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Macross-Seed_◆VF791dp5AE氏_第15話

Last-modified: 2008-06-08 (日) 19:56:01

宇宙へ上がろうとするシャトルへ、バルキリーが徐々に近付いてくる。
今までのバサラの行動を省みる限り害意は無い筈だが、何をやってくるかわからないので皆油断はしない。

まずはフリーダム、キラ。
入念にOSの再設定を行っている。
バルキリーの動きはフリーダム以上に素早いと考え、マルチロックシステムの再構成中である。
「駄目だ、こんな設定じゃ大味過ぎる……多重ロックしても、当たるかどうかも怪しいのに。
 点じゃなくて面で攻撃出来るように連射性能と――――」

次に砂漠の虎こと、アンドリュー・バルトフェルド。
彼はバルキリーの一挙一動を、視線だけで犯せそうなくらいにまじまじと眺めている。
その様子は、まさにライブの開演を待つ熱狂的なファンである。
(熱気バサラに、バルキリー……なんだってこんな時に、こんな場所で会うのかねえ。
 ボクはどうせ会うならライブ会場の方が嬉しいんだけどねえ。
 いや、むしろこれはこれで他では味わえない――――)

そして、本物のラクス・クライン。
モニター内のバルキリーを眺めつつ、彼女がバサラに伝えたい事を再確認中である。
(ファイヤーバルキリー………熱気バサラ個人が持つには、少々もったいないですわ。
 MSの持つ力とは交渉のカードの一つ、それをこんな形で使っているのは面白いとは思います。
 ―――ですが、その使い方はちょっともったいないですわ。
 この場を上手く使って、彼を機体ごとクライン派に取り込めればいいのですけど―――)

熱気バサラに対し、後手に回るとこちらの声が通じない。
(先手を打てば、なんとでもなりますわ)
「バルトフェルドさん、説得を試みます。熱気バサラへ回線を繋いでください」
「―――ん?あ、ああ、了解」
通信が可能になると同時に、バルキリーへ向けてオープン回線を開かせる。
「でも、話が通じる相手かな?」
キラが今までの経験から失敗するんじゃないか、というニュアンスで聞く。
「万が一、私が説得に失敗したときは、キラを頼りにさせてもらいます」
「わかったよ」

シャトルのモニターに、バルキリーのコックピット内部が映し出される。
見える限りだと、コックピット内部はMSのものというよりも、戦闘機のものに近いようだ。
比較的ゆったりとしたコックピット内には、奇妙なギミック付きのギターを持つバサラ。
ギターとバサラ、その取り合わせ自体はおかしくはない。
だが、場所がおかしい。どうして操縦中のコックピットに。
ラクスにはそれがどうしても納得がいかないのか、説得をはじめる前に聞くつもりのようだ。
「―――熱気バサラ、ですわね?
 不躾ですが、一つお聞きしても構いませんか?」
『んだよ?』
「MSを乗り回しながら、何故ギターを弾いているのですか?
 戦闘はないから、と油断しているからでしょうか?」
『コイツか?』
バサラがギターのネックに取り付けてあるギミックを動かす。
するとバルキリーが減速し、バトロイドへ変形した。
「………ひょっとして、そのギターは操縦桿なのですか?」
『そういうこった。 ――――で、お前らは何者だよ?
 この時間にここを通るシャトルに乗ってるのはラクスのはずだろ?
 格好こそ似ちゃあいるが、雰囲気とか明らかにおかしいぜ?』

そのバサラの問いに、予定通りと微笑を浮かべつつ、答える。
「私はラクス・クラインです。
 ですが私は、あなたと共にある偽りのラクスではなく、真実を歌うラクスです」
『つまり、テメエが本物さんって訳かい』
「その通りです」
値踏みするかのような目でラクスを見るバサラ。
見方を変えると胡散臭そうに見ているとも言えるが。

理由はどうあれ、こちらを見ているバサラへ向けて、ラクスがどちらかと言うと洗脳っぽい説得を始める。
「熱気バサラ。貴方が持つその力は、一体何の為の力なのか考えた事はありますか?」
まずは軽いジャブで、こちらのペースへと持ち込む。
『……はぁ?』
「貴方は自らの持つ力の大きさを、自覚していないのではないですか?」
『力、ねえ………』

続けて、相手を押さえ込む為に相手を褒めつつ、それでいてこちらの思考を押し付ける。
「力とは、人を正しい方向へ導く為のものです。
 貴方の持つ力は、用い方によっては人を、そして世界を導くことが出来るでしょう。
 ですが、今の貴方の力の用い方では、世界を更なる混乱へと巻き込むことになります。
 貴方と、貴方の持つ力は、デュランダル議長にただ利用されているだけではないですか?」
『…………』
バサラはラクスの話を聞きながら、目を閉じて何かを考えているようだ。
少なくともラクスの話を一応聞いてはいるようである。

