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SCA-Seed_MOR◆wN/D/TuNEY 氏_第16話

Last-modified: 2009-08-04 (火) 00:58:40
 

……今回はちゃんとシンが出るよ!

 
 
 

「バルドフェルドさん何故!」
「ロミナさん、何故こんな事を!?」
三機のドライセンを庇うようにアルザードの前へと立ちはだかるフリーダムとジャスティス。
「何故? 元凶たる君が言うか!」
「あなた達は……全てを手にしながら、全てを持たない。 だから奪う!」
キラとアスランの問いに答えることなくアルザードは鋏の中に仕込まれたレーザーキャノンを乱射。

 

「……キラ。 君は言ったな。 花は吹き飛ばしても植えればいいと」

 

バルドフェルドは外部通信で直接キラに話しかける。
「それが貴方の裏切りとどんな関係が!」
背中の甲殻のような装甲が開き、あらわになった垂直発射管から放たれたミサイルを
ライフルとCIWSで撃ち落し、キラは叫ぶ。

 

「過去に縛られず未来を見る……」
「「なら、花を吹き飛ばされ、過去に捕らわれた人間はどうすればいい?」」

 

ロミナとバルドフェルド二人の声が重なりあい、エターナルから無数の機体が発艦、
アルザードの全身に仕込まれた火砲、ミサイルが一斉に火を噴く。

 
 

「なんて弾幕だよ」
「迂闊には近づけんか」
光波防御体との激突の衝撃で意識が軽く飛んだヒルダを庇い、マーズとヘルベルトは呟く。
「クッ……どうなってんだい」
「バルドフェルドが裏切って、大型MAとMS相手に交戦中だ」
意識を取り戻したヒルダが二人に向かい問いかけ、簡潔に答える。
「糞! 新たに敵機だと?」
三機のドライセンを取り囲む、いや追い込むように新たなMS部隊が出現し、
キラたちとは距離を離さざるを得なくなる。
フリーダム、ジャスティスとアルザード、エターナル、その指揮下のMS群は
決闘を演じるかのように周りから取り残されていた。

 

「やめてくださいバルドフェルドさん! 僕達が戦う理由なんてありません」
まるで死を恐れないかのような攻撃を仕掛けるザクの四肢を連結したサーベルで切り落とし、
フリーダムはエターナルのブリッジへと接近する。

 

「理由ならある。 まさか、忘れてはいまい。 君が僕の花を、アイシャを奪った事を!」
「…………それはッ!」

 

雷光のような素早さだったクリティカルフリーダムが、バルドフェルドの言葉に一瞬動きが鈍る。
それは通常の、平均的な技量を持つパイロット相手であればなんら問題が無いほどの刹那。
だが、その隙を前々大戦勃発時より戦場で生き抜いてきた老獪な男が見逃す筈はなかった。

 

「……そして君は、君の花。 フレイ・アルスターすら守れなかった!」
その二つ名、虎の名に相応しい獣の様な獰猛な表情で、キラの心の柔らかい、脇腹部分へと喰らい付いた。

 

「ちがう、チガウ、違う! 僕は、僕の言いたかったのは……!」
「堕ちなさい、フリーダムッ! キラ・ヤマト! ニコルの……あの人の仇」
隠していた心の傷痕を抉られ、素人目に分かるほど動きの鈍ったクリティカルフリーダムを狙い、
無数のビーム、ミサイルが迫り来る。
「キラ、大丈夫か!」
フリーダムに着弾する直前、背部リフターをフリーダムの盾としたジャスティスはアルザードと相対する。
「アスラン・ザラ……ニコルを見殺しにし、あの人を死に追いやった貴方がよくも平然と!」
ロミナはその美しい顔を憤怒、あるいは憎悪に染め、アスランへと叫ぶ。
だが、その赤い瞳の奥底にあるものは未だ見えない。
「ロミナさん、ニコルは貴方が戦う事なんて望んでは……」
「黙りなさい! 過去に捕らわれない? 憎しみで戦うのはやめろ? 詭弁ね!
 貴方は……いえ貴方達は自分達の切り捨てたモノを見たくないだけ
 自分達だけは綺麗でいたいと思っている。 だから親しい人の死すら忘れられることができる!」
アスランの説得を一蹴し、ロミナは6年間、心の奥底に仕舞い込み、膨れ上がった想いを叩きつけた。

 

