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SCA-Seed_MOR◆wN/D/TuNEY 氏_第15話

Last-modified: 2009-05-10 (日) 22:59:28

最初に言っておく! 今回主人公の出番が無い!

 
 
 

数日前、僕らは所属不明艦隊がアプリリウスに近づいているって言う情報をターミナルから得て、
歌姫の騎士団の人達、 それにアスランのオーブプラント駐留艦隊と一緒に迎撃に出たんだ。

 

何故ザフトの警戒網をすり抜けられたのか、何故ターミナルは知ったのか、
今、考えればおかしいことだらけだったんだ。

 

でも、あの時の僕はいつも通り全てが上手く行くと思いこんでた。

 

……そう思っている事自体が、数年に渡って周到に準備され、幾重にも張り巡らされた罠だとも知らずに。

 
 
 

アプリリウス、プラント評議会議長直属部隊、歌姫の騎士団 旗艦エターナル、ブリッジ。

 

アプリリウス軍港内にその艦は係留されていた。
戦闘艦艇とは思えない曲線を主とした形状にピンクと白の艦色。
ターミナルより所属不明艦隊接近との情報を受け、出撃を間近にし、
搬入口より数多くの物資が積み込まれ、整備員や内務担当者はその対応に追われる。
手空きのパイロットは搬入を手伝い、それ以外の待機している若い、まだ顔に幼さを残すパイロット達は
出撃を今か、今かと待ち続けていた。

 

「キラ!」
エターナルのブリッジに現れたのは将校用の白いオーブ軍服を着て、准将の階級章をつけた
青みがかった髪の男。

 

その凸は見ているほうが心配になる位広く、不自然な揺れ方と相まって
思わずカツラではないかと聞きたくなるほどだった。

 

「アスラン、来てくれたんだね」
聞き覚えのある声に、白服を身に纏った歌姫の騎士団司令キラ・ヤマトは
ブリッジの出入り口に親友の姿を見ると、地面を蹴った。
「当たり前じゃないか、プラントは俺の故郷でもあるんだ。 
 所属不明の艦隊がいると言うのに見過ごせるわけはないさ」
そう言い、微笑むとアスランはキラと共にブリッジの中央へと進んでいく。
「ありがとう、アスランが来てくれれば心強いよ」
「気にするな、俺達は友達だろ?」 

 

「おっ、ザラ准将も来られましたか」
茶化すような口調でアンドリュー・バルドフェルトは言うと、畏まって敬礼をして見せた。
「やめてください。 ここには部下もいませんから、俺のことはアスランで構いません」
困ったように眉を寄せるとアスランは言う。
「それはありがたいね」 
「ああ、ラクスはいないのか」
艦長席直上の司令官用の席が空いている事に気付きアスランは声を上げた。
「うん、ラクスには議長の仕事もあるから」
「ま、ラクスがいれば士気は高まるが、ラクスはプラント評議会の議長なんだ。
 手を煩わす訳にはいかないだろう?」
キラはアスランの問いに頷き、コーヒーを一口啜り、バルドフェルドは言った。

 

「そうですね。 でも何故彼らは戦いを求めるんだろう」
そんな時ふとキラが呟いた。
キラの言葉に、一瞬バルドフェルトの表情が変わったが、二人はそれに気付くことなく会話を続けている。

 

「人はまた花を吹き飛ばす……か」
その姿を見てぼそりとバルドフェルトが呟く。
「それでも僕らは新しい花を植え続けます」
バルドフェルトの言葉を聞いていたのか、キラは引き締まった表情で言い返した。
「…………そうだな、過去に捕らわれずにな」
少々の沈黙の後、バルトフェルトはアスランへと問いかける。
「はい」
問いかけに力強く頷くアスラン。

 
 

この時、曖昧であった彼らの道がはっきりと分たれた事にキラとアスランが気付いたのは、
もう少し後のことである。

 
 

「ああ、そういえば格納庫で二人を探していたな」
バルドフェルトは無表情に端末を操作しながら二人へと告げる。
「分かりました。行こうアスラン」
二人は何か話しながらブリッジを出ようとしたところで緑のパイロッツスーツを着た男と肩がぶつかる。
「失礼」「いえ」
男は頭を下げ、謝罪すると艦長席へと向かう。
二人は部隊のパイロットだろうと気にも留めなかったが、男のスーツは古い型式のもので
ヘルメットにもミラーコーティングがされていた。

