の持つ最大の攻撃を放った。
主力となるネルソン級宇宙戦艦から大型ビーム砲、対宙魚雷が発射される。アガメムノン級からは225cm2連装高エネルギー収束火線砲ゴットフリートMk.71、そして大型ミサイルが。最も小さなドレイク級宇宙護衛艦も対宙魚雷を放つ。
アークエンジェル級の2艦はもちろんローエングリン、ゴットフリート、バリアント、艦対艦ミサイルスレッジハマーを乱れ撃ちに撃つ。
すさまじいばかりのエネルギーの激流が狭い空間を支配する。
ザフトのナスカ級が、ローラシア級が、次々に飲み込まれ爆発し、自らもエネルギーの乱流に加わる。
地球軍は、ルナマリアの突入した穴を大きな破孔に拡大する事に成功した。


「よーし! カル・バヤン隊左翼を任す! キャリー隊は右翼だ!」
「「了解!」」
フラガはアークエンジェルのモビルスーツ隊を2小隊に編成していた。
第1小隊はフラガ、スウェン、ミューディー、シャムス。
第2小隊はルナ、キャリー、トール、サイ。
現在はルナがいないのでスウェンとキャリーにそれぞれの隊の指揮を任せてい、自らは総指揮を取っている。
アークエンジェル隊の横を、他の艦のモビルスーツ隊、モビルアーマー隊が追い抜いていく。
「ようし、俺達もGOだ!」
「「了解!」」
今、まさに地球軍の攻撃はボアズへと奔流の様な様相を見せていた。




アーネスト・キング――CE31年に大西洋連邦航空宇宙軍兵学校へ入校。卒業後、建設なったばかりの月面プトレマイオス基地に配属、その後様々な勤務を経験し、大佐時代に48歳でパイロットの資格を取り、航空畑に入って宇宙母艦レキシントン艦長となる。さらに航空宇宙軍大学校で学び、CE63年、この年起こったプラント技術者のサボタージュに対しモビルアーマー部隊を率い鎮圧、少将に昇進。CE68年、大西洋連邦宇宙軍第三艦隊司令官、中将。CE70年2月、地球軍発足に伴い宇宙軍第七艦隊司令長官、大将。
上司からも部下からも嫌われやすい性格の持ち主だが、宇宙軍士官としての有能さは、彼を嫌う人々でさえ認めざるを得ないものである。
この日、彼はドミニオンが第七艦隊にいない事にほっとしていた。本来ならば、ボアズ攻略総指揮官である彼の直率艦隊である第七艦隊にいる事が正しいのだろう。だが、彼はアズラエルが大嫌いである。もっとも彼が軍内に好意を持つ者が居るかと言うといないであろう。彼が好意を持つ人間がいたとしたら、それは間違いなく女性だ。彼は女性、ギャンブル、酒に目がない上にだらしがなく歯止めが効かず、パーティーでは淑女たちに露骨に嫌がられ同席を拒否されることしばしばで有名である。
そんな訳で、自分に命令される事が嫌いなキングは、横紙破りをされる恐れのあるアズラエルをハルバートンの第八艦隊に押し付ける事に成功して上機嫌だった。ボアズ攻略も順調に進んでいる。だが、ザフトの抵抗もさすがに激しく、先鋒である第六、第八艦隊の損害も無視できない物である。彼は、予備兵力である自分の第七艦隊を叩き付ける時期を慎重に検討していた。




