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SCA-Seed_GSC ◆2nhjas48dA氏_SEEDDtheUntold_第07話

Last-modified: 2009-02-07 (土) 19:01:06

 連合軍接近の報を聞いたキラは、すぐさまラクスと泊っていたホテルを出てオノゴロ島に向かった。
途中擦れ違った人々に大きな混乱は感じられず、情報が伝わっていない事は明らかである。
ラクスには、マスドライバー施設のあるカグヤ島へ行くよう言っておいた。
アークエンジェルがそこにある以上、最も安全な場所である。
「僕の機体はどうなっていますか?」
「ストライクフリーダムはオノゴロ島のMS格納庫へ運び込んであります、キラ様」
「有難う。けれど、どうして連合軍が……それに何の通達も無く」
 リムジンの窓から日の光が差し込んできても、キラの表情は冴えない。
折角争いが終わったというのに、人々は直ぐ戦い始める。
誰もが平和を願っている筈なのに。

 
 

――俺はいつも、だれかの、なにかだった。
 「さあ、ご挨拶しなさい。これからもお世話になる方々だ」
 「ハハハ、ザラ国防委員長の御子息であれば、将来が楽しみですな」

 

――どれほど足掻いても、俺は俺になれなかった。
 「ああ君かね。キラ=ヤマトの親友というのは。彼を友人に持てて誇らしいだろう」
 「コペルニクスにあるどの幼年学校にも、キラ君ほど模範的で才能にあふれた生徒は……」

 

――だれかの、なにかであることで、俺は生きてきた。
 「あの人よ、ラクス様のフィアンセって」
 「国防委員長の息子で歌姫の婚約者、これから先、何の心配もないんでしょう」

 

――それは、俺に何もかも与えてくれた。暖かくて、優しい何もかもを。
 「出来る事ならニコルの仇を討ってほしい。けれど無理ね、あなたでは。息子の事は
 忘れて、幸せになりなさい。それがお似合いよ」

 

――全部俺が決めたことだ。わかっている。だから、誰も……

 

 「しっかりして下さいよ! 『アスラン』!」

 

「!」
 水の中から顔を上げた時のように喘ぎ、椅子の肘かけを握り締めたアスラン=ザラは、
薄暗い自分の執務室を緑の瞳で見渡す。
丁度その時、ドアが開いてオーブ軍の制服を着たルナマリアが入ってきた。
「大変です! 連合軍が……」
「最後、名前は呼ばれなかったよな?」
 意味不明な問いに、勢い良く入ってきた赤毛の少女が硬直する。アスランが低く笑った。

 

「当たり前か。呼ぶわけがない」

 
 

 日が天頂へと昇り、空に浮かぶストライクフリーダムの白い装甲と金色の関節を輝かせる。
カメラアイが向く先には海があったが、美しい青色は無機質な灰色に侵略されつつあった。
横並びの艦船上にはキラの知らないMAが発進準備を整えており、その後方にも
船団が横列に展開しつつある。
2年前の攻撃時よりも、遥かに数が多い。

 

『あなたがたはオーブの領海を侵犯しています。ただちに退去してください!』
 しかしキラに恐れはない。
相手がどれほどの数で来ようと、1機たりとも此処を通すつもりはない。
オーブの理念を傷つけさせはしない。

 

とはいえ、相手から何の通信も入らないのは不気味だった。
まるで、こちらの存在を認識していないかのように。

 

 ブースターロケットを装備した六脚のMAカラパスが、全身のカメラを輝かせる。
ケンタウリのスカートが持ち上がってジャケットアーマーとなり、背中合わせの上半身が
起き上がってバイザーの光を瞬かせた。
『ただちに……』
 キラの言葉が止まった。灰色の波が、うねったのだ。

 

