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R-18_Abe-SeedDestiny-X_安部高和_19

Last-modified: 2007-11-09 (金) 20:44:02

ミネルバ、シンの部屋。
「・・・・・・あれ?」
マユとメールをしようと携帯を開いたシンだったが、ディスプレイに表示された『圏外』の文字を
見て首を傾げた。
「おかしいな・・・・・・壊れたのかな?」
ミネルバの中で圏外になるという事は今までなかった。ここは宇宙空間でシンの携帯電話は作者の携帯と
酷似している(DoKoMoのP253i。旧型)が電波は地球にだって届くのだ。ちなみに作者の携帯はリアルで物故割れた。
念のためパソコンを操作してみるも、ネットワークには接続出来ない。
「・・・・・・、まさか」
つまりこれは異常事態。そして異常事態が起きる要因としてシンが真っ先に思いついたのは、
「敵襲か!?」
ベッドから跳ね起き、シンは自室から飛び出した。

「ジャミングは良好、っと。あとは・・・・・・」
ミネルバ、艦内通路。
電波の遮断を確認したアーサーは、この事態をみんなに――特にシンにどう誤魔化すかを考えていた。
更新が空きに空いたためなんで電波を遮断するかに至ったのかを三行で説明すると、連合がオーブを包囲する
という情報をシンに知られないようにするためである。もし連合がオーブを――マユの住んでいるオーブを攻める
と聞いたらシンは何をするか分からない。先日も写真一つのためにタリアを脅迫したシンの事、どんな行動に出るか
分かったものではない。
「いっそ独房にでもぶち込んで――」
「あ、副艦長」
「ひぃっ!?」
曲がり角で、アーサーはシンとばったり出くわした。
「どうしたんです?そんな声出して」
「い、いや、ななななんでもない!それよりなんだシン?何か用か?」
「あ、そうそう。敵が攻めてきたんですか?」
「ぇええっ!?な、なんでその事を!?」
「電波の調子がおかしいし、近くにそういう敵が来てるって事なんですよね!?くそっ、また戦争がしたいのか、連合は!」
「・・・・・・、なんだ」
アーサーはほっと胸をなで下ろした。シンはオーブに連合が向かっているという事が分かったのではなく、ただ勘違いを
しているだけのようだった。
「・・・・・・?なんでほっとしているんですか?」
「いやぁ、てっきりシンに連合がオーブに向かっているという事を知られたのかと思ってね。でも良かった、ただの勘違い
で・・・・・・ってしまったぁぁぁぁぁッ!!ついうっかりッ!!そしてシンがスデにこの場にはいないという事実!!
この二つの符号が意味するものは一つ!!」
『ミネルバ、ハッチを開けろ!さもないと吹き飛ばす!!』

ミネルバ、ブリッジ。
「・・・・・・、はぁ」
シンの言葉を聞いて、タリアは深いため息をついた。
『聞こえているのかブリッジ!早くしないとマユが・・・・・・マユが!!』
「どうしますか艦長!?」
「・・・・・・、仕方ないわ、開けてあげて」
「で、でも!」
「いいから早くしなさい!沈みたいの!?」
「り、了解!」
メイリンは指示に従い、ハッチを開放した。
「でも、本当によかったんですか?」
「いいのよ。地球までどれだけあると思ってるの?どうせ途中でトイレに行きたくなって戻って来るわよ。それとそこの
あなた、悪いけどアーサーを独房に入れておいて」
傍にいた屈強な男にそう命じ、タリアは背もたれに体重を預けた。
『しまった!これじゃあ排泄が出来ない!メイリン!デスティニーにトイレを取り付けるんだ!やれるな!?』
「やれねぇよ」
『くそっ、そして常識的に考えれば今から行ったって間に合うとは思えない・・・・・・』
シンの意気が消沈していく様を聞いて、タリアは唇を微かに歪めた。
そもそもが不可能なのだ、シンの行おうとしている事は。シンの行こうとしている場所は近所の公園でも隣町でもない、
遠く離れた月の更に先にある地球なのだ。
同時にブリッジにも安堵の空気が流れる。
『シン、アレを使え』
と、そこで明らかにプロではない中の人の声が聞こえた。
『アレ?アレってなんですか、ヴェステンフルス隊長?』
ハイネだった。ブリッジではないどこかで、ハイネはシンに声を送っていた。
「ハイネ!?あなたどういうつもりなの!?」
思わず座席から立ち上がるタリア。前々から嫌な予感はしていたのだが、まさかこんな形で知られる事になるとは
思ってなかった。
タリアに構わずハイネは続ける。
『デスティニーの横にロケット的なものがあるだろ?それを使えば二日で地球に行ける。ま、試作品だけどな』
『ほ、本当ですか!?』
『ああ。まぁGとか色々マズイかもしんないけど、おまえなら大丈夫だろ』
『はい!ありがとうございます、ヴェステンフルス隊長!』
『俺の名前はハイネだぜ、シン』
『これなら行ける!トイレも二日なら我慢出来る!俺なら!!』
そして少しした後、ミネルバから超スピードで発進したデスティニーの姿がブリッジに映った。
皆が呆気に取られる中、タリアは重くなった口を開いた。
「どういうつもりかしら?あなたにも口止めをお願いしたはずだけど?」
『なぁに、後輩を手助けするのが先輩の役目、ってやつですよ』
「だからってあなた――」
『どんな罰も覚悟の上です艦長。俺は間違った事をしたとは思っていません』
「・・・・・・」
ハイネのあまりに清々しい口調に、タリアの体の力がふっと抜けた。
そして彼女は傍にいた屈強その2に命じた。
「あのオレンジバカを独房に入れてちょうだい」

