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Macross-Seed_◆VF791dp5AE氏_第10話

Last-modified: 2008-01-15 (火) 23:43:09

突然のタンホイザー爆発にミネルバ艦内は混乱していた。
「…! タンホイザー大破、爆発により前部の各所にて火災が発生!
 推進システムに異常発生、艦前部の楊力が低下しています!」
副長のアーサーからタンホイザーの爆発による被害が報告される。
「ダメージコントロール班至急前部へ迎え!救護兵、急いで負傷者の手当てを」
「艦長、艦の揚力が維持できません。このまま行くと着水せざるを得ません!」
「くっ、総員衝撃に備えろ!」
大きな水飛沫を上げてミネルバが海につっこむ。
着水後、状況報告をさせると信じられない報告が返ってきた。
「前部の亀裂より浸水が発生しています!」
「か、艦長、こちらへ攻撃してきたMSですが――き、機種特定されました、ZGMF-X10Aフリーダムです!」
「えええぇぇぇ!ヤ、ヤキンの英雄フリーダム!?そんな馬鹿な!!?」
「光学映像、主モニターにまわします」
モニターに移るのは、第二次ヤキンドゥーエ攻防戦でX09Aジャスティスと共に一騎当千の活躍をし、終戦へと導いたMS。
そしてその戦いで大破したはずのMSであった。
「確かに、残骸はこちらでは回収されなかったと聞いていたけど…何故アレが、こんな所に?」
「それだけではありません。艦長、こっちには――」
続けて映ったのは白と赤を基調とした戦艦。
それは、かつてザフトで『足付き』とあだ名された不沈艦アークエンジェルであった。
「これは一体、どういうことかしら…」

 

タリアが判断に困っているとMSハンガーのハイネから通信が入った。
『艦長、状況が変わったらしいな。それも悪い方向に』
「ええ、悪いけど出撃(で)てもらえるかしら?」
『勿論ですとも。こっちはおあずけ喰らってましたからね、ヤりたくてうずうずしてる所ですよ』
「お願いね。敵はウィンダム・ダガーが多数、ムラサメ・アストレイも多数、さらにフリーダムよ」
『ほほぅ。呼んでもいないヤキンの英雄様までわざわざ来てくれるとはありがたいことですな。
 では俺が前に出て、ザク二機は艦の守備に就かせて守りを固めさせておきます』
「了解したわ」

 

MSデッキでは各員が機体の最終チェックを済ませつつ通信を取り合っていた。
「二人とも、聞いての通りだ。近づいてくるミサイルはガンガン落とせ。
 MSは可能な限り追っ払え、無理なら二三機墜として黙らせるなんなりやってくれ。そこらへんは個人の判断に任す」
『ウォーリア、了解。右舷は任せてください、ミネルバには指一本触れさせないわよ』
『ファントム、了解。左舷にて守備に就く。
 おっとルナマリア、訓練のときのように間違ってミネルバにオルトロスを当てるなよ?』
『ちょっとレイ、アタシを何だと思ってんの、そんなことしないわよ!
 あれはシミュレーションの時のちょっとしたおちゃっぴいじゃないのよ!』
『だといいがな。あと、目の前を飛んでたからって味方であるハイネを墜とすなよ』
『あれもシミュレーションだからついやっちゃっただけよ、実戦ではやらないわ』
「おいおい、後ろから墜とされんのは勘弁してくれよ?
 おっとカタパルトOKか―――よし、ハイネ・ヴェステンフルス、グフ出撃るぜ!」『――っとと、次はアタシか。あーぁ、今回も艦に居残りか。
 せっかくだから戦場でのバサラさんの歌声を間近で聴いてみたかったなー』
『同感だな、艦からの通信でも聴けるがせっかくなら間近で聴きたいものだ。
 が、無いものねだりをしても仕方あるまい。俺達は俺達の仕事をきっちりとこなすだけだ』
『はいはい、わかってますよ。ルナマリア・ホーク、ザク出撃るわよ!』

 
 

