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SCA-Seed_19◆rz6mtVgNCI 氏_Episode ”S & R”_第11話分岐

Last-modified: 2009-09-12 (土) 02:06:26

 シンの裏切りは、ドラグーンフリーダムのネットワークを通じ速やかにザフト全軍に伝わった。
 真っ先にやってきたのは、数の多いドラグーンフリーダムであった。

 

「くそっ、ワラワラとやってきて!!」
 ファイナルデスティニーのコックピットでシンが悪態をつく。
 周囲はどこを見てもドラグーンフリーダムばかりだ。レーダーの光点など数えるのも馬鹿馬鹿しい。
 動こうにも、これだけいては進めない。
 しかもそいつらが一糸乱れぬ動きで、同時にフルバーストの体勢をとるなど、
 恐ろしさを通り過ぎて笑えるものがある。
 もっとも、本来なら笑っていられない。砲身から発射されるビームの一つを取っても、
 MS一機を軽く撃墜できるのだ。ましてこの数のフルバーストをまともに食らえば、
 ファイナルデスティニーと言えども瞬時に蒸発するだろう。
 そしてドラグーンフリーダムの群れは、裏切り者を抹殺するべく、一斉に砲撃を開始した。

 

 その砲撃を前に、シンはニヤリと笑う。
「かえって好都合だ」

 

 シンは一気にVLを最大稼動させる。
 ほぼ変わらぬタイミングで、無数のドラグーンフリーダムから放たれた光の束が
 ファイナルデスティニーに突き刺さる。眩いばかりの光がその空間を埋め尽くした。
 そして、ファイナルデスティニーは瞬時に蒸発する……はずだった。

 

 しかし、実際には蒸発などしていない。
 先ほどと変わらぬ姿で漆黒の空間にファイナルデスティニーは浮かんでいた。
 いや、一つだけ違うところがあった。
 光の翼がドラグーンフリーダムの群れが放ったビームを絡め取り、より一層強く輝いているのだ!

 

「どうした? お前たちの与えた力だろう」
 相手は無人機と分かっていながらも、シンは嘲る。
 あるいは、無人であって無人ではない機体に、
 自分がやらなければならない事に対する嘲笑なのかもしれない。
 もっとも、その辺はシン自身にも分からないのだろう。
 変わらぬ嘲笑の笑みを浮かべながら、もう一度光の翼を最大稼動させる。

 

「返すぜ。くたばれぇ!」
 その叫びとともに、ファイナルデスティニーは光の翼を羽ばたかせる。
 光の翼から放たれた光の槍が、ドラグーンフリーダムの群を次々に貫いていった。

 光の槍を避けたドラグーンフリーダムも、次の瞬間にはレーヴァテインに切り刻まれる事となる。
 30機近くいたドラグーンフリーダムが全て撃墜されるまで、実に3分もかからなかった。

 
 

 ファイナルデスティニーによる一方的な殺戮劇を見つめる者たちがいた。
 ザフトが誇るドムトルーパー部隊。歌姫の騎士団とも呼ばれるラクス・クラインの親衛隊だ。
 キラ・ヤマトを頂点とするその部隊は、ラクスに対し狂信的な信奉を捧げている。
 騎士団の若いパイロットの一人が、一方的にドラグーンフリーダムを破壊する
 ファイナルデスティニーを見て震える声で呟いた。
「あ、悪魔かよ……」
 その圧倒的破壊力は、砕き、引きちぎる戦い方は、ファイナルデスティニーの風貌も相まって
 まさしく悪魔のようだった。若いパイロットが恐怖し、呟いてしまったのも無理も無い。

 

 しかしその呟きは運悪くマイクに拾われ、近くにいた僚機にも伝わってしまった。
「怯えてんのかい?」
 騎士団の副隊長……実質的な隊長を務める女性が、若いパイロットに問いかける。
 もっとも、若いパイロットにも矜持がある。震える声を意志の力で押さえ込み、気丈に答えた。
「いえ、自分は怯えてなどおりません!」
「強がるんじゃないよ。本音を言いな」
 もっとも、副隊長には見抜かれていたようだ。若いパイロットの虚勢を笑いながらあっさり否定した。
 それは他のパイロットも同じだったようで、通信機を通して笑い声が聞こえてくる。
 その様子に、若いパイロットは赤面しながら本音を口にする。

 

「はい、少し恐ろしいです。しかし……」
「そっか。なら、アンタはいらないねぇ」
「えっ? ……うああああああああああっ!!」
 そして、若いパイロットが本音を口にした瞬間、副隊長機のギガランチャーから放たれたビームが、
 若いパイロットのドムトルーパーを貫いた。
 爆発するドムトルーパーを見ながら、その副隊長は周りにいる部下達に問いかける。

 

「騎士団にはね、怯えるようなパイロットは要らないんだよ。お前たち、わかってるね!!」
「はい、全てはラクス様の為に!!」

 

