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SDガンダム大外伝 伝説の再臨・第二章_04話

Last-modified: 2014-03-10 (月) 15:48:49
 

SDガンダム大外伝 伝説の再臨
第二章 ~ラクロア城防衛戦~

 

4.

 

 背後から迫る気配。ストライクは後ろを振り返るよりも、前方へと倒れ込むように転がった。
 ブリッツの籠手と一体化された剣の刃が、ストライクのマントと鎧の背中部分を斬り裂いた。斬りつけられた衝撃で前転のバランスが崩される。
 上手く姿勢をとれず、ストライクはふらつきながら起き上がる。ブリッツはそこに更に追撃をかける。
 鋭い突きが繰り出される。体勢がまだ崩れており、盾での防御は間に合わない。炎帝の剣で何とか防ぐ。
 剣同士がぶつかり合い、激しい金属音と衝撃が走る。それと共に、小さな、しかし不吉な音も響く。

 

「け、剣が!?」

 

 一撃を受けた炎帝の剣にヒビが入っていた。

 

(さっき炎を突っ切った時に、かなりの負担をかけていたのか……)

 

 デュエルのハンマーと激しく打ち合った事も関係しているかもしれない。ラクロアへすぐ戻るために準備が慌しかったため、鎧しか打ち直す暇は無かった。
 ブリッツはそこを狙い目と見定め、あえて剣に対して攻撃を加える。ヒビが一段と広がった。
 ストライクは炎帝の剣を使うことを諦め、剣を手放す。
 どの道、ブリッツはこのまま張り付くように至近距離での攻撃をかけ続けててくるだろう。それでは大剣は振り回せない。一度、距離を置くという狙いもあって、剣はブリッツめがけて放り出した。
 ブリッツはその動きを予想していたようで、最小限の動きで剣の横を抜け、なおもストライクとの距離をとらずに攻撃を続ける。だが、ほんの僅かな隙は得た。今度こそ盾で受け止める。

 

「いかなストライク殿が相手でも、この間合いならば!」
「くっ……!」

 

 何とか隙を見つけるしかない。盾に収められている剣を抜く程の間が無くとも、鎧を捨てたブリッツには拳を打ち込むだけでも有効打になるはずだ。
 イージスとクルーゼは手出しをしてこない。ブリッツが取り付くように戦っている限り、巻き込む危険が高いからだろう。

 

(いや、それだけじゃない!)

 

 二人はいつの間にかこの場から離れている。ブリッツに任せようという判断だ。あるいは、ブリッツが最初からそう提案していたのか。

 

(足止めされているのは私の方か!)

 
 

「ブリッツは大丈夫でしょうか……」

 

 イージスはクルーゼと共に離れながら、後ろを何度か振り返る。

 

「彼の戦い方がああである以上、余計な手出しは迷惑になるだけだろう。それに、彼の隠密としての能力を考えれば、ただ逃げるだけならば一人の方が楽だろうさ」

 

 クルーゼの冷静な分析に、イージスはただ黙って従う事にする。
 と、突然クルーゼは横手に向けてまたも魔法の炎を放つ。
 炎を慌てて避ける赤い鎧の姿が見えた。

 

「あのサムライソードを使う剣士……ジャスティス達もまだ諦めていないか!」

 

 それにしても、クルーゼの勘の鋭さはかなりのものだ。ムウ王子と同等か、あるいはそれ以上か。

 

(アルダ王も勘の鋭い方だったと聞くが……)

 

 二人とこの魔道士には何か関係があるのかもしれない、と、ふと思った。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 至近距離での戦いを繰り広げるストライクとブリッツの元に、ふと影がさした。
 互いに目の前の相手に集中していたため、天候の変化に気をとられている余裕は無かった。
 しかし、影の正体は雲などではなかった。

 

「少し失礼するぜ!」

 

 ストライクとブリッツが二人まとめて、上から飛来したモンスターの足に捕まれた。ジャスティスのファトゥムグリフだった。

 

「なっ! 捕まった!?」
「ジャ、ジャスティス!? いつラクロアに帰ってたんだ!?」
「その話は後で! 行け、ファトゥム!」

 

 ジャスティスの指示に従い、ファトゥムグリフがストライク達を掴んだまま舞い上がる。

 

「ブリッツがいりゃ魔法で迎撃できないだろう!」
「な、なんて強引な手を……うぉ!?」

 

 掴まれながらも、間近からブリッツが刃を突き出してくる。ストライクは盾で受け流し、右の脇で挟み込むことでそれ以上攻撃できないように止める。
 元々無理な体勢での攻防であったため、そのまま両者膠着状態となった。だが、それもすぐに解放される。

 

「追いついた!」

 

 ジャスティスはファトゥムグリフに二人をそれぞれバラバラに離させ、自身はイージスの前に降り立つ。

 

「ふむ。なかなか無茶な真似をするな」

 

 クルーゼが感心したか、呆れたかのような感想を述べる。仮面のせいで内心は読み切れない。

 

「まったく……奴の言う通りだぞ」

 

