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R-18_Abe-SeedDestiny-X_安部高和_32

Last-modified: 2007-11-09 (金) 20:46:34

「ふむ、時にオルバよ」
『なんだい、兄さん?』
ミネルバに攻撃をかけている最中に、ふとシャギアはオルバに問う。
「何かとてつもなくイヤな予感がしないか?」
『・・・・・・。実は僕もそんな感じがしていたんだ、兄さん』
勝利は目前。相手は新鋭艦と言えども所詮は艦船、すばしっこいMSに取り付かれたのでは撃沈も時間の問題だ。
数分後には手の平に落ちているであろう勝利。
だと言うのに、フロストブラザーズは何か得体の知れない、むしろそんな得体など知らない方が幸せであろう
イヤな予感に襲われていた。
――ンフフフフフフフフ・・・・・・
遠くで声が聞こえる。回線越しとかそんなんじゃなくて、ただ普通に遠く彼方から大気を伝ってごく自然に。大気?
「な、なんだこの声は・・・・・・!」
――「通信回線を全部切断しても聞こえてくるよ兄さん!」
回線の切断など無意味だ。電話を切ってもそれが同じ部屋にいる者から掛かってきたものなら相手の声は普通に
聞こえるように、回線を切っても同じ宇宙にいる者の笑い声なら普通に聞こえるのが道理。聞きたくなければ耳を
塞ぐしか術はない。
「しかしこの声・・・・・・まさか」
この声に聞き覚えはあった。しかし、それはもう聞こえるはずのない声。
――「そ、そんな馬鹿な事あるはずないよ兄さん!だってあいつは――」
そう――何故なら彼は、精神をズタズタに破壊されたのだから。
『阿部さんが現れた』
しかしそんな事など始めから無かったかのようなあっけらかんとした声。
ミネルバとフロストズMSの間に割って入った阿部は、奇跡の復活を遂げていた!!
「ば、バカな!何故貴様が!?」
『おまえは再起不能になったはず!!なのに何故!!』
『ふっ・・・・・・俺は奇跡だって構わず起こしちゃう男なんだぜ?』
※奇跡=ファック。
「奇跡だと・・・・・・?貴様、何をした!?」
『簡単な事さ。インモラルのケツをファックし、俺の精液を流し込んだ。俺の精液は特殊でな、卵子と結合しない代わりに
対象のあらゆる負の因子(ゲイ視点)を浄化する能力がある!!』
まるで遊戯がイカサマ臭い今引きカードの効果を説明するような口調だが、気にしてはいけません。
主人公とはそういうものです。
「そ、そんなバカな事があっていいはずがない!精液で・・・・・・精液でMSが甦るなどと・・・・・・!」
『まぁエロ画像でMSが壊れるって事からしてあっていいはずないんだけどね・・・・・・』
そもそもインモラルガンダム自体あっていいはずないんだけどね。
『さて・・・・・・俺とインモラルにあんなグロ画像(ゲイ視点)を見せてくれた落とし前、そのアナルでつけてもらおうじゃないの』
インモラルはゲイ・ボルグを展開し輪姦態勢に。ちなみにここでの『輪姦』は複数で一人を犯すのではなく、一人で複数を
犯すという阿部仕様です。
『に、兄さん・・・・・・どうしよう』
「ふっ、案ずるなオルバよ。我々の目的はあくまでミネルバだ。後はどうなろうと知った事ではない。・・・・・・何せ我々は
もうじき消えるのだからな」
世界からの消失による絶対的な防御。いくらインモラルとて、異世界の者を掘る事は出来ない。・・・・・・たぶん。
『そうだったね兄さん。ミネルバを落とした瞬間に上手く消えてくれるとは到底思えないけど、とにかくなんとかなりそうだね!』
「・・・・・・。奴も倒しておかねばならんかも分からんな」
落ちかけていた勝利は、再び遠くへ行ってしまいそうだった。

