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SRW-SEED_ビアンSEED氏_第10話

Last-modified: 2013-12-26 (木) 19:46:18

SRW-SEED_ビアンSEED氏_第10話
第十話 戦火繚乱

「私がタマハガネ艦長グレッグ・パストラル一佐だ」
 骨の太そうな肉厚の顔立ちの男性が艦長席に座し、タマハガネのブリッジに上がったシン達を迎えた。
 ギナとソキウス、エドの姿はない。ブリッジではすでにオペレーターや火器管制官が位置についてエンジンに火が灯るのを緊張と共に待っている。  
「ナカジマ小隊隊長テンザン・ナカジマ一尉。以下小隊員着任しました」
 あんまり様にならない敬礼をし、テンザンをはじめスティング達もオーブ式の敬礼をする。
「ふっ、オーブきっての問題児と呼ばれたテンザン一尉も猫を被るのはあまりうまくないな。あまり階級は気にするな。もっとも限度を超えられては困るがな」
 かなり強面の顔立ちをわずかに緩ませ、唇を笑みの形に変えてグレッグが言う。意外に話のわかる人だな、とシン。
 テンザンはグレッグの言葉に相好を崩していきなり姿勢をだら、としたものにしてしまう。
「そりゃ助かるぜ。こう固っ苦しいのは苦手なんで」
「砕け過ぎですよ、テンザン隊長」
「そう言うなよ、スティング~。艦長が良いって言ってんだからよ」
「かんちょうさん、限度はあるって言ってる」
「ありゃ、ステラもかよ」
 あんだよとテンザンはがしがし頭を掻き、その様を見ていたグレッグが苦笑めいたものを漏らす。DCきってのエース小隊が、こんな子供っぽさを前面に押し出した面々とは思わなかったのだ。
「退屈しない船旅になりそうだな。それぞれ作戦時間までにタマハガネの仕様を確認しておいてくれたまえ。1100より連合艦隊への奇襲作戦を行う。各人の奮闘を祈る」
 解散したシンは、ステラ達と連れだってあてがわれた個室を見て回ったり、食堂や格納庫を見物していた。
 格納庫ではギナの言ったとおりシン達が使用しているガームリオンやエムリオン、バレルエムリオンがメンテナンスベッドに立てかけられ、戦いの時を静かに待っている。
 計11機分のMSとその整備パーツ、弾薬、燃料、予備の武装が並べられているが、艦首モジュールの中でも機動兵器の搭載を重視したムゲンシンボが換装されているため、格納庫にはまだまだ余裕がある。
 格納庫の中に立ち並ぶMSの中でDC系とは異なる機体を見つけて、アウルが足を止める。スティングも興味を惹かれたのか、アウルの横に並んでそのMSを見上げた。
「お? 連合のストライクダガーじゃん。いざっていう時は乗れって事かな?」
「他にもザフト系のもあるな。水中戦用のゾノとグーン。それに陸戦系のバクゥと空戦用のディン。まあ、今回は海上戦だし、ステラのランドエムリオンも換装すれば問題ないから出番はないかもな」
「あれ可愛い」
 とステラが指さす先にあるのは、犬科の動物の様に四肢をついた青い装甲のMSだ。それを見て、シンが名前を呟く。
「あれって、バクゥか。ステラはああいうのが好きなんだ」
「うん。なんだか犬みたい」 
「う~ん、確かに。でも今回は役に立たないかな。陸地か広い浅瀬があっても……やっぱ出番無しかな」
「そっか」
 残念そうな雰囲気全快のステラに、困ったなあとシンは頬を掻くが、こればかりは仕方がない。戦場に適した機体の選択はパイロットだけでなく味方の命にもかかわる重要な要素だ。
 好き嫌いで選ぶわけにもいかないだろう。それでも名残惜しそうにバクゥを見つめるステラと一緒にダガーやザフト系のMSを見上げていると、背後から陽気な声が聞こえてきた。
「よう、何してんだ?」
「ハレルソン二尉」
「固いなあ。階級はおれが上だけど、ここじゃお前らの方が先輩なんだ。そんなに気にしなくっていいぜ。エドでいい」
 ラフにDCの軍服を着崩したエドが廊下の向こうからやってきた。スティングは、エドの気軽な調子に少し困ったような顔をする。今のメンバーでは一番軍人らしい思考の持ち主なのかも知れない。
「しかし、話を聞いた時は驚いたぜ。連合に本気で逆らおうってんだからな。言っちゃ悪いが正気を疑ったぜ? ま、おれもそれ位の方が暴れ甲斐があるって思ったけどな」
 陽気な口調だが言っている事は結構やばい。
(連合の兵士ってみんなこうなのかな?)
