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R-18_Abe-Seed_安部高和_15

Last-modified: 2007-12-27 (木) 10:29:21

『阿部』
プラント周辺空域。
ジェネシスを吸収した阿部に、クルーゼからの通信が届いた。
「ようクルーゼ。調子はどうだい?」
『上々、といったところだ。そんな事より阿部。おまえに頼みがある』
「なんだよ水くさい。何でも言いなって」
『うむ。おまえにジェネシスの始末を頼みたいのだが・・・』
ジェネシスはそれはそれはもうスッゲー巨大な兵器であり、MS一機では到底どうにもできない。
しかしインモラルならば可能とクルーゼは踏み、阿部にそう申し出たのだが・・・
「あいよっ。阿部さんにお任せだ」
『・・・・・・そ、そうか』
まさかこんなにあっさりOKされるとは思ってなかった。
『ではジェネシスは任せる。私はやらねばならぬ事が出来てね・・・』
「OKクルーゼ。お互いもう一踏ん張りだ」
『では任せたぞ』
そう告げて、クルーゼの乗るプロヴィデンスはプラントへと向かった。
「さて、と」
ジェネシスの方に向き直り、インモラルはジェネシスを引っ掴む。
「良い男を殺す兵器・・・・・・阿部さんの前には、こんなモノは無用の長物!」
そしてそのまま体を思いっきり捻らせて――
「っそぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!」
――ジェネシスを上方に投げ捨てた。
宇宙には引力が存在しない。つまり、一度ある方向への慣性が働いてしまえばそれっきり、
誰かが止めなければ永遠に直進し続けるしかない。
「さぁて、始末も済んだ。あとは・・・・・・あの少年だ」
そしてインモラルは、エターナルの元へと向かった。

 

宇宙空間。
――ジェネシスは
二度とプラントに戻れなかった。
兵器とオブジェの中間の存在となり、永遠に宇宙空間をさまようのだ。
そして壊れたいと思っても壊れなかったので
――そのうちジェネシスは、考えるのをやめた

 

エターナル、ブリッジ。
ラクス・クラインは、非常にご立腹だった。
自身の目論みは全てご破算・・・核もジェネシスも、彼女以外の手によって殲滅された。
「・・・・・・」
ラクスは、憂いを帯びた表情で語る予定だった中学生ポエムの原稿を握りつぶした。
――どういう事ですの!?核もジェネシスも、わたくしの手の及ばないところで殲滅されて
しまって・・・!!これじゃあわたくしの『全世界のアイドル、ラクス・クライン誕生』の計画が
台無しではありませんか・・・!!せっかくわざわざ連合にNJキャンセラーのデータを渡して、
そしてザフトにジェネシスを使うように仕向けたというのに!戦乙女の名がジャンヌダルクから
ラクス・クラインに取って代わる日になるはずでしたのに、まったく余計な事をしてくれて・・・!!
ラクスはプラントの間ではそれはもう唯一無二の超人気アイドルだが、地球ではその知名度とは
裏腹に人気はあまり無い。コーディネーターの間で大人気な、別にナチュラルにとっては取るに
足らない女・・・・・・地球ではそう認識されていた。
それを良しとしないラクスは、宇宙地球問わず誰もが支持する超人気アイドルになろうと画策した
のだが、残念な事に核もジェネシスも自分以外の手によって殲滅・・・・・・
自身の手でそれらを破壊して英雄になろうというラクスの計画は、ここに頓挫してしまった。
『ハロ、ハロ!ラクス、イライラ!ラクス、ゴリップク!ラクスウワラバ!?』
ラクスは足元で騒ぎ立てるハロ(コバルトブルーちゃん)を無言で踏み潰した。
――まだ、まだ手はあるはずですわ!何か、何か策が・・・
ラクスがそう考えていると、一機のMSがこちらに向かってきていた。
『キラ!!』
ジャスティスガンダム。キラを求め、アスランが単機で特攻してきた。
しかし、ラクスが目を付けたのはこの機体ではない。
ラクスが目をつけたのは、この機体と行動を共にしているであろう、あの肉色のガンダム・・・
――・・・これですわ!!
ラクスはマイクを手に取り、全ての兵に告げた。

 

「アスラン!!!」
「わたくしはラクス・クラインです。皆様、お聞きください。プラントを襲った核も、連合艦隊を
焼き尽くそうとしたジェネシスも、もうここにはありません。・・・・・・しかし、それで本当に終わった
のでしょうか?わたくしはそうは思いません。この宙域には、まだ恐ろしい敵が潜んでおります。
それは皆様もご存知のはず・・・・・・パイロットの精神を壊す、あの忌まわしき色をした忌まわしきMS

