Top > SEED-IF_4-5氏_18
HTML convert time to 0.006 sec.


SEED-IF_4-5氏_18

Last-modified: 2008-07-10 (木) 18:08:12

「冗談ではないよアズラエル。一体なんだねこの醜態は」
再び、ジブリールはモニターの前に座り、ロゴスの面々とテレビ会議を行っていた。
「しかしまあ…ものの見事にやられたもんじゃの」
「……ぬぅ……」
ブルーノ・アズラエルは歯軋りをする。
「ザフトのあの兵器はいったい何だったのだ?」
「意気揚々と宣戦布告して出かけていって、鼻っ面に一発喰らってすごすごと退却か。君の書いたシナリオはコメディなのかね?」
「くっ!」
「これでは大西洋連邦の小僧も大弱りじゃろうて」
「地球上のザフト軍の拠点攻撃へ向かった隊は未だに待機命令のままなのだろ」
「勢いよく振り上げた拳、このまま下ろして逃げたりしたら世界中の物笑いだわ」
「さて、どうしたものかの。我等は誰にどういう手を打つべきかな。アズラエル、君にかね?」
「くっ」
アズラエルは何も言う事が出来ず、歯噛みをする。
ここで、ジブリールが口を出した。
「お待ちを。皆さん。ザフトの新兵器の分析、今皆さんの下へ送らせました」
「ふむ?」
「……これは、奇妙な」
「左様、プラント奇襲部隊の中で、核ミサイルを持ち込んでいなかった艦、最初の攻撃で出払ってしまった艦のみがかろうじて生還しているのです。これが何を意味するのか!? おそらくは核物質に強制的に核分裂を起こし、爆発させると言う物です。そしておそらく。ザフトの新兵器がこのまま発展を続けた場合、地球に存在する核は無意味になると言う事です! 地上に『あれ』が放たれればおそらく再建した核発電所は爆発し、周囲に放射能汚染をもたらすでしょう。いや、彼らはそれすらしなくて良いのです。ただ、『あの兵器』を地球に向けて放つぞと恫喝すれば……。まさしくエイプリルフール・クライシスの再来――国民の反応は最悪の物が予測されます。我らはエネルギーすら、彼らの手に握られて、地球人類はまさしくザフトの奴ばらの奴隷となるでしょう!」
「うむ!」
「報告書では、ザフトの技術力を勘案した結果、あのザフトの新兵器が地球全土に影響を及ぼすまでに発展するには、2年と予測されています」
「短いな」
「そう。やるなら今のうちだ、と言う事です。戦いは、続けなければなりません。最後まで。我らの、そして地球人類の未来のために! ……核は封じられました。後は、まともに戦い、まともに勝つしかないでしょう。そして、今度こそ奴等を叩きのめしてその力を完全に奪い去るのです! それを行わねば、2年後に地球連合は崩壊します。……ご静聴、ありがとうございました」
ジブリールは口を閉じた。
場を沈黙が支配した。
「……戦うしかないな」
「それも一刻も早くにだ!」
「ジブリール。指導は君に任せる。頼むぞ」
モニターの一画面で、ブルーノ・アズラエルが感謝の念を浮かべ、謝意を表すように頭を下げるのが見えた。

 
 

「ほう、地球に降りると言うのかね」
デュランダルはアグニスに尋ねた。
「ああ。俺達の任務はまだ終わってはいない」
「では、彼を連れて行きたまえ」
デュランダルは、一人の兵士を紹介した。アグニス達がプラントに着いてからアグニス達の係りになっていた者だ。
「アイザック・マウです。あらためて、よろしく!」
……
「地球連合と連絡を取ると言っても、どうやってするのですか? 今は戦時ですし、落ち着かれてから行かれた方が……」
アイザックが心配そうに言う。
「それが、俺達の任務だ。まず月の地球軍基地に連絡を取る。その後は地球連合の指示に従う!」

 
 

アスランは、奇妙に落ち着いてしまった気持ちのまま、宿舎に帰った。
「あぁ! アスラ~ン!」
「ぁ?」
「ぁぁうふ」
「うわ……」
いきなりロビーから出てきたラクス? にアスランは抱きつかれ、焦る。
「お帰りなさい。ずっと待ってましたのよ」
「ぇぇ……ぁ……君……あの……」
「ミーアよ。ミーア・キャンベル。でも、他の誰かがいる時はラクスって呼んでね。うふ」
「ええ……? ……はぁ……」
その眩し過ぎると言ってもいい明るさが、やっぱり穏やかな春の光のようなラクスとは違うのだと認識させられる。
アスランはため息をついて中に入ろうとした。
「うわぁ!」
ミーアはそのままアスランの腕に腕を絡めると、宿舎の中へ連れて行く。
「ね、御飯まだでしょ? まだよね。一緒に食べましょう」
「え……いや……あの……」
「アスランはラクスの婚約者でしょう?」
「あ……いやそれはもう……」
結局アスランはミーアに押し切られ、レストランへと連れ込まれた。

