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R-18_Abe-SeedDestiny-X_安部高和_20

Last-modified: 2007-11-09 (金) 20:44:11

オーブ近海。
突如現れた黄金のMSを前に、敵も味方もその動きを止めていた。
「あー、こほん」
そんな中、その黄金のMS――アカツキのパイロットであるネオは、回線を全チャンネルに合わせて
こほんと咳払い。
そして彼は言った。
「私ことネオ・ロアノークは、オーブに構えた『ネオの湯』という銭湯の主人であります!本日の戦闘の後、疲れた
体を癒しにどうぞ皆さんいらっしゃってください!オーブの皆様方は元より、連合の皆様も歓迎致します!
戦闘で疲れた体を銭湯で!ネオの湯をよろしくお願い致します!!」
そしてネオはアカツキを器用にお辞儀させた。
ネオの額に走った天啓(テロレロレン!)はこれだった。戦場で宣伝・・・・・・小学生でも思いつきそうであり、しかし実行出来る
のは銭湯の主人という立場からならネオにしか出来ないような、画期的な宣伝方法だった。
(やった・・・・・・これで俺の店も建て直せる!)
そう確信し、ネオはコクピットの中でガッツポーズ。戦場にいる者のみならずオーブのシェルターにもこの宣伝は配信
されているので、ネオの思惑どおりならば明日から忙しい毎日が始まるのは確実だった。
(よし、後は・・・・・・)
オーブ兵も連合兵も、突然の事にしばしぽかんとしていた。
そして、
『な・・・・・・舐めたマネを!!』
いち早く我に返った連合のパイロットがアカツキに向けて発砲。
「そうこなくっちゃな!」
ビームを軽々とかわし、お返しとばかりにライフルで応戦する。
ここからはダメ押し。この戦場で大活躍すれば、自分のファン・・・・・・即ち固定客が現れる事必至。
(最近はご無沙汰だったからな・・・・・・久しぶりのアナルファックウヒョー!)
ここからは不純な動機で、ネオは戦場に期待を躍らせた。

オーブ市街、地下シェルター。
「それにしてもネオの奴、遅いな・・・・・・」
多くのオーブ市民が避難したこのシェルターに、スティング、アウル、ステラも身を寄せていた。
「忘れ物ってなんなんだろーね」
「スペアの・・・・・・仮面?」
「あいつスペアなんか持ってたっけ?ってかアレいつも被ってるけど洗ってんのかな・・・・・・」
「さぁな。それより戦場に動きがあったみたいだぞ」
シェルターに備え付けられた大きなモニターには、戦場の様子が映し出されている。
そこに、突如金ぴかのMSが乱入してきたのだ。
「あれって確か・・・・・・」
「アカツキ、とか言ったか。確かオーブのMSだったな」
アカツキは前にネオが乗っていた機体だが、それの所有権はあくまでオーブにある。昨年の戦争が終わった時、ネオは
こっそりアカツキを返していた。
「・・・・・・ネオ?」
「いや、違うだろう。あれはオーブの象徴たるMS、乗ってるのはおそらくお姫様だ」
ちなみにスティング達はカガリがマクロスバカな事を知らない。ただMSに乗れるという事は知っていたからそう思ったに過ぎない。
しかし次にスピーカーから流れてきた声で、そんな思いは吹き飛んだ。
『あー、こほん。私ことネオ・ロアノークは、オーブに構えた『ネオの湯』という銭湯の主人であります!』
「「「ブー!!!」」」
三人は支給されていたお茶を同時に吹き出した。
「ネオじゃねぇか!!」
「あのバカ!なにやってんだ!!」
「やっぱり・・・・・・ネオ・・・・・・」
宣伝を終えたアカツキは、そのままオーブ軍として戦闘に参加していた。
三人の心配をよそに、アカツキは目を見張るような活躍をしていた。まるで大部屋モンスターハウスでプロシュート兄貴の
ディスク+パープルへイズを発動したかのように、ポコポコと敵MS(ヌケサク)を落としていく。
「・・・・・・ま、あれなら大丈夫そうだな」
そうスティングが安心したその時、見た事の無いMSがアカツキに攻撃を仕掛けた。
「な、なんだありゃあ!?」
赤いMSと、作者の知識には無い類の色のMS。墨色?まぁそんな事はどうでもいいとして、とにかく明らかにヌケサク
ではない二機のMSがアカツキと交戦を開始した。
「おい・・・・・・ヤバくないか、あれ」
その二機は、完璧な連携でアカツキを追い込んでいった。
ドラグーンとヤタノカガミで応戦するも、アカツキは徐々に苦境に立たされていった。
例えるならそれは二体のギアッチョ。気付けばずっと二機のターン!
「こうしちゃいられねぇ!」
スティングは立ち上がり、シェルターの扉へと駆け出す。
「おいスティング!どうすんだよ!」
「決まってんだろ!ネオを助けるんだよ!」
「だけどMSは!?アビスもカオスもガイアも無いんだぜ!?」
「そんなのは後回しだ!」
ロックを解除し、扉を開けるスティング。
「おまえらはそこで――」
待っていろ、と言いかけたスティングだったが、二人は既にスティングの傍にいた。
「バカ言ってんじゃねーっての」
「ステラも・・・・・・戦う」
「へっ。・・・・・・よし、久しぶりにファントムペイン出陣だ!」

