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R-18_Abe-SeedDestiny_安部高和_08

Last-modified: 2007-11-06 (火) 21:35:51

ディオキア、市街地。
「ったく、なにやってんだよ阿部」
「ついカっとなってやった。でも反省はしてない」
阿部、スティング、アウルの三人は、ステラを探すために市街地を車で走っていた。
「しかしこの洋服ってヤツ、どうも肌に合わないねぇ」
「脱ぐんじゃねぇぞ?こんな所でドタバタ騒ぎは御免だからな」
「もう遅い」
「なっ!?アウル!とっとと服を着させろ!」
「こんな時のためのツナギってね!」
「ふむ、これならしっくりくる」
オープンカーの上で騒ぐ三人。周囲の注目をこれでもかというくらい集めていた。
「ちっ、どういう事だ?視線を感じやがるぜ・・・!」
「良い男は視線を集めちまうモンなのさ」
「そうか。なら悪くないな、こういうのも」
「なーなー、腹減らねぇ?」
「そうだな。よし、あそこの男根しゃぶしゃぶに行こう」
「どこにあんだよ、そんな店」
「脱がせばそこが男根しゃぶしゃぶ、さ」
「おいおまえら!ちったぁ真面目に探せ!!」
二人を叱責するスティング。スティングは真面目なのだ。
と、しばらく車を進めていると、不意にスティングがブレーキをかけた。
「ん?見つけたの?」
「いや、ちょっと待っててくれ」
そう言って車を降り、スティングはある店――本屋に入っていった。
「ったく、ステラを探すんじゃねーのかよ」
「いいじゃないかステラなんて。俺も行こう」
「あ、待てよ!俺も行くって!」
スティングに続き、阿部とアウルも本屋に入っていった。
「良い品揃えだ・・・・・・目移りしちまうぜ・・・!」
スティングが向かったのは参考書コーナー。古今東西ありとあらゆる学術書が揃っていた。
「ほう?スティングは勉強が好きなのか?」
「好きってワケじゃねぇが・・・・・・このご時世だ、学力はあって損はねぇだろ?」
「よく分からん。で、おまえは何になりたいんだ?」
「弁護士だ。俺の手でこの世全ての冤罪をなくしてやるぜ!」
エクステンデットは、戦闘用に調整、強化された人間です。
「それは頼もしい。もし俺が逮捕されたら弁護を頼むぜ?」
「それだけは勘弁してくれ・・・」
阿部が逮捕される時の罪状は明らかであり、それを庇いきる自信はスティングにはなかった。
「おいアウル、そろそろ出るぞ」
スティングは漫画コーナーで立ち読みをしていたアウルに声をかけた。
「オーケー・・・って、随分買い込むんだな」
「ああ。参考書はあって困るものじゃないからな」
まるで山のように積まれた書物。先週のすももももももでもも子が電車オタクに持たされたような
感じになっていた。委員長は俺の嫁。

「時にスティング。俺の本も一緒に頼む」
「いいぜ。上に積んでくれ」
そしてお会計。バーコードを読み取りながら、店員は本の名前を読み上げた。
「誰でも分かる因数分解が一点、五段活用習得への道が一点、円周率の謎が一点・・・」
次々と読み上げる女性店員。
「トムと現在完了が一点、奈良の大仏VS鎌倉幕府が一点、・・・薔薇族が一点・・・ヤマジュンパーフェクトが一点・・・」
ざわ・・・ ざわ・・・
「ちっ、どういう事だ?視線を感じやがるぜ・・・!」
「良い男は視線を集めちまうもの、なのさ」
「ふっ、そういう事なら悪くねぇ」
これでもかというくらい注目を浴びつつ、三人は本屋を出た。

