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SEED-IF_4-5氏_08

Last-modified: 2008-05-12 (月) 19:05:12

休憩時間に入ったシンは、パイロット控え室へ向かう。
「あ!」
ちょうど出て来た兄達と会う。
「お姉ちゃん! ルナ! レイ! お疲れ様。大丈夫?」
「ええ、なんとかね。でも、くたくたよ」
「ショーンとゲイルは?」
レイが、先に帰った部下の事を尋ねる。
「少し怪我してたから、手当てして、部屋で休んでいるみたいです」
「そうか」
レイはほっと息を吐いた。
「……チアキにミツオ……」
ルナマリアが守れなかった部下の事を思い出し、俯く。
「ああ、ほら! 仕方ないじゃん、戦闘なんだし。軍人になったからには覚悟してたわよ」
マユがルナマリアを励ます。
「ああ、そう言えば、ブリッジですごいニュースがあったんだ!」
シンが、空気を変えるかのように、明るい声を出した。

 

「アスラン・ザラ? あいつが?」
ルナマリアが驚いた声を出す。
「やっぱりねー。そうだと思った!」
マユは、わかったように頷く。
「でも、ほんとに名前まで変えなきゃなんないもんなのかな? だってあの人前は……」
「そりゃそうよ、シン。いくら昔……」
マユが休憩室に入ろうとする時に急に立ち止まったのでルナマリアは蹈鞴を踏んだ。
「ぁ! ぅぅ……」
休憩室には、先客がいた。それは……。
オーブの、アスラン・ザラ。
ルナマリアの胸に奇妙な、辛い、重苦しい思いが襲って来て、横を向いた。
「へぇー、ちょうど貴方の話をしていた所ですよ、アスラン・ザラ。まさかと言うかやっぱりと言うか、伝説のエースにこんな所でお会いできるなんて光栄です!」
マユは明るく彼に声をかけた。
「……そんなものじゃない。俺はアレックスだよ」
「だから、もうモビルスーツにも乗らないんですか?」
「……」
「よしなさいよ、マユ。オーブなんかに居る奴に……何も解ってないんだから」
「ん?」
棘のある声に、アレックスは顔を上げた。
だが、ルナマリアは踵を反すと休憩室の入り口から去って行った。
「失礼します」
レイも、しかし、きちんと敬礼をして去っていく。
「ああ、もう!」
マユはもっとアレックスと話をしていたいようだった。
「でも、艦の危機を救って下さったそうですね。ありがとうございました!」
マユも、敬礼をすると慌ててルナマリア達の後を追った。

 
 

