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SEED-IF_30years_02

Last-modified: 2009-07-04 (土) 13:32:32

海辺の白い家。
まるで恋話に出てくるような。
周りにはそれを覆うように季節ごとの樹木が植えられていたがそれほどの年数は感じられない。
大分、郊外から離れた場所だろうか。

黒い車から一人の男が降り、家に入った。
「今帰ったよ」
白いドアを開けると桃色の髪を結った質素な着物姿の女が立っていた。
「お帰りなさい、キラ」
わずか数時間の離別なのに、まるで何十年ぶりの再会の如く抱き合うふたり。
その女はラクス・クライン、今はキラ・ヤマトの妻であり、母である。
ラクスには祖国を捨てるには、祖国に捨てられるには、十分すぎる理由があった

デュランダル亡きあと、プラントは荒廃した。
従前からの労働力不足は未解決、それとは大量の青年層の無職。
戦争は青年の7割に戦死、重篤廃疾、不具を齎した。
政治犯や流刑者、捕虜……あらゆる手段を用いても解決できない労働力確保の限界。
戦後、評議会に招聘されたラクスは、本国の惨状と2度の暴走の無反省に失望を感じずにはいられなかった……
もっとも議会とて《シーゲル・クラインの娘》に求めたのは《シーゲル・クライン思想の継承者》としての《偶像》で、《政治家ラクス・クライン》ではなかった。
ラクスは父の追悼集会の最中から、父の部下や取り巻きたちのどこか余所余所しさを薄々感づいていた。
「結婚」という形で、キラと共にオーブへ。
議会は、この結婚を《「プラント・オーブ間の千載一遇の友好」》と喧伝、後に沈黙、ラクスの行動を背信行為と表明、クライン派の重鎮達は転向者を除き、処刑。裁判無しの銃殺、25年の労働刑………。

「ラクス、明後日からの日本行きなんだけど、ヒビキ家に寄りたいんだけど…」
「キラ、私もそう思っていたところですわ。あと法事も一切行ってないのでお墓参りがしたいですわ」
「なんか僕以上に熱心だね……そういう気がつかないところまで気がつく、君が素敵だ」
そう言葉をかけながらラクスの桃色の髪に手を伸ばす
「うふふふ……」
遠目で白けたように見つめている三人の若い男たち。
「また始まったよ」
「オヤジ、自分の年と精神年齢のズレに気付いてんのか?」
「ああ、なんか仕出かさないと良いけどなあ」

―脇で立つ三人の男達はキラの息子で、ショウ、アキラ、ユウ。
三人とも父が歩んだ道は選ばず、ショウは警察官、アキラは上院議員秘書、ユウは学生―

脇でくすくす笑う声に気が付いた。
世話役の武官でも自分たちのことを馬鹿にしてるのかと思って振り返ったが、そこには愛息たちがいたのだ。
もうどうでもよくなった。
「お前たち、一緒に日本に行くかい?」
キラは尋ねた。無論、照れ隠しの意味も含めて
「二人で楽しんできて下さいよ。」
「もう兄弟は勘弁してよ」
「自分達の年考えてね!」
(嗚呼、素直な頃が懐かしい……)
自らの老いを、これほどまでに実感したことはなかっただろう!

 

 

「A中隊、前進!」
ブリッジの中に怒号が飛び交う。
「中尉!しっかりして下さいよ」
「そこのストライクダガー!なにやってる!死にたくなかったらもっと反応速度を上げろ!」
連続発射されたミサイルがムラサメ一個中隊を包み隠すように降ってくる。
爆発音とともに水柱が立った。
全機撃墜か!と思った瞬間、ムラサメ一個中隊が駆け抜けた。
鮮やかな青のムラサメと両肩が赤に塗られたストライクダガーが追いかける。
信号弾が飛び、通信が流れた。
「訓練終了、全機帰投準備」

人々の話す言葉とムラサメという特殊な機体からオーブと勘違いしてしまいそうだがオーブではなかった。
そこは古の名を大和、近年まで東アジア共和国と呼ばれ、再び日本という名へ戻った。