 ジャスティスの近く落とされていたストライクは立ち上がる。
 少し離れた場所で立ち上がったブリッツは、既に距離が空いてしまった事を悟ると素早く動いてイージス達と合流する。

 

「魔道士殿、ここまで脱出を手引きしていただけただけで十分です」
「後は僕達で何とかします。先に撤退して下さい」

 

 イージスとブリッツはストライク達と対峙する。

 

「仕方がないか……分かった。先に行く」

 

 クルーゼが呪文を唱える。一人しか移動できないが、あらかじめ用意してあった撤退用の転送魔法だ。

 

「魔道士クルーゼ!! また逃げるつもりか!?」
「あの時の騎士か。やはりここで再会する事になったな。
 フッ……そうだな、王の仇を討ちたくば、デスブラック城砦まで来るがいい。そこでまた会おう、とムウ王子にも伝えておきたまえ」

 

 魔法が完成し、クルーゼの姿が掻き消える。

 

「デスブラック城砦……確か、ボアズ山の……」

 

 クルーゼが言い残した場所を胸に刻む。そこに辿り着くためにも、まずは――

 

「イージス、ブリッツ、降伏するつもりはないか?」

 

 二人を何とかしなければならない。

 

「今更そんな事は出来るわけが無い」

 

 二人とも刃を突きつけ、抗戦の意志を見せる。ストライクもやむを得ず盾から剣を引き出す。

 

「仕方ない。力づくで止める」

 

 対峙する2対2、4人が一斉に走り出す。
 まずはイージスの手から伸びた刃とジャスティスの剣がぶつかり合い、激しい火花を散らす。
 続いてストライクとブリッツの剣もぶつかり合う。
 弾き合った剣をストライクは後ろに引くと、反動を使い、逆の手ある盾を力一杯突き出した。

 

「た、盾で!? カハッ!!」
「鎧を捨てたのが仇になったな!」

 

 剣で防御し、盾で攻撃するという通常の逆の戦い方にブリッツは不意を突かれた。鎧が無く軽装となった彼には十分なダメージとなり、一瞬動きが止まる。

 

「受けろ!」

 

 その隙を逃さず、更に盾を振り下ろし、頭部を強打する。

 

「や、やはり正面からの対決では……勝て……ない……か……!」

 

 ブリッツは地面に倒れ伏す。
 その様子に気がついたジャスティスとイージスは一度互いに距離を取る。

 

「2対1ではもはや勝ち目はないだろ」
「諦めるんだ、イージス」

 

 ストライクとジャスティスがイージス挟み込むかのように動く。
 イージスも逃げ場を失う事は避けるようにと動くが、その先に追いついたレッドアストレイが立ち塞がった。

 

「おっと、3対1でござるよ」
「クッ……」

 

 3方から囲まれる。切り抜ける手は全く思いつかない。

 

「もう一度言うぞ。降伏するつもりはないか?」

 

 ストライクが三度警告する。
 確かにそれしかないように思う。だが、その判断を上回る黒い感情が沸き起こった。

 

「それだけは……できない!」

 

 両手の刃を振りかざし、ストライクに斬りかかる。この刃はジオンモンスターたる母の血が流れる証。

 

「私は、母の無念を晴らすため、今こそこの刃を振るうのだ!!」

 

 二振りの刃をストライクはそれぞれ剣と盾で受け止める。
 イージスは力で押し切らんと、全力を込める。

 

「母親の仇討ちだというのか! だが、その感情は操られているものだぞ!?」

 

 ストライクも対抗するように全ての力で押し返さんとする。

 

「操られているだと!?」
「あの魔道士の魔術だ! 君の母への想いを、奴が利用しているんだ!」
「何を根拠に!?」
「以前は母の仇討ちだなんて、おくびにも出していなかったじゃないか! 何故、今になってそんな事を言いだす!?」
「……! そ、それは……」

 

 イージスの意志が一瞬揺らぐ。そこへ、横手からジャスティスが突っ込んで行く。

 

「操られてるかどうかは知らないが……兄さんが義母さんの無念に応えるというならば!」

 

 剣を大きく振り上げ、振り下ろす。

 

「俺は、兄さんと義母さんも大事な家族だと言っていた、俺の母さんの想いに応える!!」

 

 ジャスティスの剣が狙う先は――

 

「そのために、悪いが、ジオンモンスターとしての力は砕く!!」

 

 イージスの手から伸びる刃。全力を込めた一撃がそれを打ち砕いた。

 

「な、何!?」

 

 衝撃に揺らめくイージス。だが、刃を砕かれた事よりも、ジャスティスの母の話が心に衝撃として走っていた。
 先に城に侵入した時に僅かながらに思い出していたのに、いつの間にかまた忘れてしまっていた。忘れたのは、クルーゼが現れた時だ。

 

(クルーゼ殿は……俺は……やはり……)

 

 思考がまたも纏まらなくなる。だが、この混乱こそが、ストライクの言う事が真実であると心の何処かが告げていた。

 

「…………分かった」

 

 ガクリとその場にうなだれる。

 

「降伏しよう……私がこのまま戦い続けて死ぬ事を、きっと義母上――私や母を庇ってくれたジャスティスの母は望まない……」

 

