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SEED-IF_4-5氏_30

Last-modified: 2008-10-09 (木) 18:11:22

『こちらディオキアポートコントロール。ミネルバ、アプローチそのまま。貴艦の入港を歓迎する』
「ありがとう、コントロール」
ガルナハン攻略を成し遂げたミネルバはカスピ海を北上し、コーカサスを南に見ながら黒海へ出た。

 

「ディオキアかぁ。綺麗な街ですよね。なんだかずいぶんと久しぶりですよ、こういう所は」
「海だの基地だの山の中だのばかり来たものね。少しゆっくりできたらみんなも喜ぶわね。でもこれは……」
「はぁ……なんでしょうね一体」
基地中に響くような、賑やかな音が流れていた。

 

「「うぉー!!」」
「みなさ~ん! ラクス・クラインで~す!」
「「うぉー!!」」
アスランはライブ動画を一目見て、胸を見て解った。
ミーアだった。ミーアが声を出すたび、ザフト兵は声を張り上げる。

 

「うわぁー!」
ヴィーノが休憩室のスクリーンに近寄る。
「おー! すげっ!」
「あ?」
「ま……」
なんだ、あのザクは!
この光景を見てアスランは絶句した。

 

ミーアがアップテンポの曲を歌う。
ピンク色に塗られたザクの手のひらの上で自由自在に歌って踊る。
皆ノリノリである。

 

もう、人垣で近くまで行けない。
「ご存知なかったんですか? おいでになること」
ルナマリアはアスランに聞いた。
「あぁ……ああまぁいゃ……」
「ま、ちゃんと連絡取り合っていられる状況じゃなかったですもんね。きっとお二人とも」
「ぁぁいゃ……まぁうん……」
「ああ!」
その時、反対側にいたマユがアスランの方へ倒れ掛かった。
「す、すみません。誰かにぶつかられて……」
そのまま、アスランの腕をつかんでいる。
ルナマリアはよくやるわ、と思った。
「ま、ここは危ないな。向こうへ行こう」
「ぇ?」
「ぁ!」
さりげなく、アスランはマユの腰に手を添えていた。
ルナマリアはそれをじーっと見つめていた。

 

「いやぁほんとにこれは運がいい」
アーサーもノリノリである。
「まったく」
タリアは溜息をついた。

 

「ありがとう! わたくしもこうして皆様とお会いできて本当に嬉しいですわぁ~!」
「「うおぉぉ!」」
「勇敢なるザフト軍兵士の皆さ~ん! 平和のために本当にありがとう! そして、ディオキアの街の皆さ~ん!」
「「うおぉぉ!」」
「一日も早く戦争が終わるよう、わたくしも切に願って止みません!その日のためにみんなでこれからも頑張っていきましょう!」

 

「やっぱりなんか……変わられましたよねラクスさん」
「いや! ぁ……それはまあ……ちょっと……」
マユの言葉にアスランはうろたえた。

 
 

