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Macross-Seed_◆VF791dp5AE氏_第17話

Last-modified: 2008-10-14 (火) 23:35:32

ポートタルキウス 戦艦ミネルバ、医務室にて―――

昼食を終えて医務室に戻ってきたハイネが、歌に集中するステラの方を見つつ、建設的な意見を出す。
「やっぱさ、マンネリってのは打破すべきだと思うんだよ、俺は」
議題は『ステラの歌っている曲をいい加減替えようぜ』と言うことらしい。
かれこれ二時間近く、『HEART & SOUL』と『DYNAMITE EXPLOSION』をステラは歌い続けているのだった。
ハイネが昼飯で中座する前にステラが歌っていたのもHEART & SOUL、戻ってきた時歌っていたのはDYNAMITE EXPLOSION。
シンに尋ねると、ハイネが中座していた間もHEART & SOULとDYNAMITE EXPLOSION以外歌っていないと言う。
返答する時ハイネには、若干シンの表情がやつれ気味に見えたらしい。
それをハイネはマンネリによるものだと判断し、前述の議題を提出したのだった。

「みつめあってー つたえようー
 あったたかな はーらんそー、はーらんそー、はーらんそーおー」

ステラの歌声をBGMに意見を出し合う二人。
「……って言われても、当の本人が正確な歌詞はこれ以外知らないってんじゃあなぁ。
 俺には替えようが無いと思うけどなぁ」
建設的に意見に思えたが、シンは反対らしい。
反対理由はもっともなのだが、それで納得するハイネではない。
「なんで、どうしてさ?マンネリってのはよくないよ。主に俺の心とかに。
 これが長く続くとステラの歌声にも段々飽きてきて、最終的には倦怠期に入っちまうぜ?」
子供の様な理屈をこねて粘り続けるハイネ。どうあっても曲を替えたいらしい。

「そうなる前に、な?しっかり替えようぜ?」
笑顔で迫ってくるハイネの顔を押し退け、シンが質問する。
「じゃ、参考に聞くけどさ。歌詞を覚えていてしっかり歌える曲と、歌詞をうろ覚えでつたなく歌う曲。
 ハイネにはどっちの方が効果がありそうだと思う?」
「そんなもん、しっかり歌える曲に決まってんじゃねえの」
「だろ」
「だな」
ハッハッハ、と笑いあう二人。

「いやまぁ、理由は納得できたよ、うん。でもよ、やっぱし曲は替えるべきだって」
納得したと言いつつ、自説を曲げないハイネ。
「ディオキアでバサラと歌った曲なら、いくつか知っているんじゃないか?」
「……といっても、ほとんどバサラさんの車上ライブに合いの手を入れるだけだったしなぁ。
 歌ったのはHEART & SOULだけだったし………あ、そういえば」
「どうした?」
何か思い出したらしいシンに、勢い込んでハイネが聞く。
「ディオキアの岬で、バサラさんが『MY SOUL FOR YOU』を歌っていたんですよ。
 その時、一緒に歌っていたから、ある程度なら歌えるのかも……」
「よし、MY SOUL FOR YOUだな」
早速プレイヤーを操作し始めるハイネ。シンはその間にステラに説明をする。

「いきつくさきになっにがー あろうとかまいやしないー
 そうっさ いまっがー おれっのぉたぁびだちのしゅんっかんっなの……あれ?」
歌っていた曲の伴奏が突然消え、どうしたものかわからずうろたえているステラの前に進む。
「シン、たいへん。バサラのうたがきえちゃった」
「ごめん、単純にプレイヤーを弄ってるから今は消えているだけだよ。
 すぐに別の曲が流れるから、落ち着いて」
シンが状況を説明していると、プレイヤーからMY SOUL FOR YOUのイントロが流れた。
「あ、このうた……えと、おまえがー かぜになるならー?」
「そうそう、正確にはMY SOUL FOR YOUって歌だよ。
 今度はこの曲を歌おうよ、ステラ」
「うん、わかった」
丁度イントロが終わり曲が始まった。ステラが曲に合わせて歌いだす。

