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SCA-Seed傭兵 ◆WV8ZgR8.FM 氏_受難と邂逅

Last-modified: 2009-04-11 (土) 23:58:05

「……正直、もうやってられないわぁ……」

 

酒場で呑んだ暮れる美女が、一人。
理知的な顔は酒気に酔い蕩け、中々に熟れた華奢な肉体(カラダ)は熱気に中てられ
火照りきって汗ばみ異様な程の色気を放っていた。
飢えた男(ケモノ)ならば迷わず喰らい付いてしまう程に。

 

場所は真夜中の歓楽街。
それも場末の、である。
ここが治安の良い都市――
――例えば大西洋連邦首都ワシントンやプラントのアプリリウス市――などならば、
何事も起こらず彼女は警察に保護され無事家に帰りついただろう。

 

だが、此処はワシントンでもアプリリウス市でもない。

 
 

ナチュラルにプラントを売り渡したとプラント評議会を放逐され、
更に実家からも絶縁を言い渡された彼女が地球に下りたのは、約五年と四ヶ月前。
――下りて直ぐに、実家の没落を知った。

 

二度目の大戦が終結したのは約三年と半年前。
――自分が推薦したギルバート・デュランダルの死とクラインのクーデターの噂を聞いた。

 

彼女がこの都市――かつてローエングリン砲台が設置されていた――に流れ着いたのは二日前。
――もう、何もかもがどうでも良い――そんな諦観の意を抱きながら。
六年以上の彷徨の中、失える物は全て失いながらも生きてきた彼女は、擦り切れていた。

 
 

そんな彼女の隣に、丁度腰掛けた男が居た。

 

半ば錆付き、どう見ても壊れている桃色の携帯電話を首からに掛けた黒い髪の男。
かろうじてザフトの軍服と判別できるボロボロの赤い服を纏った、赤い瞳の男。
澱みながらも強い光を宿す赤い瞳を持った男。

 

「――失礼。アイリーン・カナーバ女史ですね?」

 

声をかけられた女――アイリーン・カナーバが首を廻らせる。
その視線と真紅の瞳が絡み合った。

 
 

珈琲