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SEED-クレしん_16-050

Last-modified: 2009-04-06 (月) 17:40:54
 

 ……何かを変える為には、既存の何かを破壊しなければならない。
 何故なら、古きものと新しきものは共存ができないからだ。
 だが、破壊は陰惨なものだ。誰もが嫌がる汚れ仕事だ。しかし、必ず誰かがやらなければならない。
 そして、破壊が悪だというのならば。偽りであっても平和を乱す邪悪であるというのならば。俺達は喜んでその悪を背負おう。

 

 俺達はチーム・トリニティ。
 たとえ世界中を敵に回したとても……己に課せられた任務は果たしてみせる。

 

 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・

 

「ガアアアッ!」
「ふんッ!」

 

 襲いくる熊公にハイキックを一発お見舞いする。
 それで勝負はついた。崩れ落ちる熊……これで今夜の晩ご飯は熊鍋確定ね♪

 

 ……私ネーナ・トリニティは、春日部を出たあと北へ北へと移動していった。
 なんとなく……北の方角に兄ィたちがいるような気配というか予感がしたから。
 私たち兄妹は生半可じゃない絆で結ばれてるんだもの、きっとこの予感に間違いはないわよ。
 まあ、山奥に迷い込んで熊や野犬に襲われたときはどうなるかと思ったけどさ。

 

 気絶している熊を引きずりつつしばらく歩くと、森を抜けて国道らしき道に出た。すぐ近くに民家も見える……やっと人が住んでるとこに着いたかあ。
 はあ~これでやっと缶詰め生活から解放されて、久しぶりにまともな食事ができるってもんね。

 

 ……でもなんか、どことなく人々の様子が変。
 なにかあったのかしら……?

 

   ※   ※   ※

 

「うおおおおおおッ!」

 

 俺に鍬や鋤はいらねえ。手刀の突きで畑を耕しつつ猛スピードで畑を駆け抜けていく。
 ちと腰が痛いのが難点だがもう慣れちまった。朝のうちにこれ終わらせとかねえと午後に種蒔けねえからな、さっととやっとかねえと。

 

「ミハエル、こっちは朝の収穫が済んだぞ。そちらはまだか?」
「せかすなってよ兄貴! もう少し…………終わったあッ!」
「よし、戦果を報告しにアスカ家に戻るぞ」
「お、おう。いちち……腰が……」
「ほら」(なにかを投げてよこした)
「おッと。お、いい色具合の朝摘みトマトだな……ん、美味え」

 

 とまあ、これが俺達の日課というか仕事というか………おい笑うんじゃねえぞ? そこのてめえ。
 何故こんな状況になったかというとだな。一年前に『この世界』に来て以来ヨハン兄貴と一緒に、ネーナを探してこの国をあちこち放浪してよ。
 この秋田ってとこで路銀が尽きて、腹空かして2人してブッ倒れたのが数ヶ月前。
 偶然通りかかった『野原銀ノ介』っつー爺さんに助けられて、アスカっておっさん夫婦んとこに住み込みでバイトするようになったんだよな。
 ま、最初は当面の旅費稼いだらオサラバする気だったんだけどよ……

 

「……悪くないな。こういうのもよ」
「意外だな。ミハエルの口からそういうセリフが出るとは」
「べ、別に……生まれてからこっちずーと訓練に実戦ばかりだったから、こういうのが初めてで新鮮だっただけだ」
「私もだ」
「ん?」
「私も……悪くないと感じている。こういうのが、俺達がかつて目指した『本当の平和』という奴なんだろうな」
「平和かあ……うん、そうかもな」

 

   ※   ※   ※

 

 アスカ家の近くに戻ってみると、近所も含めてどこか様子がおかしかった。
 どことなく不安そうな、それでいて緊張しているような。
 この空気は俺達がよく知っている……『戦争の空気』だ。

 

「おお、おめえ達!」
「どうしたよ銀じーさん? あんまおろおろしてっと血圧あがってポックリ逝っちまうぜ?」
「んな事言ってもよ。今日こそ某国のミサイルだかが落ちてくるんだべ? それ考えるとオラもうよお……」
「そういやそんな話あったな。それでみんなピリピリしてやがんのか」
「……」
「……兄貴?」
「……ミサイルだろうが衛星だろうが他国の上空侵犯する。これは武力介入だ」
「……だな」
「それも己の自己権威欲を満たさんとするが目的の、私たちが知る限り最低の武力介入。そこには理想も理念もない」
「ああ。分かるぜ兄貴。よーくな」
「行くぞ、ミハエル」
「おう! じゃあな銀じーさん……俺達がちょっくら行ってハエを撃ち落してくらあ」
「おめーたち……?」

 

 実は私達は2人だけでこの地に来たわけではない。
 周りの人間には秘密にし、厳重に隠してはあるが……私の愛機『スローネアイン』が共にあった。
 もっとも、部品も技術もないために修理が完全でない。だが……

 

「GNランチャーはかろうじて使えるはずだ。上空に飛び立っての狙撃だけならば……」
「狙うのは弾頭と、切り離されたブースターだろ? できるぜ、兄貴ならば!」
「お前のツヴァイもあれば連携できたのだがな……まあ、奪われたものをとやかく言っても致し方ない」
「なら言わねえでくれよ……あの時の顛末を聞いて激しく凹んでんだから」

 

 しばらくアインのレーダーやワンセグで情報収集しながら待機する……
 そして11時30分!