 

「腹は決まったか? アンドリュー・バルドフェルド」
若い男の、感情を伴わない声でパイロットは問い掛けた。

 

その男は、後にシン搭乗のプロトガルバルディと交戦することになるドラッツェのパイロットだと
誰が知るだろうか。

 

「今、最後の一押しがあった。 ……作戦は予定通り行う」
先程二人と話していた時とは明らかに違う、冷徹とも感じられる声でバルドフェルトは答える。
「それは結構」
艦長席に座ったままのバルドフェルトを見下すかのように、男は上機嫌に鼻を鳴らした。

 

「もし……そうしなければ、僕を殺し、君が僕になり変わるのだろう?
 元国防事務局直轄特殊部隊所属、何処にでも居て何処にも居ない。
 誰でもあり誰でもない亡霊……ファントム」

 

男、ファントムの上機嫌な様子にバルドフェルトは頬の肉皮を吊り上げ、一人笑う。
それは虎が獲物を狙う時のように。
「さあ、どうだろうな? 砂漠の虎」
ファントムはバルドフェルトの放つ殺気をはぐらかすように、シールドの向こうからも分かる笑みを返した。

 
 
 

同時刻、オーブ宇宙軍プラント駐留第一特務遊撃艦隊 旗艦 新イズモ級戦艦イツクシマ
旧イズモ級の問題点、弱点、つまり艦首カタパルト部および両舷側部と艦橋部分が分離する構造の為、
防御力が脆弱である事。
現場の意見を受け、はじめから合体状態で運用する事を前提に各部を改修した艦である。

 

その中でも旗艦機能を持つイツクシマの為、艦内に作られた司令室で二人の男が会話をしていた。
「隊長、司令官帰ってきませんな」
一曹の階級章をつけた壮年の男は、大量の書類に囲まれた司令官席に座る、年若い男に話しかける。
「エターナルはフリーダム、ジャスティス専用艦だからな。 
 ミーティアもあるし、お友達もいる。戻る気無いんじゃないのか?」
黙々と書類を処理していた若い男、オーブ宇宙軍三佐(再び昇進)タキト・ハヤ・オシダリは
見るからに不機嫌そうな顔で手を止めることもなく、僅かに顔を上げる。
「小うる……ゲフンゲフン上が居ないのは静かで良いんですが。 兵がだらっとしていて困ります」
つい出そうになる本音を咳き込む事で誤魔化すと、一曹は様々な不満を口にする。
「まぁ、寄港中だしな。 やる事をやっているなら大目に見てやってくれ」
「……出撃したら、そう言う訳にはいかないからな。 精々だらだらさせとけ」
オシダリは話はこれで終わりだと言わんばかりに、片手で退室を促す。
「了解です」
敬礼と共に立ち去る一曹。
曹長が退室したのを見届けるとオシダリは深い溜め息を付いた。

 

本来オシダリに与えられた役職はオーブ宇宙軍プラント駐留第一特務遊撃艦隊、
旗艦イツクシマの艦載機隊隊長兼司令補佐である。
上(アスラン)と下からの板挟みで体調を崩した(心労性胃潰瘍)前隊長イケヤの代わりに赴任した。
艦隊司令官と同等の役割と聞いて喜び勇んだが、実際同等なのは仕事量だけだ。
むしろクソッタレ司令官が事務仕事をしない為、代わりにやらねばやらない仕事が多く、仕事は多い位だ。
つまりまたしても貧乏クジである。

 

(ああ、神よ。 俺が何をしたんでしょうか?)

