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SCA-Seed_19◆rz6mtVgNCI 氏_とある害虫駆除業者、もしくは復讐者の日常_第2話

Last-modified: 2009-09-23 (水) 15:48:22

「ひゃっはー! さっさと金と食料、あと女をもってこい!!」

 

 モヒカンザクのコックピットでそのコーディネーターのパイロットは叫んだ。
 彼は元はザフトの地上進駐軍のパイロットであったが、
 ザフト崩壊の折にザクを持ち逃げして夜盗となった。
 そもそもだ、何だって野蛮なナチュラル相手にMSの差し押さえなんぞされなきゃならないんだ。
 あの時の議長代行……たしか、ヤマト・イモだっけ? が、 きっちりと野蛮なナチュラルに
 しっかりと分と言うものを判らせてやれば、こんな事態にはならなかったのだ。
 プラント出身ではない、ナチュラルに媚びて生活をしていた奴はコレだから信用できない。
 そう、全ては野蛮なナチュラルが借金の差し押さえなんぞ、ふざけた真似をしたのが悪いのだ。
 そう、これは新人類であるコーディネーターが正当な権利を行使しているだけなのだ。

 

「さあ、さっさと出すもん出さないと、こんなちんけな村焼いちまうぞ!!」
 男はそう言うと、火炎放射器を路上に駐車してあった自動車に向かって撃つ。
 火はガソリンに引火し、自動車は轟音を立てて爆発した。
 その様子に、遠巻きに見ていた村人たちが雲の子を散らすように逃げて行く。
 あああああああっ、気持ち良い! やはりこうでなくては! 
 コレこそが正しい世界、俺たちの前に這い蹲り逃げ纏うのがナチュラルの正しい姿なのだ!
「ひゃっはっはっはっは、さっさとしろよな!!
 野蛮なナチュラルは俺たちコーディネーター様の言うとおりに出すもん出せよ!!」
 男はいつものように、己の下卑た欲望と暴力性を発揮していた。
 だが、いつもと同じだったのはここまでだった。

 

「やめてよね、貴方みたいな人がコーディネーターを語るのは」

 

 優しげな男の声が、大空に響く。

 

「お前みたいな奴が居るから、何時までたっても戦いは終わらないんだ!!」

 

 怒りに満ちた男の声が、大地を揺るがす。

 

「だ、誰だっ!!」
 予想もしなかった反逆の声に、モヒカンザクのパイロットは叫び返す。
 その叫びに、二人の男の声と共に、黒と緑に塗りわけられた異貌のMSが姿を現した。

 

「「通りすがりの害虫駆除業者だ、覚えておけ!」」

 

 当初は予想もしなかったことに驚いていたモヒカンザクのパイロットであったが、
 出現したMSに一瞬呆気に囚われ、次の瞬間噴出していた。
「な、なんだよ、ひゃっはっはっはっは、驚かせやがって! なんだよ、そのポンコツは!」
 出現したのは、カラーリングこそ生理的嫌悪感を催すものの、
 それ以外は何処から見ても旧式のプロトジンであった。
 いや、むしろあちこちのパーツがはみ出し、見るからにおんぼろだ。
 こんな奴に一瞬でも自分は驚いたと思うと、腹が立ってくる。
「ポンコツ? やめてよね」
 一方で、ポンコツといわれたMSから男が不満の声を上げる。
「はん、それの何処がポンコツじゃないって言うんだ!?」
「ポンコツどころかスクラップ寸前さ」
「んなこと自慢するなよ……」
「だって事実じゃないか。もっとも、僕たちの手にかかればこのストライクは無敵だけどね」
 しょうも無いことを自慢する声に、もう一人の声がヤレヤレと呆れ声を上げた。

 

