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SEED-IF_4-5氏_16

Last-modified: 2008-06-26 (木) 17:50:05

「アレックスさん」
アスランは無事プラントに着き、迎えの者と会った。
「すみません。状況はどうなっていますか?」
「良くありませんよ。プラント市民は皆怒っています。議長は、あくまでも対話による解決を目指して交渉を続けると言っていますが、それを弱腰と非難する声も上がり始めています」
「……」
「アスハ代表の特使と言うことで早急にと面談は申し入れてはいますが、この状況ではちょっとどうなるか判りませんね」
「分かりました」

 
 

「……少なくとも、無能ではないな」
「しかし、それは善悪とは別ですね。そうでしょ?」
アグニス達とデュランダルの会見は無事に終わった。デュランダルは、殊にオーストレール・コロニーの社会システムに興味を抱いているようだった。
オーストレールコロニーの社会システム――その特徴は必要とされる職業にあわせて遺伝子調整された人間で構成されている事である。そのような、余裕のない環境の証拠でもあるような事に若干コンプレックスを抱いていたアグニスには、デュランダルがそれを評価している様子を見て戸惑った程である。
「……」
「なんです、アグニス?」
アグニスは通路の向こうを見ていた。
「あれは……」
「ああ、ラクス・クラインですよね。驚いた。プラントに戻っていたのですか?」
「……」
「なんですか? アグニス?」
「いや、彼女の事はニュース映画で見た事があるが、なんとなく違和感がな」
「そりゃ、年月が経てば印象も変わりますよ。でしょ?」
「ああ……しかし、あんな風かな」
「なんです?」
「いや、セトナ姉さんが成長した姿は……と思ってな。前に見たニュース映画ではおしとやか過ぎた」
ふふ……とアグニスは笑った。

 
 

月面――
「コンテナリスト、R34~R42は積み込み完了。レダニアフ搭乗のモビルスーツパイロットは第35ブリーフィングルームに集合して下さい」
「第34~37エレベーターは17時から18時の間、閉鎖されます」
「シャトル608便が12番ゲートに到着します」
「第4ダガーL部隊の補充パーツ、搬入完了しました」
プラント撃滅のための準備が進められていた……。

 

「さて、それで、具体的にはいつから始まるのか? 攻撃は」
ブルーノ・アズラエルは大西洋連邦大統領ジョゼフ・コープランドに尋ねた。
「そう簡単にはいきませんよアズラエル老。せっかちですなぁ。あなたも」
「ふ……」
「プラントは未だに協議を続けたいと様々な手を打ってきておるし、声明や同盟に否定的な国もあるのだ。そんな中、そうそう強引な事は……」
「おやおや。前にも言ったはずだがな。そんなものプラントさえ討ってしまえば全て治まると」
「はぁ……」
「奴等が居なくなった後の世界で、一体誰が我々に逆らえると言うのだ? 赤道連合? オーブ? スカンジナビア王国?」
「まぁ、オーブはすぐ潰せるだろうが、スカンジナビアは、怖いですな。何事かあれば48時間以内に200万以上の兵を動員可能な国を甘く見るべきではない。実の所彼らが昔からカレリア地方などの奪回を狙っている事はわかっている。戦争になってヘイヘ並みの兵が輩出されれば我らとて目も当てられません」
「ふん。世界はもうシステムなのだ。だから創り上げる者とそれを管理する者が必要だ。人が管理しなければ庭とて荒れ、誰だって自分の庭には好きな木を植え、芝を張り、綺麗な花を咲かせたがるものだろう? 雑草は抜いて。所構わず好き放題に草を生えさせてそれを美しいと言うか? これぞ自由だと」
「アズラエル老……」
「人は誰だってそういうものが好きなのだ。きちんと管理された場所、物、安全な未来。今までだって世界をそうしようと人は頑張ってきたんじゃないか。街を造り、道具を作り、ルールを作ってな。そして今、それをかつてないほどの壮大な規模でやれるチャンスを得たのだ!」
ブルーノ・アズラエルはごほごほと、咳き込む。
「だからさっさと奴等を討って早く次の楽しいステップに進むのだ! 我々ロゴスの為の美しい庭。新たなる世界システムの構築と言うな!」
「……」
結局のところ、この老人は息子の仇を取りたいだけなのではないか、と言う思いをコープランドは飲み込んだ。

