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SRW-SEED_ビアンSEED氏_第06話

Last-modified: 2013-12-26 (木) 19:19:11

SRW-SEED_ビアンSEED氏_第06話
 第六話 宇宙に蒔かれた種

 連合のオーブ侵攻より数日前――。
 父ウズミに呼びだされたカガリは何の説明も無くマスドライバー『カグヤ』の施設まで連れていかれた。
 そこには、アークエンジェルのクルー達やアスハ派の軍人たちの姿もあった。皆が、一様に神妙な顔をしてウズミの言葉を待っていた。
「お父様?」
「カガリ、お前はこれから宇宙へ行くのだ」
「宇宙へ?」
「そうだ。詳しく説明する時間がないが、もう間もなくオーブは崩壊する。ブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエルと、ビアン・ゾルダークによって!」
「ビアンが?」
「そうだ。カガリよ、お前は私にとって残された希望だ。アークエンジェルのラミアス艦長や、キラ・ヤマトと共に行け。そうすれば、お前は決して一人ではない。お前には、兄弟がいる」
 ウズミはそっと懐から取り出した一葉の写真を取り出し、カガリの手に握らせた。そこに写る二人の赤子を愛しげに抱く母親。そして、その裏に書かれた二つの名前に、カガリは表情を固め、背後のキラを振り返った。
「ラミアス艦長、キサカ、それに、キラ・ヤマト。至らぬ娘だが、よろしく頼む」
 深く頭を下げるウズミに、名前を呼ばれた三人は、静かに頷いて答える。
「お父様、お父様はどうなさるのですか?」
「さてな。だが、オーブが破滅の道を歩まぬよう、私なりに残された時間で全力を尽くすつもりだ。ビアンも決して武力のみを良しとするだけの男ではない。恐ろしいまでの知謀と行動力を併せ持った男だ。この世界に何を齎すか、私にも予想が着かぬ」
「ウズミ様」
「すまぬな。諸君らに重荷を背負わせる事となってしまった」
「ウズミ様、ビアン・ゾルダークが間もなくこちらに到着するとの事です!」
 ウズミの護衛らしき黒服が携帯端末から入った連絡に血相を変える。
「はやいな。いや、奴のこれまでの行動を考えれば、むしろ遅いか。カグヤの用意はどうか?」
「はっ、何時でも使用可能です」
「お父様、お父様!?」
「行くのだ。カガリ。お前達は種なのだ。蒔かれた種が芽吹いた時、そこに咲く花の名が希望である事を信じているぞ。……後は頼むぞ、キサカ」
 クサナギの船体の中へと、暴れるカガリを抑えて、キサカが連れてゆく。最後にウズミを振り返ったキサカが、今生の別れを察してか無言で敬礼をした。
 カガリは、ただお父様、お父様と叫び続けていた。
「カガリ、お前の父で、幸せであったよ」
 限りない慈しみを込めた瞳で、ウズミは血の繋がらぬ、しかし心から愛した娘を見送った。