「違う……僕は、トール、ナタルさん、フレイ……ラクス、僕は」
「聞くなキラ! 貴方達にキラの何が分かる!」
達観した態度で隠していた、忘れようとした心的外傷を、心の脇腹を喰い千切られ
キラはコックピットの中で赤子のように蹲る。
「分からぬさ! 君達こそが人の夢、そして業の結晶!」
「それは、人を、欲を喰らう度に、更に輝きを増す魔性の石! 
 だからこそ……貴方達は美しい。 妬ましい程に!」
襲い来る無数のMS、アルザードのレーザーからフリーダムを庇い、
ジャスティスは全身の剣を振るい続ける。
既に不殺を捨て、コックピットへの直撃を意図的に狙いながら戦い続ける。
「このままじゃ、仕方ない。 まずはロミナさんから戦闘能力を奪う!」
アスランの脳裏に緑色の種が割れるイメージが広がる。
その瞬間、周囲に展開したザク、ウインダム、ドラッツェの部隊が、メビウスジャスティスの
全身に仕込まれたビームカッターにより切り刻まれ、突き刺され薙ぎ払われ、一方的に蹂躙される。
「狂戦士め……忌々しい」
艦長席のアームレストに拳を叩きつけ、バルドフェルドは吐き捨てる。
「アレがSEEDか。 なるほど、たいしたものだ。 ……だが其処までだ」
ジャスティスの圧倒的とも言える戦闘能力にそれまで沈黙を保っていたファントムは声を上げ、
愉快そうに笑う。

 

「こいつデカいだけじゃない……速い!」
ビームブーメランを投げるも人型ではありえない変則的な機動でアルザードは避ける。
「ならっ! コイツで!」
今一度、シャイニングエッジを投擲し、牽制すると回避ポイントを予測し、
その地点へとファトゥム02のスーパーフォルティスを放った。
「やったか!?」
「まだだ、まださ、パトリック・ザラの息子よ」
フォルティスが直撃し、閃光が辺りを包む、眩しそうに目を細めるアスランに、
ファントムは閃光を直視し、頬の肉皮を吊り上げた。
「その程度では、このアルザードの装甲は抜けないわ」
「あれは、アルテミスの傘!?」
閃光が薄まった時、標準型MSの3倍はあるアルザードの白い装甲に傷一つなく、
機体全体を覆う光の盾を纏っていた。
「くっ……なら接近戦で!」
「ドラグーン、撃ちなさい」
光波防御帯の弱点、内側から接近戦を仕掛けようとするアスランに、
ロミナはただ静かに己の僕である竜騎兵へと命じた。
海老で言えば腹部分にある10本の脚が本体から切り離され、変幻自在にソラを駆け巡る。
「馬鹿な、脚がドラグーンに!?……しまった! だが、まだ」
ジャスティスの武装が届かない距離でを包囲し、全身を撃ち抜く。
右足と両腕を失いながらもアスランの目は諦めてはいない。
残ったスラスターを吹かし、アルザードへと突撃する。
「ロミナ女史! カミカゼだ、奴の18番、自爆が来るぞ!」
「カミカゼ? けれど自爆などさせはしない!」
通信機を手にしたファントムの叫びに、ロミナは突撃を続けるメビウスジャスティスに向け、
鋏状のウェポンバインダーを打ち出す。
「くッ! 外れない!」
ジャスティスを確りとホールドした鋏は、グフクラッシャーのインパクトバイスに匹敵する圧搾力で
ジャスティスを締め上げた。

 

「ぐあああああああぁぁぁぁぁ!」
「アスラン・ザラ、あの世で、自分の行いを後悔なさい!」

 

PS装甲すら砕く最大圧搾力300万Gがジャスティスの装甲を砕き、
フレームを変形させ、コックピットを歪ませる。
アスランの苦痛の叫びを打ち消すように、ロミナの怨嗟の叫びが辺りに響いた。

 
 

「頃合いか……ファントム、艦を任せる」
鋏に締め付けられ機体各部から火花を散らすジャスティス、動きの止まったフリーダムを見つめると
バルドフェルドは席を立った。
「出るのか?」
ファントムは艦長席の傍らに立ったまま、不透過バイザーで他人からは見えない視線を
ブリッジ出口へと向ける。
「ああ、落とし前は自分の手で付ける」
その隻眼に明らかな殺意と確かな決意を宿し、バルドフェルドは格納庫へと歩を進める。
「各員、フリーダムとジャスティスから目を離すな。 前方進路空けろ! バルドフェルドが出るぞ」

 

エターナル格納庫最奥の、艦内でも片手で数えるほどの人物しか知らない、
隠されたもう一つの格納庫にそれは鎮座していた。
4年前に月で回収された後、ターミナルの手によって秘匿され、ファクトリーでデータ収集と、
来るべき時の為、改修を続けてきた濃紺色の機体。
(長かった……だが、もう終わる)
コックピットの中で、残された片目を瞑り、過ぎ去った過去を想い、バルドフェルドは操縦桿を握り締める。
「アンドリュー・バルドフェルド出る!」

 
 

「カガリ、アスラン、ラクス……僕はどうすれば、バルドフェルドさん、僕の言いたかったのは……
  ……シン、君ならどうした?」
キラは未だ赤子のように蹲り、一人何事か呟いていた。 
交戦空域から流され、漆黒の宇宙に力なく漂うフリーダム。
そのフリーダムに高速で接近する一つの機影があった。
「いいザマだな、少年!」
「……バルドフェルドさん。 その機体は!?」
その紺色の機体を目にした瞬間、キラは正気を取り戻さざるを得なった。