 

「ええと、アスランが好きなのはお肉? それともお魚? んー……あ! そうだ! 今日のあたしの演説見てくれました?」
「え?」
「どうでした? ちゃんと似てましたか?」
一瞬でも、ラクスが自分の元に戻ってきたように感じてしまったのが馬鹿だったのだ。
アスランは憂鬱になり窓の外に目をやる。
「……」
「……駄目……でしたか……」
ミーアの失望した声に、アスランは自分がどこにいるのか気づく。
「ああいや、そんな事はないけど」
「ええ! ほんとに!?」
「ああ、よく似ていたよ。まぁほとんど本物と変わらないくらいに。親しい人でもなければわからないだろう」
「やぁぁぁっ! 嬉しいぃぃ! 良かった、アスランにそう言ってもらえたらあたしほんとに!」
その喜び様が、また違和感を感じさせ、アスランはまた夜景に目をやり、ため息をつく。
「私ね、ほんとはずーっとラクスさんのファンだったんだです」
「……」
「彼女の歌もよく好きで歌ってて、その頃から声は似てるって言われてたんだけど。そしたらある日急に議長に呼ばれて」
「はぁ……。それでこんな事を」
「はい! 今君の力が必要だって。プラントの為に。だから」
「……君のじゃないだろ、ラクスだ、必要なのは」
心をざらつかせる違和感。それから来るいらだちのまま、アスランは横を向いたまま皮肉のように言ってしまう。
「……そうですけど。今は……」
「あ?」
ミーアの沈んだ声に、アスランはまた我に返る。
「ううん。今だけじゃないですよね。ラクスさんは、いつだって必要なんです。みんなに。強くて、綺麗で、優しくて……。ミーアは別に誰にも必要じゃないけど……」
「ぁぁ……」
「だから今だけでもいいんです! 私は。今いらっしゃらないラクスさんの代わりに議長やみんなのためのお手伝いが出来たらそれだけで嬉しい。アスランに会えてほんとに嬉しい!」
「……」
「アスランはラクスさんの事、色々知ってるんでしょ? なら教えて下さい。いつもはどんな風なのか、どんな事が好きなのか。えっとあとは苦手なものとか、得意なものとか、他にも色々……」
ミーアの様子に、自分の身を思う。必死で覚えた偽りの身分。オーブのアレックス・ディノ――偽りの自分……。ユウナに引っ張られていくカガリを見送る事しか出来ない自分……。
「ふ……」
アスランはワインをあおった。
アルコールが気分を高揚させる。
もう自分はアレックスなんかじゃない。アスラン・ザラだ!
一気にワインを飲み干すと、ドンとテーブルに置いた。
ミーアがちょっとびっくりした顔でこちらを見ている。
「ふ……」
アスランは唇を吊り上げた。
「うまい酒だ。君もどんどん飲むといい」

 
 

「ほう、マーシャンとな」
ジブリールは、月基地からの知らせを読んだ。
「ふむ……今年の使節団の出身はオーストレール・コロニーか。なんだったかな、聞き覚えがあるが。ああ、セトナの出身地ではないか!」
セトナはどう思うだろうか? 故郷の者に会いたいだろうか? 会いたくないだろうか? とりあえず、聞いてみるか。私もセトナに会いたい。
「ん?」
ジブリールは月基地の司令官から、補足という形で付けられているファイルを開いた。
見るに連れ表情が強張っていくのが感じられる。
「こ……これは! 何を考えている! マーシャン!」

 
 