アークエンジェルのお茶会。
「薬草茶、ハーブティーですのよ。最近凝ってますの」
「へぇ。それは楽しみだな」
カガリは表面上は気安くラクスに接している。
「くっさーい」
ポットのふたを開けて嗅ぎ、カガリは顔をしかめて見せた。
「ふふふ。良薬は口に苦しですわよ。慣れれば爽やかになりますわ」
そのお茶は意外とうまかった。
お茶を飲んで、たわいも無い話をして……昔に戻ったみたいだ。
カガリはちょっと嬉しくなった。
だが、そのお茶を飲んでしばらくした時だった。
頭が、痛い!
カガリは頭に手をやった。
「っつう」
「ラミアス艦長?」
「ごめんなさいね、ちょっと頭が痛くなって」
「カガリさんも、頭が痛そうね、大丈夫? 身体に合わなかったのかしら」
優しい声でラクスが言う。
「痛み止めを、持ってきましょう。よく効く奴があるんです」
ノイマンが、出て行き、薬を持ってきた。
痛みが、急速に薄れていく。
なんだ、これは。この効き目は尋常じゃない。
何の薬だ? さすがにカガリもすべての薬がわかる訳などない。わかるのはキラのためにと調べた薬だけだ。
錠剤とシートの記号は覚えておいた。後で調べよう。
あのお茶にも何か入っていたんじゃないか?
もうカガリは一口もお茶に手をつけなかった。
ラクスが何かしゃべっている。もう、雑談じゃない。戦争を止めなければとか、空疎な言葉をしゃべっている。どうやって止めるのかは一向に具体的な案が出てこない。
バルトフェルドが答え、キラがラクスに同調し煽る。
こうして皆を洗脳しているのか? 皆疑問は抱かないのか?
心の中で思いながらも、カガリは表面はラクスの言葉に感心した様子を見せて頷いた。
お茶に入っていた何かの効果か、ラクスの言葉がもっともに聞こえてしまう時がある。妙に、心がゆったりとしているのだ。
カガリは太ももに爪を立てた。
確か催眠術に最も掛かりにくい人と言うのは、かかりたくないと強く願っている人なのだ、と聞いた気がする。
カガリはその記憶を頼りに、ラクスの言葉から意味だけ認識して意識を逸らす。問われれば受け答えをするために。
注意深く、注意深く。我慢するんだ。今は。私を監視している奴が居ないかどうか、それとなく見廻すんだ。そう、ゆったりした感じを忘れるな。
だめだ。ゆったりしすぎるな。心底からゆったりしちゃだめだ。カガリはまた太ももに爪を立てる。
反論するな、ラクスに。疑われちゃだめだ。でも、ラクスの言葉を心では受け入れるな。
逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ。
カガリの心は今にも叫びだしそうだった。
私をここから出せと。王様の耳はロバの耳だと。
我慢だ我慢だ我慢だ我慢だ我慢だ我慢だ我慢だ我慢だ我慢だ我慢だ我慢だ我慢だ我慢だ我慢だ我慢だ我慢だ我慢だ。

 

「やあ、あんたもカメラマンかい?」
ジェスは、カメラで写真を取り捲っている女性に尋ねた。
「……そうですけど」
「あ、俺はジェス・リブルってんだ。フリーのフォト・ジャーナリストさ」
「あ、アメノミハシラのロンド・ミナ・サハクさんが言ってた!?」
「いやー。ミナ様は俺の事えらく持ち上げてくれたけどそんなたいしたもんじゃないって!」
「私はミリアリア・ハウよ。フリーの報道カメラマン!」
「よろしく。ずいぶん盛り上がってるけどさぁ。君の目から見たラクス・クラインってどんなだい?」
「……彼女は……違うわ……」
「え?」
「あ、なんでもないの。忘れて?」

 
 

「やれやれだな」
柵の向こう側からコンサートを見ていたジョンが言う。
ファントムペインは揃って偵察に来ていたのだ。
「ほーんと。なーんか楽しそうねぇ。ザフト。警備もザルで。ここからバズーカでも撃ち込んでやりたいわ」
ミューディーが答える。
「街の連中も馬鹿だよな。ザフトが今おとなしくしてるからって警戒心無くしちまって。ビクトリア大虐殺やらかした連中だって言うのに」
シャムスも言う。
「で、私達は、またあの艦追うのかな?」
ミラーがスウェンに尋ねる。
「沈める必要はないと言う事だ。適当に痛みつければな」
スウェンが答える。
「ユーラシア中部の騒乱も一息ついた。ミネルバがジブラルタルに向かえば……反撃開始だ!」

 
 

「まったく、呆れたものですわね。こんなところにおいでとは」
タリアとレイが呼び出されたホテルに赴いたら、そこにはデュランダル議長がいた。
「はっはっはっ。驚いたかね」
「驚きましたとも。が、今に始まったことじゃありませんけど」
「元気そうだね。活躍は聞いている。嬉しいよ」
「ギル……」
レイの顔が輝いた。
「こうしてゆっくり会えるのも、久しぶりだな」
レイは、デュランダルに抱きついた。
久しぶりの、よそ行きの顔を被らなくていい時間である。
「ギルギルギルー♪」
レイはぎゅうっとデュランダルを抱く手に力を込めた。