「おまえがー かぜになるならー
 はてしないー そらになりたぁいー」

ステラの歌を遮らない様に、少し声を落として喋る。
「ふぅ、これでマンネリも解消されるな」
「ていうか、ステラをいつまで歌わせておくんです?
 記憶も取り戻したし、もう歌わせておく必要は無いんじゃ?」
「言っておくが、歌わせているのは病状を抑えるためだからな。
 そりゃ彼女に余計なことを考えさせない為もあるが、そっちはついでだよ。
 歌に潜在的に含まれているエネルギーが、代謝機能の促進させて正常な身体の機能を回復させるらしい」
ハイネが適当な医学的な見解を並べたてているが、聞いていてどうにも胡散臭い。
「本当に効果あるのか?」
「馬鹿、ドクター千葉のサウンドエナジー理論ってのは、全銀河に認められているらしいぜ?
 こっちじゃまだ理論もほとんど受け入れられていないが、多分大丈夫だって。
 その証拠にステラの記憶は何とかなっただろ?」
「そりゃそうですけどね」
歌がきっかけで偶々思い出しただけじゃないのか、とも思うがどうなのだろう。
そもそもDr.千葉なんて聞いた事ない名前だし、全銀河という言い方が怪しさ満点だ。
探るような目でハイネを見ると、とぼけた表情で背を向ける。
本当に大丈夫か不安になってくる。

「バサラがいればまた違うんだろうけどな。
 早く戻ってこねえかなぁ、アイツ」
誤魔化すようにジブラルタルでレコーディング中のバサラの話題を振ってくる。
「たしかラクス・クラインのプラント帰国が今日だから、そろそろ戻ってくるはずだよな?」
「予定なら日付が変わるまでには戻ってくるはずだが……アイツのことだ。
 絶対なんかやらかして、戻って来るのが遅くなるぜ」
ハイネはそう言うと、溜め息を吐いて椅子に深く座り直す。
「ってかハイネ、仕事はどうしたんだよ?」
シンは一応艦長命令と言う形で医務室詰めになっているが、ハイネはそのままのはずだ。
今日のシフトなら昼食の後は自機の調整をしているはずなのに、何故か動こうとしない。
「あ、俺のグフ?大丈夫だって、俺フェイスだよ?
 こういう時にこそ、立場を利用しなきゃ勿体無いじゃん。
 増設したスピーカーの調整ついでに、機体もバルキリーのメンテナンスクルーにやって貰ってるさ」
それはただの職権乱用と言う。

ツッコミを入れようと口を開く前に、艦内放送が入る。
『コンデョションイエロー発令、コンディションイエロー発令。
 各員は作業を中断し、準戦闘体制を取られたし。繰り返す、作業を中断し準戦闘体制を取られたし』
「コンディションイエロー?こんな場所でか?」
艦内の空気が変わり、急に慌しくなる。
ステラも雰囲気を察したのか、歌うのをやめて神妙な顔をしている。

ハイネがブリッジに通信を入れ、確認を取る。
「こちら医務室、ハイネ・ヴェステンフルスだ。ブリッジ、一体何が起きた?」
『こちらブリッジ、メイリン・ホークです。
 それが、ディオキア基地との連絡が取れなくなって……
 ポートタルキウス側の方にも確認してもらいましたが、あっちもディオキアとの連絡が取れなくなってます』
「連合の攻撃か?」
『現時点では不明ですが、可能性は低くないとの事です。
 これより事実確認の為、ミネルバはディオキア基地へ向けて出航します。
 ハイネ隊長とシンも、コックピットもしくはブリーフィングルームにて待機していてください』
「了解――――シン、通信は聞こえてたな?連合の奇襲なら、飛べるMSだけ先行させる場合もある。
 つーワケで、お前もインパルスで待機だ、急げよ」
ハイネは通信を切ると、医務室を飛び出していく。
普段はあんな調子だが、非戦闘時と戦闘時の気持ちの切り替えの早さはさすがフェイスと言ったところか。

