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SRW-SEED_ビアンSEED氏_第19話

Last-modified: 2013-12-26 (木) 20:55:02

第十九話 始まりの終わり

 鈍光るニーズヘグの刃が刎ねたのは首では無く右腕だった。
 断たれたコードが紫電を零し、装甲は滑らかな断面を覗かせている。乱れた機体バランスを設定されたOSが立て直す。
 高度を下げつつあるエムリオンがバランスを取り戻すと同時に、シンは二の太刀を振るおうとするフォビドゥンを、マシンキャノンとイーゲルシュテルンで牽制する。
 ――あわよくば動きを止めた所にプラズマ・ステークを叩きこむ。
 そんなシンの目論見は当然甘く、フォビドゥンはフレスベルグ、アルムフォイヤー、エクァーンで撃ち返してきた。
 エネルギー・フィールドを全開にしてもあっという間に撃墜されてしまう火力だ。

「くそ、こいつに完全に抑え込まれている!? 数じゃDCの方が不利だってのに」
「そろそろ落ちろよ、お前」

 シャニとシン、それぞれが倒せぬ相手に苛立ちを募らせる一方で、クロトと対峙するステラやスティングも、拮抗状態にあった。
 倒すつもりで二人が連携すれば、クロトを撃墜する事も出来たろうが、手心を加えては互角が精一杯だ。
 お仲間を援護するオルガも、I.W.S.Pストライカーを装備したテンザンの105ダガーに狙われ、思うように動けずにいる。
 見方を変えれば連合側で突出した戦闘能力を持つ三機を抑えて、味方の被害を抑えきっていると言える。
 強化兵達も並のパイロットを凌駕する実力者だったが、並のエースを上回るDC側のエース達と強力な機体に組み合わせに、ほとんど撃墜されている。
 ギナ、エド、三人のソキウス達だ。
 彼らの機体が通り過ぎた海面には鋼の骸が無残に散らばり、彼らの力を、ギナの言葉通り骸が証明している。
 被弾したストーク級を下がらせ、代わりに連合艦隊の砲火を一身に浴びるタマハガネは船体の数か所から黒煙を噴きあげながら、圧倒的な火力で連合艦隊と互角に渡り合っている。
 下がるよりも、前に出続ける。攻撃こそ最大の防御を体現する姿だ。

「第八ブロック被弾、テスラ・ドライブパイル小破、右舷よりミサイル!」
「右舷ミサイルランチャー、撃て! 艦首10上げ、出力最大、連装衝撃砲3番、4番左舷敵巡洋艦に照準」
「ガーラン小隊シグナルロスト、ヴァン機、ゴーダ機戦闘不能。ストーク級壱番艦ランカスター、弐番艦クリトフ、推力低下しています」
「艦を前に出せ。参番艦ジェノスタに上空からの支援を要請せよ。各員、怯むな! 勝利は目前ぞ」

 
 連合の分厚い艦艇とMSの層が、とある一点において瞬く間に貫かれている。
 ヴァルシオンを筆頭に暴れ狂うたった五機の機動兵器達である。彼らの機体の周囲に不可視の壁でもあるかの様に、
 近づこうとするMSや戦闘機達、また彼らの行く手に存在する者達は尽くが破壊されていった。
 三機一体のコンビネーションで虚空を踊るフェアリオンに四肢を切り裂かれ、グゥルもどきや兵装を破壊されたストライクダガーが海面に落下し、艦艇や戦闘機から放たれたミサイルは撃つ端から撃墜されてゆく。
 絶妙のコンビネーションで鋼の妖精を駆るソキウス達。彼らは今、戦闘用コーディネイターという生まれ以上の力を発揮している。

「どうやら別動艦隊はシュミット一佐が防いでくれたようだね。ワン、ファイブ」
「そうだね、トゥエルブ。こちらも早く決着をつけなれば。強化人間の乗るMSも現れている。クライ・ウルブズや僕らならともかく普通のパイロットでは厳しい相手だ」
「一人でもナチュラルの犠牲を減らす為にも、僕らがナチュラルを倒さねばならない。皮肉というものだろうか?」
「だが、それが僕らの道だよ。ファイブ」
「ああ、すまない。僕が前に出る。ロイヤル・ハート・ブレイカーを仕掛ける!」
「了解」
「W-I³NKシステム、オールグリーン。テスラ・ドライブ、フルドライブ!」
 
