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SDガンダム大外伝 伝説の再臨・第二章_03話

Last-modified: 2014-03-10 (月) 15:49:23
 

SDガンダム大外伝 伝説の再臨
第二章 ~ラクロア城防衛戦~

 

3.

 

 ラクロア城の戦いは佳境に入っていた。
 ラクロア側の守備隊はギリギリの所で士気、そして状況を保たせている。
 後一つ、状況に変化が起こればそれが致命打になるだろう。
 そして、その一つを起こそうとする者が白刃を煌かせ、半分のみ同じ血を持つ弟と対峙していた。

 

「自分はあくまでもラクロアの騎士であると、そう言っていたのに……」

 

 ジャスティスは柄の両側に刃を持つ剣を構える。

 

「時と、事の次第により人の心は変わる。出奔したお前が帰ってきたようにな」

 

 対するイージスの刃は自らの腕から伸びている。残る半分の、違う血がもたらす力。

 

「事の次第、か……何があった?」
「……話す必要など、ない」

 

 問答を打ち切ると、右腕の刃を突き出す。ジャスティスは盾で受ける。
 続いて左で突き、そのまま左右の突きを連続で繰り出す。ジャスティスは剣を風車のように回転させ、次々と弾く。

 

「鋭い! 実戦の中で磨かれた技と言うわけか!」
「お前の方こそ、遊んでいたわけではないようだな!」

 

 互いに会っていなかった間に身につけた力と技を確認しあう。
 イージスは攻め手を止め、一旦距離をとる。同じように下がったブリッツが、すぐ背後に背中合わせに立った。

 

「拙いですね。このままではこちらが不利です」

 

 彼の正面にはレッドアストレイと、ムウ達が並んでいる。空から近づいていた者はほぼ別の場所に降下済みで、運んできた飛行型モンスターにはファトゥムグリフが襲い掛かっている。多勢に無勢の状況だ。

 

「一度退くしかない、か。頼む」
「ええ。分かりました」

 

 ブリッツは懐から取り出した玉を投げつける。

 

「爆弾!? チッ! このッ!!」

 

 レッドアストレイが刀の刃を翻し、峰の部分で玉を打ち返す。

 

「いや、待て!」

 

 イージス達の下に落ちた玉から盛大に煙が噴き出し、辺りに濛々と白煙が立ち込める。

 

「くそ、やっぱまた煙玉か!」
「逃がすか!」

 

 ジャスティスが二人を追おうとする。が、

 

「待て、今は城門の確保だ! この煙に紛れてまた狙われたらまずい!」

 

 ムウの静止を受け、已む無く追跡を諦め、門の開閉装置に取り付く。他の面々も開閉装置の下に集まった。

 

「やれやれ。どうにか一時は凌げだか。けど、このままじゃ同じことだな。いずれやられちまう……」

 

 ムウは大きく溜め息をついた。

 

「想像以上に厳しい状況になっていますね。噂ほど酷くはありませんが」

 

 ジャスティスが周囲を警戒しながらつぶやく。

 

「噂じゃどんな風になってるんだ? いや、一番悪いのはなんとなく予想付くけどな」
「ええ。既にザフト帝国に攻め滅ぼされた、ってレベルの噂まで出回っていますよ。流石に信じちゃいませんでしたが――」

 

 言いながら苦笑いを浮かべる。

 

「後二日もあれば現実になるだろうな」

 

 答えるムウも苦笑を浮かべる。

 

「何、それを何とか致すために某達が救援に参ったのでござる」

 

 レッドアストレイが気合を入れるように強く言い放つ。

 

「あんた、レッドアストレイって言ったっけか。東方の国の出か?」

 

 彼はその武器だけではなく、物腰や仕草など、全体の雰囲気が伝聞で伝わっているものとよく似通っている。

 

「いえ。彼とはラゴル地方で知り合いました」
「ラゴルと言うと、ダバード王国か?」

 

 かつてラクロアとは同盟関係にあった国の名をあげる。
 過去に滅びた先進文明の遺物を発掘し、蘇らせようとしているという話は聞いた事はあるが、今は距離のせいもあって交流が途絶えているため、その程度の事しか知らなかった。

 

