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SEED-クレしん_06-601_04

Last-modified: 2009-06-25 (木) 21:27:37
 

嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦  異聞
その四 「刀は心を伝えるもの」

 
 

シン  「……で、さ。俺とレイは又兵衛さんを逃がした後、拳銃片手に刺客達と戦ったわけよ。
     その刺客達……まあ一言で言えば忍者だったんだけど、形勢が不利になるとみるや爆薬を取り出して、
     俺達もろとも自爆しようとしたんだよな」
レイ  「俺達は必死にそいつを倒したんだが、爆発は止められず巻き込まれてしまったのだ」

 

マユ  「そ、それで?お兄ちゃん達はどうなったの?!」
シン  「不思議なことに……気がつくと俺達はアカデミーの医務室で寝てたんだ。
     なんでも奇跡的にMSの下敷きにならずに2人してMSの横に倒れていたらしい。
     それで俺は色々と考えた末、あの出来事は夢だったんだと決め付けたんだ。
     あれを事実だと認めるには、あまりに非現実的だと当時の俺は思ってしまったからな……」
レイ  「当時の俺の考えもシンと同じでな。
     そしていつしかあの数日の出来事は、俺達2人にとって禁句になっていったのだ……」

 

ルナ  「へえ……あ。そう言えばいつの頃からか、シンの態度が少し変わったって密かに話題になった事があったわね。
     それまでは自分ひとりで何でもやってやる!他人なんかアテにできるか!って感じだったのに、
     ある時期から幾分私達を、仲間を信頼するようになったわ。
     もしかして……それは、その又兵衛さんって人の影響で?」
シン  「どうだろ……ただ、あの人の教えは頭より体の方が本能的に憶えているのかもな……
     ねえしんちゃん」
しん  「ん?なに?」
シン  「今度は俺の方が聞きたい。なぜ……しんちゃんは又兵衛さんを知っているんだ?
     なんで、しんちゃんは又兵衛さんの脇差を持っているの?」
しん  「うん……あのね、事の始まりは家族みんなでちょー美人のおねいさんの夢を見たからなんだゾ。
     そんでシロがお庭で穴を……」

 

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

 

シン  「……そうか。井尻又兵衛由俊は鉄砲に撃たれて……」
しん  「うん。で、その時にお又のおじさんが、おらにその刀をくれたんだゾ」
レイ  「俺達があの時代に居たとき、今は天正元年だと聞いたことがある。
     するとあの人は俺達が消えてから1年は生きたわけか」
マユ  「お兄ちゃん?どうしたの……黙り込んじゃって……」

 

シン  「……しんちゃん。この又兵衛さんの刀……ちょっと貸してもらえないかな?」
しん  「別にいいけど……何に使うの?」
シン  「ちょっと庭で振ってみたいんだ。
     昔、又兵衛さんに教えてもらった剣を……久しぶりに思い出してみたい」
しん  「おらの宝物なんだから、壊しちゃダメだよ?」

 

シン  「了解!……ありがと、しんちゃん」

 

 シンは庭に出ると、又兵衛の脇差を構えたままじっと目を閉じ……そのまま微動だに動かなくなった。

 

しん  「……あれ? シン兄ちゃん、動かなくなっちゃったゾ?」
ルナ  「瞑想でもしているのかしら?」
レイ  「たぶん、刀に込められし又兵衛殿の魂を感じ取ろうとしているのだろう。……しばらくほっとくか」
みさえ 「じゃあその間にみんなでおやつにしましょうか。ちょうどお茶も入ったことだし♪」
しん  「わ~い!おつやおつや~~!」

 

   ※   ※   ※

 

シン  (俺は……あの時の俺より成長しただろうか?
     もう又兵衛さんはこの世にいない……俺は、俺は……)

 

??? (………ん。…………んよ)

 

シン  (ん?誰だ……俺を呼ぶこの声は?幻聴、か………?)

 

又兵衛 (信よ……久しいな。わしよ……井尻又兵衛由俊。この脇差に留まりし、わしの魂だ)

 
 

シン  「ま、又兵衛さん?お久しぶりです……またこうして会えるなんて!」
又兵衛 「信よ。わしは今までのお主のいくさ、その全てを見守っておったぞ。故に言葉は不要……」
シン  「え?ま、又兵衛さん……腰の刀を抜いてな、なにを……?」
又兵衛 「お主がどのようないくさを渡り歩き、何を失い何を得たか?
     それを今、剣を交えることでわしに見せてくれ。
     果たして今の信に………わしから1本取れるかな?」

 

シン  「むっ……分かりました。又兵衛さんともう一度剣を交えるのは、俺にとっても望む所ですからね。
     それじゃ、本気でいきますよ!」
又兵衛 「うむ、いざ尋常に勝負!」

 
 

