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SEED-IF_CROSS POINT_第24話

Last-modified: 2010-05-29 (土) 02:13:44
 

しーあわせはー、あーるいーてこーない、だーからあーるいーていーくんーだねー……

 

ミネルバの通路で、アスランはルナマリアを見かけた。

 

廊下の壁に背を預けて、ぼんやりと自販機を眺めながら歌を歌っている。
これから皆で夕食をとる約束をしていたので、もう他の人間は食堂へ行っているだろう。
いつもの彼女なら真っ先に食堂に行ってコニールと恋の鞘当てでもやってる筈なのだが。
何かあったのだろうか。

 

「何をしてるんだ? もうみんな行っているだろう」
「そうですね。いや、ちょっと考え事してたもので」
「シンの事だろ?」
「半分正解。もう半分はみんなの事です。キラの事とか、アスランの事とか」

 

意外な答え。思わず聞き返す。

 

「俺と、キラ?」
「はい」
「気になるな。どんな事か、良ければ聞かせてもらえないか?」
「いいですけど……その前に質問。なんでアスランは、まだ戦ってるんですか?
 軍人じゃなくても、貴方にならできることはいくらでもあると思いますけど」

 

またいきなりだな。なぜまだ軍人なのか、か。
そんなの理由は決まっている。

 

「できることはいくらでもある、か。そう言ってくれるのは嬉しいけどな。
 結局、全然そんなことはなかったよ。
 オーブでもプラントでも、俺にできるのは戦うことだけだった。
 銃を取らなくても、力に拘らなくても。俺は俺だって言ってくれたやつもいたけど。
 やっぱり俺にはこれしかないんだ。俺が世界の為にできる事なんて、力を振るう事ぐらいしか」
「……やっぱりね。それが貴方の銃を取る理由ですか」
「まあ、そうなるな」

 

溜息を吐くルナマリア。自分は何か変なことでも言っただろうか。これでも真面目に答えたつもりなのだが。
呆れた様子の彼女の表情が真剣なものへと変わる。

 

「その理由ってやつなんですけど。
 世界のため。自由のため。平和のため。道半ばで倒れた恋人のため。罪を犯した女の子の贖罪のため。
 ―――みんな、かっこいい理由ばっかりですよね」

 

かっこいい理由か。確かに奇麗事すぎる気はしないでもないが。
でも、間違っている事ではないのだ。

 

「それは、まあ……」
「でも貴方たちって誰一人として、今傍にいる誰かの為に生きるって言わないじゃないですか」
「いや、そんな事は」
「無いって言い切れます? キラは言わずもがな。シンも私達を放りっぱなしにしたし。
 アスランだって奥さんであるメイリンの事を一番に考えれば、軍人なんてやってちゃいけないですよ。 
 この間だって、下手すればメイリン残して死んでたかもしれないんだし」
「う……」

 

それを突かれると痛い。
なんせ、この間彼女らの母にその事でチクリと刺されたばかりなのだ。
義父の方は事情を説明すると理解してくれたのだが、男と女では考え方が違うということか。
ルナマリアは言葉を続ける。

 

「どいつもこいつも、綺麗なものばっかり、凄いものばっかり目指して。
 今手にしてる物の大切さなんて考えやしないんだから。
 そんな届くかどうかわからないもの追いかけるより、
 傍にある大事なものを大切にしようとか思わないのかしら」
「………耳が痛いな」
「そう思うんだったら少しはアスランも反省してください。どっかのバカとは違うんですから。
 ったくあんにゃろ、いつまでも人が大人しく待ってるとでも思ってるのかしら」
「なあ。もしかして、シンに愛想を尽かしたとか…」
「まさか。ただあいつは2回も逃げやがりましたから。
 もう自分自身のプライドを賭けて、何処にも行かせないつもりですけど」

 

その言葉にちょっとだけ安心した。シンの気持ちは以前ベルリンで聞いている。
だから自分は、彼ら全員がそれぞれを大切に思っているのは知っているのだ。
答えがどうなるのかは分からないが、できることなら彼らの中の誰かが傷つくのは見たくなかった。

 

「そっか。……そろそろ食堂へ行くか。みんな行ってるみたいだし」
「あら、もうこんな時間? もしかしたらもう、みんな始めてるかも」
「あいつらの事だ、まず確実に始めてるだろうな。急ごう」

 