 イージスがそう言った時、ラクロア城の方から勝鬨の声が上がる。

 

「どうやらこの戦、何とかなったようでござるな」

 

 レッドアストレイがうんうんと頷きながらそう言うと、刀を納めた。
 この地に迫っていたザフト帝国の軍はすでにほぼ撤退を完了している。
 アルガス騎士団はラクロア城の確保を優先し、深追いはしない事にしたようだ。

 

「何とか窮地は脱したか……けど、問題はこれからなんだな……」

 

 ジオン族と和解を果たす事ができるか、それとも最後まで戦い抜く事になるか。どちらにせよ、簡単には終わりそうになかった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 ラクロア城防衛戦はこうして終わりを告げた。
 ラクロアの戦力は3割近い損失を出したが、ザフト側はそれを上回る4割以上の損失を出していた。
 ザフトも本国に残した戦力があるとはいえ、アルガスと合流したラクロアよりは劣っている。
 しかし、今回の戦いでラクロアは城や城下町に損害を受けている。すぐに反攻に転ずるほどの余裕はなかった。
 まずは国内の状況を立て直す。だが、アルガスの援軍が帰らざるを得なくなるまでに決着はつけてしまわねばならない。
 だから、復興を行いつつもその間に今後どうするかを決め、そのための準備も同時並行で行う必要があった。

 

 ラクロア城の謁見の間に、ラクロアとアルガス騎士団の主要メンバーが集まった。

 

「アズラエル公、ゴールドアストレイ団長、我が国への救援、感謝いたします」
「いえいえ、同盟国として当然の事をしているまでですよ」
「フレイ、騎士ストライク、お前達もよく任務を果たして戻って来てくれた」
「本国が無事で何よりです」

 

 一通りの挨拶が済むと、ムウは一つ咳払いをし、話を切り出す。

 

「さて、ラクロアの復興が一段落したらどうするかだが……」
「それはもちろん、我々の戦力を合わせてザフト帝国の打倒を。しかる後、今後二度とこのような事が無いようにジオン族の殲滅を図るべきでしょう」

 

 アズラエルが事もなげに答える。ある程度は予想されていた返答だ。

 

「殲滅って言ってもな、流石にそいつは時間かかるだろうからなぁ」
「確かに、我々がアルガスに帰還してからの話になりますね。そこまでは私が言う事では無かったようです」

 

 アズラエルは首を軽く横に振る。

 

「ですが、ザフトの打倒までは決定事項でしょう。まさか、王を殺されておきながら休戦の申し入れは無いでしょうから」

 

 続く台詞にストライクとフレイは苦い顔をする。
 アズラエルが主戦論を唱えるのは予想されていた事だ。
 それに、王を殺された事をそのままにして置けないというのは、彼等自身もあのジオン族の隠し村で言った事である。
 だが、ストライクには言うべき事が一つあった。

 

「王を殺した魔道士についてですが……奴は逃げる直前、私にデスブラック城砦まで来いと言っていました」

 

 その言葉を聞いたムウとフレイが顔色を変える。

 

「デスブラック城砦だと?」
「何処なのですか? それは」
「俺も聞いた事が無い名だな」

 

 アズラエルが訪ねて来る。また、ジャスティスもその名を聞いてしきりに首をひねっている。

 

「今は活動を停止しているボアズ山という火山に築かれた城砦だ。以前はヤキン砦っていううちの砦だったんだが、奪取され、大幅に改築された上で改名された。ザフトの重要拠点だな」
「あのヤキン砦がそんな事になってるのか」

 

 ジャスティスが感心したように言う。

 

「ちょうど良いかもしれないな。親父の仇を討つと同時に、ここを落とされればザフトだって停戦を申し込まれりゃ受けざるを得なくなるだろう」
「あるいは、あちらから停戦を呼びかけてくるかもしれないし、降伏してくるかもしれないわ」

 

 ムウの考えに、フレイが乗る。

 

「そのまま戦力差をもって全滅させる方が単純でいいと思いますけどねぇ」
「まぁ、あくまでも取り得る道の一つさ。砦を落としてもあのクルーゼとかいう奴はまた逃げるかもしれないしな。とはいえ、アルガスだって出来る限り早く国へ帰りたいだろう?」
「確かに、いつまでも本国を空けておくわけにはいきませんからね。まあ、第一目標をそのデスブラック城砦とやらにして、そこを落としてからその時の状況次第で次を考える事にしましょうか」

 

 アズラエルは軽く肩を竦めた。

 

「ああ、そうしよう。さて次の話なんだが……騎士ストライク」
「はっ!」

 

 ムウに名前を呼ばれ、ストライクが前へと進み出る。

 

「フレイを守り切り、援軍を呼んできてくれたお前の働き、実に見事のなものだ」
「はい、ありがとうございます!」
「それで、だ。今までの功績も鑑みて、親父が考えていたお前をバーサル騎士に叙任するという話……今こそ実行に移そうと思う」
「! わ、私をバーサル騎士に!?」

 

 ストライクはムウの宣言に目を見開いて驚いた。

 
 

<続く>

 
 

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