オーブ近海。
「壮観だな、こうして見ると」
オーブを包囲するようにずらりと並んだ連合の艦隊を前に、シャギアはそう洩らした。
「しかしここまでする程の国なのか?オーブという国は」
その数は前年度の2倍。連合に協力を要請しに来たはずなのだが、その様はどう見てもオーブを焼き尽くす気満々の
ように映った。
「オーブは他国に介入せず云々の理念を掲げているにも関わらず結局はやりたい放題の国ですから。正直な話
消えてもらった方が都合が良いのです。相手が首を縦に振らなかったら総攻撃を仕掛けるつもりなのでしょう」
「なるほど・・・・・・確かにやりたい放題だな、あの国は」
先日ステラにボコボコにされた事を思い出す。学生からしてああなのだから、トップの人間ははきっととんでもない者
なのだろう、とシャギアは思った。
「一時間後に相手からの返答が届くとの事です」
「うむ、分かった」
既に要請はウズミの耳に届いている。シャギアとオルバはブリッジを出て、MSデッキへ向かった。

オーブ国防本部。
「協力はせん!そして降伏もせん!そう連合に伝えると共に戦の準備だ!!」
会議室にウズミの怒号が響いた。
「以上、解散!」
どこかの仮面のような事を言い、会議室から出て行こうとするとんでもないトップの者。
「いやいやウズミ様。解散じゃなしに」
そしていつかのおかっぱのように引き止めるユウナ・ロマ・セイラン。
「なんだユウナ!私の決定に不満があると申すか!?」
「もうちょっと冷静に且つ常識的に考えてください!あの数を正面から相手にしては敗北は必至です。民と兵を
危険に晒す事になりますよ?」
「かの有名なドズル・ザ○は言った。「戦いは数だよ兄貴」と。故に!」
「故にダメですよね?それに敵の数は前年度の二倍ですよ、二倍。去年はなんやかんやで凌げましたけど今年も
そうとは限りません」
「むぅ・・・・・・」
ちなみに去年のアレはユウナが首謀者なのだが、空気の読めるウズミ様はそれを口には出さなかった。
こういう大人になりたいものです。
「とりあえず民には避難勧告を発令しておきました」
そう言ったのはウナト。元から絶滅しかけていた彼の毛髪は、ついに残すところあと5%程となっていた。
「うむ、ご苦労。しかし連合と同盟を組むなど考えられん事だ。ここは中立国家、その割には色々とやらかしているが
今年こそは中立を貫かねばならぬ年だとは思わぬか?」
「なんか毎年台風の被害に泣きを見ている農村のような言いようですけど、確かにそうですね。今年こそは我関せずで
終わりたいものです」
去年も一昨年も、オーブはしっかり戦争に巻き込まれている。オーブという国は領海に近付く者に無差別に砲撃を
かける程の中立国家(トンデモ国家)なので、そういった事例は好ましいものではなかった。
「お父様!!」
と、そこで会議室の扉がばん、と開かれた。

「おお、我があまり愛しくない娘よ!」
「・・・・・・。お父様!連合が攻めてきたって本当ですか!?」
「ああ、つい一時間程前にな」
「それでどうするんですか!?まさか同盟を組むんじゃ・・・・・・」
「それについて今話し合いを――」
「ウズミ様!連合が返答を求めています!」
「そうか。それなら――」
もう少し待ってもらえ、と言おうとしたウズミだったが、それは次の声にかき消された。
「連合と同盟なんて組めません!オーブは中立国です!」
カガリが父に向けたその言葉は、それはそれはとても大きな声だった。
その声は扉の向こう、窓の外・・・・・・そして、オーブの高官が握っていた通信機にまで届いた。
『いいだろう。ならば然るべき処置を取らせてもらう』
スピーカーからそんな声が聞こえ、同時に通信が切られた。
「・・・・・・、あれ?私なにかマズイ事した?」
一同がカガリを呆然と見つめる中、ウズミは腹の底から声を張り上げた。
「この、バカ娘がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