マティスは無力感を感じていた。
今さっき地球軍上層部に最新の情報――ジェネシスの最終目標、地球――およびシーゲル・クラインの分析結果――人類絶滅を希求――を送った所だ。
しかし、この段階でそれらの情報がどれだけ役に立つだろう?
「それもこれも、シーゲル・クラインのせいだ!」
壁に貼られたシーゲル・クラインの写真にダーツを投げつける。
そう、この戦争は『一族』により計算され始められた戦争だったはず……それが、どこで狂ってしまったのだろう。
すべてはシーゲル・クラインだ。マティスはそう思った。
ニュートロンジャマー開発の裏には、彼の数々の技術的助言があったと言う。
そして、血のバレンタインの報復――プラント評議会では当初、当時の国防委員長ザラを初めとして限定的な地球への核攻撃案が支配的だったと言う。
それが……彼のごり押しにより万単位と言う馬鹿げた数のニュートロンジャマーの投下に変わった。
さらに、レーダーの効かないニュートロンジャマー下で猛威を振るっているモビルスーツの開発にも、彼は深く関わっているらしかった。
そう。今プラントがここまでの力を持ったのはまさしくシーゲル・クラインによる物と言っても過言ではない。
であるのに。まるで、行動が読めない。まるでプラントが滅びてもいいと言わんばかりの行動……
いや……認めたくなかっただけだ。彼は、人類の絶滅を希求している。集めた全ての情報がそう考えると、辻褄が合う。一体なぜか……それは『一族』が総力をあげても掴めなかった。
ふと、マティスの胸に疑問が生じた。何故、シーゲル・クラインはここまでの幅広い能力があるのか? 元々専門は宇宙生命学や天文学だったはずだ。それがニュートロンジャマーやモビルスーツなどまるで畑違いだ。如何にコーディネイターと言っても、頭脳的には記憶力、理解力が優れていると言うに過ぎない。技術を進歩させるにはひらめきが大切だ。
それはナチュラルにもコーディネイターにも平等だ。母数が大きければ開発に向いた人材も多い。現に地球連合は緒戦ザフトのモビルスーツに圧倒されても、ビーム兵器、独自のモビルスーツ開発、PS装甲、ミラージュコロイド、陽電子砲、ラミネート装甲と次々に新技術を開発し戦局をここまで挽回してきたのだ。
大昔の発明家が、『発明は1%のひらめきと99%の努力』と言ったが、その言葉は逆説的にいくら努力してもひらめきがなければだめ、と言う事を示している。
それが……ある時期から、シーゲル・クラインはまるで解答が予めわかっているかのように、次々とプラントの驚異的な技術発展を導いた。その事をもっと疑問に思うべきだったかもしれない。
「でも、もう遅い。私にもう出来る事はない……」
情報では、ジェネシスの目標には確実に地球が含まれている。だが、ジェネシスを破壊しようにも……ジェネシスの装甲は起動時にはPS装甲を展開する。通常PS装甲はビームなど高エネルギー兵器にはほぼ無力だが、ジェネシスはその超広大な装甲面積によりエネルギー許容量がモブルスーツのそれより遥かに高いため、核では破壊不能、事に依ると陽電子砲ですら破壊は不可能かもしれない。
「彼らに、頼るしかないか……祈るしか……」
マティスの視線の先にはジェネシスを破壊できるかも知れないと、状況を打破出来るかも知れないと『一族』が結論した者達のリストがあった。
皮肉な事にその全員が、マティスが「イレギュラー」と呼ぶ、本来『一族』の不利益となると見做された人物達のリストに含まれていた。
「強すぎる力は不確定要素。人類を正しく導くには排除しなければならない。でも……今はその力を信じたい……」


「アズラエル様」
「なんだい?」
キングに厄介払いされた形のアズラエルはこちらもまた、清々とした気分だった。彼の方でもキングは嫌いだったのだ。抜け目なく子飼いとも言えるサザーランド率いる部隊を第七艦隊へ送り込んでいたが。
「特殊情報部のマティス様から緊急通信です」
「わかった」
アズラエルは自分の前にあるコンソールを操作し、送られて来たデータを解凍、復元する。
「……ふぅん」
アズラエルは一瞥すると詰まらなそうな顔をした。
マティスからは、ザフトの切り札、最後のより所と思われるガンマ線レーザー砲『ジェネシス』の予想される目標――月面プトレマイオス基地。最終目標――地球――が示されていた。
そして。シーゲル・クラインについての分析。理由はわからないが、人類の絶滅を望んでいる恐れ、大。
「いまさらですね。遅過ぎます。今からどうしろと? ザフトに時間を与えるだけだ。地球を狙われているならば、なおさら速やかにボアズ、ヤキンドゥーエを攻略し、ジェネシスを破壊しなければ……。まぁ、プトレマイオス基地は最小限の人員を残して周辺宙域に退避しているように命令を。それ以外変更は無しです」
そう。既に賽は投げられているのだ。


「マティス様、通信が入っております。話したいと……」
「何? 邪魔しないでと言っておいたはずよ?」
「そ、それが……すみません、直接話していただいた方が早いかと。お繋ぎします!」
――スクリーンには、凛々しい、と言ってよいだろう若い男性が現れた。
『久しぶりだね。マティス』
「……あなた! マティルダ!」
『僕をその名前で呼ぶな! ――今の僕は、サー・マティアスさ!』
それは……
『一族』には奇妙な掟があった。「党首は女性に限る」と言う物であった。
スクリーンに現れたのは、男装に凝り過ぎ、党首として相応しくないとして『一族』から放逐された、マティスの姉、マティルダであった。
「なんで、あなたが……今は何をしているの? ずっと心配していたのよ?」
『ああ、やっぱり子供の頃から教え込まれた事を生かすのが一番手っ取り早かったんでね、裏社会の情報屋みたいな事をやっているよ。放逐されたと言っても『一族』の者達とは今も接触がある。……マティスの事は僕もいつも気にしていたよ。今回は愛しい妹が困っているのを見ていられなくてね。出て来たというわけさ。ふふ……教えてやろうか? 僕が掴んだジェネシスの弱点!』