 

程なく……全世界に向けて大西洋連邦大統領ジョゼフ・コープランドから声明がなされた。
『是より私は、全世界の皆さんに非常に重大かつ残念な事態をお伝えせねばなりません。先のユニウス7落下事件より、プラントに対して、我々はいくつかの提案を致しました。……が、未だ納得できる回答すら得られず、この未曾有のテロ行為を行った犯人グループを匿い続ける現プラント政権は、我々にとっては明かな脅威であります。よって先の警告通り、地球連合各国は本日午前0時を以て、武力による此の排除を行うことをプラント現政権に対し通告しました』

 

「第44戦闘団は搭載機の発進を完了した。フォックスドロットノベンバー発令。現時点を以てオペレーションをフェイズ6に移行する。全ユニットオールウェポンズフリー」
ついに、月面の地球軍に対しプラント攻撃の命令が下った。

 

「やー。とうとう出撃か」
出撃していく艦艇を見ながらシャムスはつぶやく。
「俺らには関係ないけどな」
サノキチ・ハラダ少尉がシャムスに答える。
「でも、これで片が付けばいいな。そうすりゃ世の中平和になる」
「そんな簡単なもんじゃないだろう。内戦が始まるだけさ。東アジアなんかきな臭い」
「ふ……」

 
 

「マーシャンの方々!」
プラントからつけられた案内人が血相を変えてアグニス達を追ってきた。
「申し訳ありませんが、待機所に来ていただきます!」
「何が起こった?」
「地球連合が宣戦を布告してきました!」
「なんだと!?」
「どうぞこちらへ」
「すぐに戦いになるのですか?」
ナーエは聞いた。
「月基地よりすでに地球軍の艦隊が発進しております!」
「そのような情報を……伝えていいのですか?」
「議長から、盟友であるマーシャンの方々にはすべて伝えて保護するようにと言われております」
アグニスは、下を向くと憤怒を押し殺した。
「この地が……プラントがこれから戦場になると言うのか?」
「わかりませんが万一を考えて……我々にはあなた方の安全を守る義務があります!」
「――我慢ならん!! すぐに議長に取り次いでもらおう!」
アグニスは駆け出した。
「アグニス? 一体何を考えているのです?」
ナーエも後を追う。
評議会が開かれている部屋……。そこに入るとアグニスは議長に向かって言った。
「出撃の許可をいただきたい!」
デュランダルは、微笑んで、頷いた。

 

『第一戦闘群、間もなく戦闘圏に突入します。全機オールウェポンズフリー』
『シエラアンタレス1、発進スタンバイ。射出システム、エンゲージ』
「結局はこうなるのかよ、やっぱり。こちらシエラアンタレス1、ジュール隊イザーク・ジュール、出るぞ!」
「ジュール隊、ディアッカ・エルスマン、ザク発進する!」
ザフトのモビルスーツも次々に発進し、とうとう戦闘が始まる。

 

「アグニス! 出撃してどうするつもりですか?」
ナーエが、アグニスを止めようとする。だが、アグニスはかまわずモビルスーツを起動させていく。
「プラントは俺達に誠意を示した。俺は戦う力を持っている。だのに見ているだけなど……我慢できん!!!!」
「しかし、これは連合とプラントの戦いでしょ? 私達が関与すべきではない。そうは思わないのですか?」
「下がれ、とにかく出撃する!」
アグニスは、強引に出撃した。
彼の乗機はデルタ――
核エンジン、そして次世代の推進システムとして開発された新型スラスターユニット『ヴォワチュール・リュミエール』を搭載した火星のファーストモビルスーツである――。

 

