Top > SEED-クレしん_16-175
HTML convert time to 0.006 sec.


SEED-クレしん_16-175

Last-modified: 2009-04-21 (火) 20:00:55
 

 春日部を散歩していて……唐突に……僕は出会ってしまった……

 
 

「あら……こんにちは」
「ッ……!」

 

 金髪の美しい女性だった……が、僕には分かる。
 何故か自分と同じ『ニオイ』がする……これは……本当の姿ではない。

 

「……偽りの姿か」
「あら?鋭いわね……でも外れ。私は自分を偽ってなどいないわ」
「服と化粧で誤魔化せると思うのか? 君の性別は……」
「では聞くけど、本当の姿ってなあに?」
「……」
「あなた……私と同じ感じがする。自分の意志で何かを成そうというのではなく、もっと……そう、絶対的に信頼できる『何か』を心の底から信じ、その何かにためらいなく自分を奉げる事ができる人」
「それは……!」

 

 ヴェーダ……

 

「その為かしら? 逆に言うと、『自分』というものが希薄……でもあなたは、かつての私とは少し違うわね?」

 

 僕の場合は……ニールが導いてくれたから……

 

「でも……もう何かの為に自分を押し殺す必要はないわよね? ならこれからは、自分のやりたいようにすればいいじゃない」
「自分の思うように……か」
「あなたは自由よ。何がしたいのかしら?」
「恋愛事に興味はない。が……時々美しさに憧れる事は……ある」
「以前私みたいなことをした事がありそうね」
「あ、ああ……」
「なら決まりね」

 

 今の僕ならばデータを少し書き換えるだけで髪型から服装、声の質まですべて一瞬で変えられる。
 問題は僕自身の心だが……よそう。もう気付いてしまった。
 かつて少しだけ任務とはいえ、パーティー会場にて羨望のまなざしで見られた……そう、あの感覚が忘れられないんだ……

 

   ※   ※   ※

 

 その日。
 シンとしんのすけ、それにロックオンとリヒティ、クリスは揃って『砂漠の虎』でコーヒーの香りを楽しんでいた。
 バルドフェルドが時々コーヒーの新ブレンドに成功するとタダで振る舞ってくれるので、それ目当てだ。

 

シン  「ん~~~、ちょっと苦すぎませんか?」
ニール 「いや。よくよく味わってみるとよく分かるぞ……
     苦さの中にかすかな甘味が隠されている。微妙にして絶妙のブレンドだ」
虎   「お? 君、よく分かってるじゃないか」
ニール 「こう見えても、コーヒーの味にはちょっとうるさいんでね」
リヒティ「俺には微妙な味の違いなんてさっぱり分からないんですが……」
しん  「オラもだゾ」
クリス 「そりゃあ、そんなにお砂糖たくさん入れれば味なんて分かんないんじゃない?」
しん  「いやあ~~♪」
リヒティ「誉めてないです」

 

カラン♪ カラ~~~ン♪

 

虎   「お、いらっしゃ………」
しん  「おおお~~~~!?」

 

 そこには、時々春日部に出没する幻の美少女レイナ・デュランダルの姿が。

 

シン  「レ、レイ……ナさん。ひ、久しぶり」
レイナ 「お久しぶりです、シン・アスカさん♪」
リヒティ「(小声で)す、すごい美女っスけど……誰なんです?」
シン  「(同じく小声で)えーとですね、議長の親戚のお嬢さん………のレイナ・デュランダルさんですハイ」
クリス 「リヒティ? 鼻の下伸びてるんだけど」
リヒティ「うえ!? き、気のせいっスよぉ!」

 

しん  「オ、オラ、ちょーどレイナおねいさんに会いたいと思ってたんだゾ!」
レイナ 「まあ……しんちゃんったらお上手ね」
しん  「お? 後ろにいる人は……だれ?」
レイナ 「私のお友達よ。ほら恥ずかしがってないで入ってきなさいな」
??? 「は、はい……」

 
 

全員  「お……おおおおお~~~~~~~!?」

 
 

 腰まで届こうかという紫の美しい髪、知的な眼差し、おまけに胸がバインバインでスタイル抜群、の極上の美女がそこにいた。

 

しん  「はうッ」
シン  「ど、どうしたしんちゃん!」
しん  「オ、オラおケツにぽっかり穴があいたみたいだゾ……
     三度目(ななこ、レイナに続いて)の初恋に陥りそう……」
ニール 「おいおい。三度目は初恋って言えるのか?」
虎   「これはこれは……美しいお嬢さんだね。できればお名前をお聞きしたいのだが?」
??? 「あ、あの……ティ……ティエリー。そう、私ティエリーと言います。
     レイナに……春日部って素晴らしい街だと聞いてそれで……」
虎   「観光にきた、と。それは光栄だねえ」

 

レイナ 「これからティエリーを春日部見物に案内したいの。でも私もここの住人じゃないのでそれで……
     誰かこの街をよく知ってる人がこのお店に居てくれればって思ってここに来たんですが」
しん  「はいはい!オラが!オラが案内するゾ!」
ティエリ「いいの?」
しん  「もっちろ~ん!」
ティエリ「じゃあお願いしようかしら」
しん  「シン兄ちゃんたちは?」
シン  「えッい、いや……俺は今回遠慮するよ」
ニール 「俺達も遠慮する」

 

レイナ 「そうですか。じゃあ少しの間しんちゃんをお借りしますわね?」
ティエリ「それではいきましょうか」
しん  「ほっほ~~い♪うひょ~両手に花だゾ~~~~♪」