フリーダムの乱入で時間が止まっている戦場へ向かいながら密かに組み込んだプログラムを走らせる。
「フンフーン、チャンネル接続OK、マイクの調子…も良好か。いつでもいけるな」
バサラのバルキリーはっと……お?流石のアイツもあの乱入にはビックリしたか?
いや、こりゃ単に歌うのを邪魔されたからアレに対して怒ってるだけか。まー、そりゃ一番いいところを邪魔されりゃ俺でも怒るわなぁ。
「おいバサラ、こっちはOKだ。いつでもいけるぜ?」
『おう』
「俺らの戦場での初デュエットだ、気合入れていこうぜ!」
前奏が始まろうとするとグフの装甲がせり上がり各所にセットしてあるスピーカーがあらわになる。
へっへっへ、こいつで奴らに目にもの見せてやるぜ…いや、この場合は歌を聴かせんだから耳に歌聴かせてやるぜか?
などと戦場に響き渡るシンセ・ドラム・ベース・ギターの特徴的な前奏を聴きつつこれから起きるであろうことに一人ほくそ笑むのだった。

 

 

フリーダムが撃ったビームでミネルバのタンホイザーが爆発を起こした。
あれほどの爆発だ、相当の死傷者が出ているだろう。
俺の家族を、マユを殺し、今また家族ともいうべき艦の仲間達を殺した憎いMSを視線だけで殺せそうな目つきで睨む。
と、そこにルージュの色に身を包んだMSが合流する。肩には……オーブの象徴、獅子のマーク。
マユを殺した原因を作ったもう一つの仇敵、アスハ家―カガリ・ユラ・アスハ―だ。
戦場にまで首をつっこんで一体何を、と思うと全周波放送を行い始めたようだ―――同時に響き渡る音にその通信を掻き消されながら。

 

『オーブ軍、直ちに軍を退け!』

 

この音、いやこのイントロは……[HOLY LONELY LIGHT]だ、バサラさんまた歌うのか?
あれ、この曲の始まりって確か――

 

『私はオーブ連合首ちょ<アァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!>』

 

バサラの魂から搾り出したような咆哮に小煩いアスハの演説が掻き消される。プッ、いい気味だ。
続けてハードな演奏が辺りを支配し、嫌でもその音の中心を皆が注視する。
誰から注目されていない―俺は見ているが―アスハが何か叫んでいるようだが、よく聞こえない。
当たり前だ。現実も知らないアスハの囀りなんかこの魂の篭った演奏の前では耳に入れる価値も無い。
アスハを信望しているであろうオーブのMSでさえ先程の叫びに度肝を抜かれたのかバルキリーを注視している。
そんな状況を変えようとアスハが再び演説を再開したようだ―――奇しくもバサラの歌が始まるのとほぼ同時に。

 

『オーブは――』
<24時間うごめく街を TONIGHT TONIGHT 駆け抜ける>

 

『げ、現在わ――』
<非常階段 瞳の群れが SIGN OF THE TIMES 探してる>

 

『ぉ、オーブの理ね――』
<目がくらみそうな 蒼いダイヤも ガラスに変わってしまう
 キ ・ ヲ ・ ツ ・ ケ ・ ロ>

 
 

俺でも聞いてて哀れみを催すほどに何も言えてない。
てか、さっきからバサラの圧倒的な歌声に掻き消されて何も聞こえない。
とうとう演説をやめちまいやがった。
確実にアスハはコックピットで涙目だろう。このありえない状況はいい薬だ。
そしてこの状況下で連合もオーブもフリーダムもあのシャウトであれから金縛りにあったかのように動いていない。
突撃ラブハートよりこっちの方が初っ端のインパクトが強かったせいか?
そう思ってバルキリーの方へ目を向けると…一緒にグフが居た。しかもご丁寧に機体の各所にスピーカー付で。
(何やってんだ、あの人!?てか、何でグフにスピーカー付!?)
その理由はすぐに解った。あろう事かサビの部分を一緒に歌いだしたのだ!

 

<『HOLY LONELY LIGHT』 急げ 自分を信じて
 『HEAVY LONELY NIGHT』 闇の中から答えを見つけ出せ>

 

くそ、ハイネの奴…なんて羨ましいことやってるんだ。
こんな状況とはいえ、バサラさんとセッションできるなんて羨ましすぎるぞ、この野郎。
と、この本来無いはずのハイネの歌声で金縛りが解けたのかフリーダムがバルキリーとグフに向かって突進し、ビームライフルを連射した。
あのフリーダムの正確な射撃、ソレをいともあっさりと回避する二機。
そんなフリーダムの動きにつられたのか連合のMSもオーブのMSも戦闘を再開し始めたようだ。
フリーダムはバルキリーにばかり構っているのかと思っていると、急にこっちにも撃ってきた!うわ、危な!
ん?セイバーが、アスランがフリーダムへ向かっている。
一体何をするつもり……って、何も出来ずに蹴りを喰らって吹っ飛ばされるし。何がやりたかったんだ?