一斉に甲板を跳び立った異形のMA達が、メインスラスターを点火させて水上を駆ける。
前傾姿勢を取ったカラパス達の背後で、四脚のケンタウリが群を成して蛇行する。
直ぐ後ろに控えていた船の甲板上で、別の一隊が身じろぎする。
視認出来ただけでも50機を下らない。艦隊の後方、空の彼方に輸送機らしき影が幾つも見えた。
『こ、これが、地球連合軍の物量……』
『うろたえるな! 数など問題ではない! 我々にはキラ様が、歌姫の騎士団がいる!』
 回線越しに聞こえるオーブ兵達の会話に、キラもまた勇気付けられる。
レーダー画面に光の波紋が現れ、敵を示す夥しい数の点をマークしていった。
『あくまで話を聞かないというなら!』
 Sフリーダムが高度を上げ、太陽を背負う。
腰のレール砲を展開させ、両手にライフルを持ち、腹部のビーム砲を起動させ、海上に向けて斉射した。
緑色の細い光条がケンタ ウリ達を捉えるが、上半身を覆う光の膜が弾道を逸らす。
1機が前側の右腕を破損し、別の1機が左側のジャケットアーマーにレール砲を受け、表面を歪ませる。
 腹部から放たれた大出力のビーム砲がカラパスの正面装甲に叩きつけられる。
海面が爆発し、辺りに水蒸気が立ち込めるが、六脚のMAはそれを突き破り猛進する。
ビームを受けた部位を赤熱させ、よろめきながらレール砲の砲弾、ビームライフルの射撃を受け止め、
細部を削り取られながら、それでも突き進んだ。

 

『お、墜ちない!? こんな事が……』
 正確無比な射撃を見舞い続けながらも、キラは驚愕を隠せない。
フリーダムに乗り換えた後のキラにとって、敵とは自分の攻撃で悉く砕け散り、
戦線そのものが崩壊する存在。
自分が出て撃てばそれだけで相手が壊走し、無人の野を突き進むだけだった。

 

 オノゴロ島の軍港に配置された防衛部隊が、Sフリーダムによって被弾した敵に火力を集中させる。
フルバーストを耐え抜いたカラパスにビーム射撃が集中し、正面装甲が剥げる。
 推進器に負荷が掛かり過ぎ、後部が爆発し波を蹴立てて海中に没した。
数機のケンタウリも脚部を失い、海面に躓いたようにも前のめりになって横へ倒れる。
しかし倒れた味方の亡骸を踏み越え、倍の、3倍の、4倍の機体が水柱を従えてオーブの地へ迫った。
 空は黒煙で穢れ、海上で燃える炎に怪物達の影が落ちる。
ぎりぎりまで接近したケンタウリ部隊が放った連装垂直ミサイルの白いスモークにより、
後方の艦隊の姿が一瞬霞んだ。
鏃型に展開したカラパス部隊の上部装甲が開き、ビーム砲塔が突き出して軍港の防衛隊に乱射した。
根元を折られたクレーンが海に落ち、対応の遅れたMS隊が次々と撃破される。
 左脚を失くし、右手のビームライフルを撃ち続けるM1アストレイに大きな影が落ちた。
太陽を遮ったのは、大ジャンプした六脚のMA。カラパスの前部に装備された有線クローが射出され、
M1の頭部を挟み込み機体全体を重量と推力で押し潰した。
『皆、後退して下さい! 僕が時間を稼ぎます!』
 そう言ったキラのSフリーダムが低空まで降りる。しかし、何の術があるわけでも無かった。
重力下では背中のスーパードラグーンが役に立たない。
接近しようにも敵1機ごとの火力が高過ぎてビームサーベルを使える距離まで近寄れない。

 

『どうすれば良い……どうすれば、みんなを!』
『すまない、キラ! 待たせた!』
 オノゴロ島の軍司令部方面から高速で飛来する、ワインレッドの機体。
大きく伸びた頭頂部のセンサーと、人型の機体を乗せた飛行支援ユニットは、
紛れも無くインフィニットジャスティスである。
親友の声を聞き、キラは僅かながら安堵の表情を浮かべた。
『アスラン! よかった……』
『キラは下がれ! あとは俺が!』
 格闘戦に秀でたIジャスティスと連携すれば、強敵の大軍とだって戦える。
アスランと肩を並べれば、親友が傍に居てくれれば。
キラが機体を下がらせた。此処からが本番だ。