『くそっ!なんなんだこいつらは!』
ドラグーンでの十字砲火、包囲射撃。
それら全てを、目の前の二機は的確に対処してやりすごしていた。
――「兄さん、やっぱりあいつは」
――「ああ、間違いない。小型のビーム砲とはいえ、あのような事が出来るのはニュータイプだけだ」
静観を決め込んでいたシャギアとオルバ。その二人が出撃したのは、連合がオーブ軍に押され始めたからではない。
アカツキのパイロット――ネオに、ニュータイプの疑いが掛かったのだ。
そうなるとニュータイプを月曜日並に嫌うこの二人、始末せねばといそいそと出撃し、そして今に至る。
――「思えば我々はニュータイプのせいで色々と辛い思いをしてきた。ならば奴は葬るしかない!」
――「そうだね。もう刺身にタンポポを乗せる作業は嫌だからね」
そんな動機でアカツキを追い詰めていくシャギアとオルバ。
しかしネオは別にニュータイプではない。ただネオは空間認識力というものが格段に優れているだけであり、死者と交信
したりD.O.M.Eと交信したりガロードにハァハァしたりはしない。ネオの本質はただのナチュラルだ。
ただニュータイプをエンタ芸人並に嫌うこの二人にはそんな事は関係ない。自分達に出来ない事を、自分達が出来なかったせいで
カテゴリーF呼ばわりされる事になった行為を平然と行う者を、彼らはあまり深く考える事なくニュータイプ認定した。
『さて、そろそろとどめだね』
ビーム兵器が効かないという事は出撃前に分かっていた事、二人は近接兵器のみでアカツキを圧倒し、そしてついに
アカツキも退路を失った。
『まずい、このままじゃ――』
眼前には赤いMS、ガンダムヴァサーゴ。
『くっ――』
クローをかわした先にいたアシュタロンの鋏に、アカツキはついに捕まってしまった。
『しまった!?』
『ふふ・・・・・・終わりだな、ニュータイプ!』
『ニュータイプ?いや俺そんなんじゃないから!人違いッスから!だから離して!』
『この際そんなのはどうでもいいさ。とりあえずおまえには消えてもらうよ。・・・・・・兄さん』
「覚悟しろ、ニュータイプ・・・・・・!」
クローを突き出し、アカツキに突進するヴァサーゴ。
『だからニュータイプじゃないってば!確かに俺の名前はネオでなんとなくニューっぽいけど、でも本名は
ムウ・ラ・フラガなんですってば!』
そしてクローがアカツキのコクピットを貫く直前――
『兄さん!』
「ぐおっ!?」
横からの衝撃で、ヴァサーゴは吹っ飛んだ。
『よくも兄さんを!ヌケサクのくせに!』
ヴァサーゴを吹き飛ばした――ヴァサーゴに体当たりをしたMS、ムラサメにビームを浴びせるアシュタロン。
『避けた!?』
敵のビームを避けるという雑魚メカにあるまじき動きをするムラサメは、そのままアカツキの前に立ちはだかった。
『どこの誰かは知らないが、すまない!助かった!』
ムラサメのパイロットに礼を言うネオ。
しかし返ってきた声は、もしネオが今お茶を飲んでいたなら「ブー!!」しそうなものだった。