プラントの影響力低下は全世界的規模に広がり、地図は書き換えられた。
かつて一片の紙切れによって東アジア共和国となった極東地域は、古からの名前を取り戻した。
オーブとプラントの講和が実現後、友邦数カ国と同時に共和国条約の破棄と反ザフト運動。
日本が先頭に立ち、親ザフトの駐留軍を鴨緑江まで追放、極東におけるザフトの影響力は地に落ちた。
オーブ、大西洋連邦の友好的中立を得、主権回復、歴史的領土も復元を成した。

 

 

―旧インド・カルカッタ駅―

「アスラン、まだメイリンのことを……」
「放っておいてくれ」
「うじうじと悩む男だな。貴様は!
何時まで黄昏てるんだ。死んだ奴は待っても帰ってこん。
まさか、お前まだ坊主の真似事をやるつもりか」
軍帽を目深に被りながら、アスランは言った。

「いやそれとこれとは別だ。決心がついた。
ここにも、オーブにも戻るつもりはない。
無論、シンの世話にもならん。俺は俺の道を行く」
「本当に良いのかよ?」
「で、お前、連絡は取ったのか。」
「ああ、キラとは直接話ができなかったが一応は伝えておいた」
「悩む問題かねえ?」
「まあいい。サア、こっち来いよ、まだお前に渡すものがある」
そう言ってイザークは駈け出した。
そして巨大なコンテナの前まで来た。
トラックかと思ったが貨物列車だったようだ……
優に200メートルはあろうかという巨大さだった。
アスランは思わず子供の様に走って近づき、そのコンテナを叩いたり、触ったりして見た。
「なんなんだよ、これは」
つい、大声で叫んでしまった。
「まあ黙って見ろ」
「お前への俺達からのプレゼントだ」
目の前の貨物列車のコンテナが開く。
そこには先端が鋭く尖り、まるで三角定規のような形に乗った、不思議な物があった。
魚のような尾ひれがついていて、天に向かって伸びている。
航空機、ジェット機の様な形をしている。
アスランは考えた。
バーニアと二連式の滑空砲らしき物がある
―MAだろうか?―
「なんだ、このMAは、イザーク」
「お前のものだ。名前はスクリーム」
「この機体はお前が所有した、イージス、ジャスティス、セイバーの最良の部分を合わせた複合機だ」
彼は説明しなかったが、それとは'''リフター分離機能、航空機形態。
高機動バルカン砲、ドラグーン・マニュピレーター。連結式ビームサーベル
ザク装備互換システム対応、対艦ロケットミサイル、速射砲、対MS無反動砲'''といった火器も充実。

「おい何をぼさっとしてる。さっさと列車に乗れ」
この列車はただの列車ではなかった。
'''通称《バトルメガトレイン》、正式名称はフィデリオ ZXBMTー02。
MS及MA最大80機輸送可能、全長は600メートル、50両編成。ミラージュコロイド標準装備、PS装甲。
300mm対空機関砲5門、250mm速射砲3門、ミサイルポッド12門。'''

ドアが開き、乗組員らしきザフト兵が降りてきてアスランの手提げカバンを積み始めた。
兵士はイザークの出した書類を確認している。
(どこまで連れて行く気だ?)
「ビルマにあるザフト大使館までだ。そこからはオセアニアまでの直通便がある」
思わずイザークの方を振り向いた。
声に出して喋ってしまった様だ。

 

 

