Top > SCA-Seed傭兵 ◆WV8ZgR8.FM 氏_古城の傭兵(仮)_劇場版先行FINAL
HTML convert time to 0.006 sec.


SCA-Seed傭兵 ◆WV8ZgR8.FM 氏_古城の傭兵(仮)_劇場版先行FINAL

Last-modified: 2009-08-11 (火) 23:59:46

「……レイ、議長、コニール、アビー、アマルフィさん、ヴィーノ、ヨウラン、
 ファッターフ、ケーニヒ中佐、陛下……もうすぐだから……」

 

乾いた血液のような褐色と、深遠じみた漆黒で彩られた機体のコクピットで、
黒いパイロットスーツの男が呟く。
淡々とした口調で呟かれる言葉は何れも果てなく虚ろで、同時に地獄の業火の如き憤怒を湛えている。

 

所々に焼け焦げや亀裂が走ったヘルメットとパイロットスーツに覆われた膚にも、
深い傷跡が幾重にも刻まれていた。
特に酷いのはその顔だろう。
新雪の如き純白の膚の右半分には頬の下から額まで達する無惨な裂傷が走り、その右目を完全に潰している。
だがそれ以上に深い傷跡が、シンの擦り切れた精神には刻まれていた。

 

ヴン、と音を立て男の正面のモニターに光が灯り、暗黒の宇宙に浮かぶ砂時計――プラントが映し出された。

 

『レ、ドアイ、間も無く―ザッ―作戦開、始時こ―ザザッ―です』

男の右側に置かれたアタッシュケースのような箱から、機械的な声が発せられる。
形見の携帯電話のメモリーを核に寄せ集めの部品で構成された戦闘用サポートAI故か、
その音声はノイズが混じり、本来の少女の声を異常なまでに歪にしていた。
「……ああ、判ってるさ、マユ」
胡乱な言葉とともに見開かれた鮮紅の左目からは光が失せ、
代わりに異様なほどの悪意と殺意で満たされていた。

 

まるで正気を失ったかのように焦点が合わない見開かれた瞳。
それが示すもの――即ち、SEEDの暴走。

 

いや、正確には完全な覚醒と言うべきだろうか。

 
 
 

あの日、男が培ってきた全てがプラントによって灰燼に帰し、
目の前で掛け替えの無いモノを根こそぎ奪われたその瞬間、男の脳裏に種が浮かび上がった。
丁度目の前で飛沫を上げている鮮血で染め上げたような、真紅の種子が。
常ならば、その種子は弾けて消える。
それは男が初めてSEEDを発言させた時からの常識。

 

だが。

 

――その血色の種子は、男の憎悪と絶望に根を張るように芽吹き、蔓を伸ばす。

 

ドクン、と鼓動が響く。
全身に灼熱の炎が灯る。
男の視界が赤く染まり、意識が反転する。

 
 

――男が意識を取り戻したとき、辺りは元以上の赤に染まっていた。
男の全てを奪いに来た者達を屠った腕から、鮮血が滴る。

 

「――シン――」

 

その両腕に抱き上げられた血塗れの女の肢体から、ゆっくりと力が抜けていった。
力ない言葉と共に、生気が失われたように。

 

「――ッ!!」

 

赤い目の男――シンの嘆きと怒りに満ちた絶叫が、辺りに響き渡る爆音に掻き消された。

 
 
 

『レッドアイ。作戦開し、時―ザッ―です。
 地きゅ―ザッ―連合軍、存部隊と共に敵本拠地を殲滅して―ザッ―さい』

 

妹の声を模した機械の言葉に、シンの意識が回想から戻った。
モニターの右下に表示されたレーダーに移動を開始した地球連合軍残存部隊を示す光点が光る。
全人口の八割強を失ったにも関わらず、数は多い。

 

「……ああ、行くぞ……絶対に、一人残らず……」

 

先ほどの暗鬱な雰囲気が一転し、シンの隻眼に暗い喜びがあふれ出す。
最後の呟きは擦れて音とならなかったが、その声には根深い憎悪が込められていた。
その憎悪に答えるように、漆黒の機体が咆哮する。

 

ロミナ・アマルフィや白衣の男の命と引き換えに完成した悪魔の如きシルエットの機体が。

 

「まずは……お前からだ!」
あの傭兵部隊で唯一生き残ったシンと同じく、壊滅したタルタロスコーポレーションの
最後の機体が獰猛lに吼え、一気に加速する。
やがて次々と姿を現すザフトのモビルスーツの一機が、
シンの叫びとともにトリケロスⅡから伸びた対装甲ブレードで両断されて火花を散らし、
パイロットの断末魔と共に爆散した。
その光を通り抜けるシンの瞳は、ただ一点――キラの新型フリーダムだけを睨んでいる。
戦場を睥睨するように翼を広げていたそれに急接近しながら、シンの唇から言葉が迸った。

 

「お前だけは、お前だけは刺し違えてでもッ!」

 

『な……君は、何で!?』
それに応ずるように驚愕の声を漏らしたキラのフリーダムのビームライフルを叩き落し、
悪魔じみた機体のコクピットでシンが呟く。

 

「俺には、ニ度と奪われたくないものがあった。
 それを根こそぎ奪ったお前も、プラントも――絶対に許さない」

 

『そんな! 僕もラクスも、何も奪ってなんか――』
返答は必要無いとばかりに振りぬかれた刃が、フリーダムの左腕のビームシールドの基部を切断した。
切断面が火を噴き、発生した電磁波がレーダーをかき乱す。

 

「全部、終わりにしてやる――今日、此処でぇッ!」

 

シンが吼え、悪魔じみた機体――
――より鋭角的になり、凶暴性を増したネロブリッツⅢの改修機がそれに応えた。