 こうして、シンと又兵衛の仕合が始まった。
 昔なら、容易に又兵衛に打ち込まれていたシンだがさすがにシンも成長したのか、互角の勝負を展開するのだった。

 
 

又兵衛 「やるな信! 両の眼はしかと相手を捕らえ、交える刀からは余計な気負いの類は一切感じられん……
     信もいくさに対する、明鏡止水の境地を体得したようじゃな!」
シン  「そんな大層なもんじゃないよ……
     ただ、怒りも! 恐怖も! それに頼って戦うことは結局、自分自身を殺すって事に気がついただけさ!」
又兵衛 「なるほど?……ならば!」
シン  「むっ!俺の打ち込みに耐え切れず思わず後ろに下がったか?
     その弱気、見逃さない! 一気に決めさせてもらう!」

 
 

 シンは又兵衛に対して、左袈裟におもいっきり刀を振り下ろした。そして次の瞬間……!

 

シン  「てりゃあ!……なっ?……う、うわぁ!(ゴロゴロ……!)」
又兵衛 「ほう? さすが信。今の一撃、よくも避けられたものだ」

 

シン  (な、なんだ今のは! 左袈裟に打ち下ろした俺の剣が、まるで柳の枝のごとく又兵衛さんに受け流された!
     そ……そして次の瞬間!なぜか逆方向から凄まじい返しの一刀が俺を襲った!
     お、思わず地面を転がって避けなければなければ、俺は今頃バッサリ叩き斬られていた……!)

 

又兵衛 「どうした信?そんな所でうずくまって……もう降参、か?」
シン  「(さっきの技がどんな仕掛けなのか、まだよく分からないが……
     ここはひとつ、あらゆる角度から剣を打ち込んでみよう!
     多分、そんなにあの返し技を多用は出来ないはず……)まだまだ!行きますよ又兵衛さんッ!」
又兵衛 「ふふ……ようし来い!」

 
 

 だが……その後の勝負は一方的に、又兵衛がシンを押していった。
 シンの斬撃はすべて又兵衛に受け流され……代わりに強烈な返し技がシンを襲う。
 致命傷こそさすがに受けないが、それでもあちこち斬られシンの体は切り傷でボロボロになっていった……

 
 

シン  「はあー、はあー……わ、分からない! なぜ俺の剣が、ああも簡単にさばかれるんだ!
     それにあの返しの一撃はどうして、あれほどまでに速いんだ?
     こ、この技の謎が解けなければ……俺は又兵衛さんには……か、勝てない!」

 

又兵衛 「どうしたシン?お主の両目はただ見るだけか? 真実を見抜けない目は、ただの節穴ぞ……?」
シン  「見る!見てやるさ……この目で!その技の謎を! てりゃあああああああ!」

 

 シンは再び、又兵衛に対して斬り込んでいった。
 果たしてシンは又兵衛の技を見極める事が、できるかどうか!

 

シン  (……ここだ! 俺の斬撃を又兵衛さんが受ける……ん? なんで右手が刀の柄の先っぽを握っているんだ……?
     それによく見ると……あっ!左手は刀を握っていない!まさか……うおッ!)
又兵衛 「む……またギリギリではあるが避けた、か。やるな信よ……やはりたいした見切りだの」

 

シン  (り、理解した……あの技の仕組み、完全に理解したぞ! ならば話は簡単だ!
     あの技を破るには……破る、には……)
又兵衛 「どうした? もう打ち込んでこないのか?」
シン  「……ああ。俺からは、もう打ち込まないよ。今度は又兵衛さんが俺に向かってくる番だ!……来い!」

 

又兵衛 「ふむ?……よかろう。もし、わしの予感が正しいものならば次の一撃で勝負が決まるだろう……いざ!」
シン  「応!」

 
 

 又兵衛はシンに向かって右袈裟の一撃を仕掛けてきた!
 対してシンはどう対処するのか……!

 

シン  (ここだ! 右手で刀の柄の先端を握り、「片手で」相手の剣を受ける!ここで刀を落としたらおしまいだ……
     握力と手首のスナップが全てのカギを握る!
     相手の斬撃を受け流す事に成功すれば、当然受けた刀はバネのように跳ね上がる!
     そこに、力を溜めた左手でしっかり握り……反動力と遠心力を利用して体を一回転!返しの一撃を叩き込む!
     これが!)

