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SEED DESTINY “M”_第15話

Last-modified: 2009-03-09 (月) 20:45:01

「遠距離熱探知、レーザーサイティングに感!」
 地球連合軍、空母『ジョン・ポール・ジョーンズ』。艦橋。
「熱源、宇宙軍艦のものと思われまーす!」
 オペレーターの声が響く。
「ようやく見つけたか」
 仮面の女、ネオ・ロアノークは、特に感慨もないような口調でそう言った。
「仕掛けるとすれば……」
 海図を広げ、ネオは呟きながら逡巡した。

 

機動戦士ガンダムSEED DESTINY “M”
 PHASE-15

 

『こちらのウィンダムを全機出せだと!? 何をふざけた事を!』
 メインディスプレィに姿を見せた基地指令は、ネオからの要求を聞くなり、素っ頓狂な
声を出し、憤怒のような表情を見せた。
「ふざけていると言われるのは構わないが、出すのか出さないのか、はっきりしろ」
 口元にどこか余裕を見せ、ネオは言い返す。
『出せるわけなどあるか。我々はそもそも、ここに設営される対カーペンタリア基地の、
防衛の為に派遣されたんだぞ』
「それは公式の発言として記録される。もし我々が壊滅し、敵の新型艦を取り逃がした場
合、そちらの責任問題にも発展すると思うが、構わないな?」
 ネオの言葉に、基地指令の表情が俄かに引きつった。
『お、脅す気か!?』
「事実を言っているまでだ。我々第81独立機動群には該当する敵新型艦の捕捉、撃滅に対
し最大限の裁量権が与えられている。その要請を拒否したとあれば、その結果に対し責任
の訴追は免れない」
『ぐ…………』
 くぐもった声を上げながら、基地指令はさらに表情を歪ませた。
『か、勝手にしろ』
「では、そうさせていただく」
 悔し紛れに言う基地指令に、ネオは口を引き締めてそう言った。それきり、メインディ
スプレィの相手が消え、その通話が途絶える。
「偵察用のダガーLが撃墜されたようです」
 CICオペレーターが言った。
「データの採取は?」
 ネオは感情を感じさせない口調で、問いただす。
「間違いなく新型機動艦、それに、ボズゴロフ級潜水艦が1です」
「よし。カオス、アビス、それと私の機体の発艦を準備。基地には全力出撃を命令する。
第1目標は敵新型艦。ただし、アビスはボズゴロフ級の排除を優先しろ」
「了解」
 艦橋スタッフの復唱を聞いてから、ネオは艦橋を後にし、ブリーフィングルームへと向
かった。

 

「さて、やっと出撃かよ」
 既にアビスのコクピットに収まっていたアウルは、CICから発艦準備を告げられると、
にやりと笑って言う。
『おいアウル、わかってるだろうがお前の目標は』
 釘を刺すように、スティングが通信越しに言ってくる。
「解ってるって。雑魚狩りをしろってんだろ?」
 少しへそを曲げたように、アウルは言い返す。
「けどよ、相手がもし俺の方に向かってきたんなら、片付けなくちゃならねぇよな?」
『ネオが許せばな』
 似たりと笑って言うアウルだったが、スティングは面白くなさそうな表情で、短く言い
返した。
「けっ、何だよそれ? 自分だけイイ子ちゃん?」
 アウルは急に不愉快そうな表情になり、悪態をつく。
『そんなんじゃ、ただ俺は、アウルまであいつみたいに……』
 スティングは沈痛そうな面持ちで言う。だが、そこまで言って、急に言葉に詰まった。
「あいつ?」
 怪訝そうな表情をして、アウルが聞き返す。
「あいつって誰だよ」
『…………誰、だっけか……いや……』
 どこか不安そうな表情で、スティングは言葉を漏らす。
「…………」
 普通なら「何だよそれ!」とツッコミが入って然るべきだが、なぜかアウルはそれに言
及することが出来なかった。
『アウル・ニーダ、発艦体制入れ』
「りょ、了解」
 気まずい沈黙が流れていた2人の間に、CICからの声が割り込む。アウルははっと我に返
ると、アビスをカタパルトの待機位置へと進ませた。
「アウル・ニーダ、アビス行くよっ」
 リニアカタパルトから射出されたアビスは、空中でMA形態に変形すると、着水、そのま
ま潜り込んで行った。
「スティング・オークレー、カオス発進する!」
 続いてカオスが発艦する。MA形態に変形すると、アビスがまっすぐ向かっていった方向
に対して、やや陸地寄りをめがけて飛行して行った。
「まずいな、あいつら……」
 ネオはそう呟きつつ、CICの指示に従ってカタパルトの待機位置に自機を進ませる。
「ネオ・ロアノーク、エールストライク・ウィンダム出るぞっ!」

