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SCA-Seed_GSC ◆2nhjas48dA氏_Project:Media Control

Last-modified: 2009-04-11 (土) 22:41:24

「なぜ胸から話題が逸れたというのに、私の名前が全く挙がらないのですか……!」
「お嬢様ギブ、ギブ!」

 

 大型匿名掲示板のとあるスレッドを映したノートPCを前に、
灰色のツーピースを着た少女が白衣を着てネクタイをした男を締め上げる。
窓ガラスに押しつけられた研究員が、アズラエルの腕をタップした。

 

「しかも最初に出てきた名前がミーア=キャンベル、ロミナ=アマルフィ……
 ……蒼き清浄なる世界の為、アマルフィさんには交通事故でも遭って頂かねばなりませんね」
「ビジネス絡みでもないのに法を破るのは止めましょうよ。どのみち体格のふくよかさでは
 勝てないと解っているんですから。ポートフォリオでいうとドッグです、ドッグ」
「そこまで言うなら、対策も用意してあると考えて構わないのでしょうね」
 動脈の位置を探り当てた少女が、乾いた視線で研究員を見下ろす。
「勿論でずおじょうざば……ゲホッゴフッ!
 要は、胸と尻が大きければそれで良いという概念に手を着けるわけですよ。
 ターゲット層の価値観が変われば、評価は逆転します」
「そんな事は解りきっています。で、どうせよと?」
「Dテック傘下企業のゲーム会社が開発中である、シミュレーションRPGに介入します。
 これがゲームの概要です……アニメ美少女にメカニカルパーツを装着させたキャラが主な登場人物で、
 敵陣営と味方陣営の登場人物はこうなります」
 気乗りしない様子で椅子に座ったアズラエルが、書類に目を通す。
味方側はスレンダー体型で統一され、青や白といった爽やかな色彩が多く使われていた。
ページを捲って敵側のキャラを見た時、意図が読めて小さく声を上げる。

 

斜に構えた女性が腕を組み、最低限のプロテクターに押し込められた
はちきれそうなバストを押し上げていた。
涙のようなラインが入った真紅の目は細められ、表情に笑みの欠片もない。
腕と腰には刃を思わせるフィンが取り付けられ、セクシーショーツと見間違うほど際どい
レッグガードがむっちりとしたヒップラインと太ももを際立たせる。
ヘッドドレスからハイヒールに至るまで、味方陣営とは対照的に黒と赤で彩られていた。

 

「ふうむ……見るだけで憎悪や敵意が湧いてきそうなデザインですね」
 『ラスボス案final』『ツンデレにデレは要らない』と端に書き込まれた設定画を見つつ
独りごちたアズラエルに、研究員は我が意を得たと言わんばかりに大きく頷いた。
「でしょう。敵のメインキャラは、程度はともかく同じようなプロポーションです。
 これを全世界のゲーマーに売り込む事で、巨乳、巨尻は敵であるという潜在意識を植え付けるのです。
 去年、アームストロング賞を受賞されたライターの方にシナリオ執筆をお願いしており、
 声優も、アクターズスクールのバーチャルアイドル部門から抜擢しました。後は」
「宣伝だけというわけですか。わかりました……予算の補正を認めましょう。
 貴方も製作現場に行って、技術設定などのアドバイスを行いなさい。失敗は許しません」

 

 深々と頭を下げた研究員を退室させた後、ひとり部屋に残ったアズラエルが喉を鳴らす。

 

「そうでした、メディアを味方につけるのは常套手段。っふ、ククッ……ハハハハ!」

 
 
 

 ゲームの発売後、キャラの人気投票結果を見るまで、少女が己の甘さに気付く事はなかった。