「ごめん、ステラ。俺、行かなくちゃ」
シンも医務室から外へ向かいながらステラに謝るが、ステラの反応が無い。
振り返りステラを見ると、彼女はただじっと医務室の天井を見つめている。
「ステラ?」
調子でも悪いのかと、一歩ステラの方へ踏み出した時。ステラが呟いた。
「バサラがうたってる」
「え、今なんて?」
ステラの素っ頓狂な言葉に、思わず聞き返す。
「あのね、うたがきこえるの。バサラのうたが、そらから」
「バサラさんの歌が空から?」

ステラの言葉に天井を見上げ耳を澄ましてみるが、戦時体制に入った艦内の喧騒しか聞こえない。
かと言って、ステラが嘘を言うとも思えない。
「……?シン、バサラのうた、きこえないの?」
「うーん、俺には聴こえないよ」
シンがそう返すと、ステラは首を傾げた。やはり彼女には聴こえるらしい。
「それよりステラ、俺もう行かなきゃいけないんだ。
 できるだけ早く戻ってくるつもりだから、俺が戻ってくるまで大人しくしておくんだよ?」
「うん、平気。バサラのうた、きこえるもん」
ステラの返事を聞くと、シンは医務室を飛び出していった。

シンが出て行ってしばらくすると、ステラは再び上を向いて耳を澄ます。
そのまま目を閉じ、彼女には聴こえるメロディに合わせて歌い出す。
「ぱわーとぅーざどりーむ ぱわーとぅーざみゅーじっく
 あたーらしいゆめーがほしいのさー」



ミネルバがディオキアに着くと、そこにはボロボロになった基地があった。

基地司令官から話を聞くと、テロリストの襲撃を受けたらしい。
ラクス・クラインの偽者を使って基地側の油断を誘い、まんまとシャトルを強奪された。
慌てて追撃に出たMS隊は、全てテロリストのMSに返り討ちにされた。
こちらを嘲笑うかのようにバビの手足や主翼のハードポイントを破壊し、まともな姿勢制御も取れないようにして撃墜された。
その上で基地施設の一部を破壊し、シャトルと共に宇宙へ上がっていったらしい。
更に詳しく話を聞くと、テロリストが使用していたMSは、ダータネルスでも姿を見せたあのフリーダムだと言う。

ともかく黒海周辺のザフト基地の中で一番重要なディオキア基地がこの有様では心許無い。
ミネルバは基地の沖合いで連合の襲撃に備えることになった。
ルナマリアとレイのザクは飛べないので基地の瓦礫を取り除く作業に回し、他三名は艦内で待機にすることに。

「またあのフリーダムが……クソッ!」
ハイネとアスランから事の顛末を聞いたシンが怒りを露わにする。
ハイネもシンと同じく、フリーダムに対して怒っているらしい。
「戦闘に介入してきたと思ったら次は基地襲撃かよ、信じられねえ無法者だな。
 その前はオーブで結婚式に乱入して花嫁拉致してるし、世界を敵に回して何がやりたいんだ?」
ハイネの言葉にアスランが何か言い返そうとするが、結局何も言わずに押し黙る。
そんなアスランの煮え切らない様子を見ていたハイネがアスランに意見した。
「アスラン。お前さ、まだ割り切れていないらしいな。
 今回の事件でわかったはずだ、アイツはどう考えても俺達の敵だろうが。
 敵であるフリーダムを討つのに、迷う必要がどこにある?」
「あれは……きっと理由があってやったことなんだ………でなきゃアイツが、こんなことするはずが無い」

あくまでもフリーダムをかばうアスランに、我慢できずにシンが叫ぶ。
「ふざけるのもいい加減にしろ!
 じゃあ、理由があればディオキア基地の連中も、ミネルバの仲間も殺していいのかよ!?」
「そうじゃない!俺はただ、アイツの想いが――――」
シンが憤怒の形相でアスランの胸倉を掴む。
「フリーダムの想いだと………馬鹿にしてんのか!
 戦争はヒーローごっこじゃない、と言ったのはアスラン、アンタだろ!
 ドンパチやってる場所に勝手にしゃしゃり出て来て、頼んでもいないのに戦闘をやめさせようとして!
 挙句、それが聞き入れられなければ力に物を言わせて自分の意見を押し通す!ハッ、随分とご立派な考え方だな!!
 どれだけ立派な考え方だか知らないが、フリーダムのやっている事は、アンタが言っていたヒーローごっこそのものじゃないか!!
 同じ理由で部下は殴れても、友人は殴れないのかよ!?」