更に説得っぽい洗脳を続けていく。
「デュランダル議長が目指そうとする世界は、本当に平和のある世界でしょうか?
 力を使って連合軍を討つ事は、本当に世界を平和に導いているのですか?
 貴方の持つ力は、本当に平和の為に使われているのですか?」
『………力、ね』
何ともいえない表情で頭をかくバサラ。
ラクスは、そのバサラの行動は議長への迷いが産まれたから起きた物だと判断し、更に話を続ける。
このまま行けば、バサラを自分側に取り込めるかもしれない、との期待を持って。
「貴方はまだ、その力を偽りの平和へ向かう為に使おうというのですか?
 貴方が力を貸している、この戦争は―――

『くっだらねぇぜ、そんなモン!』

 ―――はい?」

ファイヤーバルキリーのスピーカーから、爆音が辺りへと響く。
それに少し遅れて、シャトル内のスピーカーからも同じリズムが鳴り出す。
今まで聴いた事の無いリズムに、虎がすぐさま反応する。
「これは新曲……違う、まさか未発表曲か!?
 新曲が聴けるかも、と期待していたが、未発表曲とは……くうぅぅ、感激だ。
 このままシャトルごと墜ちても悔いはないぞ!」
「ちょ、縁起でもないこと言わないでくださいって!」
虎の隣に座っていたSPが慌ててつっこみを入れる。

(こ、この状況は非常に不味いですわ)
こちらの声が正しく伝わっていなかったのかと思い、もう一度通信を試みるラクス。
「バルトフェルドさん、さっきからうるさいですわよ、少々黙っててください!
 熱気バサラ、もう一度、もう一度聞いて下さい!
 貴方の持つ力は―――」

『力があるから歌えだとか、力があるから歌うなだとか、んなこたぁ知ったこっちゃねえ!』

再度の洗脳を試みても、あっさりと切り捨てられる。が、猶もしつこく食い下がる。
「そうではありません、私はただ貴方を―――」

『例えテメエラの知らねえ力があろうと無かろうと、俺は歌いたい時に歌うだけだ!
 人の歌に文句があるんなら、テメエも歌で語りやがれ!』

「私達の知らない力?それは一体どういう意味ですか?」
ラクスは洗脳の中で、バサラの乗るバルキリーを力と表現した。
しかし、バサラにとっての力とは、バルキリーとは違うものであるということだ。
例えば、ラクスやキラが持つ力『SEED』のような特殊なものを持っているということかもしれない。
「熱気バサラ、貴方は一体……」

バサラの持つ力について、改めて聞こうとするが、それはバサラの歌に遮られる。

<気づいたら 走り出してたのさ
 自由 なんて知らない>

バサラの歌による通信障害を振り払ってバルキリーへと回線を繋ぎ、話をしようとするが返答は無い。
こちらの声が聞こえていないのか、バサラの歌が一方的に聞こえるだけだ。
ちなみに虎はバサラの歌に聴き入っていて操縦桿すら握っていない。
曲に合わせて手拍子を入れたりしている。仕事しろ。
現在操縦しているのは、一緒に乗り込んでいたSP(クライン派)だ。
シャトルの操縦なんぞ、できるはずもないので適当に操縦桿を握っているだけだったりする。

そうやって仕事をしない虎に蹴りを入れ、こちらの言葉をバサラに伝えようとラクスが四苦八苦していると、キラから通信が入る。
「ラクス、この状況じゃもう説得は無理だよ。
 熱気バサラとファイヤーバルキリーを、撃墜(おと)すしかない」

<だけどこの惑星 まるで廃墟のようさ
 誰も口にしない“Love & Peace”>

「仕方ありません……キラ、後はお願いします」
「了解。キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!」

<それでもオレは探してる
 吹き抜ける 風を追って>

シャトルをかばうようにして、フリーダムをバルキリーの前に立たせる。
「退いて下さい!」

<失くしたらまた取り戻すだけさ
 いつだって 夢なんて 単純なもんだぜ>

フリーダムの全砲門をバルキリーへと向け、一斉射する。が、軽々と避けされる。
(外した!?ロック関連の設定はしっかり見直したはずなのに!?
 くっ、ならこれでッ――!)
プラズマ砲でバルキリーの動きを牽制し、レールガンとビームライフルを時間差で数発撃つ。
だがしかし、これも避けられる。
(信じられない、これも避けるの!?
 それなら、これでどうだッ!)