 アークエンジェルとクサナギが無事大気圏を離脱する様子を見守るウズミの背に、やがてある男の声が掛けられた。
「種は蒔かれたようだな」
「……それもお前の仕組んだことか? ビアン」
「それを選んだのはお前達の意志だ。敷かれた道であろうともそこを行く意志が己のものである限り、その者達は決して人形ではない」
「知ったような事を言う」
「私も以前、同じ事をしたのでな。ウズミよ、間もなく地球連合がオーブへと攻め入ってくる。オーブは私が一時的に預からせてもらおう」
「一時的、か。他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない、我らオーブの理念を曲げるか、ビアン!」
「如何にオーブという国の国是である理念といえども国民を巻き込み、国という体裁を保つだけのものになり下がっては意味があるまい。 国に人が集うのではない。人がいるからこそ国という存在、理念は必要とされる。民を犠牲にする理念など、支配者のエゴ以外のなにものでもあるまい」
 ウズミの傍らに立つ長身の美女の名を、ウズミは忌々しげに呼んだ。
「ロンド・ミナ・サハク! サハク家の野望が叶うというわけか?」
「かつての我らならば、そのように息巻いたかも知れん。だが、今となってはそのような気にはなれぬ。 なにより、今はわが愛すべきオーブの民を守る事こそ第一。その為には理念を曲げる事は厭わぬ。ウズミよ、このたびの地球連合の動き、オーブの中立政策が招いたものだ」
「それだけの自信、この国を守る為の力はある、という事か。ザフトと手を組むつもりか?」
「そうなる可能性は否定せぬ。だが、今はまだ、だ。このたびの戦いは我らの力で戦い抜く。他国の力を借りぬという意味では、お前が国民を犠牲にしてまで守ろうとする理念に沿うものだぞ?」
 皮肉そのもののミナの言葉に、ウズミは険しい表情で睨み返すばかり。政治の裏舞台で生きた曲者や並の政治家ならばたちまち息を呑む迫力に満ちていたが、ビアンとミナが相手では通用しない。
「ナチュラルとコーディネイター、地球連合とプラントの二極化するこの時代の中で、中立を貫くオーブという国の存在が、どう言う意義を持つか、分からぬのか!」
「それはお前とおまえに賛同する者達だけでいい。民にそれを選ばせずに強要しては、独裁以外の何物でもあるまい。 その結果国を焼かれ、かけがえの無いものを失った民に、お前は何と言う? もっとも、我らも似たようなものだが」
「……あくまで、戦うという事か。この国をどうするつもりなのだ? ビアン・ゾルダークよ」
「それはこれからのオーブを見ていれば分る。ウズミよ、出会いが違えば友と呼んだかも知れぬ男よ。お前にはこの国を見届けてもらう。 お前の望む理念が形作ったこの国がどうなるか、それをその理念という名の曇り硝子で覆った眼で見つめよ」
 ミナが手を挙げて合図し、ビアンに与したオーブ軍人たちが、ウズミを拘束したのは地球連合がオーブに理不尽な要求を突きつける数日前の事だった。 

 そして、6月15日。オーブ上空から離れたとある宙域では
「馬鹿な、オーブが?」
「ディバイン・クルセイダーズ、軍事結社ってとこかねえ? 冗談、にしてはやりすぎでしょ?」
 オーブ上空、地球を離れ、宇宙の暗黒に浮かぶ4隻の戦艦があった。イズモ級2番艦クサナギと元地球連合所属の特装鑑アークエンジェル。
 それにオーブ宇宙軍で使われている地球連合の250メートル級戦艦『メズ』と拿捕したザフトのローラシア級『ゴズ』が一隻ずつ。
 先のザフトによる地球連合本部アラスカ基地攻略作戦オペレーション・スピットブレイクに際し、味方の犠牲をいとわぬ地球連合のサイクロプスの自爆による大規模破壊によって、地球連合上層部への不信を高め、離反したアークエンジェルは、その行き先を平和の国オーブへと向けていた。
 しかし、そのオーブに到着し補給作業を受けた矢先に、ウズミからアークエンジェルは退去を命じられた。しかもウズミの娘であるカガリとクサナギ、エムリオンといったMSと共に宇宙へ、だ。
 それは地球連合のオーブ侵攻を知り、うすうすビアンが行っていたオーブ政権転覆の動きを、類希な政治家として培った経験から感じ取ったウズミが行った、彼にとっての希望を残す為の策だった。
 父ウズミを置いて行く事に駄々をこねるカガリを宥めすかし、実子では無い事、そして兄弟がいる事を告げて、ウズミは信頼できる部下達と共にカガリとアークエンジェルを宇宙へと上げていたのだ。
 そして、今、アークエンジェルとクサナギのメインディスプレイには、ビアン・ゾルダークによるDCの蜂起とオノゴロ島における圧倒的な戦力差の戦いが映し出されていた。
「あのビアンておっさん、かなりのやり手だってのはオーブの現状を見ればわかるが、何者だ?」
 アークエンジェル艦橋に集まった、主要メンバーの一人、エンディミオンの鷹の異名をとるエースパイロット、ムウ・ラ・フラガが、優男風の顔をさて困った、といった表情にしてカガリに問う。
 モニター越しには公私ともにカガリのサポートを行うキサカの姿もあった。
 オーブの軍服に身を包んだカガリは、意外に力強い表情で首を横に振った。肩にかかる程度で切られた金髪に自己主張の激しい瞳の少女だ。
「詳しい事は私にも分らない。とても優秀な技術者としてお父様やオーブの首長達とよく議論を交わしていた。政治や軍事、MS関連の技術と知識を驚くほど持っている男だった。 ただ、前からオーブの中立政策が近いうちに終わりを迎えるとしきりに訴えていた」
「それがこうじてクーデターを起こしたと?」
 アークエンジェルの艦長マリュー・ラミアスが、まさか、と顔で語りながら重ねて問う。元々は技術畑出身ながらも、コーディネイターを凌駕する野戦能力を有し、素人がほとんどだったアークエンジェルで激戦をくぐり抜けた女傑だ。
「以前から、周到に用意を重ねていたらしく、お父様が気付いた時にはオーブの政治も軍事も奴が掌握していて、DCの決起を悟ったお父様は地球連合の侵攻を前に、なんとか私達とこのアークエンジェルを逃がしたんだと思う」
「そう……」
「それで、僕たちはこれからどうするんですか?」
 この場に居合わせた少年――キラ・ヤマトがマリューやムウ、キサカらに口を開いた。
 元はヘリオポリスの学生だったのだが、ザフトがヘリオポリスを襲い秘密裏に開発されていたGを強奪した際に、残されたストライクのパイロットとなってアークエンジェルで戦い続けた少年だ。
 一時、オーブでのザフト軍との戦闘でMIA、生死不明の扱いを受けたもののとあるジャンク屋によって命を救われ、オーブに住む、各国に影響力を持つマルキオ導師によってしばらくプラント最高評議会議長シーゲル・クライン邸へ運ばれ、シーゲルの娘ラクスの世話になりながら療養していた。
 だが、それもプラントの国防委員長パトリック・ザラがパナマを目標としていたオペレーション・スピットブレイクをアラスカ攻略のものへと直前で変更したことで終わりを告げる。
 議会の議員達にさえ伏せられていたスピットブレイクの目標変更は三日ほどザフトの動きを止め、その間に、キラはラクス・クラインからザフトが開発した核動力で動くMSフリーダムを預けられ、一路、アークエンジェルがいるアラスカへと向かったのだった。
 アラスカでの死闘を終え、またオーブからも脱出したアークエンジェル一行には、実の所明確な目標が無い。
 とりあえず、目下ブルーコスモスの私兵と化しつつある大西洋連邦が盟主的な立場にある地球連合に身を寄せるつもりはなく、またザフトに協力するつもりもない。