「さて」
デスティニーとストライクフリーダムというトップエース二機を前に、しかしアビーは落ち着き払っていた。
コンソールを高速でタイプし、ヴェサリウスの武装を展開させる。
使用するのは艦の両側面から伸びる無数のテンタクラーロッド。ヴェサリウスの近接兵器とも言える武装で、それは
目の前の二機に・・・・・・と言うか対MSに最も適した武装だ。MSを落とすのに派手な火力は必要ない。艦船や破壊兵器
と違ってMSは人型であるため、つまり弱点は人間と一緒。どこか一部を絡めとってしまえば連鎖的に全身を絡める事も
出来るし、それは破壊ではないので一部の破壊のみで取り逃がすという事もない。加えて砲門やミサイルよりも断然
小回りが利くので、ちょこまか動く相手にはうってつけだ。
「さっさと落ちてもらいましょうか。別れを告げる時間くらいは頂きたいので」

「なんなんだよ、こいつは!」
艦船から伸びる無数の真っ赤な触手。その不気味な光景を見て、シンは思わず足を止めた。
まぁそりゃあ普通はびっくりする。こんな武装を持っているのは本家ラフレシアかデビルガンダムくらいなもので、そいつらは
恐怖するに充分値するもの。並のパイロットなら戦意そのものが削られるだろう。アッグガイ?なんの事です?
『シン!止まらないで!』
「――!?」
キラの声ではっと我に返り、シンは寸前でロッドを回避する。
「なんだか知らないけど、とりあえず!」
とりあえずシンはライフルを乱射した。
照準精度はルナマリアよりマシ(誤射しないレベルで)といった程度。しかしロッドは無数にあるので、適当に撃ってもどれかしら
には当たる。
しかし、それだけだった。適当に撃ってもどれかしらには当たるという事は、つまりそれだけ数が多いという事。焼け石に水という
言葉の例にはうってつけな、その程度でどうにかなるものではないという状況だった。
『それなら!』
キラは額をテロレロレン(イメージ映像)させ、ドラグーンを射出した。
一発一発の威力はライフルに及ばないドラグーン。しかしか細いロッドを破壊するだけなら充分事足りるし、これなら同時に10本
以上のロッドを破壊する事が出来る。
それを見込んでドラグーンを射出したのだが、
『ニョロロン』←テンタクラーロッドの声。
『――うえぇっ!?』
なんと、ロッドがドラグーンのビームを器用に避けたではないか!
あまりに不意の出来事に一瞬キラの思考が止まる。
それがいけなかった。思考の停止により操作をも止めてしまったが故にドラグーンは宇宙に漂うただのオブジェ。その隙を
逃がさんとロッド達は一斉にドラグーンに向かい、それを破壊した。
「キラさん!なにやってんスか!?」
『いやだってあいつ・・・・・・いやいや、何かの間違いだ。よし、もう一回だ。当たれぇぇぇぇぇ!!』
「いやもう無いっスよ、ドラグーン」
『・・・・・・。・・・・・・計画どおり!』
別なキラみたいな邪悪な笑みを浮かべ、キラはサーベルを抜き放つ。

『ストライクフリーダムはドラグーンを全て射出した状態で初めて最高の機動能力を確保する事が出来る。つまりこの状態
こそ真のスーパーストライクフリーダムタイムの始まりなんだ!』
ソースは不明。
『シン君、僕に着いてきて!ロッドよりも本体を叩く!』
そう言うとキラはストフリを最大加速させ、ロッドひしめくヴェサリウスへと特攻した。
――三秒後。
『あれ?前に進まない?バーニアが壊れ・・・・・・あれぇぇぇっ?フリーダムの体がなんか赤くなってる!?』
ストライクフリーダムは雁字搦めになっていた。
「キラさん!今助けます!!」
今までぽけーっとしてたシンがストフリの救出に向かう。
「あれ?キラさんすいません!デスティニーのバーニアが壊れたようで・・・・・・」
デスティニーも捕まっていた。いつの間にか。

