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SCA-Seed_MOR◆wN/D/TuNEY 氏_第10話

Last-modified: 2009-02-10 (火) 16:48:31

シン達が大気圏を突破してから数時間後。 アーモリー1、港湾部、格納庫。
薄暗いMS用格納庫で見たことのない赤いMSがカタパルトへゆっくりと向かって行く。

 

「出力、駆動系、正常に稼動。 システムチェック……全システムオールグリーン」
手際良くコンソールを操作し、機体の状態を確認する、凛とした女性の声がコックピットに響いた。
赤いMSはジンタイプによく似ていた。
ジンの頭部を半円形から、よりスリムな二等辺三角形にし、
特徴的なトサカに似たブレードアンテナを装備したモノアイの頭部。
背中の羽根のようなバックパックは無いが、三角形の肩アーマーに横にジョイントが確認出来る。
背面と側部にスラスターの付いた、膝から下がスカート状になった脚部。
背中にはシルエット、ウィザード装着用のジョイント。
そこに背負っているのは、大きなブースターをつけたバックパックを基点に、
Y字に延びた三つのフィン状のスラスター、
その形状からトライフォースシルエットと呼ばれていた。
機体とほぼ平行の上部の二本に対し、下部の一本のみ後部に突き出るようになっており、
尾のようにも見えた。

 

「ん……両足の接地圧にコンマ単位だけど、ブレがある……ヴィーノ、手抜きしたわね」
機体をカタパルトへと向けていたMSは、唐突に足を止めた。
僅かだが、不満そうにミネルバ整備班班長(仮)ヴィーノ・デュプレへの不満を口にする。
「おいおい、手抜きは言いすぎだろ。 第一、空間戦で接地圧いるか? 帰ってきたら直すよ」
通信を聞いていたらしいヴィーノは、手抜きと言われた事に不満の色を隠さずに言い返した。
「まったく、最近の整備班はエイブス班長が工廠に栄転してからたるんで……」
「イーグル1、後が詰まりますから早く出てください。
 今回のオペレーター新人なんですから、困ってますよ」
ヴィーノの態度に愚痴ろうとした時、別の女性の声、管制室で指揮を取っているはずの
アビー・ウインザーがパイロット、イーグル1を嗜めるように言った。
「……了解」
以前からの戦友たちの言葉から気を取り直し、機体を再びカタパルトへと向かわせる。
機体をカタパルトへとセットし、オペレーターの指示を待つ。
『か、カタパルトのセットを確認』
まだ慣れていない若いオペレーターの上擦った発進指示を聞き、思わず苦笑する。
今は離れて暮らしている妹(前線に出ることに一々口出しするのは余計だと彼女は思う)のことを思い出したのだ。
「あなたが新人? 何事もやる前に落ち着いて、一度、深呼吸しなさい
 ……そうすれば、いつも通りできるものよ」
『は、はい!』
余計の事とは思ったが、昔の妹に重ね合わせてしまい、つい口出ししてしまった。
アビーに何か言われるだろうが……まぁ、後で謝ればいいだろう。  
『進路……クリア、発進どうぞ!』
先程とは違う、しっかりとした口調に満足げに頷くと、思考を切り替えるために深呼吸をする。
「ルナマリア・ホーク、トライフォース・ガルバルディ・オルタナティブ、出る!」

 

軍港からカタパルトで射出されるのは、ザフト最新鋭次期主力機先行試作型
ガルバルディα(オルタナティブ)
時間差の後、続いて胴体周りが少し違う色違い緑色のガルバルディ先行量産型
ガルバルディβ(ベースモデル)が二機、飛び出して行く。
各国の最新鋭機、大西洋連合のウィンダムIII、ユーラシア連邦のヘリオスmkII、
オーブのM2、ムラマサ、PMCアメノミハシラのヤタガラス、イナバ。
それらの実戦配備により旧式化した現在の主力機体ドワッジソルジャー(ドムトルーパーの簡易量産型)
に代わり開発された最新鋭機だ。
開発コードはリメイクジン。
ラクス・クラインの行ったザフトの再編、軍縮を受け、最新鋭の技術でザフトの象徴ともいえる
ジンを蘇らせる事により、士気を高めるのを狙った機体だ。
先行試作型は、当初再編による兵力の減少に伴い、戦闘での戦力損失をコアスプレンダー装備により
最低限に抑えるべく性能、パイロット保護を第一に製作されたインパルスの後継機ともいえる機体である。
背部にウィザード、シルエット兼用のマルチバックパックを装備。
だが扱いの難しさとコストの高さから数を揃えられない為、 性能のデチューンとコアスプレンダーの簡略化
(コックピットブロックを独立させ、脱出カプセルとしての機能を持たせた)に仕様が変更された。
先行生産型は対抗機(水中用MS設計チームの大型MS)とのコンベの後、
一般兵用緑のベースモデル通称βとして次期主力機として決定した。
だが生存性と高い性能、βと部品がほぼ共通という利点が評価され、特殊部隊、エース用の高性能機として
先行試作機は深紅のオルタナティブ通称αとして少数生産されていた。