「アスランはどうしたんだ?」
「部屋の外見たけど、いないよ? デュランダル議長達と急な用事でもできたかな? それよりカガリ」
「ん?」
「アレックス! アレックス・ディノ! カガリが気をつけていないとばれるだろ? まぁ、今回はデュランダル議長が問答無用で正体明かしてくれちゃったけどね。はは」
「うう……気をつける……」
カガリはうな垂れた。が、すぐにばっと顔を上げる。
「ユウナ! お前も変な事するなよ! 死に掛けたじゃないか!」
「え、ええと、なんの事だい?」
「モビルスーツを操縦しようとしただろ!」
「ああ……。あれか……うまくいくと思ったんだよー。オーブのモビルスーツはちゃんと操縦できたのになぁ。やっぱりOSが……」
「え? ほんとに動かせたの? お前?」
「ああ。オーブは国民皆兵、満18歳で男も女も兵役に付くだろう? これでも一応予備役将軍だ。定期訓練で操縦している。最新鋭機もね」
「そうか。意外としっかりやってんだな」
「『意外と』は余計だよ」
「そう言えば、議長とモビルスーツについて話してたな。男はやっぱりああ言うの好きなのか?」
「いや、まぁ。心に響く物はあるけどね。父に頼まれた仕事の話さ。……カガリ、こんな事言いたくないけどね。プラントが、戦争が終わって皆心を入れ替えて平和な国になりました、なんて考えてないよね?」
「考えてるなら文句付けに来ないよ」
「はは。そうだな。デュランダル議長が話したザフトの新型機の特徴、覚えているかい?」
「え、えーと」
「はぁ」
ユウナはため息をついた。
「あ! 水中がどうこう言ってたじゃないか!」
「ああ。可変戦闘機型のセイバー、宇宙高機動用のカオスはともかく、後の二機、アビス、ガイアは問題だね」
「何がだ?」
「アビスは水中型モビルスーツなんて言っているが、あのたくさんのビームを見ただろう? ビームは水中では使えない。どう見ても揚陸作戦用だ」
「あ!」
「ガイアもね。なんで今更機動性の高い陸戦型モビルスーツなんて必要なんだ? 基地を防衛するだけなら、防御力と火力を揃えればいい。陸上での機動性が必要とされるのは侵攻作戦の時さ。バクゥが地球侵攻の為に設計された事を忘れちゃいけない」
この事は、第二次世界大戦のドイツの戦車ティーガーIIを思い起こしてみればいいだろう。戦局が悪くなってから開発されたティーガーIIは、防御陣地に配備されればその重装甲の効果を遺憾なく発揮したが、攻撃面においてはそれほどの効果を発揮できなく、ヒトラーを激怒させた。
「……まぁ、我が国も先の大戦では変な事をしてたけどね。ははは」
ユウナが笑ったのは、『高い機動性により敵の攻撃を回避する』と言う思想で開発されたオーブのM1アストレイの事を指している。
もっとも先の大戦後、M1アストレイが飛行能力を備えた、あるいは飛行能力を持った新型機が開発されてからは、オーブのモビルスーツの特徴とも言える装甲を削った軽量化もそれなりに意味を持つ物となっている。
オーブ攻防戦でオノゴロ島、カグヤ島に甚大な被害を受けたオーブとしては、できるだけ島から遠い海上で敵を迎撃する事が防衛計画の基本となっていた。
あるいは、植民地の防衛のために装甲を削り、航続力と居住性にまわした古の大英帝国の軍艦の事情に似ている部分があるかもしれない。
「つまり……」
「ザフトの方から始める気かどうかはわからない。しかし、地球侵攻の用意にはおさおさ抜かりがないって事だね」
「……」
カガリはむっつりと考え込んだ。
「そうそう、カガリ。顔に出ないように気をつけてね。君、出やすいから」
「……」
カガリの頬が、少し、膨れた。

 
 

「ねぇ、ルナ」
寝る支度をしているルナに先にベッドに入ったマユが声をかけた。
「なぁに?」
「アスラン・ザラってやっぱり素敵よね! さすが前大戦時の英雄って感じだわ」
「そう? あんな奴……」
ルナマリアは感心しない口ぶりで言った。
「そう、よかった!」
「なにが?」
「ルナと取り合うのは、嫌だもの。きゃは!」
「え? ちょっと、変な事……」
マユはシーツをすっぽり被って寝てしまった。

 
 

タリアの部屋の通信機の呼び出し音が鳴った。
「ふぅ」
気だるい感じでタオルケットを身体に巻きつけると、タリアは音声オンリーにして受話器を取る。
「なに?」
「艦長、デュランダル議長に最高評議会よりチャンネル1です」
シンからだ。
タリアは後ろに振り向く。
その視線の先に……デュランダルがガウンを纏って座っていた。
「うん」
デュランダルは頷いた。
そう、二人はこういう関係である。
元々恋人だった。しかし、デュランダルとの間では子供が出来にくい事がわかり、子供が欲しかったタリアはデュランダルと別れ、別の男と結婚し、男の子を産んだ。
しかし、「子はかすがい」にならず。相手の男は「俺は種馬じゃない!」と言う言葉を残して別居、そして離婚。
そんな訳でお互い疚しい事も無く、独身。焼け木杭に火が付く事があってもいいかもしれない。
シンと、どっちがいいかしらね。
タリアは、初めてシンにキスをしてあげた時の事を思い出す。
びっくりしていた。新鮮な反応だった。
タリアは含み笑いをする。
それにしても、議長の場所を明らかにしておく事は、国家の危機管理上必要。
だが、それを艦の中でやれば。艦のみんなに行為を知られる事でもある。それがまたちょっとした背徳感と羞恥心を煽って、余計に燃えたりする……。
だがしかし。最高評議会から飛び込んできた知らせはそんな浮ついた気持ちを吹き飛ばす物だった。