「・・・・・・・・・・・・変態?」
ディオキア、崖。
目を覚ましたステラは、三人を見てこう言った。
「へ、変態・・・?」
「言うに事欠いて変態とは・・・」
「レイ、足を持ってくれ。リリースするぞ」
「だって・・・本当・・・」
ステラは阿部との小競り合いの中、人が変態かそうでないかを見分ける技能を開花させていた。
アスラン、レイは言わずもがな。彼らは並のゲイではない。
そして一見常識人っぽいシンだが、あのシスコンっぷりは間違いなく変態にカテゴリされるであろう。
「と、とにかく!ねぇキミ、どこから来たの?」
「・・・・・・あっち」
そう言ってステラが指したのは、水平線の彼方。
「シン。この女はもうダメだ。酸素が欠乏して脳細胞が死滅している」
「そのようだな。ここは何も言わず海に還してやるのが優しさってモンだぞ、シン」
「そ、そんな事言われたって・・・・・・」
あーぱーだがせっかく救助したこの少女。シンはこのまま見捨てる気にはなれなかった。
「とりあえず交番!交番に連れてこう!」
「シン!せっかくの休暇を無駄にする気か!?」
「踊らされてるぞシン!その娘に!!」
「だ、だけど・・・」
「はっ!?ま、まさかシン・・・・・・その娘に心を奪われたのか!?」
「はぁ?何言ってんだレイ。俺はマユ一筋――」
「そうなんだなシン!?何故だ!同じ金髪同じ美形、違うのは胸のあるなしじゃないか!!どうして俺じゃ
ダメなんだシン!答えろ!!」
「落ち着けレイ!おまえとんでもない事を口走っているぞ!聞き捨てならない言葉と共に!!」
「れ、レイ?おまえいきなり何を――」
「聞くなシン!レイは既に錯乱している!!」
「それは見ればわかりますけど・・・」
突如ロドニアのラボを見た時みたいになったレイを必死になだめるアスラン。
そんな緊迫した状況の中、なんとも形容しがたい気の抜けた音が三人の耳に届いた。
ぐ~~~~~~~~
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・お腹、空いた」

ディオキア、ガスト。
「がつがつがつがつ!!」
とりあえず昼飯時という事で、四人はガストに赴いたのだが・・・・・・
「うわぁ、すごい食べっぷりだ・・・」
よほどお腹が減っていたのか、ステラは貪るように運ばれてきた料理を食べていた。
「おい女!もっと静かに食べろ!みんなが見ているじゃないか!」
注目をあびる四人。しかしその注目の原因はステラの食べっぷりにではなく、四人が釣り武装、タキシード、ずぶ濡れ、赤服
といったファミレスに不似合いな格好をしているからこそなのだが。
「だ、大丈夫かな、お金・・・・・・」
財布の中をちらっと覗くアスラン。諭吉の数は心許なかった。
「アスラン。こういう場所で財布の中を覗かないでください。怪しまれます」
「だけどこの女・・・・・・なぁレイ、これって経費で落ちるかな?」
「落ちないでしょうね」
「だよな・・・・・・。一応訊くが、割り勘ですよね?」
「何を言っているのですアスラン。ここは年長者が払うべきです。こういう時に威厳を見せないで
いつ見せるというのですか?」
「いや、それはMS戦で・・・・・・」
「ガズウートで、ですか?」
「そ、そうだった・・・・・・。俺は、ガズウートのパイロットなんだ・・・・・・アカデミートップのこの俺が・・・」
「・・・・・・すみません、配慮が足りませんでした」
「いいんだレイ・・・・・・で、割り勘ですよね?」
「それとこれとは話が別です」
「とほほ・・・・・・」
泣きそうになるアスランの前に料理が運ばれてきた。
「こちら、ロールキャベツでございます」
アスランはロールキャベツが好物なのだ。決してワカメが好きだという事はなく、ディアッカは炒飯を作らない。
「ま、まぁとにかく今は食べよう。お金が足りなかったら艦長にでも連絡すればいいし・・・」
「それは期待できませんよ、アスラン。艦長は一日中エステに行くとおっしゃっていましたから」
「そうなのか・・・・・・艦長ってお金あるんだな」
月給30万の赤服では、とてもそうはいかないだろう。
「セイバーが思いのほか安かったから、懐が暖かいのでしょう」
「そうか・・・・・・ってレイ、それって横領っていうんじゃないのか?」
「気にしてはいけません。俺は気にしません」
「何か暗黙の了解があるみたいだな・・・まぁいい、それより――」
ロールキャベツに手をつけようとしたのだが、目の前には空になった皿しかなかった。
「な、ない!!俺のロールキャベツがない!!」
「あ、それならステラが食べちゃいましたよ?」