 

集結した三機は、隊長機を中心に左斜めを描くように展開した。
「しっかし、戦隊長も何考えてるのかねえ? 俺達は小間使いじゃないんだぜ、
 シャトルのエスコートなんて他の連中にやらせりゃいいのによ」
先頭を行くブレイズウィザード装備の二番機、両肩をオレンジ色に塗られたブレイズβ、
プルデンシオ・アイマンが僚機に聞かせるように溜息をつくと、大きく被りを振った。
「確かに不可解ではあるが、ま、何かあるんだろう」
ケルベロスをスナイパーキャノンへと換装したスナイパーブラストシルエットを装備した
最後尾の三番機スナイパーβ、デューク・インドゥラインは二番機に言う。
「何かって何だよ?」
「……二人とも口を慎しみなさい」
二番機が疑問を口にしたところで、静かに、しかし威圧感の有る声でルナマリアは二人を嗜めた。
「す、すみませんホーク隊長」
「……以後、気を付けます」
「分かっているとは思うけど、既に平時じゃないのよ、戦場にいるつもりでいなさい」
先程よりも柔らかい、しかし確かな言葉でホーク隊隊長ルナマリア・ホークは告げる。

 

アーモリーワン駐留、運用試験飛行隊、ホーク隊隊長 ルナマリア・ホーク。 
又の名を、死を喰らう魔鳥─フレスベルク─。

 

シン・アスカ死亡の後、唯一生き残ったミネルバのパイロットにしてエースであったルナマリアは、
熟練兵の減ったザフトではミネルバのクルー共々希少であった。
そのため、デュランダル議長の懐刀であったこと、現議長と敵対したことは一切不問に伏され、
補充要員の組み入れ、訓練の後軍務についた。
その中で4年間、前線とテストパイロットの任を往復していたルナマリアはいつしかその名前にふさわしい
猛禽の如き一撃離脱の高速機動戦の才能を開花させた。
今やその実力はキラ・ヤマトを除いたザフトのトップエースと言って過言は無い。 
更につけ加えて言えば、ドム三人組の愛弟子にして、肩を並べる連携戦闘術の第一人者でもある。
数日後に控えたアプリリウス1奪回奪還作戦に於いても主力を務める筈だった。

 

「もう少しで予定合流地点、アーモリー1の哨戒ラインです」
注意されてから無言で機体を進ませていたプルデンシオが口を開く。
「……隊長、シャトルを目視で確認しました」
プルデンシオの言葉に、ディリュージーを撤去し、長距離光学観測機器を装備したデュークのスナイパーβが
ルナマリアに報告する。
「間違いないわね?」
再度の確認を促すルナマリア。
「受け取ったデータと9割強、一致してますけど」
「よし、目標へと接近する。 イーグル2は戦闘速度で私についてきなさい、
 イーグル3は巡航速度のまま接近しつつ、周辺警戒」
若干の示唆の後、すぐさま指示を出す。
速度の遅いスナイパーを後方に置き、足の早い前衛でシャトルの安全を確保するらしい。
「隊長、もし未確認機、及び敵機が警告を無視して接近して来た場合は、撃っても構いませんね?」
デュークがルナマリアへと確認と指示を請うべく声を上げた。
「自己の判断に従いなさい……ザフトらしく、ね」
唇を吊り上げ、若干の皮肉と多分の友愛を含んだ口調でルナマリアは答える。
「……了解」
プルデンシオとデュークはよく言うよ。 と口には出さずに呟いた。 
だが二人とも口に出すほど馬鹿ではない。

 