 
 

緊急の知らせと言う事で、デュランダルとタリアがカガリにも知らせに来た。
カガリ達は慌てて応接室へと向かう。
「なんだって!? ユニウス7が動いてるって、一体何故?」
事態を説明されたカガリが驚きの声を上げる。
「それは分かりません。だが動いているのです。それもかなりの速度で。最も危険な軌道を」
ユニウス7――前大戦時に唯一破壊されたプラントのコロニーの残骸である。
残骸と言っても、大きい。直径8キロもある。
「それは既に本艦でも確認致しました」
タリアもデュランダルの情報を捕捉する。
「しかし、何故そんな事に? あれは100年の単位で安定軌道にあると言われていたはずのもので……」
アレックスが、混乱した顔で問いただす。
「隕石の衝突か、はたまた他の要因か。兎も角動いてるんですよ。今この時も。地球に向かってね」
「……落ちたら、落ちたらどうなるんだ? オーブは……いや地球は!?」
カガリは叫ぶかのように問う。
「あれだけの質量のものです。申し上げずとも、それは姫にもお解りでしょう」
「ぅぅ……」
カガリは、言葉も出ず、呻く。
「地球の諸国への警告は?」
ユウナが聞く。
「もちろん、すでにしてあります。原因の究明や回避手段の模索に今プラントは全力を挙げています。またもやのアクシデントで姫には大変申し訳ないのですが、私は間もなく終わる修理を待ってこのミネルバにもユニウス7に向かうよう特命を出しました」
「ぁ……」
「幸い位置も近いもので。姫にもどうかそれを御了承いただきたいと」
「無論だ! これは私達にとっても…いやむしろこちらにとっての重大事だぞ。私……私にも何かできる事があるのなら……」
「お気持ちは解りますが、どうか落ち着いて下さい、姫。お力をお借りしたいことがあればこちらかも申し上げます」
「難しくはありますが御国元とも直接連絡の取れるよう試みてみます。出迎えの艦とも早急に合流できるよう計らいますので」
「……ああ……すまない」
無力さにカガリは肩を震わせた。

 

「ふーん。けど何であれが?」
ルナマリア達は休憩室で休憩を取っていた。整備の者達も手すきな者が合流している。
「隕石でも当たったか、何かの影響で軌道がずれたか」
「地球への衝突コースだって? 本当なの?」
マユはシンに聞く。
「バートさんがそうだって」
「はぁ~、アーモリーでは強奪騒ぎだし、それもまだ片づいてないのに今度はこれ?どうなっちゃってんの」
ルナマリアはため息をついた。
「で、今度はそのユニウス7をどうすればいいの?」

 

「でも、どうすればいいんだ」
応接室から士官室へ向かう途中で、耐え切れなくなった様子でカガリが誰にとも無く尋ねる。
ユウナも、アレックスも無言だった。
国にいれば、色々やる事もあるんだろうけどな。
ユウナは思った。
避難民の誘導、災害への備え……。まぁ、そこらへんは父上がうまくやるか。
先の大戦の被害からオーブを復興させた手腕……。ウナトのそんな所の手腕をユウナは信頼していた。
「……砕くしかない」
アレックスが、ふいに言った。

 

「砕くしかない」
レイがふいに言った。
「砕くって?」
「あれを?」
「軌道の変更など不可能だ。衝突を回避したいのなら、砕くしかない」
再び、レイは断言する。
「でもデカいぜあれ? ほぼ半分くらいに割れてるって言っても最長部は8キロは……」
「そんなもんどうやって砕くの?」
「それにあそこにはまだ死んだ人達の遺体もたくさん……」
「だが衝突すれば地球は壊滅する。そうなれば何も残らないぞ。そこに生きるものも」
「「……」」

 
 
 

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