 

・・・そう、インモラルガンダムです。あのガンダムを落とさない限り、戦争に終わりはないとわたくしは
考えます。どうか皆様、ご協力をお願いします」
ラクスの考えた策・・・それは、核とジェネシスに代わる敵を作る事だった。
幸いにして、阿部の行いはノンケにとっては脅威的なもの。敵にするのは至極簡単だった。
――そしてそのインモラルを、皆の前でわたくしの艦が落とす・・・これしかありませんわ!
インモラルを落としたとあれば、自分は一躍英雄だ。実際落とすのは別の人間だが、それを
指揮したのがプラントのお姫様だと知れば、注目は間違いなく自分に来る。
これが、ラクスがこの局面ではじき出した策だった。
「キラ、聞こえましたわね?あなたはあのインモラルを落とすのです」
『で、でも・・・』
「もはや躊躇っている場合ではありませんわ。彼を落とさねば戦争は終わらないのです。

 

何も怖がる必要はありませんわ。あなたは今、最強のMSに乗っているのですから・・・」
『だけど、あのMSは普通じゃないんだ!常識とか道理とか、そういったのを――』
「キラ。覚悟を決めてください。そして今、こちらにジャスティスが向かっていますわ」
『あ、アスランが!?』
「ええ。あなたにとって彼は敵・・・倒さねばなりません。それとも、イヤだと言って逃げ出しますか?」
『そ、それは・・・』
キラは思った。おそらく・・・いや絶対、あのストーカーは逃げても逃げても追いかけてくる、と。
「もうお分かりでしょう、キラ。あなたは戦うしかないのです。逃げた先に平穏な日々がないと分かっている
のであれば、なおさら」
『・・・・・・分かったよラクスさん。僕、やってみるよ!』
「その意気ですわキラ。帰ったら頭をナデナデして差し上げますわ♪」
『それは要らないけど・・・キラ・ヤマト、フリーダム発進します!!』
そして、フリーダムはエターナルから発進した。

 

「・・・・・・さて変態さん、わたくしのために散ってくださいましね♪」

 

高出力ビームサーベルをジャスティスに振るうフリーダム。
『キラ!!』
全く同じ出力のビームサーベルで、ジャスティスはそれを受けた。
「今日こそ君を倒すッ!!覚悟しろアスラン!!」
『俺だって!今日こそおまえを連れ帰る!!おとなしくするんだキラ!!』
互いが自身の想いを吐き出しつつ、ビームサーベルは交錯する。
消えてほしいと願うキラと、傍に置いておきたいと願うアスラン。
見事なまでの平行線だった。
「いい加減にしろアスラン!僕は君の気持ちに応じる気は全然全くこれっぽっちもないんだ!」
『おまえこそいい加減にしろキラ!いつまでそうやって意地を張るつもりだ!いい加減素直になれ!!』
「だから何度も言ってるだろ!!僕はノンケなんだ!!君とは違う!!」
『キラ!またそうやって・・・・・・どれだけ俺をじらせば気が済むんだ!!』
「これは本心なんだ!どうして分かってくれないんだ!!」
『分かっているさ!ツンデレというやつだろう!?だがそろそろ素直になってもいい頃じゃないか!?』
「こいつマジうぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
フリーダムをハイマットモードにし、一斉砲撃をかけるキラ。普段ならばコクピットを避けてロックする
のだが、今回に限っては遠慮なしにコクピットをロックした。
『・・・・・・!?』
しかしそこは腐ってもアスラン。巧みな操縦技術で、網のような砲撃網を回避した。
しかしそれはキラも承知の上。射撃と同時にエターナルへ向かい、ミーティアを射出させた。
『そ、それは!?』
早い話がデンドロビウム。プラモ狂士郎がパテを駆使して見境無く武器を付けたようなその姿は、
一機で千に値すると謳われるフリーダムの追加武装、ミーティアだった。
「覚悟しろアスラン!!」
そして一斉射撃。ハイマットフルバーストなどとは比べ物にならないくらいの量の火線が、ジャスティスに
向かって走った。
『くそっ!!』
慌てて回避するジャスティス。しかしその量はハンパではなく、最新機のジャスティスも被弾を
余儀なくされた。
「とどめだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
冗談みたいに長いサーベルを振りかぶるフリーダム。
これでアスランの命運は尽きたかと思われた瞬間、彼が割って入った。
「――!?」
肉色のガンダム。アスランの前に立ち、彼はその巨大なサーベルを片手で受け止めていた。
『ひゅう♪なかなかガタイの良いMSじゃないの』
インモラルガンダム。
キラがアスランに気を取られている時に全てを終わらせて、彼はキラの前に立っていた。

