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SEED-IF_3-848氏_01

Last-modified: 2008-04-24 (木) 22:35:44

「――!」
光を知覚した時、彼の命は散華した。
天に昇っていく感覚……
ふぅ!?
彼は唸った。
急に、横から引っ張られる感覚。
ああ!? 今度は落下する感覚が!


……


気がつくと、私は椅子に座っている。いつものモニターがいっぱいある部屋だ。
――!?
モニターが、妙に大きい?
それになんだ? 足元が妙に温くい。
うわ!?
自分の手に目をやると、それは毛むくじゃらな獣の手だった。
それに、なんだ? 自分が乗っているのは……人の腿か?
自分はガリバーの世界にでも来てしまったのだろうか? いや、それにしても自分の手は?
おそるおそる上を向くと、そこには巨大な自分の顔が自分をしげしげと覗き込んでいた。
まさか! 私はフェリックス(猫)と入れ替わってしまったのか~~~!?


「そろそろいつものディーンズのレトルトが食べたいにゃーー!」
巨大な私が叫んだ。
「はい、ただいま! ジブリール様!」
向こうから声が聞こえた。
すぐにレトルトの袋がいくつも持ってこられた。
巨大な私は袋を開けると皿に中身を移す。
そして私をじっと見つめる。
まさか! 私に食べろと言うのか!? 食べんぞ! 私は人間だ! ……あ……
巨大な私は、スプーンを手に取ると、ガツガツと自分で猫食の中身を食いだした。
幸せそうな顔しやがって! やっぱりこいつはフェリックス(猫)だ!
うう、お腹が空いてきた……
フェリックス(猫)は、またレトルトの袋を開ける。ガツガツ食べ出す。また袋を開ける。
……いくつ食う気だ?
ふぅ!
私の唸り声でフェリックス(猫)は私を覗き込む。
「食うにゃ?」
皿が目の前に突き出される。兎肉&鶏肉とハーブの香りが鼻腔をくすぐる。
ちょ、ちょっとだけ味見してやるか!
私は恐る恐る皿の中身を舐める。
……う、うまい!
さすが英国の有名オーガニック会社の製品だ!
これは猫の体に変わったせいなのか?
私は本格的に皿の中身を食いだす。
……ふぅ。
皿の中身を食べ尽くして、私は満足した。
「うまかったにゃ?」
「まぁな」
「それはよかったにゃ」
言葉が……通じる?
「それにしても、フェリックス。妙に落ち着いているじゃないか。体が入れ替わって混乱とかしないのか?」
「この星の支配者たるもの、些細なことで取り乱してられないもさよ」
「ちょっとまて! 猫が地球の支配者!? お前は人間の事をどう思ってるんだ?」
「人間は猫たちの奴隷の役をする生物にゃ。真面目によく働いてくれるにゃ」
「あんなに可愛がってやったのにそんな事を思っていたのか!?」
「人間は食事をくれるし、愛してくれるし、気持ちのいい暖かい住処を提供してくれるし、可愛がってくれるし、よく世話をしてくれる……。猫が主人で間違いないにゃ!」
……思考形態が……違う……やっぱり猫は猫か……
「確認したいにゃ。お前は僕の召使のジブリールにゃ?」
「召使!? 飼い主だろう! 私は!? はぁ……ジブリールだよ」
「今までよく世話をしてもらったからにゃ。お前の世話はきちんとしてやるもさ。安心するにゃ」
はぁ……




疲れた……今日はもう眠ろう。目が覚めたら夢であって欲しい。
いや、現実だったら自分は殺されてるんじゃないか!
うーむ……
考えるのに疲れた……今日はもう眠ろう。
……
……眠れない。そう言えば猫って夜行性じゃないか!
……!? 空中に、大きな顔が浮かんでる! なんだ!? 甲冑なんか着てるぞ!?
「起きるのだ! フェリックス!」
「うー。なんにゃ?」
「あれを! あれを!」
「心配ないにゃ」
フェリックスは起きたもののすぐにまた眠ってしまった。
怖いよう。
私はフェリックスのわき腹に顔を突っ込んで一夜を過ごした。