壁の時計を見ると、約束の時間をはるかに過ぎていた。思っていたより長く話していたらしい。
2人揃って小走りで駆け出す。食堂の入り口が見えた。

 

扉を開ける。2人の目に入ってきたのは大宴会。
整備士やパイロット、機関部の人間だけじゃない。ブリッジ勤務の人間の姿も見えた。
今回の戦闘では死者が出ていないので、皆がはしゃぐのも当然か。
だがそのせいで数が多すぎて目当ての連中が見つからない。あいつらは何処に―――いた。

 

いたのだが、これは……。

 
 

「そうね。彼が大変だって、疲れてるってことは理解してるの。
 でも私たち夫婦なのに、背中向けて寝るのはひどいと思わない?」
「どうせ胸も無いさ! 尻も無いさ~!! おら飲めアーサー、艦長なんだろ!?」
「もう無理だ……ごめんな、約束は守れない……」
「こらぁグレイト、さっさと炒飯つくれや!! ビーム砲の照準ずらして欲しいんかコラ!?」
「やれやれ、小腹が空いたなら空いたってそう言えばいいのにさ」
「2人とも遅かったじゃないか。何してたんだ? 来ないからもう始まってるぞ」

 

からんで叫んで暴れて。なんか全員出来上がっていた。
とりあえず唯一まともなシンに話しかける。

 

「なあシン。何なんだこの状況」
「見りゃわかるだろ。酒飲んでんだよ」

 

酒飲んでる、で説明されても。いやその一言で十分足りるのは事実だが。
そんな事言ってる間にルナマリアがメイリンとヨウランに引きずり込まれた。

 

「それは見れば分かるが……コニール止めた方が良いんじゃないか?
 つかトライン艦長も寝ないで起きてくださいよ、ほら。この中じゃ最年長なんだから」
「もういいだろアスラン、寝かせてやんなよ」
「だけど…だけどさ……アーサーなんだぜ……!?」

 

ピクリとも動かなくなったアーサーを揺するアスラン。へんじがない、ただのしかばねのようだ。
仕方が無く起こすことを諦め、ルナマリアのもとへ向かったポニーテールをぼんやりと見送った。
あれ、確か彼女って。

 

「コニールは酒飲んじゃ拙いんじゃないのか」
「まあ確かに成人はしてないけど、今は野暮なことは言いっこなしだ。アンタも飲めよ」
「そうですよ。せっかく皆揃ったんだから。昔話でもしましょうよ~。
 例えば俺がどうやってジャスティスのリフターから生き延びたのか、とか」
「マジですいませんでした」

 

否応なく自分も引きずり込まれる。
ヨウランが周囲を囃し立て、部屋中からアスランへ向けて一気コールが巻き上がった。
アスランは苦笑しながら立ち上がり、手にしたジョッキをシンのそれとぶつける。

 

こうして宴会に2人が追加された。

 
 
 

第24話 『アスランの自爆で酒が飲めるぞ』

 
 
 

「うわ、もうこんな時間かよ……」

 

酒の廻った頬をぺちぺちと叩きつつ、シンは壁に掛かった時計に目を向ける。
長針と短針がスタートしてから4時間後を教えていた。なるほど、周りに解散したところがあるわけだ。
無論自分たちとてチューハイやウーロンなどでちびちびやっていたわけではない。
むしろ全員ハイペースで飲んだため、まともな思考を保っているのは自分とディアッカくらいである。
アーサー以外の皆は普通の人に比べれば酒は強い方なので潰れていない。
だがシンにはそれが良い事なのかは分からなかった。現にあそこはやばいトーク始めてるし。

 

「無理はして欲しくないけど、最近夜が寂しいのよね。ねえ、何かいい方法ないかしら」
「はい、炒飯お待ち。……チアガールの服着て、応援でもしてやったらどうだ? ベッドの上で」
「うーんチアかぁ。ならとりあえず今夜はタンクトップとミニスカでそれっぽくするとして……
 ねえあなた、その場合髪型は何がいい? やっぱりポニーかな?」
「こらメイリンいい加減にしないか。あまり家の事を外にぺらぺら話すもんじゃない。
 ミニスカと白い靴下さえ準備していればそれ以外はどうでもいいが、
 俺の上に乗る時はボンボンを握るのだけは忘れるな。
 あと髪型は昔みたいにツインもしくはポニーテールにして下さい」
「しっかりしろアスラン、本音がだだ漏れだぞ。いい加減酔いを醒ませってなにぃまた炒飯の追加だぁ?
 ――――まあいい、別に作りすぎてしまっても構わんのだろう?」