「正確にはダバードを目指している途中で、彼は東方の国での修業を終えたばかりだったとか」
「互いに武者修行の旅をしている身という事で、同伴することにしたのでござるよ。ダバードに着いた後、本格的に二人で修業に入ってな」
「その途中でラクロアの危急を聞きつけて、こうして戻って来たのです」
「なるほどな。そんな事があったのか」

 

 二人の説明を聞いて、ムウは大きくうなずいた。
 そして、改めてレッドアストレイを見やる。

 

「しかし、助けてもらう身でこんな事を言うのは何だが、修行の仲間の手助けとはいえ、わざわざこんな遠い国の力になろうだなんて、物好きだな」
「某は元々アルガスの出身でござるよ。それに、それだけではござらぬ」

 

 ムウの言葉を、彼は首を左右に振りながら否定する。

 

「某の目的はもう二つ。一つは修行の成果を試すため。そして、もう一つは故郷にいた頃には建国されてなかったザフト帝国の動向見るためでござる」
「ふーん。まあ、こんな帝国作り上げてりゃ気にはなるだろうけどよ」

 

 そう言われて、またも首を横に振る。

 

「否。ラゴル地方にザフト帝国の属国にあたる公国が建っているのだが、そちらはダバードや周辺のユニオン族の国とは戦をせずに友好関係を作り上げておって。その差が気になったのでござる」
「ジオン族の国がユニオン族と友好関係を作っている!?」

 

 ムウは驚きの声を上げる。彼の中の常識では考えられない事だった。

 

(いや、多分、おかしいのは俺の常識なんだ……)

 

 思い当たる事はあった。

 

「この地方じゃジオン族に相当厳しい弾圧を加えていた。だから、戦いになってるんだな」

 

 弾圧については前々から疑問に思っていたのだ。そう、先にもっと友好的な関係を作り上げていれば、ダバードのようになれたのではないか。
 いや、弾圧が無ければそもそも彼等が自分達の国を興す必要が無かったのかもしれない。

 

「そっちの方の話について詳しく聞かせてもらいたいな。この戦いが終わった後にでも、ね」

 

 言いながらムウは思考を打ち切った。

 

「そのためにも、今はこの状況を乗り越えなきゃならん。さっき何とかするために救援に来た、って言ってたよな。どうする気だ?」

 

 目先の問題の話に切り替える。
 レッドアストレイは一度大きくうなずくと、

 

「敵の指揮官クラスを直接討つ。先ずは敵方の士気と勢いを衰えさせる事が重要でござろう」

 

 と、答えた。

 

「俺の相棒に乗れば、手薄になっている敵後方に空から回り込める。向こうの飛行型モンスターはほとんど攻撃に出てるようだしな」

 

 ジャスティスも上空のファトゥムグリフを見上げながら言葉を続ける。
 子供の頃から共に育った相棒は、ザフトがかき集めただけの飛行モンスターに劣る事はないという自負があった。
 現に、ファトゥムグリフは近くにいた敵をあらかた叩き落とし、現在は周りを警戒しながらジャスティスの指示を待っていた。

 

「確かに、差の大きい士気を何とかするのが最優先か。それに、モンスターどもは基本、烏合の衆だから、統率を失うと部隊として機能しなくなるしな。
 だが、指揮官クラスを狙うならまずはイージスとブリッツだ。あいつらはまだ城内に潜伏して、ここを突破する機会をうかがっているはずだ。
 俺達はここを死守するから、お前達はあの二人を探し出して、止めてくれ。方法は問わんが、あいつらは魔法で操られているフシがある。下手な説得は通じないかもしれんぞ」
「魔法で……ですか」

 

 兄の命を奪うかどうかは任せてくれたのはムウの温情なのだろうが、同時に簡単には解決できないと釘を刺されたわけだ。

 

(ラクロアが盛り返すには、速やかに事を片づけなければならないか。仕方ないが、骨の一本や二本は覚悟してもらうしかないか)

 

 どんな理由があったとしても、ラクロアを裏切った事への代償を支払わせる必要もあるだろうし。

 

(俺も、色々と覚悟を決めてかからなきゃならないか……)

 

 ◇ ◇ ◇

 

 イージスとブリッツは、城内で人の姿がほぼ見当たらない一角に身を隠した。
 元々この城にいただけの事はあり、城内の構造は把握している。
 しかし、辺りに誰もいないという事はザフト帝国の戦力が浸透してきていない場所という事でもある。味方の数を増やすことは期待できない。

 

「何があった、……か」

 

 イージスはジャスティスに言われた事を反芻するかのようにぼやく。そういえば、何故だったか?