(さあ?)
 アウルとシンがこそこそ言い合うのも気に留めず、エドは話を続けた。
「この戦艦もすげえな。大西洋連邦のアークエンジェルよりもでかいし、装備も見たけどこりゃ移動要塞だぜ」
「そうですね。なにしろDCの旗艦として建造されていた艦ですから」
「そんなにすごいの?」
 とはステラとシン。シンはDC加入後もほとんどビアンとロンド姉弟とのカイーナでアンティノラでコキュートスでジュデッカな特訓に明け暮れていたため、DC内部の事情に疎い。ステラは単に性格だろう。
 スティングが苦笑し、できの悪い妹と弟に根気よくきかせる兄の気分になる。そういう役目兼性格であった。まあ、損な性分というわけでは無かろう。
「そうだな。超大型のテスラ・ドライブに八基のメイン大型ロケットエンジンと同じく八基の補助ロケットエンジンを搭載。船体には超抗力金属の装甲にラミネート装甲と加えて超高出力のエネルギー・フィールドの防御力。
 宙間戦闘だけじゃなく、大気圏内、水中航行も可能で足も速いし、大気圏離脱用のブースターを着ければマスドライバーなしで大気圏を離脱できる戦艦だって、話だな。
 それに対空砲火や対艦砲撃戦能力、MSの搭載能力にも優れた実質地球圏最高性能の戦艦だろうな。こういうのはたいてい身内びいきで尾鰭がついてるから、どこまで本当かは分からないけどな。
 性能がバカ高い分、値段もバカ高くて、建造中の弐番艦アカハガネはお蔵入りするんじゃないかって噂だ。DCの建艦能力ギリギリまで費やした結果らしい。おかげでキラーホエールやストークの数が少ないそうだ」
 スティング先生の授業を神妙に聞いていたエドが、感想を零した。
「なるほどな。しかし弐番艦がお蔵入り、ってのはもったいねえな。この船だけで何隻分の戦闘能力になるか分かったもんじゃない。性能だけを追求しても生産性他諸々と釣り合わないといい兵器にはならないってことだろうけどな」
 うむうむ、と頷くエドに、ふとシンが気になった事を尋ねた。以前、ローレンスとした問答が頭の片隅に残っていたのだ。どうして戦うのか? その理由は? 