 

ザフト軍総司令部。
そこでは、パトリックが怒鳴り散らしていた。
「何故だ!!何故ジェネシスは連合を焼かなかったのだ!!?」
「そ、それは・・・」
「ええい!ならばすぐにエネルギー充填だ!すぐに再発射するぞ!!」
「し、しかし!これ以上は無意味かと――」
「黙れ!これは命令だ!!あのジェネシスは飾りではないのだぞ!!」
そう言ってモニターに映ったジェネシスを指さすパトリック。
その直後、信じられない光景が目に映った。
「・・・・・・は?」
ジェネシスが、ぶん投げられた。
そのあんまりな光景にパトリックを始めとする司令部の全将兵はあっけに取られていた。
と――
「ここにおいででしたか、議長」
ラウ・ル・クルーゼ。彼がこの場にやってきた。
「く、クルーゼ!貴様、何をしている!!さっさと持ち場につけ!!」
そう怒鳴るパトリックに、しかしクルーゼは不敵な笑みで返した。
「ふっ・・・・・・パトリック・ザラ。あなたを逮捕する」
そう言って、クルーゼは銃を突きつけた。

 

「な、なんだと!?」
「罪状はジェネシス無断使用及び大量虐殺未遂。酌量の余地はありません」
「ば、バカな!!何故私が逮捕されなければならん!!」
「ジェネシスを使ったのです。逮捕されて然るべきかと思います」
「何を言うか!!あれは兵器だ!!使わずしてなんの意味がある!!」
「意味ならあります、議長。あの兵器は言わば示威行動・・・要は地球軍に無理難題を
押し付けられぬようにするためのものなのです」
「しかし、我らは核を撃たれたのだぞ!?ならばこちらも使って良い道理はあるはずだ!!」
「核をプラントに到達させぬために我々は尽力したのです。結果、プラントには一基のミサイルも
届かなかった・・・・・・それで終わりです。核が消えた今、ジェネシスを撃つ理由はないのですよ」
「馬鹿な事を言うな!ならばもし核がプラントを焼いた場合、泣き寝入りしろというのか!?」
「仮定の話に意味はありません。核は一基も到達せず、地球軍には戦力が残されていないという
現実下での話をしているのです。それなのにあなたはジェネシスを放った・・・もはや戦力の微々たる
連合軍に、味方もろとも巻き込んで、ね」
「そ、それは・・・!」
「核の迎撃に使用したのならまだ大義名分はあった・・・しかし、あなたは核の尽きた敵に向かって、味方を
巻き込むのを承知でジェネシスを放った。・・・議長、戦争にもルールはあるのです。相手が先にそれを
破ったとはいえ、こちらも破ってどうなりますか?最後の一人になるまで争いますか?互いが互いの
身を食い合い、滅ぼしあうのがあなたの描いた戦争なのですか?それはもう、戦争犯罪者の考え方ですよ」
「し、しかし!ナチュラルは・・・・・・我々を弾圧しているのだ!コーディネーターだからという理由だけで!」
「それは当然です、議長。遺伝子をいじって身体と頭脳を強化する・・・神をも恐れぬその行為、それは
コーディネーターの犯した業なのですよ。よもやあなた方コーディネーターは、ナチュラルに素直に
受け入れられるとでもお考えで?」
「だから、私はナチュラルを滅ぼしてコーディネーターの安息を――」
「そこが間違いなのです、議長。業を犯してなおナチュラルとの共存を目指す・・・それこそがプラント
最高評議会の議長であるあなたの仕事だったのです。その考えを提示していたシーゲルを排斥
した瞬間から、あなたは道を違えてしまったのですよ」
「・・・・・・」
「お話は終わりです、議長。さぁ諸君。この犯罪者を引っ立てるのだ!」
クルーゼの号令に、パトリックの傍にいた将兵は彼を拘束した。
「各員、もう戦争は終わりだ!全軍に伝えよ!!」

 

そしてクルーゼは、この愚かな戦争の終幕を告げた。