ザフトの誰よりもザフトの特徴『自己の判断』を嫌い、73年つまりメサイア戦役以来
ずっと上層部から睨まれながらも(本人は気にも止めていないが)命令系統の明確化と厳格化を
訴えて来た人が言っても説得力がない。
本人曰わく「世の中と人にはね、あの時、ああしていれば良かった。 と思う時が有るもんなのよ」
「……言っとくけど男じゃないわよ(中略)だからあんた達にそんな思いはさせたくない訳よ。
 分かったら(省略)努力しなさいよ」
と言う一時間に渡る、有り難い経験談もとい説教と言う名の愚痴を聞かされた経験が二人にはあったゆえに。

 

何食わぬ顔でそんなことを考えていたデュークの視界に何かが映った。
ほんの一瞬のそれは、見覚えがあった。 粒子ビームがなにかに当たり放った光だ。
「ビームの発射光を確認、戦闘……ってか追っ掛け回されてます!」
すぐさまシャトルへと視線を移したデュークの目に飛び込んだのは
シャトルの周りを小蝿の様に飛び回るMS部隊。
「何!? 予測よりも展開が早い……! 最大戦速で行く! プルデンシオ、付いて来れるな?」
「当然ですよ、何しろ俺は、二代目たそがr」
「イーグル3、デュークは無理せず、後から来い」
「了解っす」
プルデンシオの言葉を遮ると、言うが早いか、ルナマリアのトライフォースαは
背負った三基のスラスターを吹かし、駆ける。
それに次いでオレンジ色の肩、プルデンシオのブレイズβが、デュークのスナイパーβが後を追った。

 
 

全てを覆う暗黒の宇宙を、それらは進んでいた。 数は6機、二個小隊。
三機づつ、正三角形を描くように、ほぼ平行に隊列を組みながら。
それぞれの隊の先頭を行くのは、両肩にスパイク付きシールドを装備したダークブルーのザクファントム……
……その上半身。 
そこにメビウスのスラスターを組み合わせ、左腕を撤去し、ビームライフルを直接接続した、
MSとMAを組み合わせた急造品といえる機体。 
プラントやPMCからは出来損ないと馬鹿にされるその機体、彼らはドラッツェと呼んでいた。

 

ある命令を下され、アプリリウスから出撃し、既に数時間が経つ。
6機は増漕を破棄し、帰還用の内蔵プロペラントのみを残して、慣性で移動していた。
隊長機の内、一機がもう一機へ近付く。
「……よう、随分不機嫌そうだな」
右手から細い通信ワイヤーを射出し、中年の男の声で話しかけた。
「長い間、この出来損ないで我慢して来た。 
 4年振りにようやく足付きに乗れると思ったら、またこいつだ……不機嫌にもなる」
帰ってきたのは、幾分か若さの感じられる声。
「仕方あるまい。 本来なら数で圧倒的な不利な我々を補っているのは、このドラッツェと
 ロゴスの連中がもたらした学習型コンピューターを利用した無人機統括システムだ」
「そして、こいつらにはまだ学習の必要がある」
若いパイロットを諌める様に言うと、カメラを切り替え、後ろに控える二機の無人機を見た。
「分かっている。 緒戦においてプラント守備隊を蹴散らしたのは奇襲とフリーダム、ジャスティスを
 撃破された事による動揺、そして何より奴らの練度の低さによる物だ……
 事実ベテラン、エースクラスとの戦闘キルレシオは目も当てられん」
若いパイロットは不機嫌そうに鼻を鳴らすと、吐き捨てるように言った。
「分かっているなら辛抱しろ。 次は間違いなくエースクラスを揃えてくる。 
 それまでにお勉強を終わらせなければ我々の雌伏は無駄骨に終わる。それだけは……」
怒りを超え、憎悪すら感じる口調で年長のパイロットは呟く。
「無論だ。 そうでなければ海賊の振りをしてまで生きて……」
「待て」
年若い男の声は、年長側のコックピットから聞こえる電子音に遮られた。
「喜べ、当たりだ。 見つけたぞ、コンテナ付きのシャトル。 目標だ」
年長者側の小隊、偵察用ジンタイプからのデータが若いパイロット側にも回される。
「アーモリー1の哨戒ラインぎりぎりだな、仕掛けるか?」
「……是非も無い!」
若いパイロットは嬉しそうに、醜く口元を吊り上げるとスラスターに火を入れた