 

シン  「又兵衛さんの返し技の全貌だあ!うおおおおお……!」
又兵衛 「む?こ、これは! おおお……」

 
 

 そして次の瞬間、2つの影の動きがピタリと止まった。
 シンの斬撃は又兵衛の首筋に刀が突きつけられていた状態で止まっていた……

 
 

又兵衛 「……見事! よくぞこの実戦の最中に、この技の仕組みを見抜いたな……信」
シン  「いえ、又兵衛さんのおかげですよ。
     恐怖を克服し、勇気をもって相手の動きを見極めたからこそ……この技を再現できたんですから」
又兵衛 「いやいや。返しの剣の、止めがたい勢いをあえて止める事ができたのは明らかに信が成長した証よ。
     でなければ今頃わしは、信の剣で体を両断されておったわ」

 

シン  「そんな……でもこれ、凄い技ですね?受けと返しの技が1つの流れでまとまっているなんて。
     まさに攻防一体の奥義、とでも言うんですかこれ」
又兵衛 「はっはっはっ!そんな大層なものでもないわ。
     戦場でがむしゃらに刀を振り回した時に、偶然思いついただけの技よ。
     まあ、この技をモノにするまでには何千、何万回と鍛錬を積み重ねたがの」
シン  「はあ……」
又兵衛 「だがのう。苦労して身に付けたら身に付けたらで、実際のいくさではほとんど槍働きが多くてな……
     結局、ただの一度も使う機会が訪れなんだわ」
シン  「……なんかもったいない話ですね」

 

又兵衛 「それより……信。なぜ危険を冒してまでも、わしの技を再現しようとした?
     あの返しを破るには……突けばよい。
     わしの返し技は、刀で突かれる事にはまったくの無力。お主もそのことに気がついていたのであろう?」

 

シン  「そうですね。俺、あの技の仕組みを理解した時……すぐにその弱点にも気が付きました。
     でもそれで勝っても意味がないって思ったんです。
     だって又兵衛さんはこの技を俺に伝えかったんでしょう? なら、俺が逃げちゃいけない。
     又兵衛さんの想いを全身全霊で受け止めなければいけない!そう、そう思ったんです」
又兵衛 「……信。お主はもう、わしをとうに越え、立派に一人前の男になったようじゃな。
     わざわざこの世に化けて出てきた甲斐があったようじゃわい」
シン  「そんな!俺は、そんな……」

 

又兵衛 「よいかシン、わしは初めこの返し技に2つの名を付けた。
     敵の剣を受け流す『壁の剣』。そして敵の剣の勢いを利用して放つ『返す剣』。
     わしはこの2つを自分なりに会得した時に、この2つの名を1つにまとめたのだ。
     返す剣と壁の剣……かえすかべ……名付けて『秘剣かすかべ』!
     信よ! 確かに……確かに伝授したぞ!」

 

シン  「又兵衛さん! 俺……俺!」
又兵衛 「わしもそろそろ、姫の所に行かねばならん。
     信よ! わしは、わしの生きてきた証をわずかでもお主に伝える事ができたこと、幸せに思うぞ!
     しんのすけによろしくな……さらばじゃ!」
シン  「ま、又兵衛さーーーーん!」

 

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

 

シン  「又兵衛さんッッ!」
ルナ  「きゃ!び、びっくりしたぁ……お、脅かさないでよもう!」

 
 

シン  「……え? あ……なにやってんだルナ?」
ルナ  「なにって……シンが脇差を構えたまま30分以上もピクリとも動かないもんだから、
     心配になって様子を見にきたんじゃない! しっかりしてよもう……」
シン  「ああ……そうか……すまん。ちょっと考え事をしてたもんで、さ」

 

しん  「シン兄ちゃん。お刀はもう使わない?」
シン  「あ、うん。ありがとな、しんちゃん。
     この刀を持ってみてさ、久しぶりに又兵衛さんに会ってきたような気がするよ。
     又兵衛さん、しんちゃんによろしくって言ってたよ」
しん  「ふ~ん。お又のおじさんも律儀ですなあ。おらに直接言いに来ればいいのに」

 

シン  「又兵衛さんはいつでも俺達を見守っているよ……ほら、空を見て。あそこの雲、何かに似ていない?」
しん  「ん? おお~~!あれはおじさんの旗の模様だゾ!」
シン  「春日部の空のうえで……又兵衛さんはいつでも俺達を見守ってくれているさ。
     いやもしかしたら……又兵衛さんだけじゃなくてお姫さまと一諸に、かもしれないな」
しん  「れんちゃんも?……うん。きっとそうだゾ!」

 

   ※   ※   ※

 

 今日も春日部は、突き抜けるような青空が広がっている。
 その空の下で今日も明日も明後日も、シンとしんのすけ達は毎日楽しく暮らしていくだろう。
 春日部の空に井尻又兵衛由俊の旗があるかぎり……春日部で暮らしていくみんなは鬼井尻が守っていくのだろうから。

 
 

《おい青空侍。はやく来ないと置いていくぞ?》
《お、お待ちください姫……今しばらく………》

 
 

 ……もしかしたらちょっとくらいは、お姫様の尻に敷かれているかもしれないけど。

 
 

 (完)

 
 

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