 
 

「でも何ですの?」
「ん?」
お茶の時間だ。3人は椅子に座って待っている。
「大西洋連邦に何か動きでも? でなければ貴方がわざわざ御出になったりはしないでしょ?」
「失礼します。お呼びになったミネルバのパイロット達です」
ミネルバのパイロット達が案内されてくる。
彼らはデュランダルに敬礼する。
「やぁ! 久しぶりだね、アスラン」
「はい、議長」
「あぁそれから……」
「マユ。アスカです!」
「ルナマリア・ホークであります」
「君の事はよく覚えているよ」
「ぁぁ……」
ルナマリアはちょっぴり首をすくめる。
そう言えば、議長の前でアスハ代表に啖呵切っちゃったんだった!
「このところは大活躍だそうじゃないか」
「えぇ?」
意外な言葉にルナマリアは目を見開く。
「叙勲の申請もきていたね。結果は早晩手元に届くだろう」
「ぁぁ……ありがとうございます!」

 

皆が席に着き、メイドさんがカップにコーヒーを注いでいく。
「例のローエングリンゲートでも素晴らしい活躍だったそうだね、君は」
デュランダルはルナマリアに話しかける。
「いえ、そんな」
「アーモリーワンでの発進が初陣だったというのに、大したものだ」
「あれはアスランの作戦が凄かったんです」
嬉しそうに、そして誇らしそうにルナマリアは言った。
「この街が解放されたのも、君達があそこを落としてくれたおかげだ。いやぁ、本当によくやってくれた」
「ありがとうございます!」

 