 

 ミネルバがボズゴロフ級潜水艦『ニーラゴンゴ』と共に、インド洋の西半分をそのさら
に半分ほど進んだ頃、その平穏は破られた。
「艦長!」
 男性オペレーターの緊張した声が、艦橋の静寂を破る。
「接近する小形の熱源多数、MSと思われます、数、約30。現在照合中!」
「ええ? こんなところで?」
 アーサーが、情けないような不満なような声を出した。
「どこだって構ってられないわ。コンディションレッド発令! MS戦準備。ニーラゴンゴと
の回線を開いて!」
「了解!」
 メイリンを含めた、複数のオペレーターが復唱する。
「グラディス艦長!」
 艦橋後部の扉から、アスランが入ってきて声をかける。
「地球軍ですか?」
「ええ、また待ち伏せされたようだわ。毎度毎度人気者は辛いわね」
 タリアは不敵に笑いつつ、皮肉を交えて答える。
「照合率90%、数32。カオスと思しき反応あります!」
 オペレーターが緊迫した声を上げる。
「本艦は戦闘態勢に入ります。貴方は?」
 タリアはアスランに訊ねた。
「自分も出ます。問題ありません。自分は本艦のMS隊指揮を命ぜられています」
「なら、MS隊発進後は貴方に任せるわ。いいかしら?」
「了解です」
 タリアの言葉にアスランは力強く答えるも、
「ただ、マユ・アスカは……」
 と、困惑気に手振りを加えつつ、言う。
「彼女もFAITHです。最善の行動を取る筈です」
 タリアは毅然とした態度で答えた。
『ブリッジー』
 ちょうど見計らったかのように、内線が艦橋を呼ぶ。
『状況はどうなっていますか?』
 ブリーフィングルームの端末から、マユがそう訊ねてきた。
「敵MSと思われる反応多数接近中。対MS戦闘を準備しています。MS隊はFAITHアスラン・
ザラの指揮にて戦闘準備に入ります」
 タリアが直接答えた。
『了解、全機発進準備入ります』
 マユはそう言って、端末の受話器を戻しかけた。

 

「待った!」
 慌てたように、アスランが声を上げる。マユははっと気がついて、ディスプレィに視線
を向けなおした。
「マユ、ガイアは発進の必要はない。君は待機だ」
 アスランは命令するように言ったが、それを聞いて、マユは目を円くする。
『敵は多数じゃないんですか?』
 驚いたように聞き返す。
「大丈夫だ。俺が出る」
『それは解っていますが……』
 アスランの言葉に、マユは小首をかしげるようにして、呟くように言う。
『グラディス艦長、敵の数は?』
「確認できているだけで30。カオスが含まれます」
「グラディス艦長!」
 マユがタリアに向かって訊ねると、タリアは淡々と答えた。すると、アスランはそれを
咎めるように声を上げた。
『了解。FAITHマユ・アスカ、ガイア迎撃に出撃します。発艦許可を』
「問題ありません。CICに従って発艦してください」
「グラディス艦長!」
 マユの言葉に、タリアが答える。そして、アスランがさらに声を荒げる。
『ありがとうございます』
 マユはそう言って、今度こそ回線を切った。
「グラディス艦長!」
「彼女は本艦で最先任のFAITHです。行動を止める権限は私にはないわ」
 アスランの咎めるような声に、タリアは険しい表情で言い返した。
「…………っ」
 言葉を失ったアスランは、下唇を噛みながら踵を返し、艦橋を出て行った。

 

