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SCA-Seed_19◆rz6mtVgNCI 氏_とある害虫駆除業者、もしくは復讐者の日常_第1話

Last-modified: 2009-09-23 (水) 15:24:32

「どうも、デスティニーカンパニー取締役のシン・アスカです」
「ああ、アンタ達が……」
「若すぎて、心配しましたか?」

 

 その日シン・アスカは傭兵家業の依頼主の元を訪れていた。
 年配の中東系の老人は、彼を見るなり不安そうな表情をした。
 もっとも、シンにとってはいつもの事だ。若すぎると不安に思うクライアントも多い。
 だからシンは何時ものように、冷たい笑みを浮かべながら質問の言葉を述べた。
 ここで地の温かみがある笑みを浮かべると、クライアントはさらに不安に駆られるのだ。
 むしろ、クールな機械的な笑みを浮かべるほうが、クライアントは安心するのだ。

 

 もっとも、今回に限ってはそうならなかった。
 クライアントであるその老人は白い目でシンを見ると、
 首を横にして表に止めてあるトレーラーに視線を向けるとこう尋ねた。
「あれ、何?」
「あの、日本語読めるんですか?」
「昔、少し勉強して……」
「そうですか……」
 気まずい沈黙が部屋を支配する。
 そこに止まっていた大型トラックの横っ腹には、日本語でこう書かれていた。

 

『シロアリ、害虫駆除にはデスティニーカンパニーを!
 料金格安、迅速に対応いたします。 TEL:***-****-****』

 
 

「夜盗に狙われているんですか……」
 とりあえず、気まずい沈黙を破ったのはシンであった。
 今までの空気を無視するシンに若干引きながらも、老人は現状を口にする。
「ああ、1週間ほど前から……、ザフトのMSが水と食料、あと金品を要求して……」
「そうですか……MSの数は?」
「1機だ」
 老人の話に、シンは沈痛な表情を浮かべる。
 もっとも、表情とは裏腹に内心ではいつもの事かと考えていた。

 

 メサイア攻防戦から2年と少し。ザフトの崩壊やジャンク屋にばら撒かれるなど、
 軍に属していないMSの数は増加する一方だ。
 MSはわかりやすい力の象徴であり、1機持っただけでも歩兵では対抗できない程の力を操縦者に与える。
 そのため、辺境ではMSによる犯罪が後を絶たない。
 無論、各国も手をこまねいて見ているわけではないのだが、いかんせんエープリルフールクライシスや
 ブレイク・ザ・ワールドの後始末に負われているのが現状である。
 エネルギーに換算すれば、エープリルクライシスの6割も復興は完了していない。
 未だに人知れず全滅した村や町が発見されるくらいなのだ。
 特に内乱状態が続くユーラシアと東アジア、アフリカは目も当てられない無法地帯と化している。

 

「もうすでに町の一部が焼かれておる……。このままではワシらは」
 さらに不安の言葉を口にする老人であったが、そんな老人にシンは獰猛な笑みを浮かべながら答える。 
「写真があって助かりました。ザクが一機なら俺たちでも十分倒せますよ」
「ほ、本当なんじゃろうな」
「安心してください。その為のデスティニーカンパニーです」
 自信たっぷりに答えるシンであったが、老人はそれでも不安を隠せないようであった。

 
 