「な、なんだと!!?」
「うぇ~いがつがつがつ!」
「てめぇこのアマ表出ろや!!」
「アスラン!大人気ないですよ!!」
「・・・・・・そう言うおまえも食われてるぞ、目玉焼きハンバーグ」
「シン、人払いを頼む。胃が破裂するまでドリンクバーを流し込んでやる」
「ま、まぁまぁ二人とも!ほら、ステラも謝って!」
「うぇ~い」
そう言って、ステラは中指を突き立てた。
「「死ねこのクソ女」」
「おまえが死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ファぶふ!!!??」
アスランの顔面にステラの鉄拳がめり込んだ。

「あ、いたいた!おーい、ステラ~!」
「・・・・・・?」
ガストの前で座り込む四人(内一名重傷)の前に、一台の車が止まった。
「あ・・・・・・アウル・・・」
「ったく、どこほっつき歩いてたんだよ」
「海・・・・・・流れてた・・・」
「ハァ?ま、いいや。とにかく帰ろうぜ」
そう言ってステラを車に乗せるアウル。ちなみに阿部とスティングは本に没頭していた。
「っと、あんたら、ステラと一緒にいた人?」
ぼろぼろになった三人にアウルは声をかけ、気絶しているアスランを除く二人はこくんと頷いた。
「その人・・・なんなんですか?」
「俺の一張羅が・・・・・・」
「はは・・・こいつちょっと癇癪持ちなんで」
「癇癪ってレベルじゃなかったんだけど・・・」
ステラが暴れたおかげで、ガストは営業が出来ない状態にされてしまった。
修理費等の請求はデュランダルのもとへと行く事となり、ミネルバはまた予算を減らされてしまう憂き目を見るのだが。
「さっさと連れ帰ってくれ。正直迷惑だ」
「ごめんなホント。ほら、おまえも謝れって」
「ごめん・・・シン・・・」
「い、いや、別にいいって!そんな改まんなくても!」
「俺には一言の謝罪もないだと・・・?」
「シン・・・・・・これ、あげる」
そう言ってステラが差し出したのは、綺麗な色をした貝殻だった。
さっき食ったパエリヤのやつだった。
「あ、ありがとう・・・・・・」
「シン・・・・・・ばいばい」
「う、うん、ばいばい・・・」
そしてステラを乗せた車は、遠くへ走り去っていった。
「さぁ帰るぞシン。休暇は終わりだ」
「ああ。だけどアスランさんはどうしよう・・・」

「大丈夫だ。『FUCK ME』と書いた看板の下にでも放置しておけば誰かが拾ってくれる」

ディオキア、ザフト軍基地。
「やぁタリア。久しぶりだね」
デュランダル議長が、ミネルバの様子を見にやってきた」
「どうも、議長。ですが、タリアというのはいささか馴れ馴れしすぎるのではありませんか?」
「む、すまん。いやはや、別れた女房とはもはや赤の他人か、はっはっは」
タリアとデュランダルは元夫婦だった。しかしお互い忙しい身。互いの気持ちがすれ違い、いつしか仲は
冷め切り、そして離婚に至ったのだ。まぁ半分はタリアの浪費癖が原因なのだが。
「それで、調子はどうかね?」
「はい。アスランが秒殺された以外は概ね順調であります」
「そうか・・・。ところでタリ・・・グラディス艦長。そちらに一人補充要因を送ったのだが、もう到着
しただろうか?」
「ハイネ・ヴェステンフルス、ですね。先ほど隊員達の方へ赴きましたが・・・・・・まさかフェイスが
送られてくるとは・・・」
フェイス――正式にはFAITHと書く――とは、議長直属の親衛隊の総称だ。その権限は艦長と同等、
またはそれ以上であり、戦時における指揮の権限も有している。その月給は赤服とは比べるべくもなく、
これに任命される事がザフト軍人の目標となっていた。ちなみに原作でパトリックを撃ったレイ・ユウキ
さんもフェイスです。たぶん。
「それくらいミネルバに期待しているという事だよ、タリア・・・・・・」
「グラディス、です議長」
デュランダルが肩に回した手を、タリアは払いのけた。