 

そんなこんなで間奏が終わって二番が始まる頃には強奪された三機も加わって大混戦になり、アスハも演説を再開したようだ。
……もっとも、歌声で俺には先程までと同じように何を言っているのかは聞き取れなかったが。

 

 

一方、こちらはオーブ軍首脳部。
本来ならカガリの乗るストライクルージュの乱入で混乱が起きていてもおかしくないはずだが、逆に静まり返っていた。
「……あれは偽者、だね」
「ですな」
珍しくユウナの言葉に相槌を打つトダカ。
そんな落ち着き払ったトダカにアマギが抗議の声をあげる。
「し、しかしアレはアークエンジェルです!
 さらにカガリ様をさらっていったフリーダム、ダメ押しにカガリ様の愛機ストライクルージュですよ!?
 アレに乗っているのはカガリ様ではないのですか!?」
「落ち着きたまえ、アマギ君。少々頭に血が昇りすぎているようだよ」
「ですが…」

 
 
 

納得がいっていない様子のアマギにユウナが説明する。
「確かに君の言うとおり、状況から考えればそうだろう。だが考えてもみたまえ、カガリの性格を。
 君はカガリの信望者だろう。ならば君がよく知るあの娘の性格なら、確実にこちらに何らかのアクションをかけてくるはずだ。
 例えば『お前達はオーブの理念を忘れたか』とかね」
「それは確かに…」
中途半端に口調を真似たせいでアマギに微妙な顔をされつつもユウナが続ける。
「だというのにそれをしない。代わりにルージュだけが戦場に置いてある。
 それが意味するところは…」
「意味するところとは?」
「アレに乗っているのはカガリ様ではない、あれはこちらに攻撃をさせない為のただのブラフということだ」
「な、なるほど。確かに辻褄が合う…のですか?」
ユウナの言葉をトダカが引き継ぐ。
「もし仮に乗っていたとしても、だ。
 御自身の意思ではなく、マインドコントロールか何かで操られているに違いない。
 正気を保っておられるならば、歌に掻き消されるような弱い言葉でしか己の意思を伝えられないカガリ様ではない」
「おぉ、なるほど、言われてみれば確かに…」
「カガリ様は偉大なる指導者であった[オーブの獅子]ウズミ様の御息女であり、後継者だ。
 お前も知っている通り、強い意思を持った獅子の仔だぞ、そんなカガリ様が洗脳などという愚かな手段で操られるはずもあるまい!」
「ハッ、その通りであります!」

 

段々と言葉に熱が入ってくるトダカ。
その熱にあてられたようにアマギも熱くなっていく。
「ならばアマギ、カガリ様の為に我等が為すべきことは何か!」
「ハッ、カガリ様の御意思を汚す不逞の輩へ天誅を下すべきであります!」
「そうだ、そのための手段は?」
「ハッ、万が一カガリ様がルージュに乗せられているであろうことを考えれば、アークエンジェルとフリーダムを墜とし、その後にルージュを我等で回収すべきであります!
 ルージュを現段階で取り戻そうにもフリーダムとアークエンジェルに邪魔されましょう」
「そうだ、その通りだ。だが一つ間違っているぞ!
 カガリ様はアークエンジェル内に監禁されている場合もある、よってアークエンジェルは武装と航行システムを破壊した上で拿捕すべきである!」
熱意だけで作戦が勝手に決まったようである。
「うんうん、その通りだよ。
 さぁ、早いところ我々オーブの手でフリーダムを墜としてアークエンジェルを拿捕しないとね。
 万が一ザフトや連合によってアークエンジェルがやられた場合、カガリの身に危険が及んでしまう。
 そうならない為にも、一部の兵はザフトのMSに向かわせるようにね」
「ハッ、総員奮戦せよ!我等の手にカガリ様を取り戻すのだ!」
「了解であります!!」

 

