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SCA-Seed_GSC ◆2nhjas48dA氏_SEEDDtheUntold_第02話

Last-modified: 2009-01-22 (木) 21:56:26

「まさか、カガリ様に来て頂けるなんて……」
「自国の兵士を送り出そうというんだ。それを決めた者が見送るのは当然だろ」

 

 格納庫で自機の調整を行っていたシンは、突然の訪問者を得て照れと喜びに顔を赤くし
た。将官の制服を着た若過ぎる為政者が、何時も通りセットされていない金髪を揺らす。
傍にいたヴィーノはといえば、笑みを浮かべつつ遠ざかってシン専用M1のメンテナンス
に戻っていった。

 

「でも、国外派兵はオーブの理念に反しているんじゃないですか?」
「ガルナハンはオーブとプラントが共同で運営している。言ってみればあそこはオーブ領
でもある。心配するな」
「……はい! オーブ兵として誇りを持ち、任務に励みます」

 

 返答まで僅かなディレイがあったが、シンは笑顔で頷いた。表情に不信の念はない。そ
れを見届けたカガリは視線を落とす。

 

「お前は常に前を向いているな、シン。間接的にとはいえオーブの理念とお父様の決定で
家族を失ったのに、こうしてオーブの為といってパイロットをやっている」
「確かに俺の家族は犠牲になりました。ですが、何時までも過去に捕らわれて周り中を憎
み、怒りをぶつける事は何も生み出さない。父さん、母さん、妹もそれを望んでいないと
思うんです。だから俺は前を向きます。もう二度と、俺のような人間を出さない為にも」
「シン……良く言った!」

 

 目元に光る物を浮かべ、カガリはシンの手を取った。監視カメラによってその映像を見
ていたアスランが、モニターを切って席を立つ。少し遅れてキラがアスランの背中を追う。

 

「僕は反対だよ。こんなの、やっぱり間違ってる」
「お前も止めなかっただろう、キラ」

 

 振り返らずに言い放ち、オーブ兵が敬礼する間を抜けて廊下へと出た。

 

「これが最善の手段だ。シンにとっても、俺達にとっても」
「でも! 君はラクスとカガリも騙しているんだ……僕らは自由な世界を勝ち取る為に、
デュランダル議長を討った。その結果がこれなの?」
「必要な犠牲だ」

 

 肩を掴もうとするキラの手を振り払い、彼をひと睨みしてアスランは歩み去っていく。

 

「アスラン!」

 

 背中越しの声に、アスランが耳を貸す事は無かった。もしシンが叛意を見せれば、彼は
遠からず事故死あるいは病死すると解っていたからだ。勿論キラやラクス、カガリは直接
手を下さない。そういう仕組みなのだ。シンの命を救うにはこれしかないと、アスランは
信じていた。世界にはもう、シンの味方も仲間も残っていないからだ。
 味方や仲間は与えられる物、用意される物ではなく、築き上げていく物だという事実に
もう少し気を配っていれば、アスラン=ザラは違う道を歩んでいたかもしれない。

 
 

 両舷に可動推進器を取り付けたオーブ軍のMSキャリアが、駆動音を低めて高度を
落とす。砂塵を巻き上げながら峡谷の裂け目に降下していくのを、異形の機動兵器が監視
していた。4脚のユニットにダガーLの胸部から上が2つ、背中合わせで接続されたそれは
地球連合軍のMAゲルズゲーがベースになっていると推測できる。しかし両側の翼が取り
払われていたり、爪を持った脚部がより大型化していたり、胴部の左右に大口径、長銃身
の砲を有していたりと、変更点も多い。

 

『また1機で来た。病院のメシみたいにちょこちょこ送り込んでくるな』
『キャンプ・キュリーの病人食はドカっと来るぜ。それはともかく……これで何機目だ?』
『今ので6機だ』

 

 副座式のコクピットに通信が割り込んでくる。上空から轟く推進音に、後部座席のパイ
ロットがボタンを押してサブカメラの映像を切り替えた。
 機体下部の空気を揺らめかせてホバリングしているのは、ラグビーボール状の巨体を
持ったユークリッド。それを横方向に繋げ、大砲2つを取り払って対空用と対地用の機銃
やビーム砲塔をハリネズミのように増設した機体が、焼けつく大地に影を落とす。
 2機とも、ダガーLを意識しただろうブルーグレイ、ホワイト、レッドのカラーリング
であり、それは連合軍の制式量産機である事を示していた。