 

訂正、そろそろディアッカもやばいかもしれない。

 
 

「あん? 何で俺が生きてるのかって?
 だからな、あの時迫ってくるリフターを俺の崩拳で迎え撃ったんだよ。
 最強の矛と盾がぶつかり合ったわけだな。
 ま、矛盾って言葉があるように、その時は盾が勝ったわけだが。
 でもリフターが爆発したせいでミネルバが沈んだのは俺の計算違いだったなぁ」
「うっさいヨウラン、誰に向かって言ってんの。
 こっちは今回活躍できなくてムカついてんだから、あんたは少し黙ってなさい。
 ったく、なんで未だにザクなのかしらねー。
 私が来るからにはインパルスぐらい用意しときなさいよ、ホント」
「待て。今お前何て言った? 俺が魂込めて整備した “ザクファントム” なめてんのか、テメー」
「 “!?” 」

 

こめかみに血管を浮かべて立ち上がる両者。生肉を叩くような音が響き渡り、やがて静かになった。
こぼれそうな涙を堪えてシンは天井を見上げる。
そこにはこれ以上無いほどのヨウランの笑顔が浮かんでいた。
無茶しやがって。いやツルハシやバス停で殴られなかっただけマシか。

 

「私のインパルス “速攻で” 持って来い」
「う…あ……ウソだべ?」
「マジ……相手誰よ? こんなベゴベゴに…。 “ヨウラン” サン!?」

#brヨウランは放っておこう。
通りがかったあの整備員たちが、きっと何とかしてくれるさ。
多分。

 
 

「コニールがお姉ちゃんに勝つ方法かぁ」
「なんか無いかな? ルナの弱点とかでも良いんだけど」
「弱点か、そう言われると特に思いつかないな……。見た感じ穴だらけなんだが。
 やはり自分を高めるとかの方が良いんじゃないのか」

 

そうこうしてる間にザラ夫婦に捕まったコニールに目を向けた。
さっきとは違い、真面目な顔をしている。内容はライバルへの勝利の仕方についての模様。
う~ん、メイリンはともかくアスランに話すのは時間の無駄だと思うんだが。
内容が問題なんじゃなくて、そもそもあいつは相談を受けて
気の利く返答をするってことができないからなぁ。

 

「な~いいだろメイえもん、ルナ対策のひみつ道具出してくれよ~。
 なんか妹特有のドロドロした奥の手があるんだろ~?」
「おーけー。奥の手は教えられないけど、切り札くらいなら先に見せても……あった。
 じゃ~ん! コンバットナイフ~!!」
「殺す気か」
「む、ナイフはお気に召さないか……ならばロケランだな。こ
 れならゾンビだろうがタイラントだろうが一撃でバニシングだ」
「殺す気か」
「も~コニールったら不満ばっかり。ロケラン以上の武器は無いナリよ?」
「コロ助か」

 

誰がお前らの団体芸見せろっつった。
いくら酔ってるとは言え、もうキャラの原型残してねえなぁアイツら。
酒とは恐ろしいですね、ほんと。

 

「まあそろそろ真面目な返答をしないと。
 うーん、脚、綺麗なんだからチャイナドレスでも着てみるとか……どう思う? あなた」
「チャイナか。いや、アレは色気のある女性が着るものだろ。
 例えばマリューさん、は年齢的にキツいか。んじゃロンド=ミナ=サハクみたいなさ」
「うう……、こいつらさっきから黙って聞いてれば……」
「やはりアピールは必要ね。メイド服で 『ご主人様』 で行くか
 ネコ耳に尻尾、同じ柄の水着着せて 『にゃーん』 で行くべきよ!!」
「いや、あまり露骨だと空振りの可能性が高い。貧相な身体も目立つしな。
 こうなったらそれを逆手にとって、学校指定のスクール水着か体操服とブルマが正解だろう」
「なるほど、当然胸にはゼッケンを着けるのね!? 『3-A あるめた』 って!!」
「ああ、当然ひらがなでな。ただA組は優秀な組という設定も多いから却下だ。
 3-Aより1-Bか2-Cの方がいいだろう。
 スポーツしか取り得の無い後輩って設定のほうがリアルだからな。キャラと身体的な問題で」
「ちっくしょーーーっ!!! 貧相で悪かったなーーーッッ!!」

