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SCA-Seed_GSCI ◆2nhjas48dA氏_第62話

Last-modified: 2008-02-26 (火) 11:18:37

『通信ネットワーク復旧まで20分を切った! 良いか、あと20分でゲームオーバーだ!』
『セレニティ、ステータスを確認……再発射までこちらも後20分! とにかく攻めろ!』
『各員、IDをしっかり見ろ! 味方のザフト機を撃つなよ!』

 

 セレニティ発射に向け、5つの巨大なリングが再び回転を始めた。
 内側に生まれた金の輝きに照らされる中、隊列を組んだMS隊同士が激突する。
 ゲイツRの部隊がレール砲を斉射し、散開した敵目掛けてスラッシュ装備のザクやグフが突進する。
 しかし敵も無策ではない。ガナーザクの高出力ビーム砲が幾筋も放たれ、一転突破を図ろうとした自軍を
散らす。
 1機のザクが左肩のシールドを焼かれ、小刻みにスラスターを吹かし姿勢を戻した。
『クソ! 無人機の取り柄は数だけってのがお約束だろう!?』
『人間の底力が機械の合理性に勝るというのは幻想に過ぎん。特にナチュラルの底力では』
『じゃあさっさとそっちの底力も振り絞れ、この宇宙の化物が!』
 ミサイルを乱射するブレイズザクと背中を合わせ、無反動砲を背負ったウィンダムが全火器をばら撒く。
狙いをつける間も惜しい。今は1メートルでも、リングに向け進軍しなければならないのだ。
『しまった!』
『馬鹿、出過ぎだ!』
 一瞬の隙を突かれたスラッシュザクが、背部のビームガトリングを破壊される。
左肩を敵部隊に向けつつビーム突撃銃を連射するが、ピラニアの如く殺到したビームや弾丸を浴びて沈黙する。
しかし、機能を停止させた機体に対し、敵はそれ以上の手出しをしない。
『パイロットは殺さない……そういう事か?』
『無力化した相手にエネルギーや物資を投入しないという判断だろうな。
 敵は俺達人間並に賢いAIであって、人間そのものじゃあ無い。死んだフリすりゃ、命は助かる』
 悪い冗談に力ない笑いが返ってくる。20分間助かった所で、完全に機能を取り戻したセレニティに
狙い撃ちされる事は解りきっているからだ。

 

 エミュレイターは断じて、地球で言われているような『名君』ではない。

 

 彼女はパフォーマンスの為だけに、ラクスが率いていたザフト艦隊を壊滅させたのだ。

 

『それにしても、全っ然敵が減らねえ!』
『減っているさ。墜とした分はな』
『ハ、つまり……なにっ!?』
 足を止めかけた部隊から飛び出した1機のムラサメが、MA形態に変形し弾幕の中へと突っ込んでいく。
向かう先には輝くリング。近辺の敵MSが一斉にムラサメの方を向き、ナスカ級の収束火線砲が光を放った。
MS1機ごと飲み込みそうな光の柱をローリングで間一髪回避し、更に加速。
トップスピードのまま、すれ違い様のミサイル攻撃で右舷の砲に直撃弾を浴びせ、破壊した。
敵MS隊の射線を引きずったまま、駆け抜けていく。
『誰が乗ってるんだ、あのムラサメ……只者じゃねえ』
『無駄口を叩くな! あいつに続くぞ!』

 
 
 

「これか……近づくと、大きさが解る」
 そのムラサメに乗るパイロットは、ミラーシェイドのバイザーが填まったヘルメットを被り、
ボイスチェンジャーを通してしわがれた声で呟いた。
「的が大きいのは良いとして……壊しきれるのか?」
 変声機越しに焦りが滲む。後方からのロックオンアラートに対し、操縦棹を一杯まで倒した。
 機体を錐揉み回転させつつ、ビーム射撃とミサイルをかわす。更に接近。
「2基のスタビライザーを破壊する、といっても」
 スピードがついたままMS形態に変形し、ムラサメがリングの内側に入り込む。
『第3リングに、こちらのMSが取り付きました!』
 広域通信に歓声めいた音声が流れるが、そのパイロットは舌打ちしただけだった。
「回転速度を合わせて……ッ!」
 ガナーザクからの狙撃。機体を捻って回避に成功するも、ビーム偏向装置が剥き出しとなった内側に着弾し、乱反射する。
 絶妙な機動で頭部右脇、左肩、右膝を掠めさせるに留めたムラサメは、次のビームが撃ち込まれると同時に外側へ逃れた。
 盾からテンペストを引き抜いたグフが、ビーム突撃銃を構えたザクのフォローを受けて回り込む。
 振りかざしたビームソードの切っ先が揺らいだ。
 白銀の構造物の脇から現れたムラサメのビームサーベルで胸部を一突きにされ、グフのモノアイが光を失う。
 それを盾にしてザクの射撃を防ぎ、ビームライフルの2連射で頭部と突撃銃を持った右腕を破壊した。
「本部へ! リングのデータを更新する。回線を開いてくれ!」
 敵が集まり始めたのをレーダーで確認し、MA形態に変形したムラサメが高速で離脱した。
 