翌朝。
「あれは何だったんだ?」
「あれはお前のご先祖様にゃ。お前を心配して出てきたにゃ」
「幽霊?」
「そうとも言うにゃ」
「怖いじゃないか!」
「あの幽霊は怖くないにゃ。お前も数をこなせばその内区別つくにゃ」
霊視の数なんかこなしたくない……
「ところで、私達はザフトに殺されたんじゃなかったか?」
「そう言えばそうにゃー」
「どうなってるんだ? 今はいつなんだ?」
「知らないもさよ」
「気にしろよ!」
「細かい事は気にするなもさ」
「また殺されたらどうする!」
「しょうがないにゃー」
フェリックスはパソコンの前に座った。
「っておい。お前、パソコンの使い方わかるのか?」
「体が入れ替わった時に、お前の記憶も受け継いだにゃ」
「じゃあ、なんで私はお前の記憶がないんだ?」
「人間は心が固いにゃ。心を広げるにゃ」
心を……広げる……
ああ! 流れ込んで来る! フェリックスの記憶が!
……って、猫の記憶が蘇っても役に立たんわ……
「ああ、パソコンには今日はCE71年2月23日と出ているにゃ」
「フェリックスと入れ替わった昨日は猫の日か……ははは……タイムスリップまでしてしまうとは」
「単なるタイムスリップじゃないみたいにゃん」
「なんだと? どう言う事だ?」
「パソコンでお前がやっていた仕事ざっと見てみたもさが、お前の記憶とこの世界のデータ、微妙にずれがあるもさよ。なにはともあれ命が助かったにゃん。これは猫岳の王、宝剣の使徒、アルゴーナウタイ、猫の神様のお導きもさよ。で、どうするにゃ?」
「なにがだ?」
「僕は安楽気楽に過ごせればいいもさよ。お前はどうしたいにゃ?」
これから起こる事と言えば……オペレーション・スピットブレイク!
「アラスカが攻められる! 大西洋連邦はアラスカ基地の自爆を企んでいる! ユーラシアの部隊を救わねば!」
「――そうにゃ! ユーラシアにはイスラムの国もいるにゃ。彼らは猫のよき召使にゃ! 救うのにゃ!」
「どうする? アラスカを強化するか?」
「待つにゃ」
「なんだ?」
「『サイクロプス』は発動させるにゃ」
フェリックスはにやりと笑った。
「しかし……餌が無ければ罠だと感づかれるぞ?」
「餌は、チャイナとコリアの軍にゃ。彼らの軍を出来る限りアラスカに集めるにゃ」
「まぁ、それでもいいが……なぜチャイナとコリアを?」
「チャイナの奴らは猫を食う。コリアの奴らも液状猫とか言う気持ち悪い薬を作るために猫を殺す。猫の敵にゃ!」
フェリックスの目がぎらりと光った。


「お兄様! お目覚めになったのね!」
向こうで歌うような声がして、誰かが駆けてくる足音がした。
現れたのは、髪を長く伸ばした、薄く赤く色が掛かった髪の色の少女だ。
……誰?
「おい、私に妹などいないぞ。フェリックス、この娘が誰だか知ってるか?」
「僕も知らないにゃ。僕の知識はお前からの知識もさよ」
「まぁ、仲が良いのね、お兄様とフェリックス」
その娘はにっこり微笑んだ。
「お兄様、お食事まだでしょう? ご一緒に、朝食はいかが?」
「えーと、えーと……」
「……思い出した! 思い出したぞ、フェリックス! ラクス・クラインだ! こいつ、ラクス・クラインの顔だ!」
「そうにゃ? ええと、お前はラクス・クラインかにゃ?」
「まぁ、お兄様ったら古い冗談を!」
その娘はころころと鈴の音のような笑い声を上げると、手を軽く握ってフェリックスの胸をぽんぽんと叩いた。
――! 視界に突然何かが……
「で、出た! 出た! フェリックス! 甲冑の幽霊だ!」
「まぁ、ダヴェルグさん、おはようございます」
「おいおい! お辞儀してるよ! 幽霊に! おい!」
「……まぁまぁ、少し落ち着くもさよ、ジブにゃん。おい、お前、幽霊が見えるのか?」
「まぁ! 今更ですわ。お兄様。……え? なんですって? ダヴェルグさん!?」
その娘は驚いた声を上げた。
ん? 私の顔を覗き込んでくる。
「ええと、ロードお兄様? フェリックスと身体が入れ替わったって、本当ですの?」
ああ、そうだよ。
私は、にゃーと鳴いた。