 

「来たッ! 熱源接近!」
「頼むぜ兄貴!」
「スローネアイン……出る!」

 

 私は目を見張った。
 いま大空に向かって飛び立ったガンダムは……あのガンダムは……!
 気がついたら熊を放り出して駆け出していた。無我夢中だった……!
 ま、おかげで今夜の熊鍋はおじゃんになっちゃったけど。

 

「GNランチャー、目標を捕捉……行け!」

 

 GNランチャーから撃たれた高出力ビームが、切り離されたブースターを破壊する。
 続いて太平洋側に飛んでいく弾頭にランチャーを向けたが……

 

「エネルギーの充填に3秒だと? チッ! せめて修理が完全であったなら……そこだッ!」

 

 続いて弾頭に砲撃を加える……しかし、これはほんのわずかにかすっただけで外れてしまった。

 

「……ここまでか。しかしあれならば軌道上に乗ることはなく、遠く離れた海上に落ちるだろう。
 任務完了、これより帰還する」

 

 ゆっくりと慎重に、しかし周囲に気付かれないようにステルスフィールドを張りつつ、スローネアインを着地させる。
 コクピットから降りると、駆けつけたミハイルが出迎えた。

 

「やったか? 兄貴!」
「とりあえずはな。テレビの情報はどうなっている?」
「いまんとこ被害はねえみたいだけど……」
「なら迎撃成功だ。要はどこにも被害がでなければそれでいい」
「……」
「……どうした?」
「いや……被害を出さない為の戦いなんてよ、考えてみりゃ俺達はじめてだなーと思ってさ」
「そういえばそうだな」
「殺すのが目的の戦いじゃなく、守るのが目的の戦いか……」
「悪くない」
「ああ悪くねえ…………ま、ともかくはやくこいつを擬装して隠さないと」
「うむ。誰かに見つかる前に」

 

 ドサッ……

 

「物音? 見られたか!」
「悪いがてめー、見られた以上………以上…………え?」

 

   ※   ※   ※

 

 私は思わず手にもっていた荷物を地面に落とした。
 それだけ……会いたくて会いたくて、夢にまで見た人たちが目の前にいたから。
 荷物が落ちた音に振り向いた2人の顔にも驚きの表情が。
 きっと私も同じような顔してるんだろうな。

 

「………ネーナ? ネーナなのか?」
「夢かよこれ……」
「夢なんかじゃ……ないよ兄ィ。ゆ、夢なんかじゃ……う、うううっ」

 

 涙があふれて止まらない。こんなときぐらい泣いてもいいよね?
 気がつくと私はヨハン兄ィの胸の中に飛び込んで、わんわん泣いてた。

 

「う、うえええ~~~! 兄ィ! 兄ィ~~! やっと会えた……会えたよお~~~!」
「それはこっちのせリフだ。うん? 少し大人っぽくなったか?」
「ひっく、あ…当たり前だよ……! だって、だって、兄ィたちがいなくなって4年もたってるんだよ……?」
「4年!? ネーナ、それどういう事だよ?」
「そ、それは……ううっ……ぐすっう、うえ……うえええええ~~~!」
「……泣き止むまで待つしかないな」
「やれやれ。でもなんだよ、俺には抱きついてくれねーのかよ~」

 

 ……しばらく大泣きした後、私はヨハン兄ィとミハ兄ィに知ってる限りのことを話した。
 すべてを話し終えた後……兄ィは私の頭を優しく撫でてくれた。

 

「……そうだったのか。すまん、ネーナ……俺達の分までよく頑張ったな」
「そ、そんな……わたし結局、兄ィたちの仇も討てなかったのに」
「んな事俺も兄貴も望んでねーよ。たったひとりでよくやったぜネーナ」
「ミハ兄ィ……あ、ありがと……」

 

「にしてもデカくなったなお前。向こうで4年ってことは、もう俺達より年上か?」
「え?」
「そうか……そうだな。ならば私たちはこれからネーナを『お姉ちゃん』と呼ぶべきかな?」
「んじゃ、これからよろしくな。ネーナ姉貴♪」
「い……嫌よ! 年上でも! と、年上だとしてもその、妹がいい…… 私はヨハン兄ィとミハ兄ィの妹でいたいの!」
「冗談だ、ネーナ」
「ま、たとえババアになったとしてもネーナは俺達の妹だわな」
「もうッ2人して! 意地悪~~~!」

 

「そう怒るな。では……行くか」
「い、行くってどこへ?」
「『カスカベ』ってとこに決まってんだろ? なんかネーナの話聞いてると、面白そうなとこらしいからな」
「その前に、お世話になったアスカさんと銀ノ介さんに挨拶していくぞ」
「りょーかい!」

 

「あ……」
「どうした? 行くぞネーナ」
「心配すんなって。俺達だけでもうどこにも行かねえよ。お前ひとり置いていきもしねえ。俺達トリニティは三人でひとつなんだからよ!」
「……うん!」

 
 

 たとえ世界中を敵に回したとしても、私はトリニティの絆だけは絶対だと信じている。
 だって、死に別れたはずなのに別の世界でこうしてまた奇跡的に巡り合えたんだもの。
 これって尋常じゃない絆だよね?
 さて、悪役をやるのはもうお終い。これからは……どうしようかな?
 とりあえず3人でいままでの空白を埋めていこう。

 

 そして今度こそ、私たちが望む『本当の未来』へ……

 
 

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