 砲身上部の戦闘の光を見遣り、パイロットのアスラン=ザラは再び舌打ちする。
 「援護に回りたかったが……無理か」
 味方の到着を少しでも早めるべく、ムラサメを別の敵部隊へと突貫させた。
「頼むぞ、シン。そのMAを阻止できなければ、この作戦は根底から崩れるんだ……!」

 
 
 

 両翼にビーム刃を生んだリフターに乗り、ホワイトとペイルブルーのIジャスティスがビームライフルを連射する。
 2発を避け、3発目が左肩に当たってよろめいたゲイツRをリフターの翼で両断する。
 追い縋ってきたザクに向けシールドを振り抜き、先端にセットされていたビームブーメランを起動。
 浅く袈裟懸けに斬り裂かれ、仰け反る機体の首を、脚部ビームブレイドを発生させた回し蹴りで刎ねた。
『見ろ、シホ、ディアッカ! やはりこれは俺の機体だったッ!』
『盛り上がりすぎだぜイザーク』
『敵MS、更に接近。データを送ります、エルスマン!』
『はぁーい』
 フリーダムのツインアイが光を強め、フルバーストモードへ移行。
 両肩のプラズマビーム砲と腰部レール砲が前部へと持ち上がり、視認距離外の相手へと放たれた。
 彼方で小さな光の華が咲く。しかしレーダーの光点は消えない。小破に留まったようだ。
『イザーク、3機来るぜ』
『任せろ!』
 イザークの突撃が上手くいっているのは、ディアッカの砲撃とシホの情報収集による所が大きい。
 彼らが担当している第1リングの攻略は、他の部隊よりも順調に進んでいる。

 しかし、シホの声に明るさはない。
『作戦の前提条件が食い違っていたのは、やはり痛手でした』
『負けそう?』
 4つの砲門で敵軍を睨むフリーダムから気の抜けた声が届き、MA形態に変形させたイージスブランに乗るシホはゆっくり頷いた。
 彼女の機体は、指揮所としての役割も持つ。
『作戦の残り時間と全体の進捗状況から判断するに……もう、負けています。
 数で劣るというのもありますが、後一押しが足りません。リングが少ないほど、セレニティの精度は落ちます。
 けれども、この距離では大差ありません。全てを破壊しなければ』
『とはいえ、前回のアレを考えるに降伏しても意味無いだろうしな。ちょっと頑張るか』
 ハイマットモードに変形したフリーダムが加速し、Iジャスティスの方へ向かっていく。
 フリーダムの機動性を利用し、近距離での火砲援護でイザークの道を開こうというのだ。
『あと少し……あと少し、勢いがつけば……えっ?』
 イージスブランの高性能レーダーが、この宙域に接近してくる1隻の戦艦を感知した。
『これは……ミネルバ級?』

 
 
 

『あの赤い戦艦は友軍だ! 出てくるMSもな! 全部隊に伝達しろ!』
『だが奴ら、プラントの騒動にもエミュレイターにも関わってるんだろう!?』
『とにかく、この戦闘に限っては味方だ! そういう事になってる!』

 

 艦首を戦略砲の巨大な砲身へ向け、最大戦速で迫るセクメトのブリッジ。
 クルーの内誰ひとりノーマルスーツを身に着けていない。女性艦長も例外ではなかった。
「つまり、確認を取っている余裕も無いという事ね。MS隊の準備は?」
「全て完了。30秒後に順次発進予定」
 義手の右腕を持つ少女が淡白に応答する。
「確かに、私達はこの上なく惨めに失敗した。ただ、取り返しがつかないわけでは無いわ」

 

 『最後の50人』は今や、プラントを救おうとしていた。

 

 救った後、改めて自分達の手で滅ぼす為に。

 

 怒りと憎しみが堆積し、高圧によって精製された絶対零度の精神を持つ彼らでなければ、
 ナチュラルに対する憎しみも併せ持つ彼らでなければ、決して行き着かない思考だったろう。

 

「前部各砲塔、砲撃開始。15秒後に艦首シールドを最大出力で展開。敵部隊の中央を突き破りつつ
 MS隊を発進させ一時離脱。回頭し、再び戦闘に加わる」
 指示を出しつつ、通信モニターの隅に表示された男を見遣った。
「シールドを使うから、カタパルトは使えないわ。出るタイミングを間違えないように」
『了解。私はエンブレイスの方へ回る。セクメトとMS隊は中央3つのリング攻略を援護するべきだろうな。
 押してはいるが、進軍が遅すぎる』
 通信には誰も割り込まない。最後の50人にリーダーは存在しないが、ほぼ全員が同じ思考で行動するためだ。
 それは、彼らの弱点でもあった。