「どこにも止まる木の枝が無い鳥だからな。おれ達は」
「出来るなら、オーブの宇宙ステーションであるアメノミハシラに寄りたい所なんだが、あそこはサハク家の管轄で、今はDC宇宙軍の拠点になっているし……」
『とりあえず、身を隠す為に都合の良い場所がある。L4にある廃棄されたコロニー・メンデルだ』
 ムウの無理に余裕を持っている振りをした台詞に、カガリが呟き、モニター越しにクサナギの艦長を務めるキサカが、一つの提案をして、アークエンジェルにデータを送りながら説明を始めた。
「メンデルか。確か昔バイオハザードを起こした所じゃなかったか?」
 端正な眉をややしかめるムウに、キサカが答えを提示する。
『すでにX線照射で徹底的に除菌されているからな。当座の間身を隠すには問題ないだろう』
「食糧や生活用品の備蓄は、一年分はあるけど、弾薬や整備部品の補充は難しいわね」
 オーブ脱出の際にウズミの手配で積載可能な限界まで両戦艦に積み込んであるとはいえ、孤軍での補給もままならぬ状況は、精神的な重圧にも関わってくる。
『ジャンク屋ギルドを通じてある程度補給の確保は出来ている。まずは腰を落ち着けてからだな』
「そう、ね。カガリさん。後は、オーブがどうなるか、ね?」
「……。ビアン・ゾルダーク、お前は、何がしたいんだ?」
 眦を吊り上げ、唇を噛み締めて、カガリはじっとモニター越しに繰り広げられるオーブと地球連合の戦いを見ていた。
 その言葉には、阻止しようと思えばいつでも阻止できたにもかかわらず、わざと自分達を見逃したとしか思えぬビアンの行動を知るが故だった。
 最新機のエムリオンが可能な限り搭載されたクサナギ、限界まで積載された物資、さらにDCで開発中の技術のデータなどなど……。まるで自分達に力を与える為に整えられたような戦力。
 そして、あの、DCによってある程度修復された謎の機体。カガリはその名を知らぬが、それはかつてラピエサージュという名で呼ばれていた。
 後にビアンが、バカに刃物を持たせてはいけないとナイスミドルな顔一杯に後悔の表情を浮かべる事になるかどうかは、まだ分からない。
 今自分達がこうしている事さえ、ビアンの掌で踊っているようでカガリは言いしれぬ不安を、今すぐにでもオーブへ戻りたいという思いと共に、その胸の内に抱くのだった。
 そして、やがてモニターの向こうで見せつけられたヴァルシオンの圧倒的な力を目の当たりにし、皆が驚きの仮面を被り、地球連合の艦隊とMSを瞬く間に葬っていくヴァルシオンやミナシオーネの姿に、ただ呆然とした。ミナシオーネが画面に映った時は特に。