答え1:火事場強盗(何故かオーブの財産を守った事にされ返却済み)

答え2:部下と一緒にオーブ軍総司令部内でのザラ准将及びカガリ代表批判
   (別れた若禿を身内贔屓なんてする奴だからあんな金ぴかのMSに恥ずかしげも無く乗れんだetc)

 

分かりやすく言えば左遷である。

 

「オシダリ隊長、書類持ってきましたよ」
絶賛後悔中のオシダリの部屋(本当は違うけど)にノックと共に入ってきたのは、
一緒に火事場強盗した仲、昔なじみの部下ヤマダ一尉。
オシダリがイケヤより強かだったのは昔馴染み、悪く言えば子飼いの部下
(通称オシダリと愉快な仲間達)を数人連れて来た事だった。
まぁ、火事場泥棒仲間のスズキ一尉、タナカ一曹。 
CE73年のシン・アスカ抹殺作戦のときも一緒だったヤマダ一尉、ワダ二尉なのだが。

 

「苦戦してますね」
ニヤツきながらヤマダは書類を山に積むと、持っていたパックコーヒーをオシダリへと投げるように渡した。

「すまんな……しかし全くだ。 こんな仕事、柄じゃない。 
 俺みたいな奴はチンピラ束ねるゴロツキが精々だよ」
パックのコーヒーにストローを刺すと、中身の黒い液体を美味そうに吸い上げる。
「またまた。 お似合いですよ」
「俺が倒れたら、次はお前らの内の誰かを推薦してやるから覚えとけ……」
ま、俺は御免ですけどね! と言わんばかりの態度に、恨めしそうな目でヤマダを見つめ、
呪詛を吐くオシダリ。
「ハハハ……では自分は出撃の準備がありますので」
「ちょい待て……おそらく仕事はザフトの後詰になるが、歌姫の騎士団は新兵が多いと聞いている。
 何が起こるかは分からん。よろしく頼むぞ」
恨めしそうなオシダリから逃げる為、退出しようとするヤマダを引き止めると
オシダリは真剣な顔つきで言った。
「ハッ!」
オシダリの真剣な表情に感化され、ヤマダは敬礼し、オシダリもまた立ち上がり敬礼を返した。

 

(ん……何だ? この嫌な感じは?)

 

一人になった後、突如胸に湧く不愉快な感覚に襲われ、オシダリは小窓を見るも
宇宙はただ静かに其処にあるだけだった。

 
 

数時間後、エターナル級高速戦艦二番艦フォースブリザード 格納庫
エターナル級二番艦以降はレクイエム戦後、脚の速さから火消しとして現場に急行、
緊急展開が必要なことが多い歌姫の騎士団専用艦として開発された。
エターナルではミーティアが装着された艦首両舷に砲を装備し砲撃能力を向上させ、
格納庫を拡大し艦載機の数を増やした手頃な艦であった。
ちなみにフォースブリザードの艦色は青と灰色のツートーンカラー。
その格納庫内に三機のMSがいた。
スカート状の足アーマー、重厚な胴体、頭部形状などドムに似ている。
だが、肩アーマーの大型化や腕部にハンドキャノンを装備、バックパックをイージーウィザードから
フォースシルエットに似た物に変え、各部の形状がより攻撃的に洗練された機体。
左肩に識別用のナンバリングがされており先頭から003、004、009のナンバーが振られていた。
ドムトルーパーが黒と紫の二色で塗られていたのに対し、青紫をベースとした機体色に変更されている。
「艦隊見えました」
「よし、ハーケン隊出るよ!」
ブリッジオペレーターからの報告に、眼帯をつけたオレンジ色の短髪の女性、
歌姫の騎士団ハーケン隊隊長ヒルダ・ハーケンは愛機ドライセンをカタパルトへと進ませる。

 

ドライセン──ドムトルーパー、ドワッジソルジャーに続く3番目(ドライ)の機体として
ターミナルにて開発された新鋭機である。
ザフト次期主力機選定にて提出され、いくつかの機体と次期主力量産機の座を争った。

 

ドム、ドワッジを開発したターミナルのファクトリーで開発されたドライセン。

 

シグー、ディンなどのオーソドックスなMS開発に定評のある元ハインライン設計局主導の下、
マイウス1で開発されたザクハイマニューバーII、通称R2

 

インパルスの開発により名を馳せた元ヴェルヌ設計局主導の下、
アーモリー1ザフト工廠で開発されたガルバルディ。

 

ザフトの地上から撤退した水中用MS搭乗員を空間戦闘にも対応させるべくグーン、ゾノを開発した
元クラーク設計局指導の下、マティウス3で開発されたガッシャ。

 