 

『ここらで一時帰還する。サボるなよ』
『うるせえな』

 

 上空の機体がゆっくりと回頭し、機体下部の大型エンジンがそのノズルを後部へ向ける。
腹に響く噴射音と共に、巨大な航空兵器が峡谷を離れていった。

 

『中尉、そっちはどうです』
『いつもの通りだ』

 

 谷底で蹲っていた機体が、正面のバイザーに光を灯す。ゲイツRやザクウォーリアの残
骸を払いのけて起き上がったのは、甲殻類を想像させるMA。かつてザムザザーと呼ばれた
それには先の2機と同様のペイントがなされ、随所が変更されている。4つだった脚は
6つに増やされ、機体上部の鋭角パーツは悉く取り払われていた。
 バイザー越しに3つのカメラアイを輝かせ、それはゆっくりと後退する。

 

『新型デストロイの到着と共に、作戦を開始する。我々も引き上げるぞ』
『了解です。ところで中尉、肝心のガルナハンには民間人が大勢います。避難の時間を
くれてやらんと、殺戮ショーになっちまいますが』
『彼らは反地球連合のレジスタンス、れっきとした武装組織であり将来の脅威だ。我らが
プレジデントもそう認識している。狩りを楽しめ』

 

 機体の底が青白く輝き、大推力のスラスターによって浮き上る。鉄屑が熱風で転がった。

 
 

「どういう事だよ……!」

 

 ガルナハン入りしたシンは、設営されたザフト本部にいた。状況報告を聞き、白服に
食ってかかる。専属メカニックマンとして同行したヴィーノが、無言でシンの肩を掴んだ。

 

「中立地帯を哨戒中の部隊が、相次いで消息を断っている。今月から始まって3件目だ。
解るか、2週間でだぞ!」
「それでガルナハンの人達を収容所に閉じ込めたのか! 何の関係がある!」
「防衛施設を増強する為に土地を接収し、抵抗に遭ったからだ。彼らは武装しているし、
我々の側に負傷者も出ている! ラクス様のご意思に刃向っているんだ!」

 

 それまで民間人の事を慮ってまくし立てていたシンが、たった1人の名前を出されて勢
いを失った。ヴィーノが表情を曇らせる。

 

「ラクス様に……か。確かに……で、でも理解させる努力をするべきじゃあ……」
「じっくり腰を据えて話し合う余裕があれば、とうにやっているさ!」

 

 眩暈を起こしたように一歩下がったシンが、ある人の名前を思い出す。

 

「そ、そうだ。コニールと話をさせてくれ! コニール=アルメタだ!」
「そのコニール=アルメタが……」

 

 本部に響き渡ったアラームが、シンと白服のやりとりを断ち切った。

 

 ハンガーに運び込まれたM1カスタムに乗り込むシンは、半ば自失状態のままインター
フェースを起動させていく。日焼け知らずの白い顔に影が刻まれた。

 

『起こすぞ!』

 

 ヴィーノの声と共に、メンテナンスベッドが垂直に立ち上がって機体を立たせた。灰色の
機体が一歩を踏み出す。ライトグリーンのツインアイが輝いた。

 

『シン! 生身の人間が相手だが、携行ロケットだのミサイルだのには気をつけろよ!』
「薙ぎ払ってやる」
『なんだって?』

 

 シャッターが開き、M1カスタムが格納庫の外へ歩み出る。数十人もの人々が奪われた
自分達の土地と、捕えられた同胞を取り戻そうと、銃器を手に基地へ押しかけていた。

 

「ラクス様とキラさんの思いを踏み躙る奴らは、全部俺が薙ぎ払ってやる!」

 

 壁を乗り越えようとする暴徒に機銃で狙いをつけるシン。しかし崖を滑り降りた1機の
ストライクダガーをレーダーが捉えると、其方に機体を向ける。

 

『お前の相手はあたしだ! ラクス=クラインのイカレ信者!』

 

 その外部スピーカーから聞こえたのは、見知った少女の声。シンの目が見開かれる。

 

「コニールっ?……コニール=アルメタ! ラクス様を侮辱したなぁっ!!」

 

 シンもまたスピーカーのスイッチを入れた。ロックオンマーカーが怒れる真紅の瞳に映
り込む。トリガーを押し込み、自機の右手にビームライフルを構えさせた。左手甲部の
ビーム発生器に淡い光が灯る。強風によって砂塵を浴びるM1カスタムが姿勢を落とした。

 
 

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