私は撤退路を検討する。
まっすぐ味方の艦隊に向かっても、へたすれば味方の攻撃に曝される。遠回りでも、ザフト艦隊の周辺部へ向かって進路を取る!
もう撃沈なんか狙わず、すれ違いざまに戦果も確認せずに斬り付けるだけ斬り付ける!
『ピピー!』
またアラートが鳴る。
う、ますますエネルギーが減ってる!
ビームサーベルの展開を長さ短めにする。艦船攻撃はもう終わりね。
ああ、もう! 主砲が完全にお荷物だわ! 主砲だけ切り離せたらいいのに!
……げ! 周辺部で、まだ地球軍の攻撃に余り曝されておず余裕があるのだろう。ザフトはモビルスーツ隊を繰り出して攻撃して来た。ディープストライカーの前面はモビルスーツが7分、宇宙が3分だ!
遠くでマズルフラッシュの光がいくつも瞬く。弾道がディープストライカーを掠める!
「光を!」
『光が欲しい? 欲しいのなら、あげましょう!』
『ALICE』の声と共に、モノフェーズ光波防御シールド『アルミューレ・リュミエール』がストライクルージュの前面に展開される!
……!? これは? こんな機能聞いてない!
『アルミューレ・リュミエール』はまるで甲冑を着けた女性のような形をして、ストライクルージュ全体を包み込む。
まぁ、防御範囲が広がってるならそれでいいか。考えてる暇は、無い!
ウェポンベイ開放! 三角柱のコンテナが前方に射出され、更にそれからマイクロミサイルが射出される!
マイクロミサイルの乱射に遭い、混乱するザフトのモビルスーツ隊を突破!
……しばらくの後。すべての武装を撃ち尽くし、バリヤーを張るエネルギーも無い状態で、私はアークエンジェルに帰還した。


「うー……」
ディープストライカーを切り離し、私はアークエンジェルの格納庫に着艦した。
「おーい! お嬢ちゃん、大丈夫かー?」
「なんとかねー」
しばらくコクピットの中で休んでから、降りると艦内通話機でブリッジに繋いだ。
「ホーク中尉、ただいま帰還しました」
あ、マリューさんが出た。
「ご苦労様。味方は、無事ボアズに取り付く事に成功したわ。あなたはゆっくり休んで頂戴」
「はい」
部屋へ向かおうとすると、わくわくと言った感じでアクタイオン社の人達が駆けて来た。
「どうでした!? どうでした!? 地球軍はあなたが作った混乱に乗じて、ザフトの陣を突破したんですよ!」
「あは。そうなんだ……」
急に腹が立って来た。
「僥倖ですよ! そんなの! ……主砲は数発しか撃てないわ、ビームソードもすぐエネルギー切れになるわ、バリヤーは5分しか持たないわ、欠点だらけよ! 私が帰って来れたのだってラッキーだったからよ! 危険すぎるわ! もっと稼働時間が長くならなければ、もうディープストライカーには乗りませんからね!」
「ええー?」
急にアクタイオン社の人達はしょんぼりとなった。
「……でも、でも! その欠点を直せば、また乗ってくれますね? ね?」
立ち直るの早っ。
「ま、まぁ、欠点がなくなればね……。そう言えば『アルミューレ・リュミエール』が女性の形を取ったけど、あれは何?」
「――! とうとう、目覚めたのか? アザゼルが!?」
「ほかに、ほかにどんな事が起こりました? アザゼル――いや、『ALICE』から何かルナマリアさんに働きかけはありませんでしたか? 話し掛けて来たりとか?」
わぁ、っと、私の周りに人が群がる。
「いや、他には別に……。じゃあ、私、休みたいから」
強引にこの場を立ち去る。
アクタイオンの人達は、隕石だの珪素生命体がどうとか話してる。「よーし、仕切りなおしだー!」とか叫んでる人も居る。タフだ。




「そうか……ボアズに取り付いたか。これで一安心だな」
ハルバートンは戦況を聞いてため息をつく。そこに副官のホフマン大佐が駆けて来た。
「閣下! 総指揮官のキング大将から通信です」
「わかった。繋げ」
「はっ」
画面にキング大将の顔が映される。
「ハルバートン少将、君の第八艦隊を下がらせろ。第六艦隊も下がらせる。ボアズ攻略の仕上げは私の第七艦隊で行う」
「……はっ。了解しました」
「まさか手柄を取られる、などと考えてはいまいな? 個人の名声など、現代戦には不要だ。第七艦隊がまだ消耗してなく、第六、第八は消耗しているから切り替えるだけだ」
冷たくキング大将が告げる。
「わかっております」
これだからこの人は。とハルバートンは思う。キング大将は有能なのは確かだが、人の気持ちを気にしない所がある。だから、上からも下からも嫌われるのだ。
まぁ、いい。確かにボアズへの道を開くまでの戦闘で第八艦隊が消耗しているのも確かなのだ。休ませてもらおうか。
ハルバートンは艦隊に後退を指示した。






】【戻る】【