「夜盗か……、いつもと同じだね。何時になったらあの女に……」
「それは言わない約束だぜ」
 老人との細々とした交渉を終えたシンがトレーラーに戻ってわかった事を報告すると、
 MSの調整作業中だったキラは開口一番こう言った。
 そんなキラに、シンは苦笑いをしながら答える。
「大体、俺たちみたいな貧弱な装備しか持たない傭兵に、早々大きな仕事は回ってこないって」
「それはわかっているけど……」
「そのうちめぐり合えるさ」
 既に一年の月日が経過しているが、キラは未だにラクス・クラインにこだわりを持っている。
 もっとも、それはかつてのような無条件の愛と、無分別な信頼ではない。
 かつては人形のようだった男の中には、今は真っ黒な別の何かが詰まっているのだ。
「それよりも仕事が先決だ。“デスティニー”は大丈夫か?」
「今日は“ストライク”だよ。大丈夫、僕が整備しているんだから」
「だから心配なんだよ」
 自信満々に答えるキラに、シンは不安げな表情を浮かべる。
 先日みたいに戦闘中に足がもげるのは遠慮したい。
 もっとも、キラにはキラの言い分があった。
「シンの操縦が荒すぎるんだよ、インパルスやデスティニーと同じに扱うから」
「俺はアカデミー時代にジンの操縦経験だってあるんだよ。あんなにもろくは無かったぞ」
「やめてよね。ザフトの純正部品を使って万全の整備をされたジンと、
 うちの拾い集めたジャンクパーツでできた“ストライク”を一緒にするのは」
「言ってて悲しくないか?」
「少し……」
 すべて貧乏が悪いのだ。
 そうはわかっていても、悲しくなるシンとキラであった。

 
 

 それから2日。
 とうとう件の夜盗はやってきた。
 慌ててシンたちが寝止まりするトレーラーに老人がやってくる。

「き、来たぞ。ま、真昼間から!!」
 汗をかき、真っ青な顔でトレーラーに駆け込む村長に、シンはニヤリと笑いながら答える。
「予告通りか。律儀だな」
「まったくだね。夜盗が律儀なんて笑えないね」
「な、何を冗談を!」
 軽口を叩くシンとキラに、老人は抗議の声を上げる。
 彼からしてみれば、故郷であり生活の場が、自分や親しい人の命が失われるかどうかの瀬戸際なのだ。
 もっとも、シンとキラにとっては日常の一こまに過ぎない。
 二人はトレーラーに収められているMSのコックピットに向かいながら、老人に答えた。
「大丈夫だよ、僕たちに任せて」
「あんたらには指一本触れさせない」

 

 複座式のコックピットで、沈黙を守っていた計器類に光がともる。
 その殆どは真っ赤に輝く。その光景に、シンは呟く。
「今度こそ黒字を出すぞ……」
「うん、そうだね。せめてシステムの7割は正常に戻したいし」
 答えながら、キラは遠隔操作でトレーラーのハッチを開放する。
 モニターに真っ青な空が映し出されると、メインパイロットであるシンは出撃時の掛け声を言葉にした。
「シン・アスカ、デスティニー……」
「シン、今日はストライクだよ」
 シンの言葉に、サブパイロット席に身を沈めたキラが訂正をする。
「そうだったっけ? シン・アスカ……」
「キラ・ヤマト。ストライク、行きます!」
 こうして、その黒と緑、二色に塗り分けられた異貌のMSは大地に立ち上がった。

 
 

 続くかもしれない。

 
 

MS解説・1
プロトジン・デスティニー(もしくはプロトジン・ストライク)
搭乗者 シン・アスカ、キラ・ヤマト
主武装 重斬剣、突撃銃など

 

 女に捨てられたシン・アスカと知らぬ間に借金の保証人にされていたキラ・ヤマトの二人の現在の愛機。
 左右で黒と緑に塗り分けられた異貌のMS。
 日替わりでデスティニーもしくはストライクと名前が変わる。
 基本性能はプロトジンとほぼ同等だがジャンクパーツの使いすぎで耐久性に問題があり、
 また部品が所々はみ出している。
 さらにコンピューターの一部故障しており、それを補うため複座にはキラが乗り
 常に機体のバランス調整を行なっている。
 本来シンはなけなしの貯金をはたいてM1かシビリアンアストレイの購入を考えていたのだが、
 ジャンク屋に回状が回されていたらしく購入が出来なかった(なお、二人は回状のことは知らない)
 その為、しかたなく宇宙空間を漂っていたプロトジンの残骸を回収し、自力で修理を行なった。
 なお、左右で黒と緑と色が違うのは、途中で黒の塗料が尽きた為で他意は無い。
 もっとも、現在ではこの異貌は相手に与える心理効果が高いので、このままで良いかと思っている。