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SEED-クレしん_06-601_02

Last-modified: 2009-06-25 (木) 20:15:40
 

嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 異聞
その弐 「シンとレイ、春日城下での日々」

 
 

井尻又兵衛「と、いう訳で……殿のはからいによりお主達は井尻家身分預かり、
      つまり一応わしの家臣という形になった。それと……」
シン  「なんだよ」
又兵衛 「考えてみれば、わしはお主達の名前を知らん。お主、名はなんと言うのだ?」
シン  「俺? 俺はシン・アスカ、だ」
又兵衛 「しん、あすか……?名前が途中で区切ってあるとは珍しい。名字はないのか」
シン  「名字はあるよ。シンが名前でアスカが名字だろ」
又兵衛 「むう?なんで名前が上で名字が下なのだ? では……飛鳥 信。こう呼べばいいのか?」
シン  「それは……まあ……いいや、それで」

 

又兵衛 「ではそちの名は? それにしても金髪とは珍しい……
     わしの見たところお主は異国の者だと思うのだが、どうだ?」
レイ  「まあそんな所です。それと、俺の名前はレイ。レイ・ザ・バレルと言います」
又兵衛 「れ、れい?ざ……れいざばれ……ばれ……れいざ………うむ。れい左衛門であるか」
レイ  「な!ち、違……」

 

又兵衛 「それでは信、れい左衛門よ。
     今後は主君康綱さまの御為、そして春日の国の安寧の為に粉骨砕身、滅私奉公せよ」
シン  「はいはい、ラジャー」
レイ  (む、無視されたーーー? 俺の名前はれい左衛門で確定なのか?!)

 
 

又兵衛 「まだ日も高いな……よし。今日はまず、お主等の武芸がどれほどのものかを見てみたい。
     庭に出てわしと木剣にて打ち合え」
シン  「別に構わないけど。いいのかね? コーディネイターがナチュラル相手に本気出しちゃって、さ?」
レイ  「おれはレイ・ザ・バレルだ……れい左衛門じゃない……左衛門なんて変な名前じゃ……(ぶつぶつ)」

 

又兵衛 「何をぐずぐずしておる? そちらが来ぬのなら、こちらから行くぞ!」
シン  「へっ! 将来のスーパーエース様を舐めんなよ! いくぜおっさん!」
又兵衛 「来い! いざ尋常に勝負!」

 

   ※   ※   ※

 

 まあ、そんなこんなで……俺達がこの世界に来て三日ほどたった。
 井尻のおっさんにいろいろ聞き出したが、俺達が知っている事実と符合するものは何もなかった。そして俺達が一番知りたいこと……
 つまりどうすれば、俺とレイが元の居場所の戻れるかってのは……結局分からずじまいだった。

 

 他の人にも聞いてみたが、『地球連合』も『プラント』も、『オーブ』という国もみんな聞いたことがないという。どういう事なんだこれは?
 俺達は一応、井尻のおっさんの部下という形でおっさんの家に住むことになった。
 おっさんの屋敷(と言うのもアレな感じだが)には、おっさんの他に仁右衛門さんとお里さんという夫婦も暮らしていて、食事を作ったり馬の世話をしたりと、おっさんの身の回りの世話をしているみたいだ。

 

 聞けばこの人達もおっさんも、戦争で家族を亡くしたとか。
 どこでも変わらないな……戦争の犠牲になるのはいつも戦う力を持たない、非戦闘員ばかりだ。
 だから、だからこそ俺は……俺はみんなを守る力が欲しいんだ。2度とあんなつらい思いを誰にもさせたくないから……

 

 ともあれ、俺とレイは情報を集めつつ色々話し合ってみたけど、俺達の世界に帰る手段は今の所、皆目見当がつかない。
 しょうがないのでとりあえず、しばらく武士ってヤツをやってみる事にした。
 まあ具体的に日々何をしているか、っていうと……

 
 

又兵衛 「隙あり!」
シン  「いてぇ!む、むうぅぅ……ま、まだまだあ! もう1回!」
又兵衛 「……いや。今日はここまでにしておこう。
     ここ数日お主達に刀と槍、弓に鉄砲の使い方を一通り教えたがなかなか飲み込みが早い。
     これであと実戦を2~3回もくぐり抜ければ立派に一人前になれるだろうよ」
シン  「でもよ! その全部まとめて、俺は未だにあんたに勝てないじゃないか……いてて!」
又兵衛 「しょうがあるまい? 信とわしでは鍛錬の量も経験も違いすぎるんじゃからの」

 

シン  (そうじゃねえよ……コーディネイターの俺が生身で戦ってだぜ?
     何で!何でナチュラルのおっさんに全然敵わねえんだ!)