 フェアリオンのスカート状装甲に取り付けられた、テスラ・ドライブ改四肢駆動システム、ラム・ジェットエンジンがフェアリオンのみに搭載されたモーション・プログラム『ロイヤル・ハート・ブレイカー(三人用アレンジ版)』に合わせた出力に展開・稼働し、極限まで軽量化されたフェアリオンは、人間と比べてもなお遜色ない動きで激しく、軽やかに、そして美しく戦場に舞う。

 予備のカートリッジまでも撃ち尽くしたハイパービームキャノンを手放し、サイコブラスターとマガノイクタチの連撃で周囲の露払いを務めていたミナが、視界にとらえた空母にほくそ笑む。
 人工筋肉によって搭乗者であるミナと同様の笑みを浮かべたミナシオーネは人のそれと一見して区別がつかない白皙の頬を、敵機のオイルの黒い飛沫で濡らしながら、遠く兄弟機、ないしは父娘機であるヴァルシオンを見つめていた。

「思ったよりは手こずったが、終わりが見えたな、ビアン」
「始まりの終わりがな」

 ミナに応えるビアンの声は、短くも、これからの未来を思う万感の響きがあった。
 テスラ・ドライブの唸りも重々しく、海面ギリギリを飛んでいたヴァルシオンが、モニターの画面いっぱいを埋め尽くすオレンジ色の火線を歪曲フィールドとPS装甲、本来の装甲で弾き、勢いを留める事無くパウエルの甲板に降り立った。
 ブゥンと低い音共にヴァルシオンの四つのカメラ・アイがパウエルの艦橋を見下ろす。ビアンはディバイン・アームの切っ先を突きつけ、外部スピーカーから降伏を勧告する。地の底から響くかの様な、熟練の迫力がそのまま言葉と化したかの様なものであった。

「兵を退け。この戦い、お前達の敗北だ」
「司令……」
「っ!」

 パウエルだけでも数千人単位の人間で運行しているのだ。
 今も沈みゆく艦艇や兵器のパイロットの数も含めればこの段階で、戦闘に終止符を打てば、助かる命は相当数だろう。
 だが、ダーレスにはまだ希望があった。すでに潰えた希望が。

「ヤラファス島に差し向けた艦隊なら既に我が方の防衛隊が壊滅させた。現状の戦力で我らに勝つ自信がまだあるのなら、好きにするがいい」
「壊滅しただと?」

 ダーレスが、通信士に目配せをすると、若い青年の通信士は、青褪めた顔で力なく首を横に振った。
 ビアンの言葉の裏付けが取れてしまった瞬間だった。それを悟ると同時、ダーレスが小声で指示を飛ばした。

(旗艦をセルタナに移し、残存戦力を撤退させろ。コッホ博士に脱出の用意を)
(それが、既にコッホ博士は……退艦されています)
(機を読むに聡いという事か。死に損いめ!)