 

――――その機体は全身の装甲を闇のようなダークブルーに染め、関節は銀、
装甲の隙間から覗く燈色のフレームが血の様に見える。
頭部には捻れた角のようなV字のブレードアンテナ、血の色をしたツインアイの下には
傷痕にも見える赤いライン。
肩にはビームブーメランが装備された装甲、
頭部やボディとは明らかに違うデザインの四肢が継ぎ接ぎの異形。
巨大な翼と二振りの大剣を背に、赤く輝く光の粒子を撒き散らすそれは、
例えるなら悪魔……としか言いようのないモノだった。

 

「見えるかね? これが君の定めだ
 ……因果応報。東アジア共和国やオーブの言葉で人の行いには、
 相応した報いが必ずあると言う意味だそうだね  

 

 だから僕は! この機体に『応果(オウガ)』と名付けた!」

 

その紺色の機体は背中から対艦刀をゆっくりと抜き出す。
「例え、僕やアスランが倒れたとしても、アプリリウスには、ラクスが、ターミナルの人達が……」
久方ぶりに見せる真っ直ぐな目でオウガを見据えると、キラは口にした。
負け惜しみだとは分かっていた。 
だが、言わなくては、未だ諦めていないと示さなければ自らの手で滅ぼした人達、
その過程で命を落とした人たちに顔向けが出来ないような気がした。
「アハハアハハハッハハハハァァァ……ハハッハッ」
バルドフェルドの何処か狂気さえ感じる笑いが通信機から聞こる。
だが、キラには寧ろ……無知なるモノを憐れんでいる様にも聞こえた。

 

「何が可笑しいんですか?」
キラは自分自身でも驚くほど冷静だった。本能的に死の匂いを感じ取り、覚悟が決まったのかもしれない。

 

「今まで考えなかったのかい? 僕らが何故こんな短期間に戦力を整えられたと思う?」
「えっ?」

 

バルドフェルドの答えに、キラは一瞬何も考える事ができなかった。
もう既に分っていた。 ただ、認めたくは無かった。

 

「もっと分かり易く言おうか! ……君達をこの場に導いたのは誰だ?」
「そんな、まさか……!」

 

何故敵はザフトの警戒網をすり抜けられたのか、
何故味方の6割が裏切ったのか、
最初に情報をくれたのは誰か。
今、考えればおかしいことだらけだ。
「……やめてください」
それ以上言わないでくれ。
だがそんなキラの懇願もバルドフェルドの言葉にかき消される。

 

「我々…『名も無き亡霊(ネームレス)』の裏にいるのは……ターミナルだ」

 

「嘘だ!」
「そ、そんな、デタラメ……」
キラも何時の間にか近づいてきていたアスランもバルドフェルドの言葉を否定しようと必死になる。
「事実よ、諦めなさい。 ターミナルはラクス・クラインを、貴方達を見捨てたの」
全周域通信で流された今のやり取り、その後のロミナの言葉にキラ、アスランだけでなく
歌姫の騎士団、オーブ軍の戦闘行動が収束していく。

 

ラクス・クラインはターミナルの理想とは違うものになった。
ラクスは偶像であり、絶対の支配者で無ければならなかった。
……だがラクスは他国との協調を善しとした。
……ターミナルは調和を、ターミナルが作る調和を善しとする。
……ラクス・クラインはターミナルの調和を乱すイレギュラーだ。
キラの耳に何処からか声が聞こえた。 
それは混沌で、秩序を求める、己のみが正しいと信じる狂信者の声。

 

「さぁ、絶望しなさい!」
「そしてあの世で詫び続けろ!」
ロミナとバルドフェルドがキラとアスランにトドメを刺そうと近づいた瞬間、高出力のビームが二機を襲う。
「バルドフェルド隊長! 何故こんな事を」
其処に現れたのはオレンジ色の装甲のあちこちが破損し、塗装もはげたダコスタのドワッジ改。
「ダコスタ君か……君とは長い付き合いだ、それに助けられた恩がある。
 こちらに来い。 決して悪いようにはしない」
ダコスタの機体であることを確認すると、右手を差し出すような動作を取るオウガ。 
「その言葉を信じろと?」
「ああ」

 