 

又兵衛 「……信よ。確かにお主の膂力、身のこなしなどはわしより遥かに上だ。
     なのに刀で斬り合って、なぜ信がわしに軽くあしらわれるのか……?
     それはな信、お前が隙だらけだからよ」
シン  「す、隙だらけ?そんなはずはない!
     俺はつねに最高のスピードで、最大のパワーを乗せた斬撃を的確に打ち込んでいるハズだ!」
又兵衛 「なれば、何故わしにその剣を易々と受けとめられ、かつ返しの一撃をいつも喰らう?」
シン  「……そ、それは……」

 

又兵衛 「信よ。これはあくまでわしが感じている事にすぎんが……
     もしかしてお主、戦うことに恐怖を感じておらぬか?」
シン  「な、何が言いたいんだよ……?」
又兵衛 「悪いが……昨日な、れい左衛門から信もいくさで家族を亡くした事を聞いた。
     れい左衛門は言っていたよ……『だからこそ信は、いくさに対して激しい憎悪と憤怒の感情を抱いている。
     それこそが信の力の源泉だ』とな。
     しかしわしは、それは違うのではないかと思っておる」
シン  「……」

 

又兵衛 「お主は恐いのだ。殺すことも、殺されることも……どちらかと言えば殺される方の恐怖の方が強い。
     だから自分達を脅かす存在を先に殺したい。殺されたくないからこそ先に殺したい……
     それがお主の戦闘における心理だ。だが本来、恐怖を感じる事は決して悪いことではない。
     いくさは誰でも恐いものだからな。だが……」
シン  「だ、だが?……なんだよ」
又兵衛 「恐怖を知りながら恐怖に支配されるのと、恐怖を克服するのとでは全然違う。
     信は恐怖に飲まれておる。お主の怒りも憎悪も、それをごまかすだけの虚構にすぎん……
     そうわしは感じたのだが、な」

 

シン  「う……し、知ったふうな口を聞くな! あんたに、あんたに俺の何が分かるって言うんだッ!」

 

又兵衛 「おい信!どこへ……ふう、行ってしまったか。
     やれやれ、やはりわしが人に物を教えるなど無理だったのかのう……」

 

   ※   ※   ※

 

 又兵衛の屋敷を飛び出したシンは、城下町のはずれにある野原にて寝っ転がって物思いにふけっていた。
 なんだかんだ言っても、シンはシンなりに又兵衛が言った事に対して真剣に考えていたのだ……

 
 

シン  (まあ……なんとなく、おっさんの言う事も理解は出来るんだよな。
     俺っていざ戦闘になると頭ん中がまっしろになってさ、目の前の敵しか見えなくなる時があるんだよな……
     いや、そればっかりか?それがいけないのかな……
     でも、どうにかしろったって、どう自分を変えればいいのか分かんねえし……どうしたもんかな)

 

レイ  「シン。ここに居たのか……探したぞ」
シン  「よう、れい左衛門。お城での鉄砲訓練はもう終わったのか?」
レイ  「その名で俺を呼ぶな!……まったく。
     ここの武器はまったく問題にならん原始的な物ばかりだな。
     最新式の武器である火縄銃でさえあんなシロモノだとは……
     射程距離は短い、連射は出来ない、弾込め整備に時間がかかりすぎる。どうにもならん!
     あんな物が実際の戦闘で使われているとは、まったく……」

 

シン  「へえ、レイがそこまで言うなんてな。アカデミーにおける射撃の名手もお手上げか?」
レイ  「まあな……だが上官らしき男にアイデアは出しておいた。
     円筒形の紙の筒を作って、適量の火薬と弾丸をあらかじめ詰めておいてはどうか、とな。
     これなら火縄銃でもある程度の連射はできる……たかの知れた連射ではあるがな」
シン  「ふうん。レイも色々とがんばってるんだな……」
レイ  「ん?元気がないな。何かあったのかシン?」

 

シン  「別に……ただ、又兵衛のおっさんに剣でさんざん打ちのめされただけさ」
レイ  「ふむ。そういえばシンは又兵衛殿に、ただの一度も勝ったことがないな。
     確かにあの人は強い。強いが……シン程の男がいつまでも負け続けるほどに強いとは思えんが?」
シン  「そういや、レイもおっさんに槍とか刀とか習っているんだっけ。
     でも……レイはおっさん相手に3本に1本は取れるよな。でも俺の方はずっとは負け続け。
     なにがいけないってんだ。一体なにが俺に欠けているんだ……?」
レイ  「シン……あのな、お前は……」

 

ブオォォォーーー! ブオォォォーーー!

 

 そのとき、城の方からほら貝の音が聞こえた。
 ほら貝が鳴り響く。それは緊急召集の合図であり……この国に戦乱が再び巻き起るという兆しでもあった。

 

レイ  「むう……つい数日前にあんなことがあったばかりだというのに、もう次の戦争か。
     この国も大変だ……よほど隣国に疎まれていると見える。
     もしくは、それほどこの土地に魅力があるというのか?」
シン  「たしかこの春日の国は、殿様の意向もあって隣国には決して攻め込まないんだってな。
     でもその隣国から何故か侵略を受ける。似ているな……あの国と。俺の故郷だったあの国と……」

 

レイ  「とにかく城に行かなくてはな。走るぞシン!」
シン  「そうだな……行くか。今は、今はこうするしかないんだ……こうするしか、な」

 
 

 2人は春日城に向かって走り出した。
 偶然迷い込んだこの異世界で……シン・アスカとレイ・ザ・バレル、2人の最初で最後のいくさがこれから始まる。

 
 

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