数ヶ月に及ぶ審査の結果、汎用性と操縦性を買われ次期主力量産機はガルバルディに決定し、
対MA用重駆逐および支援MSとしてガッシャの採用が決定していた。
黒い三連星の三人が乗っているのは、複数機作られた試作機のうちの3機だった。

 

「ん? どうしたんだい随分おとなしいじゃないか」
普段なら軽口を叩く部下、ヘルベルト・フォン・ラインハルトとマーズ・シメオンが静かな事に気付くと、
ヒルダは後ろを振り向き、声を掛けた。
「いや、後ろついて来る奴が居なくなったら、なんか妙な気分でな」
「一年半近くいたからな。 いたら煩いがいなくなると寂しいもんだ」
弟子ルナマリアがいた時のことを思い出し、しみじみとするオッサン二人。
「馬鹿言ってんじゃないよ。 五月蝿いのがいなくなって清々したよ」
((……実は寂しいんだよな。 一番可愛がってた癖に良く言うな))
「何か言ったかい!」
「おーい、後が詰まってるから早く出てくれないか」
マーズとヘルベルト、二人の心の声を読んだかのような怒鳴るヒルダに、男の声で通信が入る。
どうでもいいが、ルナマリアがカタパルト前で話し込むのは師匠譲りの悪癖らしい。

 

「おや、まあ、マーチン・ダコスタじゃないか……」
通信モニターに映った見覚えのある顔に、ヒルダは若干の皮肉と多分の友愛を込めて言った。
ダコスタは赤味がかったオレンジ色と黒で塗られたドワッジソルジャー改に搭乗していた。

 

ドワッジソルジャー
ドムトルーパーをベースにターミナルで開発されたザフトの現主力量産機である。
外見的には大きな変更は無い、頭部にはバルカン砲4門を増設し、背部にアンテナが追加され、
通信能力が強化されている程度だ。
内装面は核動力からバッテリー駆動に変更され、新鋭機にも対抗できるよう各種性能を向上させている。
ダコスタの乗っている改型は両肩の装甲後部に大型ブースター4基を装備し機動性を向上させ、
大型ビームランチャーを装備する事で攻撃力を増加したエースパイロット向けの機体だ。

 

「あんた虎の副官で、エターナル搭乗じゃなかったか?」
ヘルベルトはダコスタを見るなり、心中の疑問を投げかける。
マーチン・ダコスタは旗艦エターナル艦長バルドフェルドの参謀役であり、
本来ならそちらに乗っている筈でフォースブリザードにいる筈がないからだ。

 
 

ところで余談ではあるがフォースブリザードという名前は非常に評判が悪い。
男性乗組員からは

 

「封印していた記憶がガッがgagagagaaa」「やめて! 究極闇属性とか知らない!」「テラ厨二病ww」

 

女性からも

 

「格好悪い」「普通に『フォース』でいいと思うんだけどねえ」

 

などの意見が相次ぎ、アプリリウスの艦政本部、総司令部に抗議が殺到し、
一時改名するかどうかで評議会をも巻き込んだ大騒ぎにまで発展した。
総司令部や評議会議員はこぞって首を傾げ、キラやラクスは「格好良いのに……」という感想を残したが、
結局有耶無耶になり、今も搭乗員や周りの思春期の過ち、心の傷を広げ続けている。
その為、エターナルフォースブリザード(相手は死ぬ)と続けて呼ぶ事は厳禁とされ、
フォースブリザードは『フォース』の通称で呼ばれる事が殆どだった。

 
 

「今日はフォースに間借りさ。それに元々はこっち(MS乗り)が本業でね……
 今でも訓練は欠かしてない」
「それにしても珍しいなバルドフェルドが副官を出撃させるとは……」
ダコスタの言葉に頷くとマーズはぼそりと呟いた。
「アプリリウス防衛の為に大戦力は裂けないからね」
「ま、そうだね。 騎士団はひよっこ共が多いから戦力として期待してるよダコスタ」
「ああ、期待に答えられるように努力するよ」
ダコスタの答えに頷くとヒルダはようやくドライセンをリニアカタパルトへとセットする。
「ハーケン隊、ヒルダ・ハーケン。 ドライセン出るよ!」
「同じくマーズ・シメオン。 ドライセン行くぜ!」
「同上ヘルベルト・フォン・ラインハルト。 ドライセン発進!」
三機が発進したのを確かめ、ダコスタも機体をカタパルトへと進ませる。
「ダコスタ隊、マーチン・ダコスタ。 ドワッジソルジャー改出撃する!」