「そういえば、ハレルソン二尉はなんでDCに?」
「エドでいいって。んー、おれがDCに着いた理由か。質問で返して悪いが、あー、シンだったか。お前さんはどうしてDCにいるんだ? いくらコーディネイターだって、戦場に出るには辛い年だろう?」
「えっ? おれは……守りたかったから。家族を、父さんを母さんをマユを。友達や家族のいるこの国を。大切な人が守れるんなら、オーブが、DCになっても構わなかったし……。それが一番の理由、ていうかそれしかないかな。おれは」
「守るため、か。いや、悪くない理由だ。ひょっとしたら一番まともな理由かもしれない。シン、おれもさ。おれも守りたいもの、取り返したいものを見つけた。少し違うな。思いだしたのさ。取られたままにはしておけない、守りたいものをな。 悪いな、小難しい話に巻き込んじまって。ほんとはお前らと親睦を深めようと思ってたんだが……。まあ、連合の艦隊とぶつかるまで時間があるんだ。また別の機会に話をしようぜ。おれはちょっとソードカラミティの調子を見てくるからさ」

 それから陽気にウインク一つを置き土産にして、エドはソードカラミティ二号機のほうに歩いて行った。ふとシンは、エドの言う取り戻したいものがなんなのか、気になった。
「エドの取り返したいものってなんだろう?」
「……ハレルソン二尉の故郷の南アメリカ合衆国は、開戦直後の2月19日に連合に侵攻されて組み込まれたのさ。プラントの出した、中立国や親プラント国家に優先的に工業製品とかを輸出するっていう話に乗ろうとしたからな。 だから、ハレルソン二尉が取り戻したいものはきっと」
「……そっか。あの人は一度祖国を奪われてるんだ。だから、DCに味方してくれたのか」
(それだけじゃないだろうがな)
 スティングはその呟きを胸の中にしまっておいた。経緯はどうあれ、連合のトップエースの一人が味方についた事で厄介な敵が減り、戦力が増強された事には変わりないのだから。

「うーみーはーしろいーなー、ふーかーいーなー」
「ステラ、微妙に歌詞違うよ」
「そーらーはーあかいーなー、たーかーいーなー」
「……」
 さっきから窓に張り付いてステラなりにアレンジした歌を機嫌良さげに歌い続けている。傍らでシンは早々と修正するのをあきらめていた。まあ、それはそれで可愛いじゃないか、と本気で思っている。
 超硬化ガラスの向こうで南国の風にかもめがのんびりと乗って飛んでいる。優しい空の青に浮かぶ白い雲が悠々と流れ、降り注ぐ太陽の光が宝石箱をひっくり返したように水面に輝いていた。
 窓辺に設置されたソファに寝転ぶように座ってシンとステラの二人でのんびりと外の様子を眺めている。 タマハガネが出港してから3時間。正直暇を持て余していた。
 ブリーフィングルームで事前にギナ達とのフォーメーションなどについても大方話を通しており、後は連合の艦隊を発見するのを待つばかりだ。命賭けの闘いを前にして、
あまりに平穏すぎてシンは緊張の糸がゆるみきっていた。
 ああ、本当におれは今戦争をしているんだろうか? そりゃまあ戦艦に乗っているけど。
 ああ、父さんや母さんやマユは無事だろうか? 結局DCに参加するのを認めてはくれなかった。そりゃそうか。自分の子供が戦場で人殺しをするなんて。
 シンの傍らでステラの歌はまだ続いている。
「おーおーきなのっぽのじょやのかね。ひゃくやっつーたたきましょー」
 もはや歌詞が違うとかそういうレベルでは無かった。が、シンはもう気にしていない。
 ……ああ、ステラは可愛いなあ。見ちゃったもんなあ、裸。責任を取らないとかなあ。ああ、でもステラだったら何の問題も……いやあるか。でも可愛いし。
 あ、でもそれで行くとミナさんの責任も取らなくちゃいけなくなるなあ……ギナさんは、義弟、義兄? 毎日死にそうな目に合いそうだなあ。やだなあ。
 などと、真面目に考えていた事が、こんな碌でもない事を考えるほどにである。もちろん、そんな妄想は長続きはしない。ステラとミナの一糸まとわぬ裸体を思い出して
鼻の下を伸ばしていたシンの脳裏を、鋭くけたたましい警告音が痛烈に叩いた。