「発艦システムリンケージアップ、全システム異常なし」
 マユはガイアをカタパルトの待機位置に入れる。
 ミネルバの左舷発艦デッキの気密扉が開く。
「マユ・アスカ、ガイア行きまーすっ!」
 待機位置から前方に向かってガイドLEDが順次点灯し、リニアカタパルトがガイアをイ
ンド洋の空へと打ち上げた。
『続いてルナマリア・ホーク機、レイ・ザ・バレル機、ミレッタ・ラバッツ機、ステラ・
ルーシェ機発艦準備願います。ゲイツF各機は待機継続』
 メイリンが待機中の各機に告げる。
 飛行能力のないゲイツFは、空中で敵を邀撃する能力がない。
「ルナマリア・ホーク、ゲイツD出るわよ!」
 胸部右側のオプションスナップにエクステンショナル・アレスターを装備した紅いゲイ
ツDが、ガイアに続いて発艦する。
「レイ・ザ・バレル、ゲイツD出る!」
 右舷発艦デッキから、灰白色のレイの機体が発艦した。
「さぁて……まずは試し斬りさせてもらいますか」
 強がりを言い、軽く唇を舐めながら、ミレッタはバビをカタパルトの待機位置に進ませ
る。
「ミレッタ・ラバッツ、バビ、行きますっ!」
 紫がかった薄青色に塗られたバビは、空へ向かって射出されると、戦闘機を大型にした
ような有翼形のMA形態に変形する。
「おーお、ミレッタってば、妙に張り切っちゃって」
 待機を言いつけられたゲイルは、ハッチが開放されたままのゲイツFのコクピットで、
苦笑混じりに言った。
 その傍らで、セイバーの動力が入り、VPS装甲がピンクがかった鮮やかな赤に染まる。
「MS隊各機へ。自分はFAITHアスラン・ザラだ。今回よりミネルバMS隊の指揮は自分が採
ることになる。各機、指示に従って欲しい」
 カタパルトの待機位置にセイバーを入れつつ、アスランはミネルバ搭載の全機に向かっ
てそう告げた。
『はい、よろしくお願いします! ザラ隊長!』
 瞳を輝かせたルナマリアが返答を入れてきた。
 ミレッタはバビのコクピットで、キョトンとしてそれを聞いていたが、バビにはガイア
を追わせている。
「アスラン・ザラ、セイバー出る!」
 リニアカタパルトが作動し、左舷側発艦デッキからセイバーが空に飛び上がった。
 セイバーはMS形態のまま、2機のゲイツDを追い越し、ガイアとバビを追いかけていく。

 

 一方。
「ステラ・ルーシェ、コアスプレンダー発進……」
 中央航空機用発艦デッキから、コアスプレンダーが今にも発艦しようとしていたが、
『コアスプレンダー発艦中止してください』
「えっ?」
 と、メイリンの声がそれを遮る。ステラは反射的に、メインスラスターのスロットルを
切った。キョトン、として、通信用ディスプレィを見つめる。
『海中からニーラゴンゴに不明機接近中。インパルスは支援に向かってください』
「わかっ……了解」
 気を取り直して、キャノピーから前方を見る。
「ステラ・ルーシェ、コアスプレンダー発進」
 コアスプレンダーに続けて、その上半身を構成するチェスト・フライヤー、下半身とな
るレッグ・フライヤー、そして換装式装備パック搭載機シルエット・フライヤーが発艦し、
コアスプレンダーを追いかける。
 チェスト、レッグがコアスプレンダーを挟んで合体し、MS『インパルス』となる。そこ
へ、シルエットフライヤーから切り離された“シルエット”が、その背中から覆い被さる
ようにドッキングした。それはMA形態に変形する為の外郭部になるシールドを備え、VPS
の色は緑がかった青に染まる。
「アビスインパルス……アビス……」
 インパルスはバーニアで減速しながら着水し、MS形態のまま水中に潜り、進む。
「あれは……」
 衝撃音が連続して起きる。ディスプレィの向こうで、ニーラゴンゴの搭載機である水中
用MS『グーン』が、立て続けに、潰れるように破壊されていく。
 その相手は、ただ1機の、今のインパルスとほぼ同様のカラーリングをした、Gタイプの
MS。
「アビス!」
 その姿を確認して、ステラは軽く驚いたような表情をする。
「アウル、アウルなの!?」
 ステラはインパルスをグーンの前に割り込ませて立ちはだかるようにしつつ、通信のID
を変更して、アビスに呼びかける。
『何だ? また新型か?』
 通信用ディスプレィにはアウルが映し出された。
『あン? 何だてめぇは。何でZAFTがこっちの呼び出し符号知ってやがる』
「アウル! ステラだよ!!」
 怪訝そうに問い質してくるアウルに、ステラは呼びかける。
 だが────
『ステラ? 何だ、気持ち悪いやつだな。お前なんか知るか』
「え…………?」