 
 

同時刻、プラントへと向かう一台のシャトルがあった。
割合小型のシャトルの後部には本体に匹敵するほどのカーゴスペース。
……ちょうどMSが数機積める位の大きさの。
そんなシャトルの搭乗スペースの粗末な椅子に座り、シンはふと窓から外を眺めていた。
「綺麗だな」
頬杖を付き、窓から見える星に思いを馳せる。
「そうかい?……いかんね、感動的な風景も毎日のように見ていると感覚が麻痺してしまう」
「まぁ、こうしてゆっくり見るのは4年振りですからね。 
 毎回毎回降下カプセルとMSの中だったり、うっかり大気圏に突入しかかってたりで」
シンは苦笑いと言うには忍びない悲惨な笑みを浮かべていた。
「ん、アレはMS、プラントのか?」
星とは違う輝きを見つけ、目を凝らすダークブルーの機体色で見辛いが、
ピンク色のモノアイがあるのでザフト系の機体である事は明らかだ。
それに気づいたのは単なる偶然と経験、そして僅かな運だった。
「違う……! 船長、回避だ!」
シンから少し遅れてそれを見付けたジャンは、操縦席に向け叫んだ!

 

だが、その叫びは遅すぎた。 ビームが主翼を掠め、シャトルが激しく揺れた。 
「何だ!?」
ありえない揺れにあわてた船長が操縦席から飛び出してくる。
「「敵だ!」」
倒れないように掴まっていた椅子から立ち上がると、ほぼ同時に二人は怒鳴った。
「こいつに武装は!?」
船長を睨む様に見据え、シンが再び叫ぶ。
「ある訳ないだろ、糞っ!」
近くの窓から自分の目で確認し、船長は悪態をつく。
瞬間、二回目の衝撃、今度は垂直尾翼が吹き飛ばされた。
段々と射撃精度が良くなって来ている。 
つまりは更に接近しつつあると言う事、取り付かれたらこんなシャトルはひとたまりもない。

 

「畜生、やられっぱなしかよ!」
分かっていた事ではあるが、MSに乗っていない時の自分の無力さに腹が立つ。
振り切ったはずの過去の光景が、シンの脳裏に蘇る。

 

   燃える国、
              動かない両親、
    片腕だけの妹、
                   冷たい湖に沈んで行くステラ、
     親を失い泣き叫ぶ子供、
                    愛する我が子を失い狂い掛ける母親。

 

奥歯が軋みギリギリと不愉快な音を立てる。 
痛いほど握り締めた両の手からは赤い、アカイ血が玉となりシャトルの中を舞った。
成すすべなくやられる一方の状況と、自身の無力さに怒りを込め、シンは床を思い切り殴りつけた。

 

「シン君、後部コンテナだ! MSが二機ある。 君と私のだ!」
そんなシンの姿に、覚悟を決めた様子で後部コンテナを指差すジャン。
「何で、それを早く言わなかったんですか!」
「君の機体はOSがまだ地上仕様のままだ。 宇宙に出たら溺れる!」
ジャンは怒鳴るシンに言い返すと、手荷物から取り出したミハシラのパイロットスーツを手早く着始める。
「味方が多いにこしたことはないですよ。 地上用でも砲台代わりにはなります!」
そう言うとシンは着ている服を脱ぎ捨てながら、赤いザフト系のパイロットスーツと
猛禽の嘴にも似た形のヘルメットを取り出した。
「それは?」
「ロウさんに作って貰ったんです。 防弾耐衝撃耐熱性、ミラーシェイドと変声機付きの特注品です」
疑問の声を上げるジャンに答え、いつの間にかスーツを着ていたシンはヘルメットを被った。
「行きましょう!」

 

低音の、擦れた様に聞こえる声、シン・アスカから傭兵赤鬼へと代わった証拠。

 

シンは地面を蹴り上げ、一直線に搭乗部とカーゴスペースの通路へと向かう。
「……キャプテン、私たちの発進を確認したら全力で逃げろ!」
シンの後を追い、ジャンは地面を蹴る。 そして思い出したように後部との通路手前で、船長に叫んだ。
「言われないでもそうするさ」
船長はジャンに顔も向けずに操縦室へと飛び込むと、顔をひきつらせながら呟いた。