 

隊形を整え、合流したハーケン隊とダコスタ隊の横を複数機のドワッジソルジャー改が通り過ぎる。
右肩に盾に描かれた砂時計のエンブレムを付けた機体郡は一糸乱れぬ動きで隊形を作って行く。
「……マイウスの教導隊までご出陣かい」
エンブレムを見た途端に不機嫌な様子を隠そうともせずヒルダは忌々しげに呟く。
マイウス1に籍を置く、装備の運用研究や、他部隊に対する教育を行う部隊である。
またアグレッサー、軍の演習・訓練において敵部隊をシミュレートする役割を持った専門部隊としての
役割もかねており、教官役でもあり、自軍のセオリーとは異なった戦術を理解・把握する必要があるため、
優秀な人員が割り当てられる、ザフトのエリート部隊である。
万が一の切り札でもあり、教導団が出撃すると言う事は後続の人員教育が行えなくという事で、
まさしく最終予備兵力と言える。

 

「防衛隊を裂く訳にはいかないからと志願したらしい」
「最終予備兵力まで出しゃばる事はないと思うんだがな」
ダコスタの答えにヘルベルトもまた不機嫌そうに言った。
「……刺々しい言い方ですね」
突っかかるような言い方が妙に気になりダコスタは首を傾げた。
「昔、居た事があった。 古巣って奴さ」
マーズは言葉少なく答える。
「ま、連携戦なんぞ必要無いと追い出されて最前線で殺されかけたがな」
ヘルベルトが先程以上に不機嫌そうに吐き捨てるように補足する。
「それでクライン派に?」
「ああ、だから命を助けられたラクス様には恩がある。 
 詳しくは聞かないでおくれ。 余りいい思い出が無いもんでね」
ダコスタの問いに昔を懐かしむように言うとヒルダは苦笑した。

 
 

「所属不明艦隊視認。 フォースのダコスタ隊、ハーケン隊は既に展開を完了。 
 教導隊、他部隊も間も無く完了するとの事です」
「いよいよ、か」
ブリッジオペレーターからの報告に、艦長席の横に立つファントムはバルドフェルドへと視線を向ける。
「ああ……もうすぐだ。 フリーダム、ジャスティス発進!」
ファントムの呟きにバルドフェルドは静かに頷き、歌姫の騎士団最強戦力と言える二機の発進許可を出す。
『メビウスジャスティス。 アスラン・ザラ出る!』
『クリティカルフリーダム。 キラ・ヤマト行きます!』

 

メビウスジャスティス、クリティカルフリーダム
ターミナルで開発されたインフィニットジャスティス、ストライクフリーダムの正統後継機である。
外見こそ変更は無いが、内部機器やOS、武装のアップデートを行い、
本来ならばver2とでも言うべき機体だが、性能が大幅に向上した為、別名を与えられた。
基礎設計がCE72年でその後も新鋭機がロールアウトしているにも拘らず、
CE77年に置いても未だ最強の名を冠する機体である。

 

「さあ、賽は投げられた……始めようか」
二機がエターナルより離艦したのを確かめると、バルドフェルドはファントムに目配せをした。
ファントムは何も言わずにブリッジより退出する。 
バルドフェルドにはバイザーで見えないはずのその顔が、何故か嗤っている気がした。

 
 

