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SEED-IF_4-5氏_20

Last-modified: 2008-07-24 (木) 18:03:56

「あれが、『地球の天使』か」
フリーフォトジャーナリスト、ジェス・リブルは遠くからセトナ・ウィンタースを見てつぶやいた。
「ああ。ほんとにラクス・クラインにそっくりだろ」
護衛のカイト・マディガンが言う。
「ああ……驚いちまった」
「ユニウス7落下までは医大に在籍。落下後は各地で救援活動を積極的に行っている。ラクス・クラインが『プラントの歌姫』と言われているのになぞらえて付けられた異名だ」
「なぁ、生き別れの双子の姉妹とか……」
「ないない。『地球の天使』のバックはジブリール財閥だ。コーディネーターなんか支援するかよ」
「そりゃあ、ぜひ取材したいなぁ! おーい!」
「あ、待て!」

 

「お断りします」
ジェスの取材申し込みを、セトナは言下に撥ね付けた。
「今は、仕事中です。フォトジャーナリストって事は、写真を撮られるのでしょう? 被災者の方はそう言うの、嫌がる方が多いんです」
「そうですか……」
ジェスのがっくりした声を聞いて、セトナは少し口調を和らげた。
「仕事の後、写真を撮るのは私だけ、と言う事なら……」
「やったー!」
ジェスはガッツポーズをした。

 

ジェスは、許可をもらって被災者の簡易宿泊所を見学した。
カメラをぶらさげていると、撮ってくれ、と言う人もいる。ぜひ世界に伝えてくれ、と言う人もいる。
ジェスは喜んで撮らせてもらった。
ついでにそう言う人からセトナの評判を聞きだす。
「そう言えば、あの大きな猫はセトナのペットなのか?」
「ほっほっほ。兄ちゃん」
老人が答える。
「あの大きな猫さんを撫でてるとな、元気が出るんじゃよ」
近くの被災者達も、頷く。

 

「お待たせしました」
ジェス達は、ようやく、セトナの診察室へ呼び出される。
「お疲れ様でした!」
「ふふ、ありがとう」
「じゃあ、さっそくなんだけど……」
外からヘリの音が聞こえる。
その時、セトナの護衛が入ってきて、セトナに封書を渡す。
「急ぎだそうです。セトナ様」
「まぁ、なんでしょう。ジブリールお兄様から?」
セトナは封書を開ける。
「……まぁ! まぁまぁ! アグニス達が! すみません、ジェスさん。急用ができました!」
セトナは急いでヘリに乗り込む。
ヘリは飛び立つと、急速に飛び去っていく。
ジェス達はぽつんと残された……。
入れ替わりのように、一機のモビルスーツが降りて来る。
「セトナ様はどこだー!」
「あー。今のヘリで、行っちゃったよ?」
ジェスはふぬけた声で答えた。
「あ~……。くくう、セトナ様、今行きます!」
再びモビルスーツは飛び立っていった。
「なんだったんだ?ありゃ?」
「さぁ?」

 

「進入角修正プラス000015」
「進路クリアLC3バランサー、オールグリーン」
「アキダリア、地上に降下する!」
この日、アグニス達は地球に降り立った。

 
 

「タイムリミットか」
バルトフェルドはコーヒーを飲み干すと、通信機をいじりだした。

 