俄然やる気を見せ始めたオーブの将兵達を見てユウナがなんとも言えない表情になる。
(士気が上がったのはいいけど、あの歌ってるMSが墜とされた場合はまずいよなぁ。
 まぁ、あのフリーダムの攻撃をあれだけ避け切れるんだ、きっとこの戦いが終わるまで避け続けてくれるだろうさ。
 ……しかし、トダカに前もって色々と吹き込んでおいて助かったよ。
 カガリを取り戻すためならこの身など惜しくは無い、とかね。そりゃ半分は本音だけどさ。
 ………うーん、ここまで騙されやすいと逆に不安になってくるね、味方として)

 
 

自慢じゃないが、僕はこれまで様々な戦場に介入してきた。
この戦場は何故か、今までとは違った。何故かは知らないけど歌が流れていたんだ。
でもまぁ、そんなことは気にせずに発射体制にある戦艦の主砲を撃ち抜き、戦場の度肝を抜いた後上空から降りてくる。
誰もが急に現れた僕とフリーダムを注視している。この調子ならカガリの演説も続けて聞いてもらえるはず。
そう思っていた、なのに――

 

「どうして貴方は僕たちの、カガリの邪魔をするんだ!
 こんな戦争、早くやめさせなきゃいけないのに!」

 

<宇宙を全部くれたって 譲れない愛もある>

 

そう、この真っ赤なMSの歌でカガリの演説が誰にも聞いて貰えなかったんだ。
この紅いMSからの圧倒的な歌唱力と重厚感溢れるBGMが今もカガリの演説を遮っている。
こうしている内にもオーブのMSが一機、また一機と墜ちてゆく。
僕のようにパイロットを殺さないつもりで墜とすのではなく、殺すために墜とされているのだ。
このオーブの悲劇のために涙声になりながらのカガリの演説は今も聞こえていないのだろう。
なにせこの僕の乗るフリーダムでも歌のせいで聞き取れないのだから。

 

「何故貴方はこんなことをする!?
 僕らはただオーブを、この間違った世界を止めたいだけなのに!」

 

<何が本当か 何が嘘か わからない時もある>

 

説得しようと音声通信を繋いでも、返ってくるのはパイロットからの歌声とギターの音だけ。
……歌声と、ギター?

 

操縦すると両手がふさがる→ギターを弾けない
ギターと弾くと両手がふさがる→操縦できない

 

なんで?一体どうなっているんだ、あのMS?

 

<見つめ合うだけじゃ 朝は遠すぎる 抱き締めたい今夜だけ
 ヒ ・ ヲ ・ ツ ・ ケ ・ ロ>

 

考えれば考えるだけ何が何だかわからなくなるMSに向けてビームライフルを撃つ。
勿論MSに乗っているであろう人間を殺すつもりなんて無い。ただ、歌うのをやめてもらいたいだけだ。
しかし、当たらない。そんな!?
脅しで、外すつもりで撃っているんじゃないのに。当てるつもりで撃っているはずなのに。
続けて三連射。これも全て避けられた。どうして!?

 

<『HOLY LONELY LIGHT』 燃やせ体の芯まで
 『HEAVY LONELY NIGHT』 二度と心は後ろを振り向くな>

 
 
 

紅いMSにばかり気を取られていると、歌っていない方の赤いMSがまた突っ込んできた。
変に技量だけあるからビームライフルで狙っても墜とせない。なら、また蹴り飛ばす!
蹴った瞬間、何か聞こえた気がしたが歌とBGMのせいでよく聞き取れなかった。
多分よくある怨嗟の声とか恨み節だろう、そんなことを気にしてる場合じゃない。
何故かよく向かってくるオーブのMSをうまく捌きながら、何とかしてこのMSを墜とさないと……
あぁ、もううっといなオーブ軍。マルチロックで数減らすか。

 
 

オーブの将兵に向かって必死になって叫ぶが聞こえないのか聞いていないのか…何も変わらない。
「オーブ軍、戦闘をすぐに中止するんだ!頼む、もうやめてくれぇ!」
それどころか先程からさらにオーブの被害は増える一方だ。
今も涙で霞むカガリの目に映るのは墜ちていくオーブのMSだ。

 

インパルスに唐竹割りにされ爆発するもの。
ザフトのオレンジ色の新型機にシュライクだけを丁寧に破壊され海に落ちるもの。
ミネルバへ攻撃を仕掛け白いザクに返り討ちにあうもの。
フリーダムに海に蹴りこまれるもの。
フリーダムに飛行能力を奪われ海に落とされるもの。
フリーダムにメインカメラを破壊され訳もわからず海に落ちるもの。
フリーダムにマルチロックでゴミのようにやられるもの。
アークエンジェルと虎に撃ち落とされるもの。

 

……あれ、一番の理解者のはずのキラとフリーダムが一番被害を増やしてないか?
海に落とされたまま殆どが浮かんでこないし…え?あれ?