「ふ、ふざけるなゅ!!」
 もっとも、馬鹿にされたモヒカンザクのパイロットはたまらない。
 怒りの声を上げ、ビームライフルを構える。
「そんなガラクタ、こいつで穴だらけにしてやる!!」
 モヒカンザクのビームライフルが火を噴く。 だが、打ち出されたビームは、
 いつの間にかプロトジンが構えていたアンチビームシールドの前に散っていった。
 その様子に、モヒカンザクのパイロットは目を見張った。
「やっぱ、シールドは連合製が良いな」
「そうだね、この間買ったオーブ製は一発で砕けちゃったし」
 一方で、プロトジンのコックピットではシンとキラがシールドの性能に満足の笑みを浮かべる。
「ふ、ふざけるなっ!!」
「おっと、こんな事で満足している場合じゃなかったな!」
 怒り任せにさらにビームを撃ってくるモヒカンザクに、シンは真面目な表情に切り替える。
「キラ、突っ込むぞ!」
「サポートは任せて!」
 ポンコツMSにビームを止められて怒り狂ったモヒカンザクのパイロットであったが、
 次の瞬間さらに驚愕の表情を浮かべる。
 プロトジンがビームシールドを構えたまま突っ込んできたのだ。
「な、なめるなぁ!!」
 あんなポンコツが突っ込んできたところで、こちらの方が機動力は上だ。あっさりと避けられる。
 そう思いモヒカンザクはバーニアを吹かせ回避行動を取る。
 しかし……。
「な、なんだ、このスピードは!!」
 一体どんな改造をしたのか、プロトジンは通常の三倍近い速度でモヒカンザクに接近をする。
「ポンコツなのは擬態か!? どんな改造を!」
「改造なんてしていないさ、単なる腕の差だよ!」
 オートバランサーをカットし、転ぶ寸前まで重心を傾け高速で走る。
 口で言うのは簡単だが、エースと呼ばれるパイロットでもこれができる者は殆どいない。
 シンの並外れた操縦技術があってこその速度だ。
 男の悲鳴にシンは叫びで答えると、そのままプロトジンの腕を振り上げモヒカンザクを殴り飛ばした。
「ひぃっ!!」
「まだまだ、これでっ!!」
 さらに、それにキラの操縦でプロトジンが回し蹴りを行なう。
 MSの大質量の蹴りは馬鹿に出来ない。モヒカンザクは大きく跳ね飛ばされると、
 町外れの荒地に尻餅をついた。
「とどめだ!!」
 その好機を見逃すシンではない。腰にマウントしてあった重斬剣を抜くと、モヒカンザクに切りかかった。
 そして……。

 

   “ガション”

 

 切りかかったはずのプロトジンの腕が一本、ぼとりと地面に落ちた。

 
 

 その、あまりにもシュールな光景に、モヒカンザクのパイロットはもちろん、
 事の経緯を固唾を飲んで見守っていた村人も頭の中身が真っ白になった。
 彼らの心理を代弁すると、こんな感じだ。

 

『物語りを追う前に言っておくッ!
 おれは今MS同士の戦いをほんのちょっぴりだが体験した
 い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……

 

 あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

 

 『おれは黒と緑のMSがモヒカンザクを攻撃していたと
  思ったらいつのまにか黒と緑のMSが壊れていた』

 

  な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
  おれも何をされたのかわからなかった…
  頭がどうにかなりそうだった…

 

  催眠術だとか超スピードだとか
  そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…』

 
 

 気まずい沈黙が砂漠の村を支配する。
 その沈黙を破ったのは、やはり経験豊かなシンであった。
 シンはその様子に、思いっきり叫んでいた。

 

「ま、またぶっ壊れたぁ!!!」
「「「「「「ええええええええええええええええええええっ!!」」」」」」

 

 シンの叫びに、村人とモヒカンザクのパイロットの叫びが偶然にもハモった。

 

「キラっ! どうなってるんだよ、これは!」
「シンが乱暴な操縦をするから。パンチなんて関節を痛めるじゃないか!」
「キラだって今回し蹴りをやっただろう!!」
「僕は間接の耐久度を図りながらやってるよ!」
「お、俺だって!!」
 つけっぱなしの外部スピーカーを通して、二人の口喧嘩……というか、責任の擦り付け合いが周囲に響く。
 その様子に、村人達はしらけた様子となる。
 そりゃそうだ、ついそこまでヒーローのような活躍をしていたMSがいきなり醜態を見せたのだから。
 一方で、モヒカンザクのパイロットはたまらない。
 こんなスクラップに、こんあ馬鹿どもに自分は言いようにやられ、尻餅をついたのか。
 許せない。男の短すぎる堪忍袋があっさりと破裂する。
 モヒカンザクは立ち上がりながらビームトマホークを取り出し、無茶苦茶に振り回す。
「ふ、ふざけやがって!! な、舐めるなよ、ナチュラルがぁ!!」
 その怒声に、シンとキラも正気に戻る。こんな所で喧嘩をしている場合じゃないのだ。
「わっと、こんな事をしている場合じゃなかった!」
「そ、そうだった、どうしよう!」
 怒り狂ったモヒカンザクの攻撃は大雑把で、シンとキラならそれこそ1時間でも2時間でも
 避け続けることが出来るだろう。

 

 MSさえ壊れなきゃ。

 