その頃ガモフは、ようやっと戦場に到着した。
「こうなった以上ヴェサリウスは落とすしかない、か・・・・・・主砲用意!いつでも撃てるようにしておけ!!」
「「「了解!」」」
モニターの向こうでは、既に戦闘は始まっていた。
戦場は二分されていた。ミネルバを襲うアンノウン二機とインモラル、ヴェサリウスと交戦しているデスティニーとストフリ。
「フリーダムとデスティニーか・・・・・・しかしなんだか旗色が悪そうだな。よし、じゃあ俺が出てあの二機を援護する!
アスラン!艦の指揮はおまえに――」
そう言いつつイザークはアスランの座っている席に目を移したが、既にアスランの姿はなかった。

「計算どおり、ですね」
さして疲れた様子もなく、アビーは一息吐いた。
ドラグーンが全部破壊されたのもデスティニー、ストフリがあっさり捕らえられたのも、全ては計算の上に成り立っていた。
MSには戦車や戦闘機のような機動の制限がなく人体と同様に自在に動かす事の出来る兵器だが、しかし人間が動かして
いる以上、それには癖や法則が付きまとう。原作で最強と謳われたフリーダムを入念な研究で落としたシンのように、
それさえ見抜いてしまえば如何なMSとて落とすのはそう難しくない。ドラグーンのビームに至ってはあれの照準はコンピュータ
任せなので、読むのは容易いどころの話ではない。ストフリと魔改造されたヴェサリウスのCPUスペックはMeとVistaほどの
差があるので、ビーム見てから回避余裕でした。
「さて、次はあのインモラルですか・・・・・・」
厄介だな、とアビーは思った。インモラルには常識というものがまるで通用しないので、計算でどうにかなるものではない。
一応万一に備えてアビー専用数学定理解析フォルダを用意してあるが、上手く撃ち込めるかどうか。何せインモラルは
目の前で急に1800万ゼノのブルーツ波を浴びて大猿に変身しても不思議ではないのだ。
しかし、真に厄介なのはそんな事ではなかった。
真に厄介なのは、相手にとどめを刺す前に勝利を確信してしまったアビーの心にあった。
「――!?」
不意に上方から多数のビームが降ってきた。太さからしておそらく、ドラグーンからのもの。
(――撃ち洩らし!?)
ビームは無防備な艦上部に降り注ぐも、それは陽電子リフレクターで弾く。主砲クラスの砲撃をも防ぎきる事の出来る
陽電子リフレクターの前には、ドラグーンのビームなど俺の部屋に舞う埃のように軽いものなのだ。本棚の上とか
ヤバイ事になってる。
「無駄な事を――」
そう呟いてさっきのようにドラグーンを落とそうとロッドを伸ばすアビーだったが、すぐに違和感に気付いた。

「これは・・・・・・!?」
ドラグーンの動きが明らかに違った。さっきのドラグーンは後だしじゃんけんのように軽々と斬って捨てる事の出来る程度の
動きだったのだが、今のは動きの質からして違う。
――ドラグーンが、逆にテンタクラーロッドを避けたのだ。
(計算ミス?いや、そんなはずは・・・・・・)
不審に思いながらもロッドをドラグーンに向かわせる。しかし今度は逆にこちらの動きを読んでいるかのように、ドラグーンは
器用にロッドをかわしてビームを浴びせてくる。
これはいったいどういう事か。そう思いつつモニターを凝視するアビーだったが、ある一つのモニターを拡大させた事により
その謎は判明した。
「これは・・・・・・別のもの?」
ストフリのドラグーンは青である。しかしモニターに映った一味違うドラグーンは、暗い灰色だった。
そして次の瞬間、全く別方面のロッドが破壊された。
確認するまでもない。今ヴェサリウスを襲っていたドラグーンは全て囮。
「・・・・・・!?キラさんですかコレ?」
『違うよ』
本当の目的は、捕らえられたデスティニーとストフリの解放にあったのだ。
「いったい誰が・・・・・・!」
周囲を隈なく見回すと、闇に紛れるような濃灰色のMSを発見した。
そのMSは全てのドラグーンを回収した後、こう告げた。
『こちらはレイ・ザ・バレル。これより援護する!』