シンの言葉にアスランもキレる。
「お前にアイツの何がわかる!?
 アイツは本当ならこんなことやりたくないはずなんだ!」
「やりたくないならやらなきゃいいだろうが!」
「やらなきゃいけないと思ったから行動しているんだ!
 こんな間違った戦争は止めさせようと、アイツはアイツなりに動いて――――」
「動いた結果がこれだよ!!」

流石に静止できなくなったのか、ハイネが静止する。
「その辺で止めにしとけよ、お前ら。それ以上やると営巣行きにされっぞ。
 お前らは仲良くゆっくり頭を冷やしておいて、俺にだけ仕事させようという魂胆か?」
ハイネの言葉に二人が距離を取る。
互いにまだ目で牽制しあっているが、一応暴力沙汰に発展させるつもりは無いらしい。

しばらく睨み合った後、不服そうな表情でシンが呟く。
「いや、別にそんなつもりじゃ……」
「なら頭冷やしに機体チェックにでも行ってきな。
 整備班長のおやっさん達だけに仕事させずにお前らも働け、働け。
 俺は何かあったときの為にここでサボ……待機しておくから」
冗談とも本気とも取れないセリフに、アスランが溜め息を吐く。
「仕事をするならハイネも、だろ」
「ちっ」
「舌打ちするな!」



ウィザードを外したザクが、格納庫が崩れた瓦礫の山を撤去していく。
覗き込んだ格納庫内部の状況は酷いもので、瓦礫によって中破したMSも多いようだ。

「テロリストの仕業らしいけど、何でこんなに被害を大きくしたのかしら?
 シャトル一機を奪うだけなら、もっとスマートにやって欲しかったわよねえ」
衝撃で歪んだ扉を撤去しつつ、ルナマリアが愚痴る。
「奪った連中からすれば、ザフトの損害はシャトル一機と行動不能にされたバビだけのつもりなのだろう」
珍しくレイが愚痴にまともに応える。
いつものレイなら一言返せば良い方なのだが、非常に珍しいことに多弁だ。

「基地の連中から詳しく聞いたが、基地施設でフリーダムが直接破壊したのはレーダーや通信関係のものだけらしい。
 それも可能な限りアンテナやレドームのみの破壊に留めたという」
言われて近くの通信施設へ目を向ける。確かに施設自体の損傷は軽微だった。
「どういうこと?」
「アンテナやレドームだけなら、破壊されても修理すれば機能は早期復旧する。
 恐らく一時的に索敵と通信を中断させたかっただけなのだろう」
理由がわからず、作業を中断して考え込むルナマリア。
「あぁ、宇宙に出た後すぐ捕まったら意味ないから?」
「珍しく頭が冴えているな、ルナマリア。その通りだ。
 予定航路を通らないシャトルに気付いた警備隊がシャトルへ近づいた頃には、もう乗り捨ててしまった後だろう。
 フリーダムの方も、索敵が出来ないならば逃走しやすくなるだろうしな」

話を続ける間も作業の手を休めないレイに対し、ルナマリアは考えた辺りから手が止まっている。
基地側から怒られて、ようやく作業を再開した。
「じゃあ、基地の被害が大きいのはMSが墜落したせい?」
レイのザクと一緒に歪んだ扉を取り除きながら、先程の話を続ける。
「結果だけならそうだろうが、根本的な原因はフリーダムの襲撃だ。
 ただ、バビのパイロットの技量が高ければ、少しは被害は抑えられたかもしれん」
撤去した扉を邪魔にならない位置までずらしつつ、会話を続ける。


話題は偽者のラクスと本物のラクスの話に移る。

「シャトルを奪ったのはラクス様の偽者だったらしいけど、本物のラクス様はどうしてんだろ?」
「本物なら基地指令の依頼を受けて、港の方で慰問ライブの準備中だ。
 ただし、FireBomberとしてではなく、ラクス・クラインとしてライブを行うそうだ」
「それって、バサラさんがいないから?」
「地球ツアー行程の三分の二に、熱気バサラが居なかった事を考えると今更過ぎるぞ」