「うわ!?」
「シン、行こう」
「ああ、うん!」
 それまでのほほんと鼻唄を唄っていた様子から豹変して、俊敏な動作でステラはすでに走り出していた。慌ててシンもそれに続き走り出す。
 息を切らしてブリーフィングルームに飛び込むと
「すいません、遅くなりました!」
「……良い度胸だ。シン、オノゴロに戻ったらトーレニングルーム『修羅界』に来い」
「……」
 表情を変えないまま、ご立腹のギナ様がいらっしゃいました。ステラは、足元を濡らす液体に気付いた。訝しんでその液体の元をたどると
「シン、シン!? 大丈夫!」
「うん、大丈夫。大丈夫だよステラ」
 瞳を見開いてガラス玉みたいに無機質な輝きに変え、ひきつった笑みを張りつけたちっとも大丈夫では無いシン少年が、滝の汗を流しながらステラに機械の様な声で答えた。
 よほどいやな思い出らしい。
 ギナはつまらなそうに、それでも幾分溜飲を下げた様子で視線を外し、アルベロがブリーフィングルームに集まった面々を前に説明を始める。
「連合艦隊を捕捉した。構成は巡洋艦二、駆逐艦六、輸送艦二、大型輸送艦一。接触まで後十分と言ったところだ。タマハガネにはフォー、シックス、サーティーンを残し、残りのMSが出る」

 と、ここでギナが口を挟んだ。
「ナカジマ小隊はそちらで指揮をとれ。初戦での華々しい戦果がまぐれかどうか、見させてもらおう」
 これに答えたのは、それまで足を組んで踏ん反り返っていたテンザンである。元々あまり受けの良くない顔に悪役としか見えない凶暴な笑みを浮かべ、ギナを見返しながら言ってのけた。
「ギナ副総帥こそ、あの女顔ロボが無いからって、ミナ副総帥に劣るような活躍はしないでくださいよ」
 その場にいたほぼ全員が凍りついた、怖いもの知らずの台詞だった。ぴゅう、と吹いたエドの口笛だけが、ひどくはっきりと聞こえた。
「ほう。オーブ軍一の問題児、戦闘狂の評判は伊達ではなさそうだな。ナカジマ一尉?」
「んなことねえよ、本気で世界征服を狙っていたと噂のギナ副総帥には及びもしねえっての」
「…………スティング」
「なんだよアウル」
「すんごい居心地悪い」
「奇遇だな。おれもだよ」
 睨みあい、虚空に見えない火花を散らす二人の様子に、アウルとスティングはがちがちに凝り固まったまま、互いの感想を述べるのだった。

 ブリッジではグレッグがタマハガネの初陣とあって表には出さぬ緊張を浮かべていた。豪胆な風貌の割に慎重な性格をしているらしかった。
 カタパルトデッキで待機しているギナが、DCのパイロットスーツに身を包み連絡を入れてきた。
『グレッグ艦長、MS隊用意は整った。何時でも構わん』
「承知しました。ギナ副総帥」
 テンザンと言い争っていたりするが、ギナは立場的にはDCの副総帥であり本来この様な前線に出ていい人間では無かった。
 のだが、これはDC上層部に共通するのか、それで死ぬようならそれまでの人間、と考えている節があるのである。
 まあ、ギナの場合は最高級のコーディネートが施され、その人為的に開花され、付与された才能を生かすべく最大限の努力をこなしてきた自身への自信故なのだが。
 艦橋ではDCの高性能レーダーに地球連合の艦隊を捉えにわかに慌ただしくなっていた。初陣に浮足立つブリッジクルーを宥めたグレッグは、手早く指示を出して行く。
「最大戦速を維持、ステルス・シェードを解除後、艦首魚雷全門一斉射撃。MS隊発進後、連装衝撃砲三十秒間隔で斉射。味方に当てるような真似はするな」
 スペースノア級ならではの高高度からの最大戦速による突撃と同時に、それまで存在していた戦艦の規格を凌駕する火砲が一気に解き放たれた。
 それまでレーダーにも哨戒機にもなんの反応を見せていなかった敵の突然の出現に連合艦隊は慌てふためき、艦載機をスクランブル発進させようとするまさにその時に、タマハガネから発射された艦首魚雷が次々と着弾し、水柱を盛大に打ち上げる。
 運悪く直撃をもらった一隻の駆逐艦がゆっくりと沈み始め、にわかに救命艇や脱出艇に乗って乗員が逃げ出そうとしている。その様子を確認してから、グレッグは立て続けに命令を飛ばした。