 

フリーダムが落とした数とザフトが落とした数を頭が焼け付きそうになりながら計算していると、キラがルージュに接触してきた。
どうやらさっきから普通に通信を入れていたらしいが、暗算と音楽に気を取られて気付かなかったらしい。
『ごめんカガリ、これ以上は君とオーブを守りながら戦うのは無理だよ』
……キラってオーブを守ってたっけ?むしろ破壊してまわってた様な。
『ほら、あっちを見て、すごい数だ』
考えるのが面倒になって示された方向を見ると、確かにザフトの艦がたくさん来ている。
『それに、あの紅いMSが歌うのを止めない限り、僕らの声が届かないんだ。
 今は諦めるしかないよ』
フリーダムにつられて紅いMSを見るとまだ攻撃を避けながら歌う気らしい。
よく見ると近くに居るオレンジの新型にも同じようなスピーカーがついている。コンビということだろうか?

 

<『HOLY LONELY LIGHT』 急げ 自分を信じて
 『HEAVY LONELY NIGHT』 闇の中から答えを>
改めて歌を聞いてみるといい歌だな。紅いMSだけでなくオレンジの方も歌っているようだ。

 

<『HOLY LONELY LIGHT』 燃やせ体の芯まで
 『HEAVY LONELY NIGHT』 二度と心は後ろを振り向くな>

 

オレンジからはほぼBGMしか流れてこない?
そうか、あっちはサボりがちなのか。次の為に覚えておこう。
次こそはあの紅いMSに声で負けないぞ勝ってみせるぞ、とお父様に固く誓いアークエンジェルへと引き揚げる。

 
 

フリーダムとカガリの乗っているであろうルージュをアークエンジェルが回収し、戦場から離脱を開始したようだ。
「いかん、我等のカガリ様がまたしても天使の皮を被った悪魔共に連れ去られるぞ!
 MS隊何をやっている、早く奴等を追え!」
「全機推進剤が切れるまで追い続けろ!カガリ様の為だ、奮戦せよ!」
「えぇい、タケミカヅチが飛べればあのような艦になどすぐ追いつけるというのに…忌々しい!」
終始攻め続けていたフリーダムがあっさりと退くとは何かあるな。
そう思って周囲を確認するとミネルバの向こうに多くの影が見える。
「いや待て、残念だけど時間切れだ。ザフトの本隊が来たらしい。ここは退くぞ」
「何を仰られる、ユウナ様!ここまで追い詰めておきながら奴等を逃がすというのですか!?」
「戦力差など、我等がカガリ様を想う強さでひっくり返せます!
 半数をザフトに当て、残りの半数で奴等を追えばカガリ様が我等の手に戻られるのですぞ、それを――」

 

「ノンノン、焦らない。奴等はボクらがまたザフトと戦えば必ず出てくるはずさ。
 ボクらの手にカガリを取り戻すのはそのときでも遅くは無いはずだろう?」
説得を試みるが聞く耳持ってくれないようだ。
「何を暢気な事を…そのような事を仰られるようでは困ります!
 貴方は一応とはいえ、このオーブにカガリ様を取り戻す為の軍の総指揮官なのですぞ!
 指揮官が気弱なことを仰るようではいけません!」
とトダカが叫ぶ。いつ目的がすり替わったんだ。
「そうです、我等の目的は悪魔共からカガリ様を取り戻すことです!
 その為ならば我等が命など惜しくはありません。それを指揮官が命を惜しむようでは――」
アマギもそれに追従する。…駄目だこりゃ。
彼らの脳内では完全にボクが吹き込んだ『フリーダムは悪、カガリはさらわれた姫君』と言うイメージで定着してしまったらしい。
報告だとトダカはカガリがさらわれた時には何故かアークエンジェルに敬礼をしていたらしいが、ここまで変わるものなのか。
しかしこれは不味い、このままでは臆病な指揮官としてこの二人に血祭りにあげられそうだ。
ボクは暴力は嫌いな文治派なんだよ?こんな脳筋に飛びかかられたらひとたまりも無いじゃないか!