「これが戦争……」
出撃したアグニスは、目の前で戦われている光景に目を奪われていた。
何機かの地球軍モビルスーツがデルタ目掛けて襲ってくる!
「くっ」
アグニスはソードを抜くと、斬り飛ばす!
「はぁ、はぁ、はぁ……」
無我夢中だった。
「おい、なかなかいい動きだな」
「ん?」
「お前か。マーシャンの助っ人と言うのは」
ジュール隊のイザークだった。
「おい、失礼だぞ、イザーク」
ディアッカが突っ込む。
「うるさい! 俺が隊長だ! お前こそその口の利き方はなんだ! ……協力感謝する。認識コードは全軍に通達した。味方に撃たれる心配はない。だが、状況によっては撤退してもらう。ここでは俺の判断に従ってもらう。いいな?」
「……ああ」
「では、武勲を祈る!」
あれがザフトの兵か……。
アグニスは気持ちを切り替えると、周囲の様子を探る。先程の初陣の昂ぶりも収まったようだ。
「はあぁぁぁ! 核エンジン起動! ヴォワチュール・リュミエール展開!」
デルタはその高速で地球軍のモビルスーツを翻弄した。
……十機もやっつけた頃だろうか。
『アグニス!?』
ナーエから通信が入った。
『そちらは囮です! 本体はプラントに!』
「なにぃ!!」

 
 

「本隊、戦闘を開始しました」
「よーし、予定通りだな。こちらも行くぞ。この蒼き清浄なる世界に、コーディネーターの居場所などないということを今度こそ思い知らせてやるのだ!」
プラント本国を狙う艦隊はその身を現し、進軍を開始した。

 
 

「地球軍、モビルスーツ隊20、第二エリアへ侵攻中。第三管軍はオレンジ、ベータ15へ」
「敵主力隊の狙いは、やはり軍令部とアプリリウスか」
「だがまだわからん! 敵艦の動き、どんな小さなものでも見逃すな!」
「哨戒機からの報告は?」
「極軌道哨戒機より入電。敵別働隊にマーク5型、核ミサイルを確認!?」
「なんだと!?」
「数は!?」
「不明ですがかなりの数のミサイルケースを確認したとのことです」

 

『全軍、極軌道からの敵軍を迎撃せよ! 奴等は核を持っている。一機たりともプラントを撃たせるな!』
「核攻撃隊? 極軌道からだとぉ!?」
イザークは怒鳴った。
「じゃぁこいつらは、全て囮かよ!」
「くっそおおぉぉ!」

 

ザフトが混乱に陥る中、地球軍の奇襲部隊の前面に、プラントの盾となるように立ち塞がる艦があった。
「全システム、ステータス正常。量子フレデル、ターミナル1から5まで左舷座標オンライン。作動時間7秒。グリッドは標的を追尾中」
「一発勝負だぞ。最大まで引きつけろ、いいか!」
「フルチャージオンライン。ニュートロンスタンピーダー起動」
「スタンピーダー、照射!」
「照射!」
何かが、その改造されたナスカ級から迸った――!
地球軍の核ミサイルが、艦艇に保管されていた物も合わせて、爆発し、盛大に宇宙に花火が咲いた。

 

「……核ミサイルは全て撃破。各攻撃隊は完全に消滅しました」
オペレーターは努めて冷静な声で報告した。
「よしやったぞ!」
「はぁ……」
プラント評議会の会議室に、安堵のため息が広がる。
「スタンピーダーは量子フレデルを蒸発させブレイカーが作動。現在システムは機能を停止しています」
「まったく堪らんな」
「スタンピーダーが間に合ってくれて良かったですわ」
「だが、虎の子の一発だ。次はこうは……」
「これで終わってくれるといいんですがね……とりあえずは」
デュランダルもため息をついた。

 

「んー……」
先程からアスランを迎えに来た男が、熊のように部屋を歩き回っている。
彼も、戦況が気になるのだろうか。
「ちょっと顔を洗ってきます」
「はい」
廊下に出ると、アスランはため息をついた。息詰る空間から逃れられてほっとした。
アスランは、顔を洗うと鏡を睨み付けた。
我ながらいい男……じゃない!
鏡に映った顔が、歪む。
祖国の危機に何にも出来ないとは、これほどまでに苦しい物なのか。
アスランは顔を拭くと、部屋へ戻る階段を上がりかけた。
「ええ、大丈夫。ちゃんと解ってますわ。時間はあとどれくらい?」
「ん?」
あの声は……アスランは階段を駆け上がる。
聞こえてきたのは、忘れもしないオーブで会ったばかりのラクスの声だった。

 
 
 

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