「……すみません、お断りします」
ダコスタが沈黙の後に返した答えは拒絶。
「……だろうな。 残念だ」
その答えを想像していたかのようにあっさりとバルドフェルドは言った。
「さようならです。 バルドフェルド隊長」
「ああ、今まで世話になった。さらばだ、ダコスタ君」
二人が別れの言葉を交わした次の瞬間、二機の戦機は爆ぜた。
ダコスタの駆るドワッジ改がバルドフェルドの濃紺色の機体に弾き飛ばされ、
ビームランチャーを握った右腕が根元から切り裂かれる。
残った左腕を回し、脚部のスラスターを吹かして体勢を立て直す。
「一撃では仕留めきれなかったか……流石だな。 マーチン・ダコスタ」
先程とはまるで人が変わった様子でバルドフェルドが言い、濃紺色の機体が振り向く。
その両手には連合のノワールストライカーに装備されたビームエッジ内蔵対艦刀フラガラッハ3に
よく似た武装…ストームブリンガー4があった

 

「まだ衰えてはいませんか……流石は砂漠の虎、アンドリュー・バルドフェルド。
 このままやっても勝ち目がないなら……逃げる!」
瞬間ドワッジ改の胸部装甲の一部が外れ閃光が奔った。
「何!」
「きゃっ」
「目眩ましか! 戦闘室、索敵! 状況知らせ!」
目を細め、閃光にかろうじて耐えたファントムはすぐさまエターナルクルーへと指示を出す。
「ダコスタ機、索敵範囲外へロスト! フリーダム、ジャスティスからの生命反応なし。
 脱出ポッドが打ち出されています」
「フン、さてどうするか。 バルドフェルド、指揮官は貴様だ。 貴様が決めろ」
オペレーターの報告に不愉快そうに鼻を鳴らしたファントムはバルドフェルドへと。
「……追う必要はない。 この包囲網の中、手負いの機体が離脱する事などできまい。
 出来たとしてもアプリリウスは既に我らの制圧下だ」
(ニコル……貴方の仇は)
「そうか……なら戻って来てくれ。 指揮官など性に合わん」

 

(砂漠の虎よ、獣は手負いが一番恐ろしい……それが分からない貴様ではあるまい?
 その選択が凶と出るか吉とでるか……見届けさせてもらおう)

 
 
 

同時刻
キラたちと引き離された黒い三連星は、辺り一体、周囲360°を敵に囲まれていた。

 

「くそったれ! 防御が硬くて押し切れねえ!」
サーベルを構えたウィンダムをハンドガンで撃ち抜き、三つ刃のビームブーメラン、トライブレードを
ドラッツェへと投擲し、マーズは叫んだ。
「肩に描かれた砂時計……マティウスの教導隊まで向こう側かよ」
ヘルベルトは戦闘中にザクから奪ったビーム突撃銃を両手持ちで乱射し、吐き捨てるように呟く。
「舐めるんじゃないよ、若造共!」
苛烈な叫びと共に、ヒルダ機がビームランサーで近づいて来たグフを一刀両断する。
「そうは言うがな、ヒルダ! このままじゃジリ貧だぞ!」
「押し切られるのも時間の問題だな……」
ヒルダ機に背中合わせになるようにマーズ機、へルベルト機が集まる。
「何言ってんだい!  弱気になってんじゃないよ!」
しかし、そうは言う物のヒルダ自身退き際を見極めなければならないと考えていた。
幸いにして攻勢は一時的に中断している。
洩れ聞こえる通信内容から、既に味方は壊滅状態にある事は把握していた。
ベテランや中堅を他に回し、アプリリウスを素人で固めてしまった弊害がここになって急に現れていた。
バルドフェルドが裏切った以上、アプリリウスも敵の手に落ちているとみていいだろう。
教導隊も同じく、駐屯地のあるマティウスも危険だ……というよりどこも怪しい。
……となれば距離はあるが、プラント防衛の最前線であり、優秀ながら評議員やザフト上層部の
お気に召さない人員が集められた、アーモリーシティに行くのが最善だろう。
今や数少ない赤服のエース、リーカ・シェーダ。
愚直とも言える程真っ直ぐなイザーク・ジュールとその部下。
旧デュランダル派の旗頭、旧ミネルバクルー。 つまり黒い三連星の唯一の愛弟子ルナマリア・ホーク。

 

(あの青臭さの消えなかった小娘は元気だろうか? いや……今は止めよう。 何すぐに会える) 
ふと思い浮かんだ考えに首を振り、否定する。

 