艦隊の布陣が終わり、艦載機の展開を終えた歌姫の騎士団、オーブ連合軍の前にそれに匹敵、
いやそれ以上の規模の所属不明艦隊が姿を現す。
敵艦はローレシア級、ナスカ級、ネルソン級、アガメムノン級など勢力関係無く無差別に取り揃えられ、
艦載機もダガーL、ウィンダム、ザク、グフ、ドラッツェ、M1、ムラサメなど多岐に渡っていた。
「聞いていたよりも数が多いな……敵が7に宇宙が3ってとこか?」
「それ多いってレベルじゃねえぞ!」
「あんたらねぇ……フリーダムとジャスティスが前に出るよ!」
宇宙を埋め尽くすほどの敵を前に、緊張感の無いマーズとヘルベルトの掛け合いに溜息をつくと
敵に切り込もうとする二機を指さした。
「俺が前に出て突破口を開きます。 キラ、援護してくれ!」
「うん、ダコスタさん、ヒルダさん達は撃ち漏らした相手をお願いします」
「了解!」

 

「うおおおぉぉー!」
巧みに砲火を潜り抜け、ジャスティスの全身のビームカッターが輝き、周囲の敵を一掃し、
リフターが敵艦の推進部を破壊する。
「いっけえぇぇー!」
フリーダムの全身に装備された砲が閃光を放ち、敵艦の武装を奪い、ドラグーンが敵機の四肢を撃ち抜く。
「流石だね」
「俺達の仕事あるのか?」
流れてくる敵機をプラント方向へと蹴り飛ばし、ヒルダとマーズは呟いた。
「それにしても本当に多いな……流れ弾が行くぞ、ダコスタ」
「ゲイル、ショーン、もう少し下がれ、 確かに多い。 おかげで少し突出してしまったな」
ヘルベルトの言葉を受け、部下に簡単な指示を出すと、ダコスタは簡易な戦況マップを見ていた。
フリーダム、ジャスティスの打撃力により、敵前線に食い込み、後続であるダコスタ隊、ハーケン隊は
敵陣に食い込むような形になっていた。
「後ろは教導隊だろ? 心配は……」
「「「…………」」」
マーズが軽い調子で笑うが、戦況マップを見た途端、三人は一斉に黙り込んだ。

 

「この状況、言いたくないが……」
「もし、仮に教導隊が敵に回ったら」
「退路を絶たれて一網打尽……だな」
「冗談にしても笑えないねぇ」

 

それは常に最悪の状況を想定する、長い間戦場に身を置いた者独特の発想であり、思考だった。
そして、彼らは無意識の内に教導隊の防御の薄い所を探し、
その場所から包囲を食い破る方法を考えていた。

 

普通であればそれは杞憂である。
だがそれが最悪の事態。 情報が断絶し、プラント防衛戦力の全滅を紙一重で防ぐことになる事になる。

 
 

「……頃合いか」
エターナルのブリッジでバルドフェルドは一人思考する。
キラ達は敵戦線へ深く食い込んでいる。 もう一押しあれば敵戦線を確実に分断するだろう。
だが、最後の一押したる教導隊は動くことはない。
バルドフェルドの頬が口元が醜く歪む。

 

キラ・ヤマトとアスラン・ザラへの報復、それは彼の悲願であった。
5年いや6年の歳月を掛けた復讐の仕上げが近い事にバルドフェルトはその身を震わせた。

 

「バルドフェルド、艦内のクリーニングは終わった……予定通り『アルザード』を出す」
アサルトライフルを肩に担ぎ、ファントムがブリッジに戻る。
「お疲れさん、ユニットの調整が終わって、あれが完成すれば僕も出れたんだがね」
「『月面で回収した』あれか? 『ターミナルのサードモデル』……だったか、
 それと同じで新規に作った方が良かったのではないか?」
「意趣返しだからね……そういえば『アルザード』は誰が乗るんだ?」
「アマルフィ女史だ。 気は進まんがな」
儚い雰囲気を持つ緑髪の婦人の顔を思い出しながら、ファントムはひどく不機嫌そうに言葉少なく答える。

 

「……気に入らないかい?」
ファントムの不機嫌そうな声に目を細めるバルドフェルド。
「当然だ。 殺し合いなど……私を含むやりたい連中にやらせればいいのだ」
「そうだな。 出来ることならそれが良い。 誰も戦いの中で死ぬ必要など……」
吐き捨てるようなファントムの言葉に、ここで無い何処かを、誰かを想いバルドフェルドは呟く。
「バルドフェルド?」
「……すまない。 教導の連中に伝えてくれ。 『賽を押し潰せ』と。 諸君、派手に行こう!」
様子のおかしいバルドフェルドにファントムが近づくと、それを制し、
立ち上がるとオペレーターに向かい指示を出した。