―日本―
東京、渋谷

主権回復後、日本は軍備増強と防諜システムの再構築に力を入れた。
その一環として主要都市は元より、都内各所に軍官学校、防諜機関関連学校を数々と建てた。
渋谷にある海軍大学校もその一つである。
海軍大学校の講堂から出てくるふたりの男。
若い男は白の軍帽に白の軍服、壮年の男はセーターにスラックス、銀縁に色付きレンズのメガネ。いかにも教授という感じだ
「アージル先生、この本ありがとうございました」
そういって軍服の男は本を返す。
「中尉、エドマンド・バークはどうだったかい?」
「非常に興味深かったです。ところで先生は以前、地球連合軍に参加されたということですが」
少し間をおいて
「……ヤキン・ドゥーエ戦役の頃だけだがね」
「すると少年志願兵でしたか。私の母も連合軍でたしかアーク……」
眼鏡の男は驚き、こう答えた。
「え、今何ていった。……アーク・エンジェル?」
「たしかそうだったような?ドミニオンという船だったかもしれません」
「階級は」
「最終階級は少尉だったような……」
「少佐の間違いでは?」
ちらっと教授の方を見ると口に手を当てて目をパチパチさせている。
何か言ってはいけないことを言ってしまったかのような表情だ。
(何か、まずことでも言ったか?)
「いえ……。母を御存じなのですか」
「もしかしたらかもしれないな。中尉良く聞いてきてくれないか。
確か大西洋連邦のご出身だったそうだな、御母上の」
「そうです。如何されましたか?」
「んん、済まなかったね。立ち入った話を聞いて……」
彼は実は私もと言いかかったがやめてしまった。
中尉はそれを待たずに
「いえいえ私こそ。あと、中尉なんて呼ばずに昔みたいに響君で結構ですよ。先生」
「ああ」
「先生も母のことが気になるんですか」
「ほえ?見たことないヒト(他人の母親)のことを、まさか……」
「ははは。私、母と歩いていて何度かカップルと間違われたんですよ」
「お若いの?」
「そんなことないですが……」
略帽の水兵が駆け寄ってくる。
「中尉、艦長がお呼びです。はやく艦に」
「では先生、これで」
そう言って中尉は去って行った。
男は立ちつくしながら物思いに耽って居る様であった
(まさか、副長……?でもあの艦はローエングリーンで……人違いか?)

 

 

暗い室内、拡大モニターが円卓を囲むように設置してある
「皆さん、《花火》はどうでしたか」
盲人と思しき男が立ち上がってそう答えた。
「ええ、楽しませて頂きました」
と一人が返した。
「そうでしょう、そうでしょう。
ははは、私らしくないですね。ついはしゃいでしまいましたよ。
あの火星人共の最後の断末魔のハーモニーは今でも憶えていますよ」
彼の目が見えなかったのが幸いだった。
周りの人物達は顔を青くしながら引いていた。
「次は地球の掃除でもしますか。
先ず、極東辺りを掃除したいものですねぇ。
私を追放した大西洋連邦でも……
そうだ、パトリック・ザラの息子を呼びなさい。
面白いショーが見れますよ」
部屋の中を歩き回りながら、話しかけていた。
全員に指示が伝わるように。
暫くすると男達は立ち上がり、盲人に一礼をした。
「わかりました。導師様」
「早速、ロウ達に《仕掛》をさせなさい」
「はは!」「了解しました」
男達はそう言うと部屋を出て行った
「ラクス・クライン、キラ・ヤマト。貴方方は許しませんよ。絶対に」
一人残った男が、ふと尋ねた。
「導師様、私は・・・・・・」
「貴方はオーブの獅子の小娘を始末しなさい」
「了解しました」
彼は返事した瞬間、導師の開かない目が開いたような気がした。
外は季節外れの嵐だった……

 

 

十数人の軍服を着た男たちが話し合いをしている。
その軍服は様々で地球連合軍の制定したカーキー色に黒い肩掛けと袖の入った軍服や緑色のポケットのない簡単な制服などだ。
あえて共通点を探せば、漢字に似ているが漢字とは違った風変りな文字で書かれた名札だけであろうか。
男達の話す言葉は、まるで歌を歌うようにも聞こえるほど騒々しい言葉だった。
「旧型機で、どこまで在満ザフトと戦えるかだな」
「まてまてヤッコさん、新型MSもいれて5万台。こっちは可変型リニアガン450台と105ダガー230機」
「歴史上、少数精鋭で多数に勝った戦いはある。が、最初が肝心だな」
略帽を逆さまに被った男が一言
「いざと言う時は日本と大西洋連邦に助けを求めれば良いさ」
リーダー格らしき男が、
「俺たちが豆満江の向こうに出なきゃ良いだけじゃないのか?
いつまでも日本に頼っていては駄目だ。我々は我々式のやり方でいこう
変に戦うよりは、全滅は避けられる」
緑の軍服の男が立ち上がり
「所詮烏合の衆。屑拾いの連中が何人集まって軍閥作ったところで何になるのさ!」
一通りその男の主張を聞いてから、黙っていた隊長が語りだした。
「金間溟大尉、焦るな。時間を稼ごう。日本が、極東方面軍がどう動くかだ……」

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