 だからと言って、このままほおって置くことなど出来ない。
 相手が正気に戻り無差別攻撃を始めたらそれこそ目も当てられないのだ。
 その事実に、シンは一つの覚悟を決める。
「キラ、パルマフィオキーナを使うぞ」
「ええ、そんな事をしたら修理費が大変な事になるよ!」
「しかたないだろう! このまま暴れさせるわけには行かない!」
「う、うん。了解」
 シンの言うとおりだ。
 このまま暴れさせるわけには行かない以上、切り札を使うしかないのだ。
「システム、ロック解除」
 キラの指が高速でキーボードの上を走り、プロトジン・ストライクに掛けられていたロックが
 瞬く間に解除されてゆく。
「いくよ、シン」
「ああ、行くぜ!」
 二人は息を合わせ、最後のシステムロックを解除した。

 

『デェスティニィ!』
『ストラァイクゥ!』

 

 そして、プロトジンにかけられていた全てのロックが解除される。
 野太い男の声の合成音が響き、MA=DAOが目覚める。
「行くぞ、パルマフィオキーナ」
『マキシマムドライブ! パルマフィオキーナ!』 
 シンの操縦に、プロトジンは腕を振り上げた。

 

「なめるなぁ!!」
 モヒカンザクのパイロットの怒声とともに、ビームトマホークが縦横無尽に振るわれる。
 その攻撃を紙一重でかわすと、プロトジンは振り上げちゃ腕で……。

 

 落ちていた、もう片方の腕を拾い上げた。

「へ?」

 

 あの腕から何かすごい攻撃が出るんじゃないの?
 思わず呆然としたモヒカンザクのパイロットであったが、
 次の瞬間コックピット内にすさまじい衝撃がひびく。縦に横に大きく揺れる。

 

『パルマフィオキーナ! パルマフィオキーナ! パルマフィオキーナ!』

 

 プロトジンからMA=DAOの声が響く。
 そう、プロトジンはその声にあわせ、落ちていた腕を鈍器にモヒカンザクを殴りつけていた。
 その様子は、まさしくパルマフィオキーナ(掌の槍)であった!

 

『パルマフィオキーナ! パルマフィオキーナ! パルマフィオキーナ!』

 

「ちょ! なにそれっ!!」
 モヒカンザクのパイロットが、あまりにも酷い、優雅さの欠片もない攻撃に抗議の声を上げるが、
 んなもん誰も聞いていない。
 むしろ、より一層ヒートアップしてモヒカンザクをタコ殴りにしてゆく。

 

『パルマフィオキーナ! パルマフィオキーナ! パルマフィオキーナ!
 パルマフィオキーナ! パルマフィオキーナ! パルマフィオキーナ!』

 

 ガンガンとモヒカンザクの装甲がへこんでいく。
 ビーム兵器が普及したために忘れられがちだが、MSによる鈍器攻撃は馬鹿にならないのだ。
 パイロットの腕がよければPS系の装甲だって破壊できる。
 まぁ、だからと言って、普通は剥奪したパーツで殴りつけるなんてしないが。

 

『パルマフィオキーナ! パルマフィオキーナ! パルマフィオキーナ!
 パルマフィオキーナ! パルマフィオキーナ! パァルマァァァフィオキィィィナァァァァァァッ!』

 

「あー、うるせー。これ何とかならないのかよ!」
「仕方ないじゃないか、このプログラムを削除しようとすると何故か他の機能も停止するんだから!」
 コックピット内で愚痴るシンに、キラがしょうがないと諦めの言葉を口にする。
 キラだって、何とか出来るなら何とかしたいのだ。
「また修理費がかさむな……」
「いわないでよね。悲しくなるから」
「一緒に経理のヤヨイさんに謝ろう」
「うん……」

 

 かくして約10分後、原形を留めないほどボコボコに破壊されたモヒカンザクが出来上がるのだった。

 
 

 続いても良いのかな?

 
 

MS解説・2
モヒカンザク
搭乗者 夜盗A
主武装 火炎放射器、ビームライフル、ビームトマホーク

 

 夜盗Aがザフトより持ち逃げしたザクウォーリアを改造した機体。
 なお、モヒカンザクとは物語での便宜上の名前である。
 夜盗Aは『火力ばかりじゃなくて電子系もいじらなきゃな、俺って超COOLじゃん』と、
 ジンの頭部の複合センサーを搭載したらしい。
 当人は大きいんだから性能も良いんだろうと適当に考えてやったのだが、
 当たり前だが最新型のザクウォーリアの電子系は旧式のジンより高性能であり、
 結果的にデッドウェイトどころか電子系の弱体化を招いている。
 コーディネーターと言えどもちゃんと学習しなきゃ駄目だ言うことを如実に表している機体である。