「艦長」
バートがタリアに呼びかけた。
「どうしたの?」
「これを」
『……ミネルバ聞こえるか。もう猶予はない。ザフトは間もなくジブラルタルとカーペンタリアへの降下揚陸作戦を開始するだろう』
「秘匿回線なんですがさっきからずっと」
『そうなればもうオーブもこのままではいまい。黒に挟まれた駒はひっくり返って黒になる。脱出しろ。そうなる前に。聞こえるかミネルバ』
タリアは送信ボタンを押した。
「ミネルバ艦長、タリア・グラディスよ。貴方は? どう言う事なのこの通信は」
『おーこれはこれは。声が聞けて嬉しいねえ。初めまして。どうもこうも言ったとおりだ。のんびりしてると面倒な事になるぞ』
「匿名の情報など正規軍が信じるはずないでしょ? 貴方誰? その目的は?」
『んー……アンドリュー・バルトフェルドって奴を知ってるか? これはそいつからの伝言だ』
「砂漠の虎……」
タリアはまさかと言う思いでつぶやいた
「えぇ?」
アーサーはやっぱり驚いた。
『兎も角警告はした。降下作戦が始まれば大西洋連邦との同盟の締結は押し切られるだろう。アスハ代表も頑張ってはいるがな。留まることを選ぶならそれもいい。あとは君の判断だ、艦長。幸運を祈る』
通信は切れた。
「どうします、艦長?」
アーサーが尋ねた。
「どうするもこうするもないわ。どっちにしろ明日出航の予定に変更無しよ。準備、万全にね」

 
 

「ヘブンズベースですか。地球軍の本部と言う事ですが?」
ナーエはアイザックに尋ねた。
「ええ。先の大戦でアラスカのJOSH-Aが自爆してから……」
「なんだか気分が悪そうですね?」
「ええ、私達ザフトにとって見れば、敵の総本部ですから……」
その時、通信が入った。
『こちら、ヘブンズベースコントロール。『アキダリア』応答せよ』
「こちらアキダリア」
『誘導に従い第3番ゲートに入港せよ』
「こちらアキダリア。了解した」

 

「まぁ、アグニスだわ! ほんとにアグニスだわ! 大きくなって!」
「セトナ……姉さん?」
アキダリアから降り立ったアグニスは目を疑った。あんなに探しても見つからなかった姉が、ここにいる。
「久しぶりね、アグニス」
「それにしても何故地球に?」
ナーエが尋ねる。
「あなたはオーストレールのシンボル。みんなのリーダーとなるべく生み出された人だったのに?」
セトナは一瞬目を閉じると微笑んだ。
「――人はどのように生きるか。それを自分で決める事ができるのです。私は、皆のシンボルとしてお世話されて生きるより、人々に尽くして歩んでいきたい……そう思ったのです。でも、それは火星では許されないから……」
「それで地球に」
「ええ。運良く、ジブリールお兄様と知り合えて……」
そのセリフで、セトナの後ろに控えていたジブリールは前に進み出た。
「私は国防産業連合理事、ロード・ジブリールです。大西洋連邦大統領ジョゼフ・コープランドより、あなた達への対応を一任されております。本来ならば、首都にでもお迎えしたかったのですが、なにぶんプラントと開戦してしまいまして。いっそヘブンズベースなら訓練された兵士ばかり。間違いも起こらないかと思った次第」
「ご配慮、感謝する」
「では、積もる話もあるでしょうが、まずこちらへ」
ジブリールは微笑んだ。
セトナは、その微笑に微かに作ったような影を認めた。
「お兄様? どうかなさいました?」
「いや、なんでもないよ」
ジブリールはセトナに笑った。
よかった……本物の笑顔だ。気のせいだったのね……。
セトナは安堵した。

 

「では、先に政治向きの話を済ませてしまうよ。待っていてくれ」
「ええ。では後でね、アグニス」
セトナは応接室を出て行った。

 