「ええと。まずみんなで状況を整理するにゃ」
フェリックスの発言で、みんな絨毯に座り円くなる。
……幽霊が当然のように円陣に加わっている。まぁ、朝の光の中だとあまり怖くはないが。
面貌を上げた顔は渋い爺さんだ。これが私のご先祖様か……
「まず、僕とジブリールにゃが、確かに身体が入れ替わっているもさよ。更に、どうやらパラレルワールドからタイムスリップして来てしまったらしいもっさり。前の世界で今から見て未来に、敵の攻撃にやられたのが最後の記憶もさ。パラレルワールドと言うのがわかる理由は色々あるもさりが、まず、前の世界でお前を見た事がないにゃ。お前は誰にゃ?」
フェリックスは娘に話を振る。
「私は……セトナ・ウィンタースです。火星のオーストレールコロニーから地球に密航して来て……それでひょんな事からロードお兄様と知り合って、この家にお世話になる事になったのね」
「幽霊と話せるのはどうしてにゃん?」
「さぁ? 私、生まれつき人の魂が見えちゃうんですよね。それでダヴェルグさんとも知り合いになって」
隣で幽霊がうんうんと頷いている。
やっぱり私の記憶にはない。パラレルワールドか……
う……幽霊がこちらを見つめてくる。
(異世界か……信じられぬかも知れぬが、我が生きていた時には異世界に呼ばれて様々な冒険をしたものよ!)
話が御先祖ながら、ずいぶん法螺を吹くものだ。
(伊達男ジャリーは今も次元の狭間を彷徨っているのだろうか……? そう言えば、お主の姿はジャリーが連れていた「頬ひげ」と言う猫にそっくりじゃ。その猫は翼が生えておってな、空を飛び回っておったよ)
このままでは話が長くなりそうだ。
「ところで御先祖様。私達がこの世界に転移した時は何か感じませんでしたか?」
(うむ。軽い次元震を感じたぞ! 百万世界の合に比べたら屁みたいなもんじゃったがのう。わっはっは!)
役に立たん。
「私の……この世界のお兄様はどうしてしまったのでしょう?」
うっ。セトナが悲しい顔をすると胸が痛い。
……? これは……なんだ……!
「どうしたにゃ? ジブにゃん、ぼんやりして?」
「……セトナ、昨日のチーズグラタンはおいしかったよ」
「お兄様!?」
「どうやら、この世界の記憶が蘇ってきた。この世界の私と、魂が交じり合ってしまったようだ」
「嬉しい! お兄様!」
セトナが私を抱きしめる。
ふふ。可愛い奴。
「さて、落ち着いた所で、これからを検討するにゃん。ジブにゃん、先の事もさがギルバート・デュランダルをなんとしても倒さねば未来はないもさよ」
「うむ、まったくだ。ロゴスにとって大戦など決して歓迎される物ではないのにロゴスのせいにしやがって!」
「西ヨーロッパをデストロイで破壊したのもまずかったもさ」
「うむ、この世界の私は温厚だったらしい。自分でもそう自覚しているぞ。もうあんな事はしない。まぁ、アラスカをうまく処理すれば西ヨーロッパと亀裂が入る事も無かろう……」
…………
……
「うむ、すっかり暗くなってしまったな」
これからの対策を立てていたらすっかり一日が過ぎてしまった。
私はふと窓に目をやった。
――!
「ああ! 窓に! 窓に!」
窓には無数の手が! 眼窩が暗くなった無数の顔が!
「む! あれは害のある幽霊もさ!」
フェリックスが叫ぶ。
ご先祖様が剣を構えて飛んでいく。
……消えた?
「お兄様? 本当は怖がらせるからいつも言わなかったけど、お兄様お立場上悪い事もするでしょ? 時々来てたのよ、ああ言うの。ユイラムさんが追っ払っていたの」
そうか……ご先祖様が……。
「あれは……データで見た事がある顔もさね。ロドニアのラボにいた子もさ」
「――! フェリックス! すぐにラボを閉鎖しよう! 今生きている子には殺し合いとか実験とか非人道的な事は止めさせよう!」
「それが賢明もさ。ついでに慰霊碑を建てて慰霊祭を行うもさよ」
「だが……いかにジブリール財閥といっても、多くの子供を徒食させておく余裕はないぞ?」
「わかってるもさ。軍学校や職業訓練校でも作って放り込んでおくもさ」
その時、部屋の隅が妙に暗くなった。
なんだ?
そこには、妙に灰色がかった人物が現れた。
「やあ、皆さん。お揃いで。私は、はるか未来から来ました。私の名は……そう、ミスター・グレイ……灰田とでも呼んでください」
今度は未来人かよ……。
私は、もう何が起きようと驚かなかった……。






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