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SCA-Seed_傭兵 ◆WV8ZgR8.FM 氏_メリークリスマス、シン!

Last-modified: 2009-03-19 (木) 20:26:21

暗い空から、ひらひらと雪が舞い落ちる。
ホウ、と息をつくと、一瞬だけ白い靄がかかる。
北欧、森林地帯。
そこに、誰からも忘れられた中世の廃墟を利用したゲリラの拠点があった。

 

その見張り台となっている塔の上に、一つ人影がある。

 

「ああ、また降ってきたのか……」
ぼそりと呟く、若い女。
褐色の肌を厚く着込んだ防寒着で覆い、茶色い髪をニット帽で抑えた女。

 

「本当、嫌になるくらい振ってくるなぁ……」
積もりすぎたら、片付けるのは自分とアイツなのに――。
そんな不満が沸いてくる。
この組織の旗印のような人物でありながら、そういった雑用を率先してこなす“アイツ”。
それに付き合う自分。

 

別に、“アイツ”が手伝ってくれとか言った訳じゃない。
でも、黙々と作業する姿を見て、黙っていられなくなって、いつも――。

 

「手伝っちゃうんだよな。ああ、私って結構苦労性?」
まあ、それだけ“アイツ”と二人っきりの時間が増えると思えばいいか。
そう思いながら拠点の外庭を見ると、現在の“アイツ”の愛機――
――所々が赤く塗装されたウィンダム――が目に入る。
これまで戦ってきた中で、あれで三機目になる。

 
 

最初、自分たちの前に現れたときは、ザフトの――グフだったかザクだったかだった。
機体も搭乗者もボロボロで、驚いたのを覚えている。
口の端から血を流しながらボロボロの“アイツ”が言った言葉は「俺を雇ってくれ」だった。
死んだと聞いていた英雄の言葉はあっさりと受け入れられ、“アイツ”はガルナハンの護り手となった。
もっとも、それは半年程で終わってしまったが。

 

クライン派が掌握したプラントの、ザフト地上駐留部隊。
その一斉攻撃を受けて、ガルナハンは文字通り「蒸発」した。
『ラクス様の為に!』街に向け極太の閃光を撃ち込んだパイロットたちは、皆そう言っていた。
“アイツ”が乗っていた機体は、徹底的に破壊されていた。
偶然、近くの街まで買出しに出ていた自分と“アイツ”を含めた数人だけが残った。

 

二機目は連合の機体。ダガータイプだった。
絶望し、がむしゃらに任務を受け続けていた“アイツ”が連合の任務で借り受けた機体を、そのまま貰った。
この機体は、今は自分が使っている。
初めて乗ったとき、座席に残った“アイツ”の残り香に、少しだけ恍惚としてしまったのを覚えている。

 

この頃から、段々と人が集まり始めた。

 

三機目、今のウィンダムを連合から受け取ったとき、同時にある依頼を受けた。
『クライン派、ひいては地球上にあるプラント勢力へのゲリラ活動』。
これを受けたときの“アイツ”の表情(カオ)は今でも忘れられない。

 

歓喜のような悲哀のような、憎悪のような憐憫のような、複雑な感情が絡み合った表情。
もしかしたら、自分も“アイツ”と同じ顔をしていたかもしれないが。
そこから、集まったメンバーと一緒に、この組織を立ち上げた。

 

「あれから、もう三年か……」
「ああ、もうそんなになるか」
突然後ろから聞こえてきた声に、思わず飛び上がる。
振り向くと、防寒着を着てマフラーをグルグルに巻いた“アイツ”と目が合う。

 

「どうしたんだ? そんなに驚いて」
「べ、別に、何でも……あれ、もう交替の時間?」
「いや、ほら、時計」
零時半丁度。まだ交替まで三十分はある。
何故だろう?

 

「違う違う。ほら、日付の方だ」
「日付……十二月、二十四日……?」
「そうさ……メリークリスマス!」
メリークリスマス。
イスラム系の自分には縁が薄い言葉。
でも……今日くらいは良いだろう。

 

「メリークリスマス、シン!」

 
 

このあと部屋に戻ってから「クリスマスプレゼント」と称して押し倒したのは流石にまずかったかも知れないが。