ディオキア、ザフト軍基地、カフェテリア。
雑談しながらカフェテリアへと赴いたミネルバ隊の四人は、そこのテーブルに着く一人の赤服に
声をかけられた。
「よう!おまえらが噂のミネルバ隊か?」
オレンジ色の頭、広めのおでこ。胸に羽に見えなくもないバッジを付けた彼こそ、デュランダルがミネルバに
送り込んだ新隊員、ハイネ・ヴェステンフルスだった。
「は、はぁ、そうですけど・・・あなたは?」
「俺はハイネ・ヴェステンフルス。今日からミネルバに厄介になる者だ。よろしくな!」
ぱちっとウインクをするハイネ。四人はリアクションに困った。
「・・・・・・って、ミゲルじゃないか!?」
そう反応したのはアスラン。ハイネの声は、ミゲルにクリソツだった。
「よく間違えられるがな。だが俺はミゲルじゃない、ハイネだ」
中の野郎の都合で、ハイネとミゲルの声は判別がつかなかった。まぁ中の野郎はアレですしねぇ。
えるしってるかなかのやろうはるろけんにでてたんだ。
「そ、そうですか。しかし、すごいそっくりですね・・・」
フェイスの紋章を見つけたアスランは、思わず敬語になっていた。

「ああ。俺とミゲルは昔はルームメイトでな。奴にかかってきた電話に奴のフリをして出た事もあるんだぜ!?」
「確かにすごく似てますしね・・・」
「・・・奴にかけてくる奴はみんな女でな・・・・・・俺は奴のフリをしながら血涙を流したモンさ・・・・・・」
ハイネは涙ぐんでしまった。ハイネはフェイスなのに、女にまったくモテないお人なのだ。
「あの、ヴェステンフルスさん・・・?」
「ハイネでいいぜ。あと敬語もナシだ。もっとオープンに行こうぜ!!」
そう言って親指を突きたてるハイネ。四人はリアクションに困った。
「よぅし、まずは自己紹介からだ。じゃあ端から頼むぜ!」
「は、はい!俺・・・自分はシン・アスカ!インパルスのパイロットをやっています!」
「ほう、おまえさんが?なかなか良い目をしているな!気に入ったゼ!」
「はぁ、どうも・・・」
「で、次はおまえさんだ」
「自分はレイ・ザ・バレルです。ブレイズのパイロットで、今日まで戦闘の指揮を執っていました」
「パツキン君が指揮官か。なるほど、頼りになりそうな奴だ!」
「ありがとうございます」
「・・・・・・レイ、『ぱつきん』って何?」
「金髪の事だ。昔はそう呼んだらしいぞ」
「へぇ・・・」
「私はルナマリア・ホークです。ザクのパイロットをしています」
「ヒュ~♪マブいじゃないの!」
「ど、どうも・・・?」
「・・・・・・レイ、『まぶい』って何?」
「眩しい女・・・・・・つまり美人だという事だ」
「そうなんだ。よく知ってるな、レイ・・・」
「ああ。ギルおじさんが良く使っていた」
「ギルおじさん?」
「・・・いや、なんでもない。忘れてくれ」
「俺、ルナちゃんの彼氏に立候補しちゃおうかな?」
「え?いや、それはちょっと・・・・・・」
「・・・・・・レイ、彼氏って立候補するものなの?」
「昔はな。そうやって立候補しといて己をアピールするのだと、おじさんは言っていた」
「あれ?もしかしてルナちゃん、付き合ってる奴いるの?」
「いえ、それはいませんけど・・・・・・」
「なら俺にもチャンスはあるな!ルナちゃん、俺の雄姿を見ていてくれよ?」
「・・・・・・はぁ」
ルナマリアは既に疲れきっていた。
「自分はアスラン・ザラです。前までセイバーのパイロットをやっていました」
今はガズウートのパイロット・・・・・・とは言えなかった。
「おまえさんの事は知ってる。アカデミートップの奴だろ?」
「ええ、まぁ」