「ほ、本当にレイなの!?」
元同僚の突然の参戦に、ミネルバのクルーは皆驚きを隠せなかった。
「か、艦長!これでもうミネルバは救われましたねひゃっほう!」
能天気にはしゃぐアーサー。しかしタリアは、それとは全く別の事を考えていた。
「民間人がMSで戦場に出てくるなんて・・・・・・」
いくら戦闘技術に長けているとはいえ、レイは既にザフトを抜けた身だ。民間人の身でMSを乗り回し、そして戦場に介入
してくるという事は、よく分からないけど色々マズイ事になるんじゃないか?
『心配には及びませんわ』
と、ミネルバのモニターに包帯でぐるぐる巻きにされたピンクが映し出された。
「ひぃっ!?化け物!!」
そのあまりの異形さに、ミネルバのクルーは驚きを隠せなかった。
『化け物ではありませんわ!こちらはラクス・クラインですわ!!』
「ら、ラクス?アーサー、ラクスって名前の妖怪っていたかしら?」
「艦長!副艦長はお茶でズボンを濡らしながら気絶しています!」
ションベンを飲ませようという精神よりも、人がたくさんいるレストランで放尿するという行為こそどうかと思う。
『妖怪ではありません、プラントのアイドルにして最高評議会議員のラクスですわ!!』
「・・・・・・マジすか?」
『マジです。戦闘中ですから簡単に説明致しますと、彼の行為は議会で承認済みですので問題はありませんわ』
また貸しが増えましたけど、とラクスは心の中で付け足した。お礼に熊鍋をご馳走してくれると言ってきたが、その山には
クマがわんさか出ると聞いてラクスは丁重にお断りした。
『そういうわけですので。それでは失礼』
「あ、ちょっと待って」
『なんですか?』
「さっきから気になっていたのですが、その右手に持っているものはなんですか?」

『右手?なんの事です?わたくしに右手など存在しませんわ』
ラクスは右手を背中の後ろに隠した。
「・・・・・・。普通熱狂デッキはミーアザクとミーアさんを使うのでは?」
ミーアは第二能力のおかげで二枚目が来ても腐る事はあまり無い。ラクスは・・・・・・まぁ一積み?とりあえず今のラクスにように
三積みする必要性は全く無いと思われる。
『な、何を言っていますの!?わたくしに熱狂しているのですからわたくしを使うのは当然ですわ!』
「いや、そもそもそのイラストラクスさんじゃなくてミーアさんですから」
『・・・・・・えっ?』
「えっ、てアナタ・・・・・・ピンクザク映っているじゃないですか」
ラクスがピンクザクの手の上に乗ったという記録はない。
『・・・・・・。こんなデッキ解体ですわっ!』
カードを放り投げるラクス。遠くで「ふっ、ならば私の勝ちだなラクス嬢。喜べみんな、今晩はラクス嬢が焼肉に連れて行って
くれるそうだ」という声が聞こえた。
『な、何をおっしゃっていますのクルーゼ様!?まだわたくしは負けておりませんわ!ってかG事故起こしてるあなた相手に
投了するつもりはありませんわ!』
「あの、ラクスさん?」
『じゃ、頑張ってくださいましね!』
そう言うとラクスは慌てて通信を切った。
「ラクスさんにとっては戦争よりも焼肉の方が大事なんでしょうかねぇ」
タリアの横に立ったアーサーが、神妙な面持ちで言った。
「・・・・・・とりあえず着替えてきなさい、アーサー」