とにかく、アーモリーに居るのはいずれも一騎当千の実力を持つスーパーエース揃いだ。
残存戦力を集め、合流すれば勝ちの目も見える。
思考を纏め終え、考えを口にしようとした時、何かがヒルダの視界に入った。
「あれは、ドワッジ改……ダコスタ機だ!」
ダコスタはバルドフェルド直属の部下、右腕と言っても良い様な男だ。
だが、バルドフェルドが叛旗を翻す直前まで退路の確保を行っており、敵ではないと考え、
三機は近づいて行く。
「ドライセン……黒い三連星か? 無事だったか」
右腕と左足を失ったドワッジに乗ったダコスタは極度の疲労と緊張からか、その顔は死人のように青白い。
(なんて面だ)
その悲壮とも言える表情に三人は表情を強張らせた。
「あ、ああ」
「無事でよかった……」
緊張の糸が切れれば今にも倒れてしまいそうな様子で、ダコスタは言った。
「おやおや、マーチン・ダコスタじゃないか? 親分が裏切ったのに、あんたは違ったのかい?」
緊張を少しでも解そうとヒルダは軽口を口にする。
「からかわないでくれ。 知ってたならここにはいないし、もう少し巧くやるさ」
味方と合流した事で少し落ち着いたのか、先程よりも落ち着いた声と顔で軽口の対する返答をした。
「違いない。 しかし……あんたも大概生き汚いな」
ダコスタの言葉に尤もだと、マーズは皮肉げな笑みを浮かべる。
「そいつはお互い様さ、7年前以来這いずり回ってでも生き延びてきた、貴女方も同じでしょう?」
「ま、そりゃそうだね……ん? キラとアスランかい」
ダコスタ機が残った腕に武器も持たず、何かを抱えている事に気付いた。
「ああ……何とか引き摺り出してきた」
プラント最強の二人が死んでいるのと生きているのでは士気に差が出る。
「先ずはこの宙域から離脱しないとな。 ダコスタ、部下と連絡は取れないのか?」
「いや、先程からやっているんだが駄目だ。 部下にも内通者がいたのかもしれない」
マーズの言葉に大きく被りを振り、ダコスタは答える。
「仕方ない。 途中で拾えるだけ拾っていくか」
「決まりだね。 さっさと尻尾巻いて逃げようじゃないか」
マーズが立案し、ヘルベルトが煮詰め、ヒルダが実行する。
禄に打ち合わせもせずに行動方針が決まるあたりが黒い三連星がザフト最強小隊と呼ばれる由縁なのだろう。

 

「……待てっ! 新手だ。 数は……二中隊以上!」
離脱しようとした矢先、かろうじて残っていたドワッジ改の頭部が敵の接近を捉えた。
種別はドワッジに、量産型フリーダム、デルタフリーダム。量産型ジャスティス、ナイトジャスティス。
歌姫の騎士団と一部エースにのみ配備された機体である。
ドワッジと同時期に開発された為、基本性能はドライセンと余り変わらないが問題は数だ。
「ちっ、しかたないねえ。 あんたら覚悟は出来てるね?」
何かを決断したのか、ヒルダはマーズとヘルベルトの顔を見据えた。
「そんな事、今更聞くか?」
「ああ、全くだ」
存外すっきりとした、何の問題があるかといいたげな表情で二人は答える。
「……そりゃ悪かったね。 ダコスタ、此処はあたし等に任せて離脱しな!」
「馬鹿な! 君達は如何するんだ!」
ドワッジから距離を取りはじめた3機に向かいダコスタは叫ぶ。
「余計な事気にするんじゃないよ」
「アーモリー1に行け、あそこならまだ大丈夫な筈だ」
「それによ、お荷物抱えて戦う気か?」
これから死地へと向かうにも拘らず、三人は笑いながら言った。

 

「…………すまない」
ダコスタは深くうつむく。
彼らは自分たちのために死んでやると言っているのだ。
彼らの意思を無下には出来ない。
「ああ、ダコスタ。 一つ伝言を頼まれてくれ」
ダコスタが機体を反転させ始めた時、ヘルベルトから通信が入る。
「相手はアーモリー1にいる試験飛行隊……ミネルバのルナマリア・ホーク 」
「……出来の悪い弟子だ。 連携戦闘技術を覚えるのに一年掛かって、マニュアルにするのに更に半年」
「幾ら教えても射撃は上達しない、熱くなったら直ぐに突っ込む、全く面倒見きれないよ」
「ただな、根性だけは誰よりもある」
「俺達の、全てを受け継いだ……自慢の弟子さ」

 

「……何と伝えればいい?」
過去を懐かしそうに、弟子を照れくさそうに語る三人にダコスタは言葉少なく聞きかえす。

 

「連携戦闘に置いて背中を任せている奴の場所は死角になる乱戦に気を付けな」
ヒルダが

 

「射撃が下手だと思ってるだろうがそんな事はないもっと自信を持て」
ヘルベルトが

 

「格闘、高速機動戦に関しちゃ言う事はねえ……ただ自分一人で戦ってる訳じゃないのを忘れるなよ」
マーズが敵に向かいスラスターを吹かして行く。

 

「……必ず伝える」
ダコスタのドワッジ改は三機を見届けると敵機とは逆方向に全速力で離脱していった。

 
 

「さて、はじめるか!」
「黒い三連星、最後の見せ場だ。 派手に行くぜ!」
「行くよ、あんた達!」
「「おう!!」」

 
 
 

同空域オーブ艦隊。
バルドフェルド叛旗直後。

 