 

(いや、考えるまでもない。ジオン族の血が流れる私の力を認めてくれるのがザフト帝国だからだ)

 

 だが、ザフトについたあの日までは、そのような問題で戦っていたわけではなかったはずだ。何故、そのようなことを強く意識するようになったのか?

 

(元々の、私が戦う理由……それは、亡き母のためだ)

 

 彼の母は、スキュラと呼ばれる女性型モンスターの一種だった。それを、彼の父にあたる男が面白半分に捕らえて連れ帰ったのだ。
 母は奴隷か、あるいは玩具のように扱われていた。そして自分がまだ幼い頃、国内でジオン族に対する取り締まりが厳しくなった時、父は自らの手であっさりと殺したのだ。

 

(そうだ。母の無念のためにも、私はラクロアを滅ぼす……)

 

 思考を続ける中で暗い情念に囚われる。
 だが、何かおかしい。辻褄が合わない。それが元々の戦う理由ならば、ラクロアの騎士であったのは変だ。

 

(違う、そうじゃない……亡き母、とは……)

 

 父の正妻にあたる女性。自分にとっては血は繋がらないが、もう一人の母であり、ジャスティスにとっては実の母にあたる人。
 あの人だけはイージスにも、彼の実母にも優しく接してくれていた。
 しかし、あの日、父に殺されそうになった実母を一度は彼女が庇って――

 

(ぐ、うぅぅ……)

 

 頭痛が走った。思考が纏まらない。
 辛い目にあわされていた母。その母に親切にしてくれたもう一人の母。二人の母への想いが、イージスの心の天秤を激しく揺らしていた。
 だが、その天秤は唐突に一方へと傾いた。

 

「イージス、何を悩み込んでいる?」

 

 部屋の入り口から唐突に言葉がかけられる。二人が慌てて振り向くと、魔道士クルーゼがそこに立っていた。

 

「クルーゼ殿? 一体、いつの間に潜入を?」

 

 尋ねる。先程までの悩みや頭痛は嘘のように消え去り、今はただザフトの騎士たる意志がそこにあった。

 

「急ぎ伝え、実行せねばならないことができてな。あれを見るがいい」

 

 部屋の窓のうち、自軍の本陣がある方向のものに近寄り、外を見るように促す。
 イージスとブリッツが窓から外を見ると、天へと向かって狼煙が立ち昇っているのが見えた。

 

「あの狼煙は……撤退命令!?」

 

 煙の色が意味する物を瞬時に思い出したブリッツが驚愕の声を上げる。

 

「そうだ。残念だが撤退する。私は城内に先に入った者の撤退を支援する為にやって来たというわけだ」
「ここまで来て、一体何故ですか!?」

 

 イージスも驚きながら問う。

 

「連絡の途絶えたあの二人……デュエルとバスターがやはりしくじっていた、という事だ。
 そして、我々が攻勢に出てより約半月。その間にラクロアを攻め滅ぼせなかった事に起因する事態が起こった。どうやら、時間をかけ過ぎてしまったようだ」

 

 デュエル達が最初に受けていた任務。そして時間の問題、そこから導き出される答え。それは――

 

「もしや、援軍……!?」

 

 ◇ ◇ ◇

 

 大地を揺るがすかの如く、馬の蹄の音が響き渡る。
 アルガス騎士団は神速というべき速さでラクロアへと向けて進軍していた。
 その進軍速度、そして、それを生み出す統率力と練度の高さにストライクは驚くばかりだった。
 ラクロアの王城は既に目視できる距離にまで迫ってきている。城のあちこちから煙が上がっているのも見て取れた。

 

「まさか、遅かったの!?」
「いえ、どうやらギリギリの所で間に合ったようです!」

 

 馬車の窓から身を乗り出すフレイ姫の言葉に、馬車と併走するように馬を走らせていたストライクが応える。

 

「目的地ではザフト帝国の部隊が展開中だ! 直ちに攻撃を開始するぞ! 各隊、攻勢陣形を取れ! カラミティ、先陣は騎馬隊だ!」
「了解! 我等が騎馬隊の速さで先行します!」