『腕鈍ったんじゃねぇか?』
『な・・・・・・スティング!?』
『俺もいるぜ!』
『ステラも・・・・・・』
ムラサメのパイロットは、スティングとアウルとステラだった。
『な、なんでおまえらがそんなのに乗ってるんだ!!』
『いや、急に目の前にこいつが落ちてきてな。破損してなかったからパイロット引きずり下ろして頂いたってわけだ』
『一機しかなかったから三人乗りだけどね』
『・・・・・・らっきー』
まるで欲しかったおもちゃを手に入れたかのように言う三人。
『馬鹿野郎!!今すぐそいつを降りろ!!』
しかしネオは、そんな三人を激しく叱責した。
『な、なんだよ。せっかく助けに来てやったのに・・・・・・』
『うるさい!誰がそんな事頼んだ!いいからさっさと降りてシェルターに行け!!』
『そ、そんな言い方はないだろ!もう少しでやられるトコだったじゃねーか!!』
『ステラ・・・・・・悪い子なの・・・・・・?』
『ああ悪い子だ!ステラだけじゃない、おまえら三人共だ!おまえらはもうそんな物に乗っちゃいけないんだ!』
『乗っちゃいけないって・・・・・・おいネオ、忘れたのか?俺達は元ファントムペイン――』
『そんなのは関係ない!例えおまえらがエース級のパイロットでもな、俺はもうおまえらを戦わせる気はない!』
『・・・・・・』
『だからさっさと降りろ。・・・・・・どこの世界に、子供を戦わせる親がいるんだ』
それだけ言ってネオはアカツキを立ち上がらせ、ヴァサーゴとアシュタロンへ向かっていった。
『さぁ、おまえらの相手はこの俺だ!かかってこい!!』
既に半分以下になったドラグーンを周囲に停滞させ、相手を威嚇するアカツキ。
『と、俺達だ!』
その横に、三人の乗るムラサメ。
『おまえら、俺の話を――』
『おまえの考えは分かった。だけどな・・・・・・親を見捨てるような子供だっていねぇ』
『そーゆー事』
『ネオ・・・・・・守る』
『それが・・・・・・家族ってモンだろ?』
『おまえら・・・・・・くくっ、泣かせる事言うじゃないか』
『さぁネオ、とっととあいつら片付けようぜ!!』
『ああ・・・・・・俺達家族でな!!』
アカツキとムラサメは、同時に射撃を仕掛けた。

「ふむ・・・・・・実に感動的ではないか。なぁ、オルバよ」
『家族なんて僕ら、記憶にないもんね・・・・・・』
記憶にない家族というモノに思いを馳せ、しんみりするシャギアとオルバ。
『どうする兄さん?このままニヒルなセリフを吐きつつ退けば人気も上がるよ』
「ふっ、オルバよ・・・・・・良くないな、そういう冗談は」
『だよね』
「立ち回り次第ではベジータになれるこの状況・・・・・・だからこそ、奴らを木っ端微塵にする!それが悪というものだ!」
『そもそも家族を持った時点でベジータは死んだも同然だしね!』
放たれたビームをかわし、ヴァサーゴはアカツキに、アシュタロンはムラサメに向かう。
『へっ、このゲテモノMSが!ファントムペインの実力を見せてやるぜ!』
『それは楽しみだ。せいぜい失望させないでもらいたいね!』
アトミックシザーからビームを放つアシュタロン。
『そんな見え見えの射撃!』
回避行動を取ろうとレバーを押すスティングだったが、
『ってアウル!ケツどけろ!』
『しょーがねーじゃん、狭いんだからさ』
『ええい、じゃあこっち・・・・・・おいステラ!足どけろ!』
『ここ、狭い・・・・・・』
『ええい、じゃあ上にってああもう間に合わ――』
あっさりと被弾し、ムラサメは落ちていった。
『『『あーれー』』』
『・・・・・・。えっと、あれ?終わり?』
あまりのあっけなさに、オルバはしばしの間ぽかんとしていた。

『スティング!アウル!ステラ!』
ムラサメの落とされた様子が、ネオの目に映った。
「おっと、よそ見をしてもらっては困るな」
ヴァサーゴは近くにいた戦艦を足場とし、クローを艦に突き刺す。
同時に、腹の部分が赤く光った。
『ちっ!』
ドラグーンの数が減ったため、バリアは張れない。回避も出来そうになかったので、ネオは機体の前面をヴァサーゴに向けた。
「跳ね返すつもりか・・・・・・だが」
相手の意図を知りつつも、シャギアはメガソニック砲を発射した。
『こいつを跳ね返して奴に隙を作り、然る後スティング達を救出しに・・・・・・ってアルェー!?直撃喰らってますヨォーッ!?』
メガソニック砲をまともに受け、あらゆる箇所から火花を散らすアカツキ。端から見たらおいアカツキおまえ何してんだ?
な感じだった。
「このメガソニック砲を通常のビーム兵器と一緒にしてもらっては困るな!」
跳ね返せなかったのはそんな感じの理由です。赤いしな。細かい事は気にしてはなりません。
『おっと再びピンチが襲来~。もうだめぽ』
そしてまたもやアカツキのコクピットめがけて伸びるヴァサーゴのクローは、
「――なにっ!?」
上空から降ってきた何かによって断ち切られた。