銭湯、ネオの湯。
「あ~、困った・・・・・・」
ネオは番台で頭を抱えていた。
去年の戦争の後、ネオはカオス、ガイア、アビスを売った金でオーブにこの銭湯を構えた。年頃の子供三人を養うため、
そして仮面を被ったままだとどこの企業も採用してくれないから自分で商売をするしかないじゃないか!ってな感じで。
そして銭湯を経営するに至ったのだが、困った事に赤字続きでにっちもさっちもいかなくなっていた。
まぁこの御時世、風呂の付いていない家などあるはずもなく、利用するのは「たまには銭湯に行くか」的な者ばかり。
固定客もついておらず、割としっかりした内装の割にこの銭湯は傾きかけていた。
「やっぱり向いてないのかな、俺・・・・・・」
誰もが知るところだが、ネオはフラガだった頃から生粋の軍人である。軍学校ではそれなりに優秀な成績を修め、そして
パイロットとしても一流の腕。MSさえあれば、彼は食いっぱぐれる事は一生ないだろう。
しかし軍人をやろうにも、ネオはオーブ軍からリストラされた身だ。故に銭湯を始めたのだが、どうやら彼に商才は
備わっていなかったようだ。
「おいネオ、掃除終わったぞ」
「あー超疲れた。コーヒー牛乳貰うよ」
男湯から、デッキブラシを持ったスティングとアウルが出てきた。
「おう、ごくろーさん。ほら、スティングも好きなの飲めよ」
「なぁネオ・・・・・・」
スティングは番台に座るネオに歩み寄り、アウルに聞こえないような声で囁いた。
「やっぱり俺バイトするよ。経営ヤバいんだろ?」
スティングだけは事情を知っていた。どちらかと言えば何も考えていない属性のアウル、ステラとは違い、スティングは
割と目ざといのだ。
そんなスティングの言葉を、ネオは笑って返した。
「バカ、つまんない事気にするな。おまえは学生やってりゃいいんだよ」
「いや、だけどよ・・・・・・」
「弁護士になるんだろ?バイトなんかしてたら勉強する時間がなくなるじゃないか」
「それは・・・・・・」
「さ、この話はオシマイだ!よし、店開けるぞ」

話を強引に打ち切り、番台から立ち上がるネオ。
「ネオ・・・・・・」
と、居住スペースになっている二階からステラが降りてきた。
「おうステラ。どうした?」
「これ・・・・・・」
ステラが差し出したのはラジオだった。
「これがどうした――」
言いかけて、言葉が止まる。
そのラジオからは、こんな声が洩れていた。
『連合がまた来たから国民のみなさんはさっさと非難してください』

「ふむ、これなら我々が出る必要はなさそうだな」
『そうだね、兄さん』
既に戦闘は始まっていた。
連合の大艦隊VSオーブ国防軍。互いのMSの性能はほぼ互角であるが故に、戦局はとても単純なものとなっていた。
数の多い連合が圧倒的優勢だった。オーブの戦艦やMSは次々と落とされ、オーブが陥落するのにそう長い時間は
掛かりそうもなかった。
「よしオルバよ、チェスでもするか」
『そうだね・・・・・・と言いたいところだけど、作者はチェスのルールを知らないんだ。キングが動かなければ兵は動かない
という点を除いては』
「そうか・・・・・・それは困ったな」
カレンは俺の嫁である。

オーブ市街。
他の住民と同じように、ネオ一家もシェルターに向かって走っていた。
「もう少しでシェルターだ!頑張れよ!」
スティング、アウル、ステラにそう檄を飛ばすネオ。
「いや、俺ら元軍人だし」
「これくらいへっちゃら、ってね!」
「お腹空いた・・・・・・」
三人はとても余裕だった。
「そういう油断は危ないぞ。ほれ見ろ、オーブが押されてるじゃないか」
遠くに見える戦場では、ムラサメがぽこぽこと落とされていた。連合が市街に侵攻してくるのは時間の問題だろう。
「ったく、だらしねぇ」
「俺ならあんな奴ら瞬殺だけどね」
二人のセリフは決して自惚れではない。ネオを含む四人は元ファントムペイン、ウィンダムごとき赤子の手を捻る
ように簡単に落とす事が出来るだろう。
「ステラ・・・・・・戦う・・・・・・?」
「バカ!おまえらはもう戦う必要なんてないんだよ!」
スティング、アウル、ステラは、自分から望んで兵士になったわけではない。なんかワケの分からない施設で育った
三人は、子供の頃から望んでいないのにも関わらず戦闘教育を施されてきたのだ。
そうして半ば無理矢理に戦場に駆り出された三人を、ネオは二度と戦わせるつもりはなかった。