 

 騎士団長のゴールドアストレイの命令が、そしてそれに応じる各隊の声が轟く。

 

「では、早速、ジオン族の連中を薙ぎ払い、ラクロアの方達に我々の力を見ていただくとしましょう」

 

 陣形が整うと、ムンゾ公アズラエルが余裕綽々の態度で告げる。

 

「はッ! 全軍……攻撃開始!」

 

 ゴールドアストレイは右手を高々と上げ、勢いよく振り下ろした。

 

『了解!!』

 

 団長の命令の元、アルガス騎士団はラクロア城に周りにいるザフト帝国の軍へと襲い掛かった。

 

「あれは、敵の援軍でござるか!?」
「いや、あの旗はアルガス王国のものだ! アルガスがラクロアとの同盟を破棄してザフトについていたりしない限り、味方のはずだ!」

 

 城外から伝わる異変を察知したジャスティスとレッドアストレイは、ファトゥムグリフの背に乗って空からこちら迫るアルガス騎士団を見下ろしていた。

 

「おお、確かにあれは我が祖国の。ならば、ザフトに味方する可能性は無いでござろうな」
「ああ。あの国のジオン族嫌いはラクロア以上だからな」

 

 そう話あっている内に、アルガス騎士団の先陣が慌てて撤退を始めたザフト軍に攻撃を始めていた。

 

「どうやら、俺達が突撃をかける必要はなくなったみたいだな。急ぎ、ムウ王子に報告してこっちも反撃に出よう!」
「いや、待たれよ! あれを!」

 

 レッドアストレイが指し示す方向を見ると、イージスとブリッツが魔道士の魔法の助けを借りて、城壁から飛び降りているのが見えた。

 

「兄さんとブリッツか! ここで逃がすわけにも、アルガスに捕らえさせるわけにもいかないか!」
「参ろう!」

 

 ファトゥムグリフを駆り、彼らの元へと一直線に向かう。
 だが、まだ十分な距離があるはずなのに敵の魔道士がこちらに気付いたかのように振り向いた。何か呪文を唱えると、火球を撃ち出してくる。

 

「な、何ッ!?」

 

 このタイミングで攻撃されるとは思わなかった。だが、距離がまだある事が幸いし、何とか避けられた。
 しかし、これでは近づきにくい。魔法を警戒している間にイージス達はどんどん離れていく。

 

「チッ、空中にいたんじゃいい的だ! 下に降りて追いかけるしかないが、追いつけるか?」

 

 ぼやきながらも急降下する。その間にもイージス達を見逃さないよう、目を離さずに向けていた。
 それ故に、自分達と同様にイージス達に向けて勢いよく向かっていく騎馬があることには気付かなかった。

 

「騎馬隊、突撃! まずは敵を逃さないため、そして後続が速やかに攻撃できるよう、敵を斬り捨てる事より撹乱させる事を優先だ!」

 

 号令をかけながら、カラミティは二ふりの剣を抜き放つ。馬上で巧みにバランスを取りながら両手を広げ、敵の群れに飛び込む。
 水平に保たれた剣の刃が、滑るようにザフト兵達の首元を狙う。
 ある者はその犠牲となり、ある者は粟を喰ったように逃げ、またある者は慌てて屈み込んで刃を避ける。中には転んでしまった事で運良く助かった者もいた。
 避けながらカウンターをしようとする者もいたが、そういう相手にはカラミティは素早く反応し、剣を翻して突きを叩き込む。
 飛び散る返り血が、彼の赤い鎧を更に赤く染め上げていた。
 そうこうする内に、残るアルガス騎士団の面々も戦場へと辿り着く。

 

「戦士隊、攻撃開始! 敵を蹂躙せよ!」
「法術隊も続け! 両隊への援護も忘れるなよ!」

 

 レイダーが両手に付けた鉤爪で襲い掛かる。重装備の者が多い戦士隊だが、彼は軽装備での格闘戦を得意としていた。
 軽やかに舞うようにして敵陣を抜けていく彼の動きに惑わされるザフト兵に、重装備の戦士たちが鉄の津波となって襲い掛かる。
 更には法術隊の魔法が飛び、後方の敵を攻撃し、騎馬隊や戦士隊の仲間を強化していく。
 このままでは撤退がままならないと法術隊に攻撃をかける者もいたが、槍衾が出迎えた。