「――では、火星はどことも敵になりたくないと」
「そうだ」
「地球連合も同じですよ」
「では、何故、プラントと開戦するなどと言う愚かな事を!」
「過去からの積み重ねがあるのですよ。アグニスさん。ニュートロンジャマーの地球上への無差別投下からこっちの。プラントは……ああ、私はプラントとコーディネイターを一緒くたにはしません。安心してください。プラントは、ユニウス7の落下で管理能力がなかった事も露呈させ。要するに、地球連合はプラントへの信頼を完全に失っているのです。この度の開戦は地球に対する危機を取り除くための緊急避難と考えられたい」
「だが……!」
ジブリールは静かに片手を挙げ、アグニスのセリフを遮った。
「マーシャンは敵を作りたくないとおっしゃった。そうですね?」
「ああ、そうだが?」
「これをご覧下さい」
ジブリールは、何十枚かの書類をアグニスに手渡した。
「……?」
アグニスはその書類を見た。なんの変哲もないような、ただの軍人の経歴書にしか見えない。しかし、凝ってはいる。
家族のデータ、写真まで載っている。
「この者なんかは子供が生まれたばかりでして。かわいいでしょう」
ジブリールが示す先には子供を抱えて幸せそうに笑っている女性が写っていた。
「ええ。これが、何か?」
「初陣は如何でした?」
さりげなくジブリールは言った。
「ああ、最初は緊張……ぁ……」
「半分ブラフで言ったのですがね」
ジブリールは唇を吊り上げた。そして。宇宙の戦場を捉えた写真を次々にテーブルの上に並べだした。
「……ぁ……」
アグニスは気づいた。皆、自分のモビルスーツ、デルタが移っている物ばかりだと。
「……何故殺した」
もはや作り笑いを消して、ジブリールは言った。
「……え?」
「渡したのは、先日のザフトとの戦いで君達マーシャンのモビルスーツに殺されたと推定された者達のデータだ――何故殺した」
再び、眼光鋭くジブリールは問う。
「こ、これは、戦いなど愚かだと思ったから!」
「だから殺した? 彼らが、地球軍がお前達マーシャンを敵ともしてもいないのに?」
「違う! デュランダル議長は俺達に誠意を示してくれた。だから……」
「だから殺した? 地球連合は君達に誠意を見せた。では、次はザフトと戦い、ザフトの兵を殺してくれると?」
「違う!」
「では、何故殺した――! 中立を捨て地球軍を敵に選んでまで! これは火星の地球への敵対行為とみなしてよいか!?」
「違う!」
「エイプリルフール・クライシスの惨禍から、這い上がった我らだ。火星との距離の防壁など、防壁になると思うなよ。地球の平和のために、必ず叩き潰す。火星が地球と敵対すると言うなら……かかってこい! 相手になってやる!」
「ちが……」
言葉を失うアグニス。
その時、ナーエが進み出て、深々と頭を下げた。
「地球軍と戦ってしまったのは、我らの浅慮によるもの。決してマーシャンの総意ではありません。この場では、如何様にお詫びしようにもしようがありませんが……罪は我らのみあるもの。なにとぞ、マーシャンの総意と受け取られますな」
「ナーエ! お前は俺を止めたじゃないか! 罪があるなら俺に……」
「アグニス。まずは謝罪を?」
「――すまなかった。俺の短慮だった――」
アグニスは頭を下げた。
「……」
「……」
「……」
ジブリールは何も言わない。だが、アグニス達は頭を下げ続けた。
「……この事は、私の段階で留めておきます」
長い沈黙の後、ジブリールは言った。
「……」
「その書類は差し上げます。一生忘れないで下さい。それがあなたの贖罪です。……では、セトナを呼んで来ましょう。水入らずでゆっくりなさい」
アグニス達は再びジブリールに頭を深く下げた。

 

「ああ、ジブリール様、どうしましょう?」
セトナを呼びいれ、自分は外に出たジブリールは話しかけられた。
「ん?」
「セトナ様に会わせろと言う方が、モビルスーツに乗ってやってきまして……。マーシャンと名乗っております。一応降ろさせ、監視をつけてありますが」
「ふむ。連れて来い」

 

連れて来られたのは黒髪の青年だった。
「ほう、マーシャンと言うのは君か。実はオーストレール・コロニーのアグニス・ブラーエ達も来ているのだがね、知り合いかな?」
「げ、アグニス!? ……ふん、俺はディアゴ・ローウェルだ。あいつらがさっさとセトナ様の捜索をあきらめた後も、探し続けていたんだ!」
「ここの事は、どうやって?」
「被災地からヘリ、飛行機と追ってきたんだ。苦労させやがって!」
「いいでしょう。セトナと会うがいい」
「ほんとか?」
「今、セトナはアグニス達と会っているところだ。行きなさい」
ジブリールは微笑んだ。

 
 
 

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