 

ニール 「………」
シン  「……」

 

 3人が出て行った『砂漠の虎』は、妙に重苦しい雰囲気になっていた……

 

ニール 「……お前ら、なんか言えよ」
リヒティ「言えって……そ、そんなこと言われても……」
クリス 「もう!……じゃあ私が口火を切るわよ。
     金髪の子の方は知らないけど、もうひとりは……ティエリア……よね?」
ニール 「……やはりみんなも一目見てそう思っちまってたか……」
シン  「す、すいません。あの場で本人に聞く勇気なくて……」
ニール 「で、どうするよこれから?」
リヒティ「このあと毎日どんな顔でティエリアと会えって事っすか? それは……」
クリス 「ティエリアにあーゆー趣味があったなんて……はあ~、扱いに困るどころの話じゃないわよ」
シン  「(俺はレイと一緒だったあたりで確信したけどな……ん?まてよ)
     ロックオンさん達はなんでティエリアの女装を見破れたんです?」
ニール 「そりゃあ……昔からティエリアは妙に中性的な出で立ちだったしな。男のようでもあり……女のようでもあり」
クリス 「実は女でしたと言われてもすんなり納得できたわよね」
シン  (あーそういうことか。レイの場合は逆に女になった場合をみんなが想像しにくいからバレないんだな)

 

ニール 「で、どうする?」
クリス 「ここはハッキリと『本人に女装が趣味なの?』って言っとくべきかしら」
リヒティ「でも俺達に気付かれてないと思ってるティエリアは傷つきそうっすよ~
     結講ナイーヴな性格みたいだし……」

 

カラン♪ カラ~~~ン♪

 

レイナ  「ただいまです皆さん」
ティエリー「しんのすけ君のおかげでいろいろ見て回れましたわ」
しん   「いや~~それほどでもぉ~~♪」

 

ニール  「か、帰ってきたか……」
クリス  「仕方ないわね。ここは心を鬼にして……!」
シン   (う……居たたまれないなあ。逃げ出したい……)
リヒティ 「あ、あのっすね!」
ティエリー「はい?」

 

カラン♪ カラ~~~ン♪

 

???  「……ここにいたか。探したぞ? みんな店(プトレマイオス)を放り出してここで何をしている」

 

4人   「あ、あれェ~~~~~~~!??」

 

???  「なんだ? 僕の顔になにか付いているのか?」
クリス  「ティ、ティエリアが……2人!?」
ティエリア「馬鹿をいうな。僕はこの世でひとりだけだ」
リヒティ 「じ、じゃあここにいるティエリーさんは?」
ティエリア「うん……? これは……ほう美しい女性だな」
ティエリー「はじめまして。あなたは……?」
ティエリア「ティエリア・アーデだ。ビューティーサロン『プトレマイオス』の会計係をしている」

 

ニール  「なんてこった……は、ははは……他人の空似、別人だったのか。ははははは……」
リヒティ 「はあ~~~~。い、一時はどうなる事かと思いましたよォ」
クリス  「よかった……本当によかったわ。身内が女装癖の変態とかじゃなくて……」
ティエリア「なんの事か知らないが……とにかく、店でアニューが心配してたぞ。さあみんな仕事だ仕事!」
ニール  「あ、ああ……んじゃマスター。俺ら店に戻るわ」
虎    「また新しいブレンドが出来たら呼ぶからな」
ニール  「ああ。期待してるぜ」

 

レイナ  「では私たちも帰りましょうか?」
ティエリー「そうね」
しん   「ええ~~!もういっちゃうのぉ~~?」
レイナ  「ごめんねしんちゃん。また近いうちに春日部に来るから」
ティエリー「その時はまたこの街を案内してね?」
しん   「も、もっちろん!オラにまかせなさ~~い!」

 

 と、こうして……いろいろ波乱が起きそうで起きなかった、砂漠の虎でのコーヒーブレイクは終わった……が。

 

シン   「なーんか変だなあ……」

 

   ※   ※   ※

 

 その夜、プトレマイオスにて……

 

ティエリア『……よくやってくれた。おかげで危機を乗り越えられたよ』
???  『なんで僕が君の影武者をしなきゃいけないんだ……』
ティエリア『そこでヴェーダ(=ぶりぶりざえもん)の相手をしているのは疲れるだろ?
      僕の言う事を聞いてくれたらヴェーダに頼んで春日部に実体化させてやってもいいぞ?
      それも今回のような一時的なものではない奴でな』
???  『もう嫌だ……あの豚、毎日僕に理不尽な命令ばかりして……』

 

 00本編を見ていた読者ならお分かりだろう。
 『砂漠の虎』にティエリアとして現れたのは……ティエリアの分身とも言うべきイノベイター、リジェネ・レジェッタである……
 現在リジェネはヴェーダの許にいるので、2人は脳量子波で会話をしている。

 

ティエリア『それにしてもティエリー……か。うん、こういうのも悪くないか』
リジェネ 『やめてくれ! 僕と同じ顔でそんな女装趣味にハマるだなんて!』
ティエリア『君もしてみるかい? 意外と……癖になっちゃうかもよ♪』
リジェネ 『や、やめろォォォォォ! 僕と同じ顔で可愛らしくウィンクなんかするんじゃないィィィィッ!』

 

 新たな自分に目覚めたティエリアと、誘惑に引き込まれまいと必死でふんばるリジェネであった……

 
 

 戻る