 

「術士と言えども、接近戦が出来ないとは思わないことだ!」

 

 自らの槍で迫ってきた敵を刺し貫きつつ、フォビドゥンが吼える。
 彼率いる法術隊は魔法の杖を組み込んだ槍で武装し、接近戦での迎撃を心得ていた。

 

「これがアルガス騎士団……強い!」

 

 強行軍の疲れをものともせずに敵を圧倒する彼らの戦いぶりに、ストライクは実にシンプルなものだが、純粋に強いという言葉しか出てこなかった。

 

「ええ。これが我等の実力ですよ。まずここでラクロアを守りきり、次はいつでもザフト帝国への攻勢に出て、ジオン族を殲滅してみせますよ」

 

 アズラエルが絶対の自信を持って応える。
 だが、それは決して過剰な自信ではない。この場を切り抜けてラクロアの戦力を整え直し、両国の軍で力をあわせて戦えば十分にザフトに勝てるはずだ。

 

「この場の戦いは決したも同然だ。フレイ姫とストライク殿は報告のためムウ王子の元へ行くといいだろう」
「ええ、そうね。行きましょう、ストライク」

 

 ゴールドアストレイの進言に従い、城門の方へと向かう。門の周辺には既に敵に姿は無い。
 それでも念のためにストライクは周りを警戒するが、その時に偶然、遠くにいる人と人の間から、更に向こうを移動する彼等の姿が目に映った。

 

「イージスにブリッツ!? それに、あの魔道士は……!」

 

 魔道士の顔は遠くてよく分からないが、金属らしき光沢があるように思われた。仮面か何かをつけている、という事だ。

 

「姫、王子への報告はお任せします! アルガスの方達は姫をしっかりお守り下さい!」

 

 この場を姫と、護衛の為についてきたアルガスの騎士数名に任せ、ストライクは馬を走らせた。

 

「ストライク! どこに行くの!?」
「アルダ王の仇を討ちに! 奴です、あのクルーゼという魔道士がいました!」

 

 突然の行動に驚くフレイにそういい残し、敵味方の間をすり抜けながら突き進む。
 ある程度近づいた所で魔道士がこちらに振り向いた。既に顔が確認できる距離に迫っている。やはり、あのクルーゼであることが確認できた。
 クルーゼが魔法の火球を放ってくる。

 

「させるか! 炎帝の剣よ!」

 

 すでに手にしていた大剣より炎を走らせる。空中で火球に激突し、手前で爆発を起こさせた。
 爆発を前に足を止めた馬から飛び降り、収まり切らない爆炎の中に、炎の魔力を持った剣を前にして強引に突っ込んで行く。
 炎帝の剣の炎を操る能力である程度避けてはいるが、完全に防ぎきれる物ではない。しかし、この程度なら大した問題にならないレベルにまで抑え込めている。

 

(後々まで長引かせると厄介だ! イージス達ともあの魔道士ともここで決着をつける!)

 

 3対1ではまず敵わないだろうが、足止めさえ出来ればアルガス騎士団がすぐに展開して来るだろう。
 それでイージス達を生かしたまま捕らえられるかは分からないが、とにかく逃がすつもりは無かった。
 だが、炎を突っ切ったストライクの前に現われた彼等は、もはや逃げてはいなかった。

 

「…………ッ!!」

 

 無言だが、裂帛の気合を込めた息を吐きながら横手からブリッツから迫る。

 

「なッ……!? くっ、このぉッ!!」

 

 この攻撃に対し、ストライクはギリギリの所で反応できた。炎帝の剣を勢いよく振り抜く。
 剣の刃がブリッツの腹部に吸い込まれる。勢いのまま突き抜け、その体を両断した。

 

「し、しまった! いや、この手応えは!?」

 

 手応えが妙に軽い。その理由はすぐに知れた。二つに斬り裂かれ、乾いた音を立てながら地面に落ちた鎧には中身が無かった。

 

「空蝉!?」

 

 東方の国より伝わりし、彼等隠密剣士の持つ技術。それを目の当たりにし驚くストライクの死角に、鎧を捨て身軽になったブリッツが回り込んでいた。

 
 

<続く>

 
 

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