「レイ!おまえどうして――」
『話は後だ、シン。まずはこいつを片付けるんだ』
「で、でもどうやって・・・・・・」
『これを見ろ、シン』
レジェンドからデスティニーに、とある画像データが送られてきた。
「これは?」
『開いてみろ。とっても良いものだ』
「・・・・・・?」
言われるままにそのデータを開くシン。
「こ、これは・・・・・・!!!?」
そのデータに収められていた画像は、全て一人の少女が映ったものだった。
『旅行先で撮った写真を受け取ってきた。全ておまえに送るために撮ったそうだ』
「・・・・・・」
レイの声はもはやシンには聞こえてなかった。
――麦わら帽子を被ってピースする少女。
――ポッキーを口に加えながら顔だけ振り向いた少女。
――団扇片手に浴衣を着て微笑む少女。
――川の水で服がうっすらと透けているのにそれに気付かずはしゃぐ少女。
「・・・・・・(ゴゴゴゴゴ!!)」
マユ・アスカ。シンをシンたらしめている少女であり、結婚を前提に兄妹をやっている少女。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そして、シンの力を飛躍的に上昇させる種割れの元となる少女だった。
――すぱぱぱぱりーん!
シンのシード達が弾けた!

「うわ凄」
急に動きが変わりロッドをアロンダイトでぶった斬っていくシンを見て、思わずキラは洩らした。
「あー僕もそろそろ種割らなきゃなぁ・・・・・・でもどうやって割れるんだろコレ」
種を割るには何らかの外的要因が必要である。シンがマユに反応して種を割るように、何らかの条件をもってのみ種は
割れるのだ。
「どっかの原作では自由に割ってたけど、ここの僕は出来ないしなぁ・・・・・・」
ここのキラは悟っていないので、自由にぱりーん出来ないのだ。
「イージスあたりが組み付いてくれれば・・・・・・ん?」
視界の端に、こちらに向かってくる戦車が見えた。
「あれは・・・・・・」
目を凝らしてよく見ると、それは戦車ではなくMS。
ガズウートだった。そしてこんな最終局面までガズウートに乗っているパイロットは、CE世界ではただ一人。
そして次の瞬間、ストフリのコクピットに最も聞きたくない声が聞こえた。
『キラ!』
「げぇっ!?アスラン!!」
アスラン・ザラ。説明するまでもなく、キLOVEる一直線なお方だ。
『ああキラ会いたかったよキラ!おれはおまえに会えなくてずっと涙と精液で枕とパンツを濡らしていたんだ!おまえは
どうだ?もちろん濡らしていたんだよな!ああ分かってる何も言うな!おまえの想いは充分理解しているさ!こんな戦場
なんてさっさとオサラバして俺と一緒にホテルに行こう!もちろんスイートだ!スイートなルームでスイートな時間を二人で
共に共有しようじゃないか!いや我慢出来ない!俺がそっちのコクピットに行くからそこでしよう!なに、いつも(脳内で)
ヤってる事だ!敵が目の前に居ようとも俺達の営みは邪魔出来ないんだ!ああ俺は準備万端だ!おまえもそうだろ?
よし、じゃあハッチを開けてくれ!ああもう俺は射精している――』
「アスラン死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
――ぱりーん!
『ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
キラの種も無事割れ、アスランの乗るガズウートはバラバラにされた挙句にコクピット部分がミネルバのカタパルト
に蹴りこまれた。

「こんな事が・・・・・・!」
さっきまでの余裕の表情とは一転、アビーの顔は焦燥の色が濃く表れていた。
余裕であしらう事の出来ていたデスティニーとストライクフリーダムの動きが、明らかに違っていた。
アロンダイトを構えるデスティニー。小回りの利かない大剣のはずのそれは、一振りするだけで幾本ものロッドを斬り裂いていく。
両手にサーベルを構えるストライクフリーダム。最高速度のまま雷のような機動で動き回るそれは、すれ違ったロッドを
居合斬りの如き視認出来ない剣閃で斬り落としていく。
加えて一味違うドラグーンを持つレジェンドの的確なドラグーン捌きにより、無数かと思われたテンタクラーロッドは既に大半
が破壊されていた。