「MS隊を発進させろ。つづいて連装衝撃砲、照準合わせ!」
 タマハガネ艦首モジュール『ムゲンシンボ』から、続々とエムリオンやバレルエムリオンが出撃し、テスラ・ドライブの光を流星の尾の様に引いて飛んで行った。

「このテスラ・ドライブってのは便利だなあ」
 とはエドである。ソードカラミティに搭載されたテスラ・ドライブの高性能・小型っぷりにしきりに感心している。
 ソードカラミティのリア・アーマー部分に突貫で付けられたウィング付きのボックス状テスラ・ドライブの調子は上々だ。
 他にもランドエムリオンでは役に立たないという理由から、ステラも換装したエムリオンに乗り換えている。
 後のメンバーは、フォー・ソキウスのソードカラミティ三号機とギナの天にもテスラ・ドライブが搭載された位で、機体を乗り換えてはいない。
「海上戦でストライクダガーしか持ってきてないんならほとんど砲台の代わりしかできないわけだし、こりゃDCが初戦で勝った大きな理由だな」
 確かに、連合でも水中用MSの配備やスカイグラスパーと言ったザフトのディンとも互角に戦える高性能戦闘機の開発が行われているが、エムリオン・ガームリオン・バレルエムリオンらリオンシリーズは汎用性といい、生産性といい、性能と言い、両軍の水準を上回る仕様だ。
「惜しいな。これでもう少し国力と人材がそろってりゃあ、本気で世界征服も望めたんだろうけどな」
 数は力だ。戦争は数だ。確かにエドの分析通りDCの保有する技術や兵器の質は頭一つ飛びぬけている。だが、寡兵である。
 エムリオンが一機ストライクダガーを撃墜する間に、連合は五機、ひょっとしたら十機、あるいはそれ以上のストライクダガーを生産しているだろう。
 DCが出来るのは、噛み砕いていえば連合とザフトの中で手を出せば火傷をしてしまい、本来の相手を叩き潰すのに邪魔になると認識させて、手を出させないようにする事ではないか、と大抵のものは思っている。エドもそうだ。
 ギナは南米の独立の助力をすると約束してくれたが、エド自身はそれが履行されなくても仕方がないとも思っている。DCだって余裕などありはしないのだから。
「昨日の友は今日の敵、てな。悪いが、落とさせてもらうぜ!」
 多少不憫な気持ちになりながら、エドは眼前の連合艦隊に斬りかかる。艦隊からはようやくVTOL戦闘機やストライクダガーが慌てて姿を見せるが、海の上では飛行能力の無いストライクダガーなど碌に役に立たない。
 ましてや、ザフトのグゥルの様なMS用のトランスポーターは、連合にはないのだから。
 事実、輸送艦の甲板に展開しようとしたストライクダガー達は、テスラ・ドライブによるCE世界でもトップクラスの飛行性能を持つエムリオンにとっては、良い鴨でしかなかった。
 輸送艦に突貫工事で付けられたMS用のハッチからストライクダガーが姿を見せても、そもそも足場がほとんどないし、甲板上に出ようにも輸送艦の甲板の面積はMSには狭すぎる。駆逐艦や巡洋艦などもってのほかだ。
 詰まる所、海上でDCに襲われた場合、連合の部隊は構成次第ではほとんど抵抗らしい抵抗をするのはとても困難という事の証明となった。

 果敢にジャンプして上空のエムリオンに向けてビームライフルを撃ってくるストライクダガー目掛けてシンのエムリオンが緑の光の鱗粉を零して迫る。
 レールガンをストライクダガーの青い胴体めがけて合せ立て続けに二射。センターマークの内側に捉えたストライクダガーに向かい、シンは呟く。
「落とす!」
 殺す、ではなく落とす。それはシンの精神が作り出した一つの自己防衛策だろう。だがそれも別段珍しい話では無かった。
 ストライクダガーや戦闘機、戦車など人の姿が目に見えぬ相手は、殺すのではなく、『落とす』『撃墜する』。殺人の意識を紛らわす為に、シンはそれを口にする。
 右肩を掠めるレールガンをバーニアをふかして回避するストライクダガーだが、陸戦タイプのMSの悲しさか、長時間の飛行やジャンプができずそのまま重力にひっぱられて落下してゆく。