 オノゴロ島、国防本部――。
 ビアンを始めとしたDC首脳部が一堂に会し、地球連合の次の攻勢に対し合議を重ねていた。
 本来の歴史においてオーブは一日半で陥落し、地球連合の前に屈服しているのだが、少なくとも現在においては連合の圧倒的な戦力を相手に互角以上に戦い、翌日に陥落という事態は避けられそうだ。
「潜水艦隊および洋上艦隊の被害は以上です。特にミナ副総帥とナカジマ小隊の戦果は目覚ましいものがあり、友軍への支援も多大で被害は最少です。また、オノゴロ島の諸施設への被害も極めて軽微。戦闘の続行に問題はありません」
 DC所属のトダカが極力感情を排して今回の戦闘の結果を報告する。円形のテーブルに座し、中央のディスプレイには立体モニターに各種のデータが表示されている。

「エムリオンの第三次生産ラインも稼働しています。今回の損失分のリオン・パーツや機体、装備の補充も問題ありません。鹵獲したストライクダガーの機体やOSの解析ももう間もなく完了します。データを反映させるのには少し時間がかかるかと思いますが、OSの解析が完了すれば、MS戦もより効率的に行えるはずです」
 エリカ・シモンズが、戦闘中に鹵獲した8機のストライクダガーの解析完了分のデータを表示させる。もともと政治的取引である程度のデータを入手していたものに、今回の戦闘で得られたデータを重ねたモノだ。
 ついでにいえば、ヴァルシオンの大暴れで母艦を失い、バッテリー切れを起こした物や、海中に沈んだ輸送艦、揚陸艇からもまだ無傷の機体や、簡単な修理で使い物になる機体が見つかっている。
「ストライクダガーに搭載されているOSはキラ・ヤマトの協力で完成したオーブのOSとは違い、連合が独自に完成させたもののようです。ある程度の行動をパターン化させ、ナチュラルでも複雑な操縦を必要としない分運用が簡便。
ただしその分複雑かつ精密な行動を行うのには多少不向きと言えるでしょうが、これはパイロットの技量にもよります。機体の方ですが、これはストライクの簡易量産型と言えます。生産性と整備性を両立した機体で、ナチュラルでも簡単に運用できることを前提にしたものでしょう。ビーム兵器の携行とシールドの装備でザフトのジンを攻守ともども上回る機体です」
「幸い、エムリオンは互角以上に戦えているようです」
 これは別の閣僚の発言だ。目の醒めるような青い瞳に、三つ編みにして垂らされた純金の様な金髪。貴族的な高貴ささえ湛える美貌。過去に負った戦傷が原因で右目は失明しており、今は黒い布地の眼帯が当てられている。
DC所属のコーディネイター、ローレンス三佐だ。階級こそ三佐だが、極めて有能な戦術・戦略家であり、コーディネイターにしては珍しくナチュラルへの偏見を持たない好人物でもある。
 おまけにMSパイロットとしても超一流で、かつて叢雲劾がオーブでMSパイロットの訓練を行った時に居合わせれば、劾がOS以前の問題と評したオーブパイロットへの評価も変わっていただろう。
 ローレンスがDCに参加したのはDCの思想に共鳴した事もあるが、オーブ国内のコーディネイターへの信頼を維持する意味も含めてであり、ローレンスは己の持てる全力以上のものを出し尽くすつもりでDCに籍を置いていた。
「陸戦タイプのMS相手ならば元々有利に戦える事は予想されていましたが、おおむねその通りです。搭載したエネルギー・フィールドとPS装甲によるサバイバリティ性も高く、パイロットの損失も予想以下です」
 ローレンスの言葉にエリカが追従し、ビアンも重々しく頷き同意する。
「ですが、連合のMSがビーム兵器を標準装備しているように、ザフトでもビーム兵器を持った新型MSの配備が行われているという情報を鑑みれば、PS装甲の装備はラミネート装甲に見直すか、Eフィールドの強化を検討した方が良いかもしれません。
幸い、連合のMSにはPS装甲は装備されていないため、レールガンなどの実体弾兵器でも有効です。すでに民間にも大量に出回っているザフト製の武装の利用も可能でしょう」
「後期生産予定のエムリオンの装備の見直しだな。では、次に、スペースノア級の進捗状況はどうか?」
 エリカとは別の技術者が立ち上がり、モニターにスペースノア級のデータを表示させた。全長550メートル前後の、万能戦闘母艦スペースノア。
 完成すれば連合のアークエンジェル級をも凌駕する移動要塞と呼ぶ他ない超弩級の艦船であり、ビアンがもたらしたEOTと超技術、CEの艦船製造技術の粋を凝らして、DCのフラグシップ的な存在として目下地下ドックで建造中である。
 オーブにはアスハ家が予算を不正使用して建設した地下ドックがいくつか存在する。DCはそれをフルに活用しているわけだ。
 アスハ家の不正使用した国家予算の額は、セイランとサハクの若者たちのこめかみに青筋が浮かぶほどだった。
「一番艦タマハガネ、二番艦アカハガネ共に基本船体構造の工程はほぼ終了しています。タマハガネの方は基本武装の取り付けも80パーセントが終了しております。アカハガネは船体が76パーセントまで完成。 しかし、武装の取り付けは38パーセントほど。また両艦とも艦首モジュールの完成はいましばらく時間がかかるかと」
「ふむ。やはり艦首モジュールの開発は遅れるか?」
 ビアンの問いに、開発責任者は神妙にうなずく。ビアン相手でも媚びる様子はない。相手がだれであろうとだめなものはだめとはっきり言う性格らしい。