 

「勝てるかしら。シンと貴方で、あのエンブレイスに」
『勝算は五分だな。シン=アスカは自己保身への興味が薄い。
 戦いにおいて、それは時に仇となる。だが』
 少し言い置き、男は口を開いた。

 

『この戦い、負ける気がしない。根拠は無いが』
「相変わらず感情的ね」

 

 ブリッジの正面モニターが真紅に染まった。ミネルバでいえばタンホイザーが設置してあった艦首部分。
 そこの据え付けられた大型のビームシールド発生器が稼動し、血紅色の艦体を赤い光が包んだのだ。
 偏光フィルターが作動し、モニター映像が修正される。
『発進する』
 そう言い残し消えたモニターから視線を外し、女性艦長はシートに深く腰掛けた。
「総員、対衝撃防御」

 
 

「あの艦は……」
 最前線で攻撃に参加していたアークエンジェルの艦長は、相対的上方から降ってくる赤い巨光を捉え
制帽のひさしを上げた。その時、艦が大きく揺れる。
「左舷艦首に被弾! 直撃です……特装砲、破壊されました!」
「動力は通っていない。撃てない砲を壊されたところで……イズモは何処か?」
「第5リング付近で戦闘中! サハク代表は、専用のMSで出ているようですが」
「アマツか。超高性能機というわけでもあるまい。『王族』の考えは解らん」
 モニターに映る第2リングを見つつ、艦長は嘆息した。
「さて……前進する! A、Cブロック減圧開始!」
「こ、この状況でですか!? 折角あの赤い戦艦が突っ込んでくれたのに……」
 振り向いた操舵士の言葉に、艦長はゆっくりとかぶりを振る。至近を掠めたビーム光に、ブリッジが照らし出された。
「友軍の尻にくっついて勝利を得られる戦いなら、とっくに後退命令を出している。
 だが、本作戦は全員が前に出ねば勝てん。誰一人怖気づいても……それにな」
 そう言って、彼は傍らのクロノグラフに目をやる。

 

「あと13分と40秒後、何処へ逃げても狙い撃ちにされる」

 
 
 

「手足と首から上を動かせれば良いのです。身体をシートに固定すれば問題ありません」
「しかし、やはり無茶です!」
「今は、駒は1つでも多いほうが良い筈です。再戦の機会は、永遠に訪れないのですから」
 アークエンジェルのMS格納庫で、無理に背筋を伸ばしたエコー7と整備兵が相対する。
「……脱出は、出来ませんよ!」
「全て承知の上です」
 口元を押さえ咳き込むエコー7。大きく息を吐き出し、メンテナンスベッドに横たわるバスターノワールを見上げた。

 
 
 

 シン=アスカは、攻撃に転ずる事が出来なかった。

 

 単機であれば、既に捨て身であり恐怖を忘れた彼に後退と逃亡は無い。
 しかし後衛にドムトルーパー3機を配置している以上、自分を倒した後に何が起こるかは明白。
 同時に、ドム3機の援護攻撃なくしてエンブレイス相手に戦いを続けることも出来なかった。
 3ユニットに分離した白き天使が、デスティニーⅡ目掛けて猛攻をかける。
 左翅の砲が放った青白い光を左掌から展開したビームシールドで受け流し、背後からのビーム攻撃を
急降下でかわし、
妖精のように乱れ飛び光の尾を引くドラグーンによる全方位射撃を、バックステップで回避する。
 右掌から真紅のビームを放つも、中央ユニットのシールドで容易く弾かれてしまう。
 蒼い輝きで満たされる中、真紅の灯火が頼り無げに揺れる。
 そのままデスティニーⅡを押し潰そうと3方向から迫るも、ビームマシンガンの斉射を受けて後退した。
 ドムトルーパーが前進し、隊列を組み直す。
『どうしたもんかね? シン。食い止めてはいるから、作戦通りといえばそうなんだけど』
「あと10分以上、こうやって粘り続ける自信あるか? ヒルダ」
『無理だ』
 応えたのはマーズだったが、誰も否定しない。シンも同様だ。再合体したエンブレイスを睨む。

 

 仲間がいなければエンブレイスを前に立っている事は出来ない。
 だが、仲間がいる故に仕掛けられない。

 

 青白い光翼が表面積を増加させた。しかし前進する寸前、その鼻先にレール砲が撃ち込まれる。
 続いて緑色のビーム光が掠め、右側のモノアイが瞬いた。
 大きく回りこむようにして、デスティニーⅡの傍らでスラスターを吹かし、止まる。