 

何とかしないと――お、連合はもう退き始めてるじゃないか。
「連合を見なよ、もう退き始めている。
 そもそも連合の要請でここまで来たんだから、彼等が退く以上ボクらがこのまま戦う意味はないだろう?」
「もはや連合などどうだってよいのです!」
「そうです、カガリ様を再び我等の手へ!」
だ、駄目か。なら指揮官命令で……退いてくれるといいけどなあ。
「とにかく、ここは退くんだ!全軍後退!
 今は退くことがカガリを救う唯一の手立てだ。これは総司令としてだけじゃなく、同志としても言っているんだよ!」
うわぁ、すごい形相で睨まれてるよ……ボクは間違った事を言ってないのになんでこんなに視線が痛いんだ。
何故かいたたまれなくなって視線を外すとゆっくり肩に手を置かれた。
「同志!いい響きですな、ユウナ様!」
「同志のお願いじゃ仕方ないですな、うんうん。
 速やかにこの海域から離脱するぞ。脱出したパイロットの救出、急げよ!」
よし、何とか誤魔化せた。でもこいつ等みたいなのに同志って呼ばれるの嫌だなぁ。
次の戦までに何かうまい方法考えないとなぁ――

 
 

フリーダムとアスハがどっかに行くと連合とオーブも撤収するらしい。
フリーダムとほとんど戦えなかったなと悔しく思っているとバサラさんが撤退する艦に向かって叫んだ。
『待ちやがれ、テメエラ!まだ終わっちゃあいねえぞ!
 オイコラ、最後まで聴いていきやがれ!』
バサラさん、無茶苦茶言ってるなぁ。
『そうだそうだ、フリーダムもアークエンジェルも俺らの歌を聴いていきやがれ!』
ハイネもとめるどころかさらに煽るなよ。
つか、こういうのをとめる役のアスランはどこ行った、フリーダムが出てきてからほとんど見てないぞ?
――ん?海から何かが競り上がってくるな、ってセイバー!?
『ウオオオォォォーーー!キラァーーーーー!!カガリーーーーーーー!!』
アスランまで叫んでるよ……もう、どうにでもなれ。

 

呆れながらミネルバへ帰投していると、ふと疑問が浮かんだのでハイネに聞いてみる。
「なあ、ハイネ。機体にスピーカーがついてても、全周波で無線流してるんならあまり意味が無いんじゃないのか?」
『無線だけじゃ無線を切られたら終わりだろ、だから直接聴かせてんのさ。
 それでも聴こうとしない奴にはバルキリーのスピーカーポッドが火を噴くぜ!まぁ、アレは武器じゃないけどな』
あのマシンガンが武器じゃない?じゃあ一体何なんだ?
「もう一つ聞きたいんだけど、何でアスハの演説が歌に消されたんだ?
 あっちも全周波ならどっちも聞こえるんじゃないの?」
『そりゃお前、あいつらとは想いの重さが違うからさ。
 中途半端な正義心やら固っ苦しい理屈やらじゃ、俺とバサラの熱いハート&ソウルのシャウトに勝てる訳が無いぜ。
 ―――どうよ、俺いいこと言ってるだろ?』
確かにそうかもしれないが、その余計な一言で台無しだ。
「そうかもな。ハイネはともかく、バサラさんとハートの熱さで戦って勝てる様な人間は居ないか」
『酷っ!』

 

味方の艦隊がようやく戦場に到着した。
連合とオーブを殲滅する作戦は失敗したけど、防衛自体は成功したんだ。胸を張ってミネルバに帰ろう。
ミネルバの被害状況も心配だし。

 
 
 

機動戦士ガンダムSEED DESTINY feat.熱気バサラ
第十話 想いの重さ

 

 

次回予告

 

ハイネ「華麗に死亡フラグを回避したものの、ダータネルスでのライブは失敗に終わっちまった。
     奴らにこの腹いせをする為、俺はルナマリアと一緒にアークエンジェルと接触するアスランの尾行を開始する」
ルナ 「尾行なんて探偵モノっぽくて素敵ですよねー、こんなの滅多にできない経験ですよね?」
ハイネ「面白い案だ。でもな、コレが探偵モノの場合、ルナマリアは探偵役じゃなくてへっぽこ助手役だな。もしくは温泉でのサービスシーン要員ね。
     次回、機動戦士ガンダムSEED DESTINY feat.熱気バサラ 第11話 尾行に――」

 

バサラ「過激にファイヤー!」