「はい。タマハガネ搭載予定の超圧縮重力場『レムリア・インパクト』、超冷却機構『ハイパー・ボリア・ゼロドライブ』、超空間歪曲機構『アトランティス・ストライク』は、 当分目処が立ちません。また特殊推進機関、壱番『クリティアス』弐番『ティマイオス』も若干予定工期より遅れています。 
アカハガネ搭載の艦首モジュール、超広域光波防御帯『エルダー・サイン』、多目的攻撃砲『シリウス・アロー』、超弩級液体金属実体剣『艦式斬艦刀』も、数カ月単位で完成は遅れるでしょう。
やはり、これらの技術と資材の確保が急務になるかと。モジュールの数をそろえるよりも数を絞って開発を進めるべきでしょう。
なによりもスペースノア級一隻のコストが、大きなネックとなっています。小官の個人的見解でありますが、MSなどの通常戦力の生産を優先された方がよろしいかと存じます。
過ぎた事とは重々承知ではありますが、開発する側の人間として、意見せずにはおれませんでした」
「いや、そう言った意見も貴重だ。タマハガネとアカハガネにはすでに完成しているカタパルトモジュール『ムゲンシンボ』を搭載する方向で建造を進め、乗員達にも訓練を怠る事の無いよう伝えるように」
 プランだけならまだ山の様にあるDCなのだが、いかんせんそれを形にする物資がないし、技術的にも実現不可なものが少なくない。 
 なによりそれらのプランはあまりに現状の技術を上回るオーバーテクノロジーを山ほど使うものが多く、絵に書いた餅の様なものだった。
 現在開発中の新型もかなりの数が検討されているが、実際にロールアウトまでこじつけられるのはその内の数割が関の山だろう。
 特に動力機関であるプラズマ・ジェネレーターの開発の難航が問題だし、プラズマ・ジェネレーターよりも出力的には劣る核融合ジェネレーターとて、まだ、未完の為心臓の無い鋼の骸が累々と並ぶ事になる。
 国力に乏しいDCとしては実際に使用する機動兵器の種類は可能な限り搾り、無駄な生産と開発は省きたい。その一方でワンオフ機の開発には惜しみない予算が宛がわれてもいる。
 革新的な質による量の打破は、おおむね追いつめられた国家が行う手段なのだが、それがDCにも当てはまるのは頑是ない事実だった。
 新西暦ではDCの蜂起に呼応して相当数の連邦軍が味方についたが、CE世界においてはそうも行かないだろうし、とにもかくにも今は連合の攻勢を凌ぎきらなければならない。
「連合の艦隊の動きはどうか?」
「現在は戦力の立て直しに一時的に後退しています。総帥のヴァルシオンの戦闘能力に、かなり慎重になっているようですね」
 これは苦笑を交えたローレンスの台詞だ。彼自身、DCの開発する新型兵器のスペックには目を見張っていたが、あの究極ロボの戦闘を目の当たりにするのは初めてだった。
 それまでの自分の中の機動兵器の概念をあっさり覆されて、苦く笑うしかないのだった。
 といってもメガ・グラビトンウェーブの照射後、ヴァルシオンのエネルギーゲージはレッドゾーンにまで届き、マップ兵器として調整し直したメガ・グラビトンウェーブの使用は、長い時間の戦闘には向いていない事が判明している。
 ヴァルシオンの残り25パーセントの不足部分は、このような出力不足からくる戦闘時間の短さと、CE技術と新西暦技術との混成によるOSの不具合だ。性能そのものが25パーセント分不足しているというわけでもない。
「おそらくハワイからの援軍を待って次の攻勢につなげる事になるでしょう。なにしろ連合側のMSの損失は確認できているだけでも93機、駆逐艦11隻、巡洋艦7隻、戦艦3隻、正規空母1隻、その他輸送艦や揚陸艦も20隻を失っています。
 これに修理不可の機体も加わるでしょう。ヴィクトリアのマスドライバーが確保された以上、カグヤの確保にどの程度の犠牲が許容されるかが、連合にとっても我々にとっても鍵となります」
「戦力の立て直しと指揮系統の再編、かなり無理を通しても連合側の再度侵攻まで時間はあると見てよいかと」
 その間に可能な限り戦力の補充と強化、また各国への根回しと、DCの存在に呼応する勢力への呼びかけ、またザフトとの同盟はありか否か等など。もともと論議されていた議題ではあるが、今一度煮詰め直さねばなるまい。