「こちらオーブ軍、こちらは味方だ!」
「命令を! 命令をくれ!」
「誰が味方で、誰が敵なんだ!」
オーブ艦隊は混乱の極みにあった。
つい先程まで味方であった歌姫の騎士団艦艇からの砲撃に、
MSを展開しようとしていたオーブ艦隊は対応しきれず回避運動を取るのが精一杯だった。

 

「ザフト艦から攻撃!? 一体何が起こっているんだ!」
「隊長、一体これは……」
「俺にもわからん。 ワダ、ヤマダ。 僚艦と連絡取れ! それ以外はイツクシマを守れ!」
戦場把握の為、MA形態のムラマサでいち早く出撃し、難を逃れたオシダリもまた状況を把握できず、
直属の部下に指示を下すので手一杯だった。
『オシ…リ! 聞こ……か! マズい事に………ぞ』
「如何したんです!? 状況の把握できました?」
慌てているイツクシマ艦長からの通信に、オシダリは叫ぶように答える。
『エ……ナル……いや、バルドフェルドが裏切った!』
「何? プラントがオーブに宣戦布告したのか!?」
階級差も思わず忘れ、怒鳴るように聞き返すオシダリ。
通信状況が悪いと言う事も合ったが、何より信じられないと言う気持ちの方が大きかった。 

 

『違う、テロリスト側に付いたんだ! 騎士団の艦隊、6割と一緒に!』

 

ブリッジへと近づいた事で一応通信状況は良くなるが、未だ状況は不明。
更に厄介な事はザラ司令官がいないため、司令官代行と言う立場からオシダリよりも階級が上の
艦長連中を指揮して艦隊を無事に帰還させなければならないのだ。
(あーー、胃が痛え……)
だが胃の痛みに浸る間も無く、事態は動き続ける。
「意味が分からん。 とりあえず今戻って……」
「隊長! ナニワ、タカチホ反転! 呼びかけにも応答ありません!」
状況を把握する為、一旦艦へと戻ろうと機体を変形させたオシダリ機にワダから更に驚愕の情報が入る。
「身内からも裏切りが出たのか……」
『オシダリ! 撤退するぞ。 せめてアプリリウスの防衛戦力と合流しなければ!』
一瞬忘我状態になりかけたオシダリに、イツクシマ艦長からの叱責は正気を取り戻すには十分だった。
「……分かった。 艦隊指揮の方は任せる。 俺は道を開く!」
再びムラマサを航空機によく似たMA形態に変形させると、部下を纏める為、
イツクシマの周囲を旋回し始めた。

 
 
 

バルドフェルドの叛乱より数時間後プラント宙域。
旗艦イツクシマ、ブリッジに生き残った艦の指揮官たちが集まっていた。
状況はまったく不明、本国との連絡は取れず、生き残った艦も僅か。
幸いなのは生き残った艦の艦長たちが皆中道派で、顔見知りなので
余計な腹の探りあいをしなくて済むという事か。
「……大損害だ」
円卓を囲んでいた指揮官の内、被害を纏めていたオシダリが呟いた。
「生き残った艦は二割。 戦艦が三隻イツクシマ、マツシマ、ハシダテ。
 巡洋艦は0、駆逐艦が四隻の計七隻ですか」
艦長たちの中でもっとも若い、マツシマの艦長が非難がましい視線をオシダリへと送る。
「艦載機の被害が少ないのが救いだな……ボカチン食らった艦の人員も拾えた」
オシダリを擁護するように白髪交じりのイツクシマ艦長が声をあげ、マツシマの艦長を牽制する。
「……まったく嫌になる。 時折思うよ、全てを投げ出せたらどんなに楽だろうかと」
椅子にもたれ掛るとオシダリは深い溜息をつく。
「でしたら代わりましょうか?」
マツシマ艦長が皮肉な笑みを浮かべ、冗談めいた口調で言った。
「それが出来ればな。 第一、おかしいだろ。 何で司令代行が一佐なんだよ。
 巡洋艦の艦長だって二佐だぞ」
皮肉を鼻で笑い飛ばすと、積もり積もった鬱憤が口をつく。
「まぁ、代行って言っても実質補佐って感じですがね」
それまでだ合っていたスズキ三尉が大げさに肩をすくめる。
周囲から苦笑めいた笑い声が聞こえオシダリは嫌そうな顔を見せた。
「ま、冗談はそこまでにしよう」
ほぐれた場の雰囲気を壊さない、絶妙なタイミングで咳払いをするとイツクシマ艦長は
机に置いてある地図を指差す。
「取り敢えず駆逐艦を2つに分けて前後に配置するぞ……いいな?」
最先任であり、経験も豊富なイツクシマ艦長の意見に全員が頷く。
「俺は艦隊運用に関しては素人以下だ。 良いと思うようにやってくれ……
 何なら艦隊司令代行の権限を移譲させるか?」
「悪いが艦隊運用だけで手一杯だ」
ドサクサに紛れ艦隊司令代行の地位と責任を押し付けようとするも断られ、
オシダリは苦笑いするしかなかった。
「貧乏籤ですね」
「「今更だな」」
スズキの核心を付いた一言に、その場にいる全員が声を揃えた。