 そう、全てはラクス様の為に。
 あの裏切り者を討つ。

 
 

 ファイナルデスティニーのレーダーに急接近してくるMSの一団が映る。
 つい先ほどまで友軍だった都合上、相手の機種はもちろん、
 その気になれば搭乗者まで分かるのは良いことなのか悪いことなのか。
 相手はこちらの位置を完全に把握しているだろうから、不意を打たれないだけマシだと考えるべきだろう。
 接近してくるのはドムトルーパーの部隊で歌姫の騎士団の精鋭部隊だ。
 望遠を使わなくても目視できる距離まで近づいてくると、一斉にギガランチャーを撃ち込んでくる。

 

「もう次が来たのかよ!」
 ドラグーンフリーダムの群れをとりあえず落としたと思ったら、すぐさま次の部隊だ。
 一瞬、振り切ろうかとも考えたが、その考えをすぐに否定する。
 仮にこいつらを振り切ったとしても、エターナルにはキラ・ヤマトとアスラン・ザラ、
 ストライクフリーダムとインフィニットジャスティスの二機が張り付いているのだ。
 後から追いつかれて挟み撃ちなどにされてはたまったものじゃない。
 ザフトが使用しているチャンネルから、騎士団の声が聞こえてくる。

 

「全てはラクス様の為に!」
「裏切り者に制裁を!!」

 

「好き勝手言うなぁ!!」
 すれ違いざまに高出力ビームライフルを撃ち返しながら、シンも負けじと叫び返す。
「お前らっ! あの外道が何をやってるのか知っているのかよ!!」
 その一言に騎士団の怒号が聞こえてくる。
「裏切り者めっ!! ラクス様を侮辱するかっ!!」
「この愚か者めっ! ラクス様が正しいとなぜわからない!!」
「どこが正しいんだよ、命を玩んでるんだぞ!! アーモリー1の現状を知らないとは言わせないぞ!!」

 

「それがどうした?」

 

 罵声を浴びせる騎士団の中で、唯一女の声が静かに答える。
 だが、それは冷静な意見などではなく、より一層の狂気を孕んでいた。
「凡百がどうなろうと構わないさ、むしろラクス様のお役に立てる事を光栄に思うべきだね」
「おまえらはぁっ!」
「裏切り者が吼えるなよ、素直にここでくたばりな!」

 

 女の声を合図に、一斉にドムトルーパーがギガランチャーを放ってくる。
 実体弾とビームの混じった弾幕に、ファイナルデスティニーも後退して攻撃を避けた。
 その後退を好機と見たのだろう。一機のドムトルーパーがビームサーベルを構えて突っ込んでくる。

 

「死ねえええええ、裏切り者おぉぉぉぉぉ!!」
「あっ、突っ込むんじゃない!!」

 

 女が制止の声を上げるが、既に遅かった。
 ファイナルデスティニーはその斬撃をあっさりと避けると、ドムトルーパーの頭に軽く手を置いた。

 

「えっ!?」

 

 次の瞬間その手が赤い光を発し、ドムトルーパーの頭から胸部までが瞬時に抉り取られる。
 ドムトルーパーは爆発する事も出来ず、2~3回痙攣するかのように手足を震わせて機能を停止した。

 

「よーくわかったよ。お前らには一切手加減がいらないって事がな。
 先に地獄に逝っていろ! すぐにラクス・クラインも同じ所に送ってやるから、
 地獄で戦争ゴッコでもやりやがれっ!!」

 

「ほざけ! ヘルベルト、マーズ、ジェットストリームアタック行くよ!」
 女の号令で特に動きが良かった3機が一列のフォーメーションを組んで突っ込んでくる。
 スクリーミングニンバスとビームシールドの絶対的な防御力と、
 ドムトルーパーの突撃力と重火力を生かした最強のフォーメーションだ。
 そのフォーメーションに対し、ファイナルデスティニーは複合大型対艦刀レーヴァテインを
 シューティングモードに切り替える。

 

「そんな戦法が何時までも通じるかよっ!!」
 戦艦すら貫くビームの奔流が、スクリーミングニンバスの障壁にぶち当たる。
 目も眩むような激しい光が鬩ぎ合う。
 数秒間、双方の攻撃と防御がぶつかり合った。

 

「そんなビームで貫けるかっ!!」
 3機のドムトルーパーの発生させるスクリーミングニンバスはフィールドの相互干渉により、
 通常よりも強力な防御能力を獲得している。
 複合大型対艦刀レーヴァテインの大型ビーム砲でも貫くことは出来なかった。
 レーヴァテインをシューティングモードにしたままのファイナルデスティニーに、
 3機による嵐のような連携攻撃が襲いかかる。

 

 最初に放たれたビームがファイナルデスティニーに命中し……すり抜ける。
「えっ!?」

 