ディオキアに始まり、マハムール、カーペンタリア、ラガシュ、ベルリン、ジブラルタル。
六ヶ所でライブを行っていながら、熱気バサラが歌ったのは二ヶ所だけ。
それ以外はバサラは立て看板で参加という酷い有様なのに、不満が出ないのはある意味すごい。

港の方へ目を向けると、ライブ会場の設営を行っていた。
ステージの音響チェックを手伝っているのか、ラクス・クラインの姿が見える。
プラントだけでなく、今や世界各地で大人気のアイドルが、自身のライブの設営を手伝っている。
なんともシュールな光景だ。二年前の彼女ではありえないだろう。
特にケーブルに足を引っ掛けて転んだりしている所なんかは。

その様子を見て、ルナマリアはアスランが逢っていたフリーダムのパイロットが言っていたことを思い出す。

『じゃあ、あの偽者のラクスは?』

偽者という言葉をアスランもハイネも否定しなかった。と言うことは偽物なのだろう。
だが、どうやっても偽物には見えないので、彼女なりに確認する為に本物改め偽物のラクスの全身を観察する。
姿形は整形等で変えられるだろう。髪も染めればいい。
ピンクに染まるのか、と言う疑問は横に置いておくとして。
胸は二年前と比べれば全然違うが、二年の間に育ったと考えれば割とばれないだろう。

歌声――――これが一番問題のはずだが、瓜二つだ。
確かに息継ぎのタイミングだとか、ビブラートの幅だとか専門的な観点から言えば違うかもしれない。
だが、その辺りは二年前とはジャンルの違う歌を歌う事でカバーしているのだろう。
(これならまぁ、よっぽど変なことしなきゃばれないわよねえ。
 胸のことはおっぱいマイスターでもない限り、人と話すような話題にはならないし。
 二年でどうやってあんなに成長するかは、人によっては話題になりそうだけどさ)

ルナマリアの脳裏に浮かんだのは妹メイリンのスタイル。
貧乳で寸胴の、幼児体型から未だに抜け出しきれない妹からすれば、ぜひとも知りたいだろう。

などと本人に聞かれれば怒られそうな事を考えていると、ミネルバからコールが入る。
『ルナマリア機、レイ機、こちらが手伝う作業はこれで終了です。ミネルバまで戻ってください』
噂をすればなんとやら、妹本人がご登場か。
「ウォーリア了解、直ちに帰還します」
「ファントム了解」
周囲の兵を踏まないよう注意しながら港の方へ向かっていると、メイリンから再度通信が入る。
『――――それはそうとお姉ちゃん、さっき何か変なこと考えてなかった?』
「うぇ!?べ、別にラクス様の胸の事なんか考えてなかったわよ!?」
『お姉ちゃん……そういう事考えてる暇あったら、もう少し真面目に仕事しなよ』
ルナマリアの目が泳いでいたから、と言う理由だけでメイリンにカマをかけられたらしい。
姉妹の絆、恐るべし。いや、この場合絆は関係ないか。
「ちゃ、ちゃんと作業は真面目にやってたのよ?」
モニターから目をそらしつつ、姉が報告する。
『つい先程、真面目に作業しろと怒られたばかりだがな』
「ちょっとレイ、何余計なことを言ってんの!?」
レイの告げ口で、やはり上の空で仕事をしていたことがバレた。
『お姉ちゃん、仕事は真面目にしなよ』
溜め息を吐きつつ、妹が姉を諭す。攻めが妹で受けが姉だ。
――――こう表現すると途端にいやらしく感じるのは何故だろう?