「突入角修正・・・・・・よし、行ける!」
補助ブースターを切り離し、大気圏に突入する一機のMS。
猛スピードで大気圏を切り裂くように進み、そして数瞬後に視界に映ったのは、多くの艦隊に囲まれた島国。
「あいつら・・・・・・」
折りたたみ式対艦刀――アロンダイトを抜き放ち、それをシンは勢いよく投げ放った。
『――なにっ!?』
それは明らかに連合製のものではないMSの腕に命中した。
どこかで見た事があるような気がしたが、そんな事はどうでもよかった。
シンの胸の中はただ一つ。
「おまえら・・・・・・マユの住んでるオーブに・・・・・・おまえらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
――ぱりーん。

『兄さん!!』
「大丈夫だオルバよ、案ずるな。しかし・・・・・・」
突如戦場に舞い降りた一機のMS。
どこかで見た事があるような気がしたが、しかしシャギアはそれを深く考える事はしなかった。
「何やらまた面倒な事になりそ――」
そのMSはまるでハリケーンのように連合の艦隊を斬っていった。そのMS――デスティニーが通り去った後には、
バラバラに分解された艦隊と連合兵の乗る救命ボートだけ。
大量破壊という観点から見れば、それはサテライトキャノンにだって引けを取らなかった。
「・・・・・・」
深く考える事をしなかった、のではなく、そんな事を考えている場合では既になくなっていた。
『に、兄さん!何者なんだい、あいつは!?』
狼狽するオルバ。まぁあんな超級覇王電影弾みたいなものを見せ付けられては誰だって狼狽する。俺だって狼狽する。
「落ち着けオルバよ。心を静めるんだ」
『兄さん・・・・・・』
オルバとは対照的に、シャギアは落ち着き払っていた。
「不吉な数字を数えて落ち着くんだ。4、9、13、42、49、666・・・・・・不吉な数字はホテルとかで部屋番号に割り当てられない
孤独な数字、我々に勇気を与えてくれる。さぁ、オルバも数えるんだ」
もとい。兄さんも狼狽していた。
『も、もう思いつかないよ兄さん!』
そんなやりとりをしている間に、連合の艦隊はその七割が失われていた。
まるでヴァニラ・アイスのように外側からガオンしていくデスティニー。ヴァサーゴやアシュタロンがガオンされるのも
時間の問題だった。
『イタリアでは17が不吉らしいですよ』
海中――ヴァサーゴとアシュタロンの足元から、青い戦艦――ヴェサリウスが鯨のように飛び出てきた。
「アビー!無事だったか!」
『いち早く危険を察知して海中に逃れていました』
二機に背を向け、ハッチを開放するヴェサリウス。
『撤退するのでしょう?はやく乗ってください』
割と長い付き合いなので、アビーもフロスト兄弟の考える事がなんとなく分かってきた。
「うむ。ここは我々がガオンされるステージではないのでな」
『奴を落とすのはまだ先の話さ』
『無理に取り繕わなくて結構ですからさっさとしてください』
ヴァサーゴとアシュタロンはいそいそとヴェサリウスに乗り、そして彼らは海中から離脱した。

五分後。
あれだけあった連合の艦隊は全て海に沈み、救命ボート達もオーブ沖から離れた。
「な、なにが起こったんだ、一体・・・・・・」
アカツキのコクピットの中でネオが呟く。
「って、スティング、アウル、ステラ!大丈夫か!?」
『ああ、なんとかな』
『だから俺が操縦するって言ったじゃん』
『スティング・・・・・・ヘタクソ』
『う、うるせー!そもそもこれは一人用なんだよ!』
三人の変わらない口ゲンカを聞いてほっと息を吐くネオ。
「・・・・・・ん?」
と、誰かが自分に通信を入れているのに気付いた。
『応答してください!誰か!!』
「こちらはオーブ軍・・・・・・いや、銭湯『ネオの湯』の主人、ネオ・ロアノークだ」
『――!?こ、こちらはザフト軍ミネルバ隊所属のシン・アスカです!』
「ミネルバ?って事はあの機体、やっぱり――」
『その話は後で!とりあえず一つだけ教えてください!』
なにやら切羽詰まった感のある声。まさか新たな敵かとネオは気を引き締め、続きを促した。
「なんだ・・・・・・?」
『と、トイレはどこですか!?』
「・・・・・・へ?」
『だからトイレです!ああヤバイヤバイもう限界だあqwせdrftgyふじこlp;@』
シンは丸二日間、トイレに行ってなかったのであった。

機動戦士阿部さんSEED DESTINY X
第二十話~こうして、シンのオーブ救出作戦はくそみそな結果で終わったのでした~~