 連合の負けを悟り、そうそうに見切りをつけて脱出したコッホに毒づきながら、ダーレスは敗北の味を噛み締めていた。
 だが、それもここで艦橋を叩き潰されて、多くの兵を道連れにしてしまうよりはましだろうか? 
 ほどなくして、パウエルからダーレスの名でDC艦隊への降服が通達され、戦闘で機体が損傷した者や、戻るべき母艦を失ったものなどを始めに、武装を解除始めた。
 航行能力を維持していた戦艦や、ダーレスの裏の指示を聞いた者達はタイミングを見計らって、戦闘海域から脱出した。
 追う事も出来ないでは無かったDCだが、こちらも消耗した戦力を割く事を艦隊首脳部が嫌い、投降した連合の部隊と残存戦力の確認などに追われる事となる。
 かくして、DCの地上総戦力と、連合の太平洋第四艦隊を主軸とする海洋戦力の大半を投入した戦いは、初戦よりも大規模ながら、はるかに短時間で決着がつく事となった。
 連合は投入した戦力の6割近くを失い、旗艦パウエルは拿捕。艦隊司令ダーレス以下、艦隊上層部の高級士官もそれなりに捕虜となった。
 だが、連合の不幸はそれだけに終わらない。ハワイ基地への帰路に、カーペンタリアから出撃し、戦いの趨勢を見守っていたラウ・ル・クルーゼ率いるザフト潜水艦隊に襲撃を受け、更にかなりの数の艦艇と人員を失う事となったのだ。
 ただし、オルガ・サブナック、シャニ・アンドラス、クロト・ブエルら生体CPUは、ザフトを相手に多大な戦果をあげ、これまでのDCとの戦いでの不名誉な評価を覆す事に成功した事を記す。
 またDC側も、ビアンのヴァルシオンなど絶対的とも言える超戦力や重力アンカーといった隠し札を投入したとはいえ、物量に勝る連合との戦いの損傷は大きく、MSの消耗率は馬鹿にならなかった。
 エムリオン系のサバイバリティの高さから、生還したパイロットの数が、被撃墜数に比して多かった事がせめてもの救いだったろう。
 シン達が対峙していたオルガら生体CPUや強化人間のMS隊も、母艦パウエルの拿捕に伴い即座に戦闘を中止し、新たに指揮権を移されたセルタナへと足早く撤退していった。
 小国対大国の、一種の見世物的な面もあった連合対オーブという図式は、連合対DCとなった事で、DCの辛勝といえる形で収まり、地球連合とザフトの戦争スケジュールに大なり小なり、変化を強制するものとなった。
 連合は宇宙へ主戦場を移すタイミングを大きく逸し、ザフトは地上戦力の撤退を速やかに行えるようになったものの、まだ地上で挽回できるのでは、という欲が出て来たのだ。
 そして同時に世界の目が、ディバイン・クルセイダーズという武装勢力に、否がおうにも惹きつけられる事となった。
 これからが、新たな戦争の終わりを始める戦いとなる事を意識したものが、さて何人いた事か。
 だが、今DCに与しした者達は、勝利の味に一時酔いしれるだけで精一杯だった。
 その裏では連合への勝利により、DCを支持する声がオーブ国内に増えたものの、旧ウズミ政権の中立政策を支持する知識人や在外オーブ人などからの反発は高まり、オーブの正統な後継者であるカガリへの支持とつながる事となった。

「では、アフリカ共同体は我々に協力すると?」
『うむ。プラントへの支援と合わせて、そちら側に食料やレアメタルなどの供出を行う手筈になっている』
「となると、南アフリカ統一機構への牽制も行わなければなるまい。ジブラルタル基地が生きてはいるが、バルトフェルドの敗北でアフリカ大陸のザフトは劣勢に立たされている」

 DC討伐に派遣された連合の艦隊を退けた事で、それまで見向きもしなかった地上各国との交渉に、ヤラファス島地下の行政府は慌ただしさを増していた。
 連合の大敗は世界情勢に新たな一石を投じる出来事であり、DCの存在価値を高くしらしめるものだった。
 この為に、ザフトの支援を受けず単独で連合を退けたのだから、そうでなくては困るというものだ。
 もともと協力関係にあったアフリカ共同体を始め、大洋州連合や南アメリカ合衆国といった親プラント、反大西洋連邦勢力との水面下での交渉は、毎秒は言いすぎにしても過密なスケジュールで進められていた。
 今も、ギナがアフリカ共同体の大使とモニター越しに話をしている。
 宇宙に上がるはずだったのだが、大規模な戦闘での後始末に予想以上に時間を食い、いまだ地上にいる。
 凛々しさと威厳で造り上げた美貌に連日の交渉や戦闘での疲労を出さぬまま、モニターの向こうの、顔に走る傷跡が荒々しい印象を与える金髪の男と向かい合っている。年は四十代後半といった所か。

『こちらは秘匿していたライノセラスと修復したリオン・タイプである程度の戦力は確保している。ザフト側への説明では、無論そちらからの供出品と言い張るがな』
「そうしてもらえると助かる。こちらもあまり余裕はなくてな。とはいえ、こちらで確保したストライクダガーやジン、艦艇を近いうちに回せるよう手配は整えておく。よろしく頼むぞ、バン中将」
『承知』

 バン・バ・チュン。新西暦におけるビアンの右腕的存在であり、もともとは反連邦の、民族解放戦線の闘士であり、DC結成以前からビアンの思想に共鳴して協力していた最大級の理解者の一人であった。
 かの世界でのビアンの死後、アードラーによって一時壊滅したDCを再結成し、ノイエDCを作り上げた逸物だ。
 獅子身中の虫によって、志半ばに倒れた彼もまた、このコズミック・イラの世界への来訪者となっていた。
 彼の場合、死の際に乗艦していたライノセラス級陸上戦艦と一部の乗員、純正DCのAMであるリオンシリーズ、バレリオンシリーズと共にアフリカに転移し、息を潜めて世界と