 自在に空を飛ぶエムリオンとの相性の悪さが露呈しているのだ。そのまま海面に落下するストライクダガー目掛けて接近戦を挑むべくシンのエムリオンのテスラ・ドライブが唸りを上げ、その右手にはアサルトブレードが握られる。
 ストライクダガーのライフルとイーゲルシュテルンの緑とオレンジの火線を、左右に振る動きで回避し、多少の被弾はEFで対処する。あっという間にメインカメラのモニターに迫るストライクダガー目掛けてアサルトブレードを振り上げ、
「もらった!」
 ストライクダガーのバイザー状のカメラアイを真っ二つにして、アサルトブレードの銀の刀身が、胸部までを縦一文字に切り裂いた。断たれた装甲や内部の電子部品、コードから火花が散り、ストライクダガーはゆっくりと海中へと落ちて行った。
 駆逐艦や巡洋艦の対空砲火が時折傍らを掠め、機体とコクピットも揺れるが集中するのは目の前の敵に対してだ。
「……て、もうほとんどいないな」
 シンがようやく一機ストライクダガーを撃破する間に、既にエドのソードカラミティやギナのゴールドフレーム天、テンザンのバレルエムリオンらがあらかたの戦闘機とストライクダガーを無力化し、駆逐艦も撃沈しているか航行不能に陥っている。
 ちょうどアルベロとスティングのガームリオンがビームライフルを、輸送艦の艦橋に突きつけて降服を勧告している所だ。
 タマハガネのけた外れの火力もあって、ほぼ一方的な展開になっていたらしい。
「こんな風に楽に勝てればいいんだけど」

 幸いというか今のところ戦闘狂の気はないシンは、楽に勝てるならそれに越した事はないと思っている。そしてそのシンの呟きは後二回ほどかなえられるのだが、三度目には裏切られる事となった。
 それから二度ほど小規模の輸送艦隊と交戦し、シンの撃墜スコアはMS7機撃墜、4機撃破とクライウルブズ以外の部隊なら破格の記録を残している。
 もともとクライウルブズのパイロットと、配備されている機体の質は連合・ザフトと合わせてみてもトップクラスに位置している。
 シンやステラ達エクステンデッド、ソキウスはエース級ではあるが、トップエース相手だとやや見劣りする。
 精神を薬物で破壊されたソキウス達は、戦闘においてもある程度行動が機械的にパターン化してしまい、同等以上の技量の相手だと、その弱点を見抜かれてしまう。
 シンやステラ達も経験不足という事もあるが、とくにエクステンデッドであるステラ達は治療によって健常な体に戻りつつある分、強化された能力も大なり小なり低下しているのがトップエースには届かぬ原因だ。
 一方でアルベロやエド、ギナ、テンザンは確実にトップクラスの実力を持っている。クライウルブズの中で最低ラインが目下のところシンだが、それでも他所の部隊ではエースクラスなのだから、半端ではない戦力だ。
 またシン達タマハガネ組以外にもキラーホエール二隻とオーブ領海ぎりぎりで連合艦隊を警戒している、タケミカズチ・タケミナカタの二隻の大型空母から出撃したエムリオン隊が、順次発見した連合の艦隊を襲っている。
 空母からの出撃組は、長距離飛行用のブースターと推進剤を満載した追加パックを装備し、対艦ミサイルや大口径レールガン、高出力ビーム兵器による一撃を加えて早々に離脱するという攻撃方法を取っている。
 直接的な打撃力には乏しいが、人材とMSが宝石よりもはるかに貴重なDCとしては安全策を取ったようだ。
 また今回の奇襲作戦では、一国家としてはやや情けないが輸送艦はなるべく傷つけずに無効化して、その中身をまるまる頂く事も目的としていた。
 一からMSを生産するより出来上がったものを横からかっさらう方が確かに資源は節約できるかもしれない。
 これにもっとも貢献したのがクライウルブズで、都合三回の出撃の間に、輸送艦三隻、ストライクダガー十機と整備部品諸々を手に入れて見せた。
 先のオノゴロ島での戦いで鹵獲、サルベージしたストライクダガーと合わせて五十機近い機体が手に入り、
 それらにはエリカ・シモンズがAI1と共同開発した戦闘用人工知能が搭載され、下手な連合やザフトのパイロットよりもよほど腕が立ち連合を悩ませる事になる。