 
 

「マズいな、突出しすぎた」
三人の中で作戦立案を行う役割のマーズが戦況マップを見ながら苦々しく呟く。

 

現在、キラ、アスラン、黒い参連星の計5機は敵戦線の分断まで後一歩と言った位置にまで侵攻していた。
だがそれは逆に言えば、後方以外の全てを敵に囲まれているという事を意味している。
マーズが突出しすぎたと言ったが、キラとアスランが猪突猛進している訳ではない。
元々の作戦が一般の部隊が敵正面戦力を抑えている間に、
圧倒的な打撃力を持つフリーダム、ジャスティスの2機を先頭に道を切り開き、
ハーケン隊が二機の補佐、ダコスタ隊が足がかりを確保、その後教導隊が突入、
敵戦線を二分し包囲するという作戦内容だったからである。
が、後続である教導隊の動きが明らかに鈍く、槍の穂先である5機は敵に包囲され、
ダコスタ隊がいまや退路になりつつある突入口を必死で確保していた。

 

「教導の、教官連中の動きが鈍い……退路をダコスタが確保してるからいいものの、
 ダコスタが潰されたら俺らも終わりだぜ」
迫りくるザクをハンドガンで撃ち抜きながらヘルベルトもマーズの意見に同意する。
「司令、ここは一旦、教導隊に引き継いで、ミーティアで一気に形をつけましょう」
「……そうですね。 一度後退してダコスタさん達と合流しましょう。 
 ヒルダさん達は後方の確保をお願いします」
ヒルダの意見具申にキラは頷く。
この4年間、キラ・ヤマトは議長直属部隊の司令と言う立場に釣り合うため、
戦闘だけではなく戦術、戦略についても学んでいた。
専門家から見ればまだ稚拙かも知れなかったが、勉強の成果はあり、
戦況の把握と部下への簡単な指示位は出来る様になっていた。
「了解だキラ。 こちらジャスティス、アスラン・ザラ。教導隊応答してくれ……
 エターナル聞こえないのか?」
「どうしたのアスラン?」
「変だ。 応答が無い」
キラの指示に従いアスランが教導隊、エターナルに通信を入れるが返事は帰ってこない。
NJの影響下と勘繰るがNJCを装備した機体がいる上、
ECSやジャマーなどの通信妨害も行われていない。
「あれは……待て、なんでエターナルが!」
後退しつつあったマーズの目に飛び込んだのは、ピンク色に染められた
とても戦闘艦とは思えないカラーリングの艦。
「こちらの状況を読んだのか流石砂漠の虎……」

 
 

「エターナル艦長バルドフェルドより各艦の同志諸君へ……時は来た、反逆の狼煙を上げろ!」

 
 

アスランが感心した声を上げ、近づこうとした瞬間、バルドフェルドは雄叫びを上げた。

 

「あ?」
      「いっ?」
             「うん?」 
                    「えッ?」 
                           「おい?」

 

五人が一瞬戸惑っている間にバルドフェルドに呼応して、騎士団、オーブ連合艦隊から多数の艦が抜け、
先程までの僚艦に牙を剥く。
残った殆どの艦も今まで味方であった艦からの攻撃にまともな判断さえも出来ずに反撃さえもできない。 
反転した艦は半数以上6割弱、残りの4割強は挟み撃ちにされ殆ど抵抗さえも出来ずに沈んで行く。
「これは一体?」
「そんな……」
キラとアスランもまた、状況を飲み込めず、ただ呆然としていた。

 

そんな中、瞬時に状況を把握し、動いた者達もいた。
「裏切りやがったね! バルドフェルド!」
「ただで済むと思うなよ!」
「数が多かろうと頭を潰せば!」
エターナルのブリッジを目掛け、まさに流星のように三機のドライセンが突貫する。
「瞬時に判断したか、流石だな」
「余裕だね」
ファントムが三連星の判断力に感心し、バルドフェルドはパックに入ったコーヒーを飲む。
その顔は死を受け入れた顔ではない。 バルドフェルドが言うように余裕がある。