 女が間の抜けた声を上げる。さらに2機が放ったビームや実体弾もファイナルデスティニーに
 命中はするのだが、爆発する事も無く後ろの空間に消えていった。
「副隊長! 下です!!」
 別の隊員の悲鳴じみた叫びが通信機に飛び込む。
 その時になって、ようやくデスティニーに残像を生み出す能力があったことを思い出した。

 

「残像か! し、しまった!!」
「遅いんだよ!!」

 

 3機によるフィールドの相互干渉は圧倒的な防御力を生み出す反面、
 どうしても機械に大きな負担をかける。
 それはスクリーミングニンバスの稼働時間の短縮という形に表れる。
 もっともフィールドが消えるまで耐え抜いた敵はいなかったし、
 捕捉出来ないほどの速度で動く敵とも出会わなかった。
 しかし、今その敵に出会ってしまったのだ。しかも最悪の形で。
 防御フィールドの消えたドムトルーパーに、白兵モードに切り替えたレーヴァテインが振るわれる。
 死角である下から振るわれたレーヴァテインは、ドムトルーパー3機をあっさりと真っ二つにした。
「ひっ……! ら、ラクス様ばんざ……」

 
 

「ふ、副隊長がっ……」
 副隊長の撃墜は、騎士団の面々に動揺をもたらした。
 死を恐れぬ騎士団、ラクス・クラインの忠実な番犬と言えども、
 本当の意味で狂信的な人間は一握りもいない。
 そう思い込んでいる人間と、勝ち馬に乗っているだけの人間が大半だ。
 そして、本当の意味で狂信的な人間があっさりと、真っ二つと言う視覚的にも恐怖を煽る手段で
 撃墜された時、騎士団のモラルはあっさりと崩壊した。

 

「次はどいつだ。地獄に行きたいのは……」
「ひぃっ、ひいいいい!!」

 

 先ほどまでの勇ましさなど欠片も無い。
 騎士団は悲鳴を上げてあっさりと逃げて行く。もっともシンは連中を逃がす気など無かった。

 

「来ないなら、まとめて薙ぎ払ってやる!」
 そういうと、レーヴァテインをバーストモードに切り替える。
 数機を薙ぎ払うべくターゲットロックに入ろうとした、その瞬間だった。

 

「ローエングリーン! 1番2番ってぇー!!」

 

 遠方より陽電子の奔流がファイナルデスティニーに襲い掛かる。
 寸前で気付いたシンは、回避をする。
「って、陽電子砲!? アークエンジェル!?」
 そして、相手を確認した時シンは混乱をした。

 

 そこに浮かんでいたのは、かつて何度も煮え湯を飲まされたアークエンジェルであった。
 しかし、今のアークエンジェルはオーブ所属である。
 オーブはカガリ・ユラ・アスハ首長がラクス・クラインに誘拐されたとの立場をとり、
 プラントと敵対していたはず?
 オーブの残存艦隊もミハシラに終結し、カガリ・ユラ・アスハ救出に動いていたのではないのか?
 もっとも、これは洗脳中は故意に出会わないようにされており、
 さらに表向きはオーブ政府が発表をしていなかった為にシンが知らなかっただけの話で、
 オーブ軍の実に半数近い数がラクス・クラインの決起に同調してザフトに合流していた。
 残り3割は最初のラクス・クラインの決起時に壊滅しており、ミハシラに終結できたのは
 1割にも満たない数であった。
 そしてラクスに合流したオーブ軍の中心的な存在が、不沈艦アークエンジェルであった。

 

 ファイナルデスティニーがローエングリーンを回避すると、
 アークエンジェルから金色に輝くMSが出撃した
「って、アカツキ!? あんな物までなんで!? まさか、奪い取っていたのかよ!?」
 だから、シンが盗まれたものだと勘違いしたのも無理が無い話だった。

 

 もっともそんな考えなど、アカツキから聞こえてきた声の前に吹っ飛んだが。

 

「坊主、お前にこいつらはやらせないぜ!」
「って、その声は……」

 

 シンの脳裏に、数年前の出来事が昨日の事のように浮かんでくる。
 海での出会い、予期せぬ再開、改造された身体に苦しむ彼女、
 彼女を救うために敵指揮官に彼女を返した事……。

 
 

『死なせたくないから返すんだ!
 だから絶対に約束してくれ!けして戦争とか、MSとか!そんな死ぬようなこととは絶対遠い、
 優しくて、暖かい世界へ彼女を帰すって!』
『約束、するよ・・・』

 
 

 ベルリンでの最悪の再開……。そして、雪の中の別れ……。
 守りたいと思った少女の事が、シンの脳裏を駆け巡る。

 

 なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、……なぜなんだ!!

 

「あんたは、あの時の仮面の指揮官!!」
「覚えていたのか、坊主!お前に姫さんとキラの邪魔はさせないぜ!!」

 

 その言葉に、シンの中でまた何かが一つ砕けた。

 

「なんで、アンタが! 連合のアンタがこんな所にいるんだぁ!!!」

 

 シンの怒声が戦場に響いた。