 

『あとは俺が、良いようにしてやる』

 

 後退するオーブ防衛部隊の前で、侵攻する連合軍の新型MA部隊の前で、光刃がきらめいた。

 

右腰部から抜き放ったシュペールラケルタが、後退してきたSフリーダムの腰に滑り込む。
輝く切っ先が、翼持つ機体の腹部から突き出した。

 

『ア、ス……ラン?』

 
 

 核エンジンとメインケーブルを貫かれた、ストライクフリーダムのカメラアイから光が消え、
着地して膝を突いた。
ビームを消し去ったシュペールラケルタを腰部に納めたインフィニットジャスティスの背中に、
支援ユニットのファトゥム01が接続される。
『どう、して……』
『お前はニコルを殺し、ラクスを奪った……

 

  ……なんて……冗談さ、もう気にしてない』

 Sフリーダムの背後に立ったIジャスティスの中で、アスランが微かに笑った。

 

『ただ、勝つ側に付きたいんだ。解ってくれ、キラ』

 

「アスランッ……アスラアァン!」
 ようやく事態を飲み込めたキラが、コクピットの中で絶叫する。
サブモニターには放射能汚染のマークが表示されていた。
Sフリーダムを調べ抜いたアスランは、どこを攻撃すれば放射線防御を無力化できるか解っていたのだ。
『怒らなくたっていいだろう。誰だって居心地の良い所に行きたいんだ。お前だって……』
「うわああぁっ! あああアアァッ!!」
 腹が立って、悔しくて、悲しくて、キラは叫ぶ。
フットペダル付近が裂けて白い光が機内を満たし、スーパーコーディネイターの意識を消し去った。

 

 ストライクフリーダムの機体各所から噴き上がった炎をインフィニットジャスティスが浴び、
赤とオレンジの舌が機体を舐め回す。
それをダメージであると認識したVPS装甲の最新システムが、自動で電圧を補正した。
胸部を中心とし、滲みていくようにワインレッドが変色する。
足先まで行き渡ったのは、噴き出したばかりで未だ乾かない鮮血の色。

 

 あちこちを損傷させたカラパスとケンタウリが、Iジャスティスの脇を素通りしていく。
キラ=ヤマトが身内に墜とされるというショックから立ち直れていないオーブの防衛部隊が、
続々と上陸する連合の部隊に蹂躙される。
『大混乱だな。先が思いやられる』
 アスランが呑気に独りごち、機体を跳び上がらせた。
分離させたファトゥムに乗り、大きな弧状のスラスター光を空に刻んで飛び去る。
向かう先には、聳え立つマスドライバー。
緑色のカメラアイが輝きを強める。

 
 

「キラが墜とされただと!? アスランを向かわせたにも関わらずか!?」
 司令部で報告を受けたカガリ=ユラ=アスハは、瞠目してその場に立ち尽くした。
膝が震え、コンソールを掴んでいなければへたり込んでいただろう。
「それが、ザラ一佐とは途中から連絡が取れず、墜とされたという情報も出所が不明で」
「カグヤ島のアークエンジェルより通信が入りました!
  マスドライバーによる脱出を中止し、可能な限り民間人を救助する、と!」
「感謝すると、伝えてくれ……」
 目が虚ろなまま返答し、カガリは両手で顔を覆った。

 

なぜこんな事になったのか、皆目見当がつかない。
2年前と違い、今度は本当に何もしていないのだ。
しかも連合からの声明は無く、何も呼びかけてこないし何を呼びかけても何も返ってこない。

 

「南西部の港に、MSキャリアが接近しています! 我が軍のものです!
 シン=アスカ三尉が司令部との通信を求め……」
 激しい揺れにオペレーターの声が中断され、カガリも床に投げ出された。
展望窓から見える空にムラサメが浮かんでいる。

 

ビームライフルの銃口は、連合軍を狙っていなかった。

 

「なぜ味方が!? カガリ様、そのまま!」
 腹心のソガがカガリに覆い被さった直後、窓が砕け散って炎が司令室を吹き抜けた。

 
 

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