「なんだいなんだい、俺がいなくても平気そうじゃないか、この隊は」
「いえ、そんな事は!フェイスが来てくだされば、これから先の戦闘が随分と楽になります!」
「嬉しい事言ってくれるな、アスランは。よし、今日から俺とおまえは親友だ!」
「・・・・・・・・・・・・どうも」
「「「・・・・・・」」」
四人は思った。この男の相手をするのはとても疲れるなぁ、と。
「よし、それじゃあ今日からこの新生ミネルバ隊で頑張るぞ!」
「おー!」
と、拳を突き出したのはアスランだけだった。アスラン着任時の時もそうだったが、ハイネ、アスランとシン、レイ、ルナの
間には、時代という大きな壁が立ちはだかっているのだ。
「おいおいおいおい!おまえら元気ないぞ!?ほらもう一回!頑張るぞ!!」
「おー!」
「「「・・・おー」」」
ただハイネは、全員が揃うまで何度でもやらせる男なのだが。こういう先輩、昭和の頃にはたくさんいたのだ。
こうして、所々に昭和の香りを漂わせる男ハイネ・ヴェステンフルスがミネルバに配属された。

ミネルバ、甲板。
夕日を背に、アスランとハイネは語り合っていた。
「いい夕日だな、アスラン」
「あ、ああ・・・・・・」
語り合うといっても、別に大した話をしているわけではない。単なるハイネの趣味である。
ハイネは後日、他の隊員ともこうして語り合うつもりでいた。隊員にとってはいい迷惑だ。
おそらく彼は、河原があったら殴り合いをしたいと思っている男であろう。
――へへ、やるじゃねぇか・・・
――おまえもな・・・
こんな感じで。若かりし頃の浅野ゆう子がヒロインを演じるドラマにありそうな場面である。
「なぁアスラン。戦争ってなんなんだろうな?」
「へい?い、いや・・・なんなんでしょうね?」
「おいおい、敬語はナシって言ったろ?俺らはホラ、親友なんだしよ!」
そう言ってアスランの肩をバシっと叩くハイネ。
「そ、そうだな・・・はは・・・」
昔からの知り合いならともかく、本日初対面の男に親友呼ばわりされては困るしかない。
アスランは気まずい思いでいっぱいだった。

「・・・・・・おいレイ、助けてくれ」
ハイネが夕日を見つめている隙に、襟に仕込んだマイクに話し掛けるアスラン。
『しっかりしてください、アスラン。彼がどういう話をするのかをちゃんと示してください』
物陰に隠れ二人の様子を窺うレイは、後日自分もこの場に呼び出されると直感し、アスランに調査を依頼したのだ。
しかし今のところ分かっているのは、ひどく間が持たないという事だけだった。
「俺には無理だよ・・・・・・もうしんどいっす」
『アスラン!仮にもアカデミートップの男でしょう!?意地を見せてください!』
「とほほ・・・」
「なぁアスラン・・・・・・おまえ、どことなら戦いたい?」
不意にそんな話を振られた。正直返答に困る。
「へ?え、えっと・・・・・・連合軍?」
「おいおい、それじゃ普通じゃないか!もっと気の利いたコト言えって!」
ばしばし!
「す、すいません・・・じゃなくて、すまん」
「ははっ!ま、どことだっていいけどな!」
「どことだっていいんかい・・・・・・」
「だけどなアスラン・・・・・・割り切れよ?でないと死ぬぜ?」
ちなみにハイネはこれが言いたかっただけである。
「はぁ・・・・・・」
『・・・・・・』