 

何を起きたまま寝言ほざいてんだバカ夫婦が。
というかアスラン、いくら酔ってるとはいえメイリンに流されんな。

 

「まあ確かに調子に乗りすぎて悪かったが、あまり気にすることじゃないと思うぞコニール。
 ああ見えてシンのお前たちに対する好感度はMAXだ。今のまま自然に行けばいい」
「頭に不自然乗せてるお前が言うなぁ!!」
「あ 効いた 今のボディブローは」
「コニール、仮にも友人に向かってボディブローはないでしょ」
「友人だからこそのボディブローだ!」

 

腹を押さえて蹲る。アスランは所詮アスランか。期待するだけ無駄だった。
いやあいつに期待なんてしたことなかったっけ。

 
 

「ほい、炒飯おまたせ…って、誰も食う気配がねえじゃんか」

 

炒飯を持ってエプロンを着けたディアッカが戻ってきた。溜息を吐きながら机の上に皿を置く。
湯気を立てているのはレタスチャーハン。旨そうだが重そうだ。
もしかしたらあれ、自分たちが処理しなければならんのだろうか。

 

「騒がしいなぁ本当によ。……あれ? シン、ヨウランはどこ行った?」
「不運 (ハードラック) と踊 (ダンス) っちまった。今は寝て……あ、起きた」
「アスランは…ああ、出来上がっちまったのか。女性陣もあの通りか」

 

ディアッカと共に呆れた視線で友人たちを見る。
視線の先にはライム片手にテキーラを流し込む若妻。
未だにビールで頑張る夫に近づき、はっちゃけた声をあげた。

 

「宴もたけなわ、頃合は良し。
 さああなた、例のやつを見せてやって! あの面白いネタを、本当に笑っちゃうネタを!!
 3の倍数のたびにオチを持ってくるあの鉄板ネタを!!」
「いや、もう内容言ってるし……」

 

鬼かこいつ。

 

「さああなた今やってすぐやって息する前にやってハリィハリィハリィ!!!」
「ちょ、ま、わかったやるからやるから……コホン。
 1番、アスラン=ザラ。数字を数えて、3の倍数の時だけアホになります。
 1…2…3は敵じゃない!! 4…5…6はお前を殺そうとはしなかった!!」
「30点」

 

鬼だこいつ。

 

「いやお前ふざけるなよ、無理矢理やらせといてその反応はないだろうが……もうたくさんだ!!
 というかなんで最近のお前はそこまで俺を弄るんだ! 昔はそんなじゃなかったじゃないか!」
「昔は昔、今は今よ。大体それを言うならあなたの額の前線だって昔はもっと前にあったでしょ」
「むう……そんなに笑いというゴールが欲しければ俺のキャラに依存せずに
 自分がキャラ変更すればいいものを。
 そうだ、今すぐ眼鏡をかけて先輩キャラに変更しろ!
 眼鏡かけてスパゲッティ食べて原作ファンから総叩きされろ!!」
「断るわ。貴方こそさっさとその頭の不自然投げ捨ててシンの必殺技開発の時間を稼いでなさい」
「どうあっても退かないか先輩……ならば!」

 

「「ザラ夫婦、GO FIGHT !!」」

 

空いたスペースで超人ファイトを始めたバカ夫婦。正直勘弁して欲しい。
散らかった食堂を片付けるのはどうせ俺なんだろうし。
それにしてもお互いの攻撃がこれだけえげつないのはよほど溜め込んだものがあるに違いない。
まあメイリンはなんだかんだからかいつつも、本当にアスランを愛してるのだとは思うけれども。
額前線の件でアスランが意図的に話をズラした時、気付かない振りしてたし。

 

とはいえこのテンションに付いていけないのも事実だ。
こういう時に理性を残していた者は損をする。比較的酔いの浅い者を集めて飲むのが無難だろう。
ディアッカは既にここにいるし、ヨウランとコニールあたりは呼んでも……あ、だめだこりゃ。

 

「コニール。実は俺、ポニーテール萌えなんだ」
「夏休みの宿題を7週間もしなかった時点であんたには何も期待していない」
「それ京アニに言った方がよくね?」
「“敵” が… “敵” が “欲しい” んだよう……」

 