<やりたいことをやり尽くすだけさ
 その声が そう駆り立てるから>

右腕でビームサーベルを抜き放ち、バルキリーへと大きく斬りかかる。
フリーダムの普段の無駄の無い攻撃とは違う大振りな斬撃を、最小の動きで避けるバルキリー。
が、避けられてもなおフリーダムはビームサーベルを振り抜かせ、その勢いで機体を上下反転させて、プラズマ砲とレールガンを放つ。
必勝の一撃としか思えないタイミングでの攻撃。
しかし、それをバルキリーは曲芸の如きローリングで避ける。
(これも、これでも当たらないの!?
 くっ………で、でもあんなサーカスみたいな動きがいつまでも出来るはずがない。
 あんな無茶な動きを連続して使い続けるなんて、機械でも無理に決まってる!
 例え出来たとしても、そんなことを続けていればすぐにバッテリー切れだ!)

<“NEVER SAY DIE”>

(フリーダムは核で動いているからバッテリーの心配は無い。
 でも、バルキリーは違うはずだ。アレだけの激しい動きを繰り返せば、いつかはバッテリーが切れるはず。
 バッテリーが切れかけて、動きが鈍る時。その時が―――勝機だ!)


フリーダムの持つ、他のMSと比べて圧倒的なまでの火力とスピード。
それをこの二分余りの間、フルに発揮しても、バルキリーを無力化できない。

自分の操縦技術に絶対の自信を持つキラからすれば、悪夢のような二分だった。
しかし、同時に覚めない悪夢は無い、何時かはバルキリーへ一撃を与えられるはず。
そう願って、引き金を引き続けた。

もう何度引き金を引いてビームを放ち、スロットルを倒し、バルキリーへ斬りかかったのか。
もうずいぶん前に数えるのを止めた時に。
『NEVER SAY DIE』の最後のサビが始まる頃に、唐突にこの悪夢は覚めた。

<失くしたらまた取り戻すだけさ
 いつだって 夢なんて 単純なもんだぜ>

たまたまキラが当てたのか、たまたまバサラが避け損なったのか、それはわからないし、確認する意味も無い。
だが、唐突にバルキリーの動きが鈍った。
(バッテリーが尽きかけて、一瞬操縦がきかなくなったのか!?
 いける!これで終わりだ!)
動きが鈍くなったバルキリーへ向けてプラズマ砲の照準をつけ、勝利を確信するキラ。
しかし。プラズマ砲がバルキリーへ向けて撃ち出されようかというその時に、急にバルキリーが照準から外れた。
「えっ!?」
慌てて照準をずらそうとするが、止まらずに放たれる。
照準どおりにバルキリーとは見当違いの方向へ伸びていくプラズマビーム砲の光を呆然と見送る。

<やりたいことをやり尽くすだけさ
 その声が そう駆り立てるから>

それだけではない。
徐々にバルキリーとその前方を大きく行くシャトルから離されている。
「フリーダムでも動けない様な高度まで、いつの間にか上がってたのか!?
 そんな、ここまで来て!?」
フリーダムからの攻撃が無くなったことで、バルキリーがシャトルへ向けて飛んで行く。
少しづつ小さくなっていくシャトルへ向けて、キラが呟く。
「ラクス、ごめん……」

<争いさえも越えてゆけるはず
 何よりもこのBEAT そう信じてるから>

シャトルから徐々に離されていくフリーダム。その姿にラクスはうなだれ、重い息を吐く。
「そんな、フリーダムが……キラが、負けるなんて………」
今にも倒れそうなほどに顔色が悪くなるラクス。
こんな状況で彼女に倒れられてはたまらない、と自分のわかる限りの状態をSPが説明する。
「ラ、ラクス様、お気を確かに!
 負けてはいません、キラ様は、負けたわけではありません。
 単純にフリーダムでは到達できない高度までシャトルが上がっているから離されているだけです!」

<やりたいことをやり尽くすだけさ
 その声が そう駆り立てるから>

状況を説明するSPの言葉に、自分を取り戻すラクス。
「そ、そうですわよねー、キラが、あのキラが、負けるはずがありませんわ。
 単純にシャトルの高度が上がりすぎたせいで、ついて来れていないだけ……ですわよね?」
「その通りですとも、ラクス様。バルキリーがいくら高性能と言えども、やはりMS。
 離脱用のブースターパックも装備せずにシャトルに追いつけるはずがありません」
そう言って状況を確認するようにモニターを見るラクスとSP。
フリーダムが追いつけないのだから、バルキリーもすぐに離されるはず。そう考えた。
だがしかし―――