 

 返ってきた答えに、ステラは愕然とする。
 ヘルメット越しにだが、アウルの表情に、知人を見るような様子はない。ただ、おぞま
しいものを見るような、敵意だけを向けていた。
『てめぇ、なんだか凄ぇ気持ち悪いんだよ、さっさと消えろ!』
 アウルは不快そうな口調で吐き捨てるように言う。
「アウル!」
 アビスはランスを抜いてインパルスに迫る。ステラは悲愴な声を上げつつも、反射的に
インパルスにランスを抜かせて構えさせた。
「っ……」
 後方警戒ディスプレィにちらっと視線を向ける。そこにニーラゴンゴのシルエットが捉
えられている。
 ────あの潜水艦はコーディネィター、でも、マユの仲間で……
「うわぁぁぁぁぁっ!」
 ガキン、ギシギシッ……
 水中で金属が擦りあう不気味な軋みを上げて、ランスが交錯する。
「アウル……止める……どうやって? ぅ……」
 困惑して呟く。インパルスは防戦一方に追い込まれる。ステラは必死にアビスの攻撃を
裁いていく。
「ぁ、あぁ……っ」

 

『マユ、マユ下がれ、先鋒は俺達が……』
 ガイアの通信用ディスプレィに写ったアスランが、必死に呼びかけてくる。
「それじゃ、任させてもらっちゃおうかな」
 マユはガイアに機動防盾を構えさせると、スラスターを一気に全開にした。
 目の前に迫るウィンダムの群れに向かって、タックルの体勢で突っ込みながら、ビーム
突撃砲を乱射する。
「なっ!?」
 アスランは顔色を変える。
「よっしゃあ!」
 一方のミレッタはそれを見て面白そうな表情で言うと、背中に当たる上翼部のミサイル
を全弾発射する。次の瞬間バビをMS形態に変形させ、左手に構えたコンボライフルを乱射
する。
 マユの突貫で混乱し、バビのミサイルから逃げ惑う好目標のウィンダムを、バビのライ
フルのビームが容易く撃ち落していく。
「こんな戦い方をするとは……やはり一番の難敵がお前か」
 混乱を続ける、基地所属のウィンダム隊を他所に、ネオは自機を反転させると、ガイア
を追いすがる。
「こんな無茶な戦いが……」
 アスランの方は唖然としていたが、やがてセイバーの周囲をウィンダムが取り囲むと、
セイバーにヴァジュラ・ビームサーベルを抜かせ、構える。
 ロックオンアラート。セイバーに向かって強力な砲撃が撃ち込まれるのを、アスランは
スナップターンで回避した。
 そこへ、1機のMSがセイバーめがけて突っ込んできた。緑色の機体、カオス。
 カオスの振りかぶったビームサーベルを、セイバーのシールドが受け止める。ビーム刀
身がアンチビームコートに触れ、バチバチと激しく火花を散らした。
「ええいっ、くそっ!」
 カオスは執拗にセイバーに向かってくる。アスランはシールドでそれをいなしながら、
毒ついた。
「ルナ、お前も突っ込め」
 レイは言い、ゲイツDにビーム・マシンライフルを構えさせる。
「オッケー!」
 紅いゲイツDが、シールドから対装甲アキナスを抜くと、ストックを伸ばしてパルチザ
ン形態にする。
 レイがウィンダム隊に向かってビーム・マシンライフルで撃ちかける。回避運動を取っ
た隙へ向かって、ルナマリアのゲイツDが突っ込んでいった。たちまちのうちに1機が頭部
を叩き潰されて落ちていく。
「!」

 

 一撃離脱をかけたガイアのコクピットで、近接アラートが鳴る。この状況で追いすがっ
てくる機体がある。
「くっ」
 マユはガイアに体勢を入れ替えさせると、バーニアを全開にして、空中で急減速した。
 そこへ、ウィンダムがビームサーベルを振りかぶって突っ込んでくる。急減速するガイ
アに的確にあわせて、斬りかかって来た。
 マユは咄嗟にシールドを構えさせて、ウィンダムのビームサーベルを受け止める。
「この動き……まさか!?」
 驚くような声を出すマユ。
 ウィンダムのコクピットでは、ネオが仮面越しにガイアを睨みつける。
「ここで決着をつけさせてもらうぞ!」