 

黒い三連星の代名詞、ジェットストリームアタックをブリッジに叩き込もうとしたその瞬間、
何かがエターナルの前に現れた。

 

『甘いわ』

 

妙齢の女性の声がその場にいた全員の通信機に響き、光の壁がドライセンの前に立ちふさがる。

 

「なんだって!?」
「何だ!」
壁に弾き飛ばされたヒルダ機を二機がかりで受け止め、マーズはその場で確かに見た。

 

「鋏……」
ヘルベルトはその場に現れた、MSの半分ほどの大きさの甲殻類の物に酷似した鋏を前に唖然とする。

 

「ヒルダさん下がって下さい!」
正気を取り戻したキラとアスランが鋏の前に立ちはだかる。

 

「フリーダム、キラ・ヤマト、ジャスティス、アスラン・ザラ。  
 貴方達さえいなければニコルは……あの人は!」

 

「その声、貴女はまさか!」
鋏……おそらくは敵機の一部から聞こえる声はアスランにとって聞き覚えのある声だった。

 

おそらくは光学迷彩であろう透明な状態からウェディングドレスを思わせる
白一色の装甲をあらわにした機体。
大きな鋏と機体下部の脚が特徴的なロブスターに似た大型MA。 

 

名を『アルザード』

 
 

「私はロミナ・アマルフィ……貴方達に全てを奪われた者、そして貴方達から全てを奪う者」

 
 

機体とは異なる、喪服を思わせる黒いパイロットスーツに身を包んだ緑髪の婦人は、
憎悪とも悲哀とも言える表情を顔に浮かべ、敵対を宣言した。

 
 
 
 
 

本編はここまでですが、少しおまけ。

 

ガルナハン、食堂ミネルバ。
店の中でジャージ姿の男が一人、洗濯板を地面に敷かれ、
太腿の上に漬け物石を置かれ正座させられていた。

 

「さて……言い訳を聞こうか?」

 

全身を黒一色のスーツに身を包んだ男がその赤い瞳を覆っていたサングラスを外し、
ジャージ姿の男を睨みつける。
きっとインテリ893か、殺し屋、あるいはマフィアかもしれない。
おかしい、昨夜はぼったくりバーには行っていないし、マイク○ソ○トやディ○ニーやマ○クに喧嘩を売った覚えはない。確かにクォーターパウンダーの肉はぱさぱさしてアレだな。とか言ったが俺は○箱を買ったsハッ! ソ○ーの仕業か! 京都の花札屋か!第一言い訳する事等何も無い! 常にお天道様に目を向けられるようにまっすぐと……

 

「何で15話は俺の出番が一切無い! これじゃあ本編と同jマユッゥゥゥゥゥゥゥゥ! ステラァァァァッ!」
ああ、トラウマが。

 

「シン! 落ち着け!」
「ところでこのスレは何のスレですか?」
AB嬢、そう言いながら熱いコーヒーを太腿にかけるのはやめて欲しい。
そんな事しても影が薄い事実は変わりませんよ。
これだから英国人は、味覚が狂ってr熱い! 熱い!
逆シンスレに決まってるだろJK……

 

「じゃあ何でシンやわた……もといミネルバ勢が出ないのかしら?」
赤髪のアホ毛がジャージの男を猛禽の様な目で嬲る。

 

キラの回想だからすぐ終わるかな
→虎と三連星の視点も入れるか。
→ついでだからオシダリとダコスタとロミナさんも入れよう。
→結果二話跨ぎ、主人公の出番なし

 

「では仕方がないと?」
機会の合成音声のような声で店の入り口からガルバルディのモノアイが覗く。
ママン怖くてちびりそうだよ……一言言うなら、足掻くな運命を受け入れろ。 
まぁ、主人公の出番が無いとかミネルバ勢の影が薄いのは本編再現じゃないk アッーー!

 

男はガルバルディに掴まれると思い切りブン投げられ日本の方向に飛んでいった。

 
 

以上です。
シン、次はちゃんと出番あるといいね。

 
 
 

…………ゴメンナサイ次は必ずシンを出しますorz