会話は続く。
「兎も角今は、世界中が実に複雑な状態でね」
「宇宙の方は今どうなってますの? 月の地球軍などは」
タリアが尋ねる。
「相変わらずだよ。時折小規模な戦闘はあるが、まあそれだけだ。そして地上は地上で何がどうなっているのかさっぱり判らん。この辺りの都市のように連合に抵抗し我々に助けを求めてくる地域もあるし。一体何をやっているのかね、我々は」
「停戦、終戦に向けての動きはありませんの?」
「残念ながらね。連合側は何一つ譲歩しようとしない。プラントも戦争などしていたくはないが、それではこちらとしてもどうにもできんさ。いや、軍人の君達にする話ではないかもしれんがね。戦いを終わらせる、戦わない道を選ぶと言う事は、戦うと決めるより遙かに難しいものさ、やはり」
「でも……」
「ん?」
「あ……すみません」
デュランダルの話の腰を折ってしまった事に気づいて、ルナマリアは謝る。
「いや構わんよ。思う事があったのなら遠慮なく言ってくれたまえ。実際、前線で戦う君達の意見は貴重だ。私もそれを聞きたくて君達に来てもらったような物だし。さあ」
「……確かに戦わないようにする事は大切だと思います。でも敵の脅威がある時は仕方ありません。戦うべき時には戦わないと。何一つ自分たちすら守れません。力が無ければ、なにも……」
「ぁ……」
マユは小さく息を呑んだ。
「普通に、平和に暮らしている人達は守られるべきです!」
そこにアスランが口を挟む。
「……しかしそうやって、殺されたから殺して、殺したから殺されて、それでほんとに最後は平和になるのかと、以前言われた事があります。私はその時答える事ができませんでした。そして今もまだその答えを見つけられないまま、また戦場にいます」
「そう、問題はそこだ。何故我々はこうまで戦い続けるのか。何故戦争はこうまでなくならないのか。戦争は嫌だといつの時代も人は叫び続けているのにね。君は何故だと思う? ルナマリア」
「……。それはやっぱり、お互いに理解しようとしないから……。オーブでは、私はナチュラルの友人もいました。でも、ただ怖がって苛めてくる人もいました」
「いや、まあそうだね。それもある。自分たちと違う。憎い。怖い。間違っている。そんな理由で戦い続けているのも確かだ、人は。だが、もっとどうしようもない、救いようのない一面もあるのだよ、戦争には」
「「ぇ?」」
「例えばあの機体、ZGMF-X2000グフイグナイテッド。つい先頃、軍事工廠からロールアウトしたばかりの機体だが、今は戦争中だからね。こうして新しい機体が次々と作られる。戦場ではミサイルが撃たれ、モビルスーツが撃たれる。様々なものが破壊されていく」
「……」
「故に工場では次々と新しい機体を作りミサイルを作り戦場へ送る。両軍ともね。生産ラインは要求に負われ追いつかないほどだ」
「議長……」
「その一機、一体の価格を考えてみてくれたまえ。これをただ産業としてとらえるのなら、これほど回転がよく、また利益の上がるものは他にないだろう」
「「ぇ!」」
「議長そんなお話……」
「……でもそれは……」
「そう、戦争である以上それは当たり前。仕方のないことだ」
「……」
「しかし人というものは、それで儲かると解ると逆も考えるものさ。これも仕方のない事でね」
「ぁ……」
「逆……ですか?」
「戦争が終われば兵器は要らない。それでは儲からない。だが戦争になれば自分たちは儲かるのだ」
「ぁぁ……」
「ならば戦争はそんな彼等にとっては是非ともやって欲しいこととなるのではないのかね?」
「そんな!」
「あれは敵だ、危険だ、戦おう、撃たれた、許せない、戦おう。人類の歴史にはずっとそう人々に叫び、常に産業として戦争を考え作ってきた者達がいるのだよ。自分たちに利益のためにね。今度のこの戦争の裏にも間違いなく彼等バンダ……いや、ロゴスがいるだろう!…………」
デュランダルは露骨に『しまった』と言う顔をした。
「……」
「バンダ……ぃ?」
ルナマリアは聞き返した。
「い、いや! 忘れてくれ!」
デュランダルは顔を青ざめさせて否定した。額には冷や汗が浮かんでいる。よく見ると手が、震えている。
「ロゴスだ、ロゴス! ロゴスだったら! ロゴスなんだよ! ルナマリア君、ロゴスなんだったら!」
「はぁ」
ルナマリアは生返事を返すしかなかった。
「彼等こそがあのブルーコスモスの母体でもあるのだからね!」
デュランダルは強引に話を戻した。
「そんな……」
「ロゴス……」
「だから難しいのはそこなのだ。彼等に踊らされている限り、プラントと地球はこれからも戦い続けていくだろう」
「……」
「できる事ならそれを何とかしたいのだがね。私も。だがそれこそ、何より本当に難しいのだよ」
ルナマルアは考え込んだ。
なんとなく違う気がした。人類の歴史は、そんな、一部分の人達に操られたまま来たと言うのだろうか。そんなお粗末な物だったのだろうか?
そんな、そんなもんじゃないはずだ。もっと、人間の力を信じて……。
でも、ルナマリアは雰囲気に呑まれて何も言えなかった。

 
 

「なんだと?」
お薬検索サイトで、昼間出された痛み止めを検索したカガリは驚きの声を発した。
それは……お茶会で出された痛み止めは、なんとオピオイド鎮痛薬(モルヒネのようなもの)だったのだ!
一般に出されるようなものではない。末期がん患者に出されるような物だ。
モルヒネではないだろう。モルヒネだったら、たぶん寝てしまっていたとカガリの医薬知識は言っていた。
これは間違いである。
無理もない。カガリの得たモルヒネの知識は軍事知識からである。戦闘場面では、怪我人に唸っていられては敵の注意を引き付ける、などの理由で困る。そのため眠ってしまう量を処方するのだ。
普通に痛み止めのために処方されたモルヒネで寝てしまうような事はあまりない。
眠気の発生頻度はモルヒネ使用患者の約20%である。
「しかし……。ここまでやるか……?」
カガリは力なくつぶやいた。
気のせいか、いつもは時間通りに来る便意が来ない。お腹の中で便秘になっている気がする。
モルヒネの……副作用か?
カガリの不安は増した。

 
 
 

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