コニールの発言には納得する部分の多いシンではあったが、
流石にあのテンションでこっち来られても困るので2人の召集は諦めた。
あとそれから白目を剥いたまま徘徊するルナマリアはもう無視の方向で行きたいと思う。
行かせてくれ、頼むから。

 

「……この船には馬鹿しかいないのか」

 

頭痛がしてきた。見てて恥ずかしい。今日1番の疲れが自分を襲う。
これがミーティアの群れとも渡り合えるザフト最強チームとは誰も思わないだろう、絶対。

 
 

「ったく、どいつもこいつも。酒弱いくせに無茶飲みするから」
「俺達と比べてやるなよ、あいつらも十分強いほうだぜ?
 ―――なあ、そう言う割にはなんか嬉しそうな顔してんな、シン」
「………仕方ないだろ。酒が美味いんだから」

 

自覚は無かった訳ではないが、頬に手を当てて自分の表情を確かめる。
やはりと言うべきか、口元は笑みの形を作っていた。
それにしてもいやらしい奴だなこいつは。
普通はそんな無防備な表情に気付いても、見て見ぬ振りをするのが友人だと思うのだが。

 

「それにまあ、こいつら見てると悩んでるのが馬鹿らしくなる」
「そうだな。……あいつも此処にいたらな」

 

シンの隣に腰を下ろし、ディアッカは机のコップに目線を落とす。
思い出しているのは今回も敵にまわったという恋人のことか、それとも

 

「それ、キラの事か?」
「まあな。あいつも道間違えなきゃ、間違いなくこの中にいたんだが」
「……もう手遅れだよ。あいつ」
「言われなくてもわかってるさ、そんなこと」

 

手の中の酒を煽るディアッカ。自分と視線を合わせないのは認めたくない現実のせいか。
そんな彼に対し、シンは何も答えない。
今の自分には無かったのだ。彼にかける慰めの言葉なんて。

 
 

「………もう時間も遅いな。そろそろお開きにするか」
「そうだな。俺そう言えば今日、キラと戦って疲れてたんだった」
「そっか。なら、あの娘たちに癒して貰いな? 今は近くにいるんだからさ。
 男として今夜、ここまで追いかけて来てくれた彼女たちの気持ちに応えてやるって選択肢もあるけどな。
 ま、どっちとかは別問題としてだけど」

 

からかうような表情。そのくせ心の揺れを見逃すまいとその目ははっきりしている。
こいつほんとにいやらしいぞ畜生。

 

ああもう認めよう。酔った勢いで告白してやる。自分はあの2人の事が大好きだ。
はっきり言って、すぐにでも抱きたいとも思ってる。
宇宙にまでこんな俺を追いかけてきてくれた。距離を置かれても、それでも一緒にいると言ってくれた。
そこまでされて、心を動かされないわけがない。彼女らを拒絶するほど心は凍っていない。

 

けれど、 『2人』 なのだ。自分が好きな女は。

 

「アンタ知ってて言ってるだろ」
「そりゃな。いいじゃないかよ、今さらオタマジャクシの1億や2億。好きな方に注ぎ込んでやれば」

 

ディアッカがそう笑った瞬間、シンの背後で何かがぶつかり合う様な音が聞こえた。
思わず振り返る。そこにはルナマリアとコニールが取っ組み合う姿があった。
右手は手刀、左手は拳。両足はお互いの動きに備えている。
むう、これはまさしく千日戦争 ―――って今回はこんなのばっかだなぁ本当に。
もういいや、今回はシリアスは諦めた。とっとと部屋に戻って寝たい。

 

「どきなさいコニール、シンは私が癒してあげるの。エ○ーナル・○ボーテとか、なんかそんなやつで」
「ダメだ、シンを癒すのは私だ!! 『CHA○GE!!』 とか、なんかそんなやつで」
「それどっちも命捧げて死ぬやつなんだけど」

 

重すぎなんで勘弁してください。

 

「髪型をツインテールにして200万パワー!! いつもの2倍のジャンプで400万パワー!!
 さらにいつもの3倍の回転で1200万パワー!!
 ―――さああなた、これを受けて無事でいられる!?」
「くっ、まともに受ければ間違いなくやられる……!!
 だがいつもはロングホーンを突き刺してる立場なんだ、ここで逃げるわけにはいかない……!!」
「え? ……ああ、あなたの言うロングホーンって折れた方の事よね?」
「お前マジで別れてやろうか」

 
 

帰ってください。

 
 
 

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