 他に、一つDCにとっては吉報があった。ヴィクトリア攻略作戦に従事していたロンド・ギナ・サハクが、手土産と共にオーブに帰還したからだ。
 元々ヴィクトリア攻略作戦への参加と引き換えにオーブ解放作戦の中止を求めていたのだが、連合側というかアズラエルはこれらの作戦を並行して行い、あわよくばヴィクトリアとカグヤの二つのマスドライバーを手中に収める気でいたようだ。
 それを察知したギナは、ヴィクトリア攻略を早々と切り上げて、高速輸送艇に手土産を積み込んでさっさとDCへと戻ってきたわけだ。
 無論、帰路の途中で何度か交戦したようだが、死者が一人も出ていないあたり、ギナの有能さが伺える。
 ビアンを挟んでミナとは反対側に座し、ユウナ・ロマ・セイランやトダカ、ローレンスらと共にこの会合に席を落ち着けている。
「一つ良いか? エドワード・ハレルソンとフォー、シックス、サーティーン・ソキウス達は私の直属として使わせてもらうぞ」
 ギナのいう手土産とは、名前が上げられた四人のパイロットとその乗機の事だった。
 切り裂きエドの異名がヴィクトリア攻防戦で決定的になった南米出身のエース、エドワード・ハレルソンと現在三機しか存在していないソードカラミティ。
 薬物で精神を破壊された三人のソキウスと、ソードカラミティ、レイダー制式仕様、フォビドゥン・ブルー。
 他にもついでに強奪したストライクダガーと23機しか生産されていない105ダガー、フォルテストラという追加装甲を纏ったデュエルダガーが一機ずつ。生憎とこれらダガー系にはパイロットがいないが、DC側から募ればいい。
 ストライクダガーはともかく、105ダガーやデュエルダガーといった高級機はそうそう手には入らないし、それぞれがコストに見合う高性能機であったし、DC技術陣にとっても新鮮な素材だ。
「時にビアン、私のギナシオンの進捗状況はどうだ?」
 名前から察せるように、ギナ専用のヴァルシオンの事である。もっとも一からCE側の技術で開発しているもので、ヴァルシオンのデチューン機である事は否めない。
 それでもヴァルシオンVerCEと同様にPS装甲とラミネート装甲、超抗力装甲をはじめ強化セラミック素材の使用、先頃実用かに成功したTGCジョイント(重力制御によって慣性質量をコントロールし、各関節への負担を軽減する技術)による各関節への負担減、50メートルサイズの機動兵器になら積み込めるデッドコピーしたプラズマ・ジェネレーター、超高性能・小型テスラ・ドライブを搭載した破格の高性能機であり、サハク家の肝いりで開発中だ。
 いわばCE技術によるヴァルシオンのレプリカというべきか。
 かなりの予算を食う金食い虫だが、これはギナがサハク家からかなりの額を出させていて、DC全体の予算はさほど割いてはいない。
「基本フレームと外装の取り付けは終わった。後はプラズマ・ジェネレーターの調整と専用OS、武装の搭載だな。ミラージュコロイドやマガノイクタチ、ローエングリンは後回しにしている」
「ふむ。ではいましばし天(アマツ)で戦場を駆けるとしよう。そういえば、面白い機体が見つかったそうだが?」
「ウズミ様も中立を謳う割に物騒な事をしているよね。アカツキ、でしたっけ?」
 独特の髪形をした薄い紫色の髪形の青年が口を開いた。やや線の細いお坊ちゃんと言った感じか。一応、カガリの婚約者であるセイラン家の子息ユウナである。
 呆れた体のユウナにエリカが、やや委縮した様子で説明を始める。ウズミからの命で開発に携わっていたのだ。
「はい。ビームを反射する特殊装甲ヤタノカガミを搭載し、防御面では破格の性能を誇るMSです。いわば、オーブの理念をあらわすMSでした。ただ、費用はM1の20機分ですが」
「20機ねえ? まあ、パイロットはもともとそんな数がいたわけではないけど、流石にコスト高すぎでしょう? 機体そのものは出来てるんだっけね。誰か乗りたいパイロットはいるのかな? 
そう言えば、人工知能の開発は進んでいるのかい? 人材不足のDCとしては一日も早く完成してもらわないとね」
「予定の88パーセントと言った所です。今回の戦闘で多くのデータが手に入りましたから、TC-OS(戦術的動作思考型OS)の併用で、まもなく実戦に耐え得るものが出来上がります」
「次の侵攻までに間に合えばよいがな。ユウナ、ロゴスはどう動いている?」
 ビアンの言葉に、ユウナは肩を竦めた。