 

 ダイアモンドテクノロジー社によって、月で極秘裏に改修されたストライクフリーダム。

 

 PS装甲の上に塗装が施され、青かった部分はダークグレーに。
 機動性を損なうスーパードラグーンはオミットされ、灰と黒の追加パーツが代わりに取り付けられている。
 赤いツインアイは、改修にデスティニーⅡ開発で培われた技術が流用されている事を示していた。
 連結させていたビームライフルを外し、それぞれ両手に構え直す。
『待たせたな、アスカ君』
 何か言う前に聞き覚えのある声を向けられ、シンは唇を引き結ぶ。
 通信モニターに映る男を見据えた。目的は真逆なれど手段が奇しくも一致した、共闘する筈のない強敵。

 

「ああ。……みんな、行けるか!?」
『ま、行くしかねぇだろ』
 ボルトを咥えたヘルベルトが、不敵な笑みと共に親指を立てた。『50人』の男を見遣るシン。
「俺は前に出る! 合わせてくれ。……名前を呼べないのは、不便だな」
『問題ない。主役の君に合わせる』
 男の言葉に苦笑いして、シンはフットペダルを踏み込んだ。
 デスティニーⅡの光翼が羽ばたき、両肩と腰のフィンが後方に向いてスラスター光が膨れ上がる。
 エンブレイスの右翅が分離した時、デスティニーⅡがいた場所に滑り込んだSフリーダムのレール砲口が
発光した。
 改良され、シュレッダーとほぼ同等の性能を持ったクスィフィアス3の2連射がエンブレイスの左翅を掠め、火花と装甲片を散らす。
 白い巨体は6機の大型ドラグーンが射出。前に出てきたドムトルーパー隊に狙いを合わせる。
 重MSのドムでは、全方位から降り注ぐビームを回避できないと踏んだのだ。
『全機同時操縦……大したもんだが、そうそう機動パターンは増やせないようだね!』
 ヒルダ機が一瞬だけ減速し、スクリーミングニンバスを展開。2機がその背後に回り、
縦列形態を取って1斉射目を凌いだ。リズムを狂わされたドラグーンは2射、3射と撃つ
も、ビームシールドを併用した防御に次々と弾かれる。

 

 彼女達3人の乗る機体は癖が強く、お世辞にも扱いやすいとは言い難い。
 操縦技術も、シン=アスカのような爆発的な瞬発力はない。
 だが、機動兵器に対する天賦の柔軟性があった。
 シンがデスティニーⅡでエンブレイスの攻撃をひきつけている僅かな間で、その攻撃を見切っていたのだ。

 

 マーズ機とヘルベルト機のビームマシンガンが、ドラグーンを1機撃ち落とす。
 接近するデスティニーⅡを迎え撃とうとする中央ユニットに、ヒルダ機の砲撃が突き刺さった。
 衝撃で機体がぶれ、迎撃の機会を逸する。
 しかし左翅の3連ビーム砲をかわしきれず、シールドを破壊された。
 Sフリーダムがジグザグに動きつつビームライフルを連射し、真正面から中央ユニットと撃ち合う。
 背部の翼を何発も青白い高出力ビームが掠め、簡易ヴォワチュール・リュミエールの光波に干渉し波紋のような輝きを生んだ。
 そこへデスティニーⅡが飛び込むが……

 

『シン! そっちに構うんじゃないよっ!』
『そういうわけには!』
 相対的上方から左掌のソードを叩き込もうとしたデスティニーⅡは、直前で急制動をかけ90度旋回。
 真紅の光が弧を描き、Sフリーダムとドム部隊の側面を突こうとする右翅と対峙。
 僚機の為なら、平然とわが身を攻撃に曝せるその狂気。それが、最悪の形で発揮された。

 

 中央ユニットの胸部大型ビーム砲が放たれ、回避する。そして姿勢が崩れた所で右翅が襲い掛かった。
 ビーム砲の回頭は間に合わない。正面にシールドを発生させたまま、背面から青白い後光が輪となって広がった。
 拳と化した右翅が迫る。上方に逃れようとした悪魔を、天使の翅が捉える。

 

 アサルトパックを装備したデスティニーⅡが、フリーダムに繰り出した飛拳を想起させるだろう。 
 亜音速の一撃が下腹部やや下に突き刺さり、黒と赤の悪魔をセレニティに叩き付けた。

 

 表面タイルを削り吹き飛ばしながら突き進み、右のウィングユニットが砕け散る。
 突起部に激突し、ようやく止まった。ツインアイから光が消え、デスティニーⅡが力を失う。

 
 

 翅が離れる寸前、左のウィングが緋色の電光を放ち、エンブレイスの青白い光翼が応えるようにスパークした。

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