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SCA-Seed傭兵 ◆WV8ZgR8.FM 氏_古城の傭兵(仮)_第05話

Last-modified: 2009-05-21 (木) 01:14:58

ズン、と轟音を立てながら白い巨人――イザーク専用に調整されたグフが歩みを進める。
真紅の単眼が灯り、黒煙を上げるドックを見渡した。

 

『コ、コンディションレッド発令! コンディションレッド発令! 各員迎撃にあたれ!』
『だからグフが暴れてるんだって! 例の犯罪者のグフがさ!』
『乗っているのは誰だ!? イザーク・ジュールは拘束されてるはずじゃ……』
『脱走したと報告が入ってるぞ! 何やってるんだよ牢屋番の馬鹿どもは!』
『寝てたんだろ! これだから無能なんだよ!』
口汚い罵声が飛び交い、情報が錯綜する。
統制が欠片も取れていない。階級が存在しないザフト独特の制度が、それに拍車をかける。
『待てそこの! 勝手に搭乗するな!』
「このザク動かせるんだろ!? だったら俺にやらせろよ!」
犯罪者なんか俺の必殺の一撃で真っ二つに――と喚いた新兵が、掃射されたドラウプニルに弾け飛ぶ。
ゴロン、と重い音を立てながらヘルメットが転がった。

 

コクピットハッチが開かれたままのザクが、横一文字に薙ぎ払われたテンペストの
直撃を受け真っ二つになった。
焼切られた断面からオイルが飛び、白いグフの腕部装甲に奇妙な模様を描く。
上半身とか下半身が泣き分かれしたザクがどうと倒れ、更に一歩踏み出した
グフの足がその頭を踏み潰す。
味方だったはずの機体が行った行為に、グフを包囲した部隊が竦みあがった。

 

「なんなんだよ……こんなの聞いてないぞ……」
ガナーウィザードを装備したザクウォーリアのパイロットが呟く。
初陣はワシントン制圧作戦のはずだったのに、とその呟きは続いた。
「……俺はヒーローになれるって言うから志願したのに、なんで犯罪者の取締りなんか
しなきゃならないんだよ……」
状況をまったく理解していないのか、場違いな呟きは続く。
敵はたった一機とはいえ、此処は戦場。
そして彼は、戦いをゲームのように考えていた。リセットボタン一つでやり直しが利くゲームのように。

 

その油断が、彼にとって取り返しが利かない事態を生んだ。

 

『おい、無駄口叩いてないで仕留め――』
ブツン、と音を立て、通信が途切れる。
何だ?と彼が疑問に思った次の瞬間、彼は金属の塊に押し潰されていた。
スラスターを起動し、突っ込んできたグフのシールドが彼のザクのコクピットを貫いたのだ。
悲鳴を上げる間も、痛みを感じる間も無く彼の意識は暗転する。

 

一瞬で死ねただけ、彼は幸せだったのかもしれない。
彼の機体の横に位置していた僚機のコクピットには、テンペストのビームの刃が中途半端に食い込んでいた。
超高熱で焼かれる絶叫が通信回線越しに轟き、何かが焼け焦げるブスブスという嫌な音が
他の機体のパイロット達の耳朶を殴打する。
所詮は寄せ集め。精神も何もかもが路地裏にたむろするチンピラ以下の現ザフトの兵士には
刺激が強すぎたのだろう。
絶叫が断末魔に変わる頃には、パイロット達は半ば恐慌状態に陥っていた。

 

この場の誰もが逃れられない絶対的な死への恐怖。
それに怯え、まともに身動きもとれない木偶同然の集団が全滅するのにそれから五分と掛からなかった。

 

十分ほど前まで、モビルスーツの製造ドックがあった場所。
今は焼け焦げ、ボロボロになったモビルスーツの残骸や、グズグズになった肉塊が転がっている廃墟。
大人しくなったというよりも、もう破壊するものが無いといった素振りでその中心に立つグフ。
十数機のモビルスーツと交戦したにも関わらず、目立った損傷は無い。

 

と、スラスターをふかし急旋回を行うグフ。
一瞬前まで機体があった空間を、ごてごてと悪趣味なほどの装飾に彩られたビームブーメランが通り過ぎた。

 

『イザーク! 大人しく投降するんだ!』
外部スピーカーで響いた銅鑼声に反応し、グフが上空を見上げる。
『聞こえているのかイザーク!』
上空に浮いていた悪趣味な機体――

 

Iジャスティスをベースに、オーブの国家予算の三割を投じて強化改修が行われた機体―

 

―インフィニットジャスティス=パーフェクトナイトアスランエディション。通称IJPKAE。

 

現存するモビルスーツでは、最高峰に位置する機体。

 

『聞こえていないんだな……まあいいさ。嘗ての友として、俺がお前を討つ!』
人の話を聞かない禿の声が響き、背負ったリフターのウイングが展開。
翼に仕込まれていたヴォワチュール・リュミエールが起動し、マゼンタ色の光の翼が閃いた。
更に、両腕両脚の各部からビームサーベルが立ち上がる。
『いくぞ! 覚悟はいいな!』
グフは何の反応も返していないのだが、アスランの一人芝居は続く。
マゼンタ色の光の翼が大きく羽ばたき、IJPKAEがグフに向かって急加速する。

 

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
IJPKAEの全身のビームサーベルがグフを包むように襲い掛かる。
グフは、避けない。
装甲を貫き、全身にビームサーベルが食い込んだ。

『……イザーク……さっきも言ったが、残念だ……!?』
勝利を確信し、またも自己陶酔を始めたアスランの声が半端なところで止まる。
異変に気がついたのだ。

 

グフの全身に食い込んだビームの刃が、ピクリとも動かせない。
以前感じたことがある嫌な感覚が背筋を這い上がった。
心なしか正面のモニターに映ったグフの一つ目が、嘲笑った気がした。

 

そして――無人のグフは自爆した。
IJPKAEを巻き添えに。

 
 

「……ふう」
同じ頃。プラントの至近を航行する小型艇の操縦席で、シンが息を吐いた。
手元には何かのディスプレイが状況の終了を意味する言葉を映し出している。

 

「お、上手くいったみたいだな」
肩越しに画面を覗き込んだディアッカが言う。
「あの量子ウイルス、なかなかにグゥレイトだったな」
「ええ。ジャンク屋の横流し品の割りには」
何事かを話す二人の後ろ。
最後列で、イザークが頭上に疑問符を浮かべていた。

 
 
 

以上です。すみません。正直悪乗りしすぎました。
……そろそろコニールとか出さないとまずそうですね……。

 
 
 
 
 

薄暗い部屋。
締め切られたその部屋の中で、唯一の光源であるモニターに向かい
こちゃこちゃとキーボードを打つ女が一人。

 

「……そろそろコニールとか出さないとまずそうですね……ん?」
女が何かに気がついた次の瞬間、窓ガラスを蹴破って巨大な足が室内へと侵入する。

 

「な、なんで私が――」
こんな目にあうんですか、と言い切る前に巨大な足に仕込まれた銃口が閃き――

 

――パソコンの傍らに備えられた箪笥に、真っ赤な何かがぶちまけられた。

 
 

「……よっ、と」
その惨劇の数十秒後、茶色い髪の若い女が巨大な足を伝って室内へと入り込んだ。
そして奇跡的に無傷だったモニターに向かい、キーボードに何事かを打ち込む。

 
 

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