「まだまだ様子見ですね。ウチにも連絡を取り次いできましたが、のらりくらりとかわしておきましたよ。プラント破壊されちゃ骨折り損のくたびれ儲けという歴々も少なからずいますから、アズラエル氏の牽制程度に役立てばいい、そう思っているのでしょう。
僕達をなめている間に搾れるだけ搾りとっておきます。アスハ家の隠し資産や、ロゴスからの投資で、資金面で言えばまだ余裕はあります。しかし、ビアン総帥の素性についてしきりに知りたがっていましたよ?」
 からかうようなユウナの言葉に、ビアンはふっと小さく笑うきり。いくら調べたところでオーブ以前のビアンの経歴が分る筈もないと知っているのは、この場でもロンド姉弟やユウナなど極一部の人間だけなのだから。
「そうか。しかし連合が動きを見せるまでただ黙って待っているのも時が惜しい」
「では、こちらから仕掛けるので?」
「守るばかりとは行くまい。我らの理想は自国の安寧のみを求めるものではないのだからな」
「現状、動かせるのは足の速いキラーホエール級と輸送機位でしょう。ストーク級空中母艦はまだ三隻しかありませんし、エムリオンによる一撃離脱戦法が妥当となるかと」
 ローレンスの言葉に、ビアンが一つ加えた。
「それにタマハガネの運用も試験的に行う」
「シミュレーションは積んでおりますが、実戦への投入は時期尚早では?」
「その程度の事がこなせなくてはスペースノア級の名が泣く。艦首モジュールにはムゲンシンボを装備。ISA(Integrated Synchronizing Attack=空母の役割を果たす機動戦艦と、そこに搭載された人型機動兵器による電撃戦)戦術の実例として動いてもらおう」
「タマハガネに乗艦する部隊の選抜は?」
「それには……」

ストライクダガーを五機入手しました。
105ダガーを入手しました。
デュエルダガーを入手しました。
ソードカラミティを二機入手しました。
レイダー制式仕様を入手しました。
フォビドゥン・ブルーを入手しました。
ゴールドフレーム天を入手しました。

ロンド・ギナ・サハクが仲間になりました。
エドワード・ハレルソンが仲間になりました。
フォー・ソキウスが仲間になりました。
シックス・ソキウスが仲間になりました。
サーティーン・ソキウスが仲間になりました。