『考え事をするなとは言わないけど、もうちょっと考える事はまともにしなよお姉ちゃん。
 よりにもよってラクス様の胸の事なんて……』
ラクス様に失礼にも程がある、と続けようとすると姉が口を挟む。
「じゃあメイリンは気にならないの?同じ女として」
『うっ……それはその、なんというか………』
やはり痛い所を突かれたらしい。
そりゃ、あれだけ大きければ気にならないはずが無いだろう。
「アンタだって知りたいでしょ?知りたくないはずないわ!
 たった2年であそこまで変われるなら、あんたも2年後にはナイスバディーになれるかもしれないわけだし?」
『うぅ……』
「でも、まぁ多分無理でしょうけどね、ありゃ仕方ないわ。
 何と言ってもか――――」
影武者だもの、と付け加えかけて慌てて口を閉じる。
『か?』
不自然な切られ方をしたせいか、そこにつっこんでくる妹。

口の軽い妹に影武者と知られる訳には行かない。適当に口からでまかせを言う。
「かかか、歌唱力が違うもの!」
咄嗟に出た言葉は、一見関係ありそうで実際は全く関係無さそうな言葉だった。
これは流石に嘘だとバレたか、と思ってモニターを見ると、何やら考え込むメイリンの姿があった。
「あのー?もしもし、メイリンさん?」
反応が無い。
口からは『いや待てよ、そういえば…』とか『お姉ちゃんも上手いし…』などという言葉が漏れてくる。

しばらくそうしていたかと思うと、急に顔を上げた。
『ね、ね、お姉ちゃん。次のオフ、一緒にカラオケ行かない?』
その場しのぎの適当な嘘を信じてしまったらしい。
(単純な妹で助かったわ……)



<真夜中に浮かぶ七色の
 秘密はかくれた MEMORY>

照明と音響機具を並べただけの、簡素なステージから放たれるラクスの歌声が、夕暮れのディオキアに響く。
現在歌っている『SWEET FANTASY』も最後のサビに入り、観客の熱気もラストに向けてどんどん高まっていく。

<青い伝説の羽を追いかけて 夜が明けるまでに>
<FLY FLY FLY>

特にノリのいい観客がバックコーラスにあわせて歌う。
その声にミーアは大きく笑顔を溢しながら、ラストに向けて歌う。

<自由な風のように君と かなでる宇宙の MELODY>


ゆっくりと伴奏がやむと、かわりに大歓声が巻き起こる。
その中心に立つラクスは汗を滴らせ、肩で大きく息をしながらも嬉しそうに笑っていた。
呼吸が整ってくると、観客へ向けて手を振りながら声を掛ける。

『みなさ~ん、楽しんでいただけてますか~?』

その問い掛けに返ってきたのは、先程以上の大歓声だった。
しばらくして歓声がやむと、言葉を続ける。

『今回の事件は、本当に残念なことでした。
 このディオキア基地は地球でのファーストライブを行った場所という事で、私にとっても、本当に思い出深い場所です。
 ファーストライブには参加できた方が、今回のライブには参加できない。これは本当に悲しいことだと思います』

一旦、言葉を切る。

『ですが、私たちはこの悲しみを乗り越えて、戦わなくてはいけません。
 友人や隣人の死が忘れがたい痛みや悲しみでも、私たちは涙を拭って、終わりへ向かって進まなくてはいけません。
 このライブが皆さんにとって、痛みと悲しみを乗り越えられる力になってくれることを願って―――
 ――――聴いて下さい、<MY SOUL FOR YOU Acoustic Version>』

アコースティックギターが奏でる、少し寂しげなイントロが始まる。
本来の『MY SOUL FOR YOU』が持つ印象とは随分と違う様に感じる。
アレンジ前を昼下がりの空と表現すれば、アレンジ後は黄昏時の空といった表現だろうか。
短めのイントロが終わり、ミーアが歌う。

<おまえが風になるなら 果てしない空になりたい>

いつもの彼女の歌声が持つ華やかさは姿を潜め、切なく寂しげなものとなっている。

<激しい雨音に立ちすくむ時は ギターをかき鳴らし
 心を静めよう>

メロディと歌声が響きあい、さらに寂寥感がかき立てられる。
失ってしまったものに対する想いがあふれ出す。

<COME ON PEOPLE 感じて欲しい
 今すぐ わからなくていいから
 COME ON PEOPLE 命の限り
 おまえを守り続ける MY SOUL FOR YOU>