「大西洋連邦との同盟か……」
オーブの氏族長会議は沈滞していた。
議題は大西洋連邦との同盟の是非。
大体の氏族長は、同盟を結ぶ事に賛成していた。
意見は出尽くしていた。
だが、代表首長のカガリは、反対するでもなく黙っていた。
「……」
「カガリ、どうするんだ?」
隣の席のユウナが小さな声で囁く。
「お前はどう思う」
「んー……。大西洋連邦は、今回は敵をプラントに絞っている。地球上のコーディネイターはむしろ保護の方針だ。その意味では、先の大戦のような、国民を切り捨てるとかしないとか言う事はないよ」
「だよな。だが……それで本当にいいのか? 迷うんだ」
ユウナも気持ちはわかる。ミネルバで知り合いも出来た。プラントに友人がいるカガリなら、迷うのも当たり前だ。
しかし、いつまでも決断を引き伸ばすのは事態を悪化させるだけとも思える。
このままでは埒が明かない、と見たのか、一人の氏族長が発言した。
「ウナト宰相……宰相は先程から黙っておいでだが、宰相からも代表にひとつ……」
その言葉に、腕を組んで目を閉じていたウナトは、静かに目を開けた。
「……カガリ様、オーブの中立を守りたいですかな?」
「あ、ああ。できる物なら、そうしたい」
「……」
「……」
「……いいでしょう。その方向で、大西洋連邦と交渉してみましょう」
議場を、ざわめきが走る。
「出来るのか? ウナト?」
「セイラン家は幸い大西洋連邦に近しい。話の持って行き方次第では、できるかも知れません」
「おお……」
「ですが、皆がらとは行きませんよ? オーブ軍の諸君にも血を流してもらう事になるでしょう。……それでも、オーブ本国は、中立を守れるかもしれません」
「では、ウナト。交渉一任する。中立が得られそうもない時は、しょうがない。同盟を結ぼう」
「お任せください。まぁ、詐術のような手ですがな。伊達に大狸とは呼ばれておりませんよ」
ウナトは右手で腹をぽんと叩いた。

 
 

「ふーん……」
ネオ・ロアノークは地球からの通信文を手にすると顎に手をやった。
「まぁ、プラント狙った艦隊が消滅じゃぁねぇ、ま、しょうがないか?」
「まず、地上からザフトを追い出す。その後宇宙へ。ま、順当な作戦ですな」
リーが答える。
「奇襲部隊が片をつけててくれれば、楽だったんだがねぇ。スウェン達も連れて来いってさ」
「ほかの部署からも地上に引き抜きがあるようですな」
「戦力の集中は戦略の基本だからね。核の無い戦争、か。リー君、人類はどうやら退行しているようだぞ」
「核の冬よりはまし、と明るく考えましょう」
「そうだな。じゃ、すまんが留守を頼む」
「はっ。また大佐の指揮下で戦える事を願います」

 
 

「……いやしかしですね艦長、もう開戦してるんですよ? 宣戦布告されたんですから」
アーサーは、開戦後ミネルバがオーブを出航しようとしない状況に不満を持っていた。
「わかってるわよそんな事。けどしょうがないでしょう? こっちは物資の積み込みもまだ終わってないんだし」
「いや……ですからもうそんな事を言っていられる場合では……」
「焦る気持ちは解るけどだからと言って今私達が慌てて飛び出して何がどうなるっていうの? かえってバランスが微妙な時期でもあるのよ、アーサー。あのとんでもない第一派の核攻撃を躱されて地球軍も呆然としてるんでしょ? カーペンタリアへの攻撃隊も包囲したまま動けないみたいじゃない」
「いや、だからこそですね……」
「今本艦が下手に動いたら変な刺激になりかねないわ。火種になりたいの?貴方」
「いえぇ! そんな……」
「情勢が不安定なら尚のこと艦の状態には万全を期すべきだわ。幸いオーブはまだ地球軍陣営じゃないんだし、もう少し事態の推移を見てからでも遅くはないでしょ? 出港は。軍本部からは何も言ってきてはいないんだし」
「はぁ……『まだ』ですかねえ……」
「でしょうね。いつまでかは知らないけれど」

 

プラント――
「では、プラント最高評議会は議員全員の賛同により、国防委員会より提出の案件を了承する」
デュランダルが宣言する。
「しかし、これはあくまで積極的自衛権の行使だということを決して忘れないでいただきたい。感情を暴走させ過度に戦果を拡大させてしまったら先の大戦の繰り返しです。今再び手に取るその銃が、今度こそ全ての戦いを終わらせる為のものとならんことを切に願います!」

 

「やっぱりそうだよなあ、プラントとしちゃあ」
プラントのニュースを見ていたアンドリュー・バルトフェルドはつぶやいた。
「せっかくキラも回復してきたんだ……」
バルトフェルドはしばらく目を瞑る。そして、目を開けると、ある所に回線をつなぎ、チャットをし始めた。

 
 
 

】【戻る】【