二人の様子を見てレイは思った。これからの任務は、酷く疲れるものになるのだろうなぁ、と。

ミネルバ大浴場、『女神湯』。
「ふふふ・・・努力の甲斐あって少しはフサフサになってきたぞ」
相変わらず髪を丁寧に洗っているアスラン。オーブにいた頃はウナトという反面教師がいたため、
この二年間のアスランの髪に対する努力は並大抵のものではなかった。
実際は前髪を伸ばして後退を誤魔化しているだけなのだが本人がフサフサと言っているので
ほっといてあげてください。
「ようアスラン!背中流し合おうぜ!」
「げぇっ、ハイネ!?しまったこれはレイの罠だ!」
「いきなり何言ってんだ。俺のビッグマグナムにびびってんのかい?」
「い、いや別に・・・・」
実際別にビッグなわけではない。むしろリトル。しかも帽子をかぶっている。
しかしハイネの辞書に股間を隠すという文字はない。もちろんタオルは肩の上が定位置である。
「おいおい、手拭いを腰に巻いたりして女々しい奴だなぁ。取れ取れこんなもん」
「べ、別にいいじゃないですか!ほっといてください!」
「親友同士で敬語はナシだっつったろ。よし俺が取っちゃる!男同士だ、恥ずかしがらずに全てをさらけ出せ!」
アスランのタオルを剥ぎ取ろうとするハイネ。性的な意味ではなくて。
「男同士とかそういう問題じゃなくて!というか俺はむしろ男の方がってうわマジやめて勘弁してください」
「ミゲルに聞いたぞ、包茎だからって気にすんな!俺もお前と同じハゲで包茎だけど何も支障ないぜ!」
「ほ、ほほほ包茎ちゃうわ!ハゲでもないわ!」
何の支障もないことはなく、それで女に振られたこともあるのだがハイネはポジティブなのである。
「ふっ・・・割り切れよ。でないと死ぬぜ?」
「結局それが言いたいだけか!」

「んふふ~。シンとお風呂~、お、ふ、ろ~♪」
スキップで女神湯に向かうレイ。シンは人と風呂に入るのは嫌な性格だったが、レイの熱烈なアプローチに
一度くらいならいいかと思ってしまったのである。レイにとっては一度でもチャンスがあれば十分なのだが。
「おいおい、あまりはしゃぐなよ。マユみたいなやつだな」
「・・・・マユ・アスカとはいつまで風呂に入っていたんだ?」
「そりゃ実家にいた頃はずっと――」
「おかしいぞシン!お前ら兄妹は異常だ!普通の妹ならお前と一緒に風呂に入りたいはずがないだろう!?」
「え・・・そうか?レイだって入りたがってるじゃないか」
「俺はいいんだ。俺たちは親友だからな」
「親友ってそんなもんなのか・・・?」
「そんなもんだ。今ごろアスランとハイネも一緒に入ってるかも知れんぞ」
『親友同士で敬語はナシだっつったろ。よし俺が取っちゃる!男同士だ、恥ずかしがらずに全てをさらけ出せ!』
「・・・・・・・・ハイネの声だな」
「・・・・・・ああ」
「風呂はやめとくか。アスランさんには犠牲になってもらおう」
「いや待てシン!俺たちも友情を深め合わないと!いやしかしあそこへ行くわけには――ってシン!」
速攻で踵を返し部屋へと戻るシン。そしてレイには次のチャンスは巡ってこないのであった。

「さて、そろそろ上がるか。お前もいつまでも浸かってるとのぼせるぞ?」
スパーン!スパーン!
ハイネはガニ股になりタオルで自分の股間を叩いてから去っていった。
アスランが風呂で得たものはMS戦闘5回分くらいの疲れと大量の抜け毛と押し付け友情だけであった。