「しっかしまぁ、ホントにだらしないな、ありゃ」
そう話している間にも、ムラサメやアストレイはぽこぽこと落とされていく。
「――!?」
と、そこでネオの額に電流が走った。テロレロレン!
「ん?どうしたネオ?立ち止まって」
「・・・・・・。あ、やば!俺ちょっと忘れ物したわ!先に行っててくれ!」
「は?ってオイ、ネオ!それどころじゃないだろ!!」
「すぐ戻る!!」
そう三人に告げ、ネオは元来た道を引き返した。

オーブ、モルゲンレーテ。
「離せ!私も出る!!」
「無茶だよカガリぃ!」
光り輝く黄金のMSを前に、カガリとユウナは揉めていた。
「こんな状況の中でMSを遊ばせておけるか!」
「それはそうだけどカガリには無理だよ!」
「やってみなきゃ分からないじゃないか!」
「分かるよ!いいかいカガリ。このアカツキはね、操縦がとても難しいんだ。どうカガリ用に改良したとしても最低限
プレステのコントローラーくらいにはなるんだ。カガリはこの前やっとスーファミのLボタンとRボタンを使えるように
なったばかりじゃないか」
「そんなの実戦でどうにかしてみせる!だから離せ!!」
「無理だってカガリぃぉおおおお」
肩を掴むユウナをずるずると引きずりつつアカツキへと向かうカガリ。
と、不意に誰かにぽん、と頭を叩かれた。
「嬢ちゃんにはちと荷が勝ちぎるぜ、こいつは」
「――!?お、おまえは!?」
黒い猫仮面を被った男。彼はそのままアカツキへと向かい、コクピットの中に滑り込む。
「な、なんなんだあの男は!?」
見るからに怪しいその男を見てうろたえるユウナ。
しかし彼とは対照的に落ち着き払ったカガリは、傍のマイクに向かっていった。
「カガリだ。ハッチを開放してくれ」
「か、カガリ・・・・・・」
「心配するな、ユウナ。あいつは味方だ。それもとびっきり頼りになるな」
カガリは男の正体を知っていた。その男は普段は仮病ばっかり使って妙な性癖を持ち合わせているが、やる時は
やる男だと。
そんなカガリに対し、ユウナは言った。
「カガリ・・・・・・マイクのスイッチ入ってないよ」
遠くで何かが激突する音が聞こえた。

『ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!』
「サタケ!くそっ、連合め・・・・・・!」
オーブ近海。
オーブ軍のMSの数は、既に戦闘開始時の半数以下にまでなっていた。
「ここまでなのか・・・・・・!」
大多数のウィンダムに取り囲まれ、一機、また一機と数を減らしていくムラサメ&アストレイ。
同時に兵達の士気も落ち始めていた。
『ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!』
「もうだめぽ」
彼のみならず、他のオーブ兵もフッジサーンな状態になっていた。
『次はおまえだ!!』
「しまった!?」
彼がコクピットでフッジサーンしていると、いつの間にか目の前に三機のウィンダム。
三機は一斉にライフルを向け、彼のムラサメにビームを放つ。
「脱出機能?そんなものムラサメにはないよ」
落とされた後の着水時の衝撃で腰とか痛めない事を祈りつつ全てを諦めた彼だったが、不意に彼のムラサメの周囲を
小さい何かが取り囲んだ。
「――!?」
そしてムラサメに放たれたビームは、まるで壁に阻まれるようにして霧散した。
『おいおまえら!弱音を吐くのは終わってからにしろ!』
彼のムラサメを取り囲んでいた何か――ドラグーンが持ち主も元へと戻る。
そこには、黄金のMSの姿があった。まるで何かに突っ込んだかのように少し破損していたが、
その姿は見る者を圧倒させた。
「アカツキ!?そしてこの声、まさか・・・!」
彼の声は、皆聞き覚えがあった。
仮病ばっかり使って妙な性癖を持ち合わせていた男。それが原因で軍をクビになり、行方知れずになっていた男。
――しかし、パイロットとしては一流の腕を持つ男。
『フラガ二佐!?』
オーブの兵達が一斉にそう叫ぶ。あ、ちゃっかり昇進してました。
そんな期待感のこもった兵達の声に、彼はこう答えた。
『俺はネオ・ロアノーク・・・・・・ネオの湯の主人だ!』

機動戦士阿部さんSEED DESTINY X
第十九話~アーサー「独房に入っていたのは・・・・・・俺だったァ――ッ!いつの間にかァ!!」~