 

「艦長、進行ルートの安全確保に向かっていた艦載機より通信です」
「……全員に聞こえるようにしてくれ」
『こちら、イツクシマ艦載機ヤマダ二尉、進路上に中破したMSを発見。 脱出ポットを抱えてます』
「ヤマダか? この糞忙しい時に厄介そうな物見つけやがって」
『上司が厄介そうな物見つける天才ですから』
よく見知ったオシダリの嫌味に、嫌味で返すヤマダ。
「……喧嘩するな。 回収して来てくれ」
『了解です』
そんなやり取りに呆れたように溜息を付き指示を出すと、イツクシマの艦長は通信を終了した。

 

「了解です……あんた運が良いぜ、直ぐに医者に見せてやるからな」
「……ああ、すまない」
ヤマダが発見したその機体はダコスタのドワッジ改であり、
ダコスタからの情報によりオーブ艦隊はアーモリー1への脱出に成功する。

 
 
 
 

「これが僕の知る限りの全てだよ」
全てを話し終えたキラは、渇いた喉を潤すため傍らに置いてあった水差しを口にした。
「「「…………」」」
シンとコートニー、ミハエルの三人は押し黙り、それぞれ状況を整理している。

 

「凡そ考えられる限り、最悪の状況だな」
考えをまとめ終わったのか、ミハエルが皮肉げに呟く。
「最悪と言うには……まだ早いですよ」
僅かに眉を吊り上げ、シンは反論する。
とは言え、シンに逆転の秘策があるわけではない。
「考えられる限り。 と言った。 それに、これ以上の最悪な状況など考えたくもない」
シンへと振り向き、指さすと吐き捨てるようにミハエルは言う。
「だがシンの言う通り諦めるのはまだ早い。 まだ打つ手はある」
「っていうかそもそもターミナルってなんなんですか?
 キラさんの話が本当なら、結局世界を自分達の思うままにしたいだけの連中じゃないですか」
シンの一言に、その場にいた全員が一斉に顔を見合わせる。

 

「ターミナルか……」
「旧クライン派の作ったレジスタンス組織という話だが、どうにも謎が多い」
「ええ、ターミナルの中にはナチュラルの人もいましたから……
 ラクスや僕は彼らのことを信じきっていました」
「でも何で急に叛乱なんて」
「……多分、ラクスが彼らの意に、反する行動をとったからだと思う」
シンの疑問にキラは言葉を選ぶようにゆっくりと答える。
「一部軍事基地を除いた地上からの撤退、ザフトの軍縮再編、ユーラシア連邦との和平……
 全てターミナルは反対したって事ですか」
「うん」

 

地上からの撤退とザフトの軍縮再編。
CE75年に行ったこれらの政策はラクス・クラインは暗君では無いと地球各国に認識させ、
結果大西洋連邦との火種を抱えていたユーラシア連邦との和平を成功させた。
シンの記憶では、一歩間違えば、再び全面戦争、泥沼の戦乱に陥りかけていた状況を回避した政策は、
歴史上稀に見る英断だとそれなりに評価されていた記憶があったのだが。
確かに世界は平和とはいえないが、それなりに大きな戦いがなく、
大多数にとってそれなりに平穏であったのは確かである。
「しかし、よく全て上手くいったものだ」
「実際のところラクスは何もしていませんでしたから」
ミハエルの言葉にキラは苦笑いと共に答え、シンは首を傾げた。

 

ぶっちゃけた話ラクス・クラインは政治家としては優秀ではなかった。
だが、少なくとも自身が無能であると言う事は自覚していた節がある。
ゆえにラクスは政策の基本方針、プラントの復興、ザフトの軍縮、地球との交易再開の
三本柱を打ち出すと、後は官僚や担当者に丸投げした。
自身は判子と状況判断に留め、細かい方針にまで口を出さず、更に有能であると判断した者は
因縁を問わず採用し、ポストにつけた。
ラクスに意見できる者などプラント内でも一握りしか存在しなかったのである。
それが大いに有効だったのが外交である。
かつて、アイリーン・カナーバの元でほぼ勝利と言える停戦条件を勝ち取った外交陣は
非常に有能で対立している大西洋と東アジア、ユーラシアの隙を縫い和平交渉を成功させると、
火星からのNJCのベースマテリアル、希少鉱石輸入の窓口として貿易を再開させた。
ザフトの軍縮再編には旧ザラ派のエザリア・ジュール、デュランダル派のミネルバ隊に代表される
かつて敵対したものを過去を問わず参加させたのも講をそうしたといえるだろう。
一部に反感を招いたものの余剰人員を産業へとまわす事による経済復旧の効果は大きく
一部の過激派(ターミナルを含む)を除いては大きく受け入れられた。
経済、工業力回復の結果、アーテナー級やエターナル級などの新型艦、新型MSを
開発する余裕も生まれたのである。
詰まる所、ラクス・クラインは旧世紀ドイツの軍人フォン・ゼークトが述べたとされる組織論においては、
『無能な怠け者』であったのだろう。