サビが終わり、短い間奏をはさみ二番に入る。

<おまえが道に迷ったら 微笑みで闇を照らそう>

歌い手も聴き手も、いつもの歌とは違う感情を抱いて。

<おまえの悲しみが癒されるなら 声が枯れるまで
 歌い続けよう>

歌は続く。
失った悲しみを力に変えて前へ進むために。

<COME ON PEOPLE 信じて欲しい
 いつまでも 代わらない俺を
 COME ON PEOPLE 太陽のように
 おまえを輝かせる MY SOUL FOR YOU>


<MY SOUL FOR YOU>を歌い終わると、会場からは惜しみない拍手が送られた。
拍手の嵐の中、ミーアが喋りだす。

『皆さん、ありがとうございました。これで、私ラクス・クラインの慰問ライブを終えたいと思います。
 勇敢なるザフトの皆さん、これからも頑張ってくださーい』
そう言うと、会場に手を振りながら袖に退く。
しかし、ミーアがステージから姿を消しても、拍手は鳴り止まない。
次第にアンコールを求める声が大きくなっていく。

拍手と共にラクスを呼び続ける声が、三十秒も続いたころだろうか。
再びステージに姿を現したミーアに、大歓声と拍手が雨あられと降り注ぐ。
袖に居るスタッフに何か確認を取った後、マイクを握り、拳を突き上げ、会場へ叫ぶ。

『ファイヤー!』
「「「「ボンバー!!!」」」」

打てば響く、とはこの事か。
唐突にミーアが叫んだセリフに、間髪を入れず反応する観衆。
その反応に大輪の笑顔を咲かせ、ミーアが声を張り上げる。

『ありがとうございます、皆さん惜しみない声援をありがとうございます。
 残念ですが、先程言ったように私のライブは終わりです。
 ごめんなさい、事情があって、今回アンコールは無しなんです』

そのセリフに会場のそこかしこからブーイングが上がる。
ブーイングをあげていないファン達も、いつもと違うノリにいささか戸惑っているようだ。
そんな会場の雰囲気をかき消すためか、ミーアがより一層声を張る。

『ですから、今からは――――わ『俺の歌を聴けえッ!!』ッ!
 ちょっと、バサラ!?予定より早いってば!!』

ミーアの言葉を遮って聞こえたバサラの叫びと共に、『PLANET DANCE』のイントロが大音量で流れ出す。
戸惑っていた観客もブーイングを上げていた観客も、先程までの不満はどこへ行ったやら。揃って大歓声を上げる。
だが肝心の曲は始まらず、最初の数小節が何度か繰り返されるだけで、バサラの姿もステージのどこにも見当たらない。
観客が不審に思い始めた頃、上からMSの飛行音が聞こえ、慌てて空を見上げる。

暁に染まる空を切り裂く、夕日よりもさらに紅いバルキリー。
そのままステージの近くへ滑り込み、ガウォークへ変形して急制動をかける。
バルキリーの動きが止まると、コックピットからギターを掴んだバサラが飛び降りた。
ステージの袖でスタッフからマイクを掻っ攫い、ミーアの隣へ並んでギターを弾き出す。

予定と違った行動を取ったバサラに対し、ミーアが抗議をしようと近寄ったが、すぐに離れていった。
どうせ言っても聞かないし、ライブが最優先だと考え直したからである。

『―――ということで、これからはFireBomberのライブを楽しんでくださーい!
 まずは皆さんお馴染み、PLANET DANCE!』

歓声、というよりは怒号に近い叫びが観客から上がる。
ミーアが手を振って後方に控えたスタッフに合図を送り、イントロから先へ進ませる。
イントロが終わる直前、バサラがいつものセリフを叫ぶ。

『行くぜ、俺の歌を聞けえ!』

機動戦士ガンダムSEED DESTINY feat.熱気バサラ
第17話



  • 作者後書き
    Aパートのみですが、とにかく投下。
    何故かどんどん長くなっていく不思議。物が捨てられない性格です。
    捨てるときは一切喝采何もかも捨ててしまいますが。

    ミーアに何を歌わせるか、非常に悩みました。
    ミンメイソングも捨てがたい、けどFireBomberの一員としてだしてるし、でこの曲に。

    Bパートでは連合・オーブ、AA組を描写する予定。
    また長くなるかもしれないので、気長にゆっくり待っていただければ幸いです。