「――ッ!?」
至近距離でビームが霧散する。陽電子リフレクターのおかげでこちらに向かってくるビームは全て防ぎきる事が出来るので、
今の攻撃は戦闘に支障をきたすようなものでは全くないのだが、問題はそこではない。
今の一撃を、アビーは陽電子リフレクターが弾くまで気付かなかったのだ。予期せぬ方角からの予期せぬ一撃・・・・・・計算を元に
戦闘を行うアビーにとっては最もあってはならない事の一つであり、それは己の計算が崩れた事の証だった。
再計算をする時間は無い。そもそも計算でどうにかなるかも疑わしい。
「このままでは・・・・・・」
自分の目的が達成出来なくなる。このまま三機に邪魔をされ続けては、初めて仲間と呼べる人達と一秒でも長く過ごすという
目的が霧散してしまう。
世界への復讐などもはやアビーにとっては石ころほどの価値もない。少しでも長く二人と居る事だけが、今のアビーの
ただ一つの願いだった。
それなのに、彼らは邪魔をする。これから長い年月を共に過ごせるであろう仲間を持っている者に邪魔をされるなど、
とても許せる事ではない。
「・・・・・・」
テンタクラーロッドの操作を完全に放棄し、アビーはミサイル、主砲、副砲の全砲門を開く。
「これで終いです。どのような結果になろうとも」
そして、全ての武装を一斉に発射した。
狙いは付けない。付けたところで通用しないのは目に見えてるし、現にあの三機に向かったミサイルやビームは悉く落とされるか
かわされるかしていた。
しかしそれが狙いだった。当たらずとはいえあの量、いくらぱりーんした二人+レイとはいえ足を止めざるを得ない。
周囲を爆煙が包む。それに乗じてアビーは、ヴェサリウスを煙の中に潜らせた。
(このままミネルバに突っ込んで、一気に決着を着ける!)
あの三機を落とす必要はない。ミネルバさえ落としてしまえば勝利は目前だ。
ミネルバさえ落とせば彼らの目的は達成される。その後すぐに二人を回収してどこかへ雲隠れすれば、別れるまでの時間
くらいは手に入る。
三機はヴェサリウスの位置を見失っている。もちろんでかい図体故にすぐに見つかってしまうだろうが、その前にミネルバを
落とすのは容易い事。インモラルという不確定要素が気になるが、こちらの攻撃を防ぐのならばむしろ好都合。その隙に
フロスト兄弟がミネルバを落としてくれる。
八割方成功するであろうと咄嗟に考えたこの策。最大の不安要素の三機がこちらを見失ってくれたので、もはや策は
成功したと言っても良い。
そして爆煙を抜けて砲門をミネルバへ向けようとしたその時――

「――!?」
不意に、横から強い衝撃を受けた。
(バカな!?陽電子リフレクターは――)
いつの間にか陽電子リフレクター発生装置が破壊され、何者かに砲撃を受けたのか。
しかし発生装置は正常。どこも損壊する事なく、発生装置は今もなおリフレクターを展開している。
(では、何が――!?)
艦側面を映すモニターを見て、アビーは全てを理解した。
「ガモフ・・・・・・!」
ガモフの主砲だった。
もちろん陽電子リフレクターの前では主砲の一撃など・・・・・・しかも旧型であるガモフの主砲など、ヴェサリウスに傷一つ
負わせる事は出来ない。
だからガモフは、ヴェサリウスに主砲の砲門を突っ込ませたのだ。さすがの陽電子リフレクターも、艦船クラスの質量を
持った衝撃を防ぐ事は出来ない。
「こんな・・・・・・こんな事で、私は・・・・・・!」
手段を講じる間もない。
次の瞬間にガモフの主砲が発射され、ヴェサリウスは真っ二つに割れた。

機動戦士阿部さんSEED DESTINY X
第三十二話~問題はクラゲに変えた歯のその後~