<“NEVER SAY DIE”>

―――バルキリーはバトロイドに変形し、シャトルのすぐ真横を飛んでいる。

後に、この時のことをSPはこう述懐している。
「MSは単機で大気圏離脱は出来ない、そんなふうに考えていた時期が俺にもありました」と。

それはともかく、この状況に混乱しながらも、一人だけ正気なSPは何とか事態の収拾を試みる。
手始めに錯乱しかけているラクスを正気に戻そうと頑張った。
「ラ、ラクス様。この際MSが単機で大気圏離脱できかけていることは問題ではありません。
 今重要なのは、熱気バサラが歌い終わったと言うことです!」
「アハ、アハハハハハ………乳酸菌よ。
 そうよぉ、乳酸菌、乳酸菌が足りてないんだわぁ、だから幻覚が………はい?それが何か?」
「今、熱気バサラは歌っていないのです!
 ですから、今ならこちらの声がまた通じるはずです!」
「あぁ、そういうことですの……わかりました。では―――」

SPの説得に何とか自信を取り戻すラクス。
姿勢を正し、再びバサラに騙りかけようとする。
「コホンッ………熱気バサラ、貴方は―――」

しかし、そこに未だ暴走中の虎が割り込む。
「いやっほーう、流石は熱気バサラだ、おかげでボクのハートは熱く滾って来たぞぉ!
 こっちの声が届いているんなら、次は[POWER TO THE DREAM]を歌ってくれーー!!」
「ちょ、ちょっとバルトフェルドさん!?何余計なことを言って――――」
『ならリクエストに応えて、行くぜぇ、[POWER TO THE DREAM]!』
「や、そんな律儀にリクエストに応えなくていいですから、私の話を――――」
ラクスの言葉が歌声にかき消される。

<POWER TO THE DREAM>

「ぃいやっほおぉう!新曲が生歌で聴けるぞぉー!」
虎の歓喜の叫びが、シャトル内に響く。

<POWER TO THE DREAM POWER TO THE MUSIC
 新しい夢が欲しいのさ>

「ああああああ、また歌いだされちゃったよ……」
虎の叫びとバサラの歌にかき消されながら、SPの悲痛な声が漏れる。
絶望的な状況に、最後まで折れなかった彼の心も、ついにへし折れてしまったらしい。

<POWER TO THE UNIVERSE POWER TO THE MYSTERY
 俺たちのパワーを伝えたい>

「………もう、勝手になさってください」
がっくりと膝を突き、誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟くラクス。
そのポーズは、かつて世界を席巻したというジャパニーズビジネスマンの最後の切り札「DOGEZAスタイル」だった。

<やっと掴んだ希望が 指のすきまから逃げてく
 ブラックホールの彼方まで ずっとおまえを追いかけてく>

その後、大気圏を完全に離脱し、クライン派の宇宙用艦艇にラクスたちが収容されるまで、バサラのライブは続いたのだった。

熱気バサラとファイヤーバルキリーは、近づいてきたクライン派のMSの攻撃を軽々と避け、歌いながらその場を去っていった。

ラクスとSPは「しばらく熱気バサラの歌は聴きたくない」とだけ言い残すと、艦内の宛がわれた部屋に篭った。
二人とも、ターミナルの秘密基地へ着くまで、部屋から一歩も出なかったようだ。

そして虎はターミナル内のFire Bomberファン達に、新曲を生で聴いたことを自慢しまくった。
そのせいで余計な怨みを買い、Fire Bomberファン同士の寄り合いにしばらく呼ばれなかったと言う。

機動戦士ガンダムSEED DESTINY feat.熱気バサラ
第15話 届かない声


 次 回 予 告

ハイネ「シャトルを強奪したラクス・クライン達とフリーダムに対し、歌を聴かせ続けたバサラ。
     しかし、彼の歌声は一人を除き、まるで効果が無かった」
虎  「いやぁー、実に素晴らしいライブだったねぇ。あの歌のすごさが彼女達にはどうして……え、何?
    ラクスが今回の作戦の責任を取って、ボクにザフトの射爆場の潜入捜査に行けだって?」
ハイネ「一方、議長はラクスによるシャトル強奪事件を重く見て、プロジェクトの進行と最新MSの開発を急がせる。
    しかしそれを嗅ぎつけたクライン派が現れて―――?
     次回、機動戦士ガンダムSEED DESTINY feat.熱気バサラ 第16話 試動 に――」

バサラ「過激にファイヤー!」