 

余談ではあるが、後世ラクス・クラインのこの方針については諸説ある。
地球、ナチュラルの歴史家が言うには
自身はアイドル―偶像としての扱いに慣れていたという事もあると言われている。
だが、プラントでは違う。
いわく相方、キラ・ヤマトのニート体質が移っただけだと言うのだ
確かに妙な説得力がある説ではある
同胞であるコーディネイターからこんな珍説が出るとは意外だが、
敵対したナチュラルからしてみれば、NEETにしてやられた等とは考えたくもないので、
ある意味当然と言えるかもしれない。
余談終わり

 
 

「シン……」
話が1段落した所で、キラはシンへと向き直り、真剣な眼差しでシンを見つめた。
「なんです?」
「おこがましいのは分かっている。 それでも言うよ、歌姫の騎士団司令として君に依頼がある……
 プラントを救って欲しい」
キラはシンへと深く頭を下げ、助けを請う。
「言われるまでもありませんよ……俺はその為に来ましたから」
心中に何を思ったか、周囲に見せることなくシンは深く頷く。
「なら、もう一つ。 これはキラ・ヤマトとしての頼み……ラクスを助けて欲しい
 僕はラクスに……救ってもらったんだ。
 戦う理由を力を貰い、フレイを見殺しにしてしまった僕の心を癒してくれた
 なのに……今の僕は無力だ。 何も……出来ない」
シンを見上げる様に顔を上げるキラ。 その両目からは止め処ない涙が溢れていた。

 

「キラさん、それは違いますよ。 人はその場所でやる事をやるしかないんです」
「え?」
振り向いたシンの突然の言葉に、キラは思わず声を上げた。
「人は万能ではない……だからこそ自分の立場で、今出来る事を精一杯やる。 と言うことだな」
コートニーはシンの言葉に注釈を加える。
「ええ、世話になった知り合いのジャンク屋さんの受け売りなんですけどね」
少し照れ臭そうに微笑むとシンは、頭を掻いた。
「だが、ある意味本質を突いているかも知れんな……傭兵だろうと、パイロットだろうと、医者だろうと。
 その場でできる事をやるのが本分だ」
「……少なくとも八つ当たりに壁を壊すのは違うと思うがな!」
何時の間にかどこから持ってきたのか、白い壁紙をシンが殴りつけた場所に張りながら
ミハエルはシンを睨みつける。
シンとキラ、コートニーは苦笑いするしかなかった。

 
 

「……キラさん、 俺、そろそろ行きます」
コートニーに目配せをし、シンは出口へと歩き始める。
「あ、ちょっと待って……持って行ってよ」
「これは?」
シンを呼び止めるとキラはその場で何かを書き、便箋にしまうと差し出した。
「出来る限り、融通を効かせてして貰えるように書いて置いたから。 何かあったらそれを見せて
 ……今の僕に出来るのはこれ位だけど。 他にも今の僕にもできる事を探して、やってみるよ」

 

そこにいたのは無力感に苛まれていたス-パーコーディネイターでも、歌姫の騎士団司令でもなく、
一人の人間、キラ・ヤマトだった。

 

「ああ、言い忘れてました。
 キラさんの頼み……確かに引き受けました。 それが俺に出来る事ですから」
「有難う……シン」
シンとキラの視線が交差し、そして外される。 

 

二人はこの時、はじめてお互いを信頼することが出来たように感じていた。

 

シンが扉を開けようとしたその時、シンの目に、彼女のステラの微笑む姿が見えた気がした。
(これでいいんだろ、ステラ? 俺はもう、憎しみで、怒りでは戦わない……
 俺が戦うのは戦争という名の悪意、そして誰かの為だ)
決意を新たにし、口元を引き締めるシン。
その背中を見たコートニーは、かつて幼さと危うさを持っていた少年が、
過ぎ去った月日の中で様々な経験をし、多くのものを背負った、一人の男になった事を悟っていた。

 
 

「あ、そういえばマーレもこの病院n」
ふと、あのナチュラル嫌いで嫌味な金髪のパイロットも入院している事に気付いたコートニーは声を上げた。
「早く機体が見たいからいいです。 あの人簡単に死にませんから。
 あっ、先生、菊の花でも贈っといて下さい」

 

(ああ、嫌いなのか)
(まぁ仕方ないな)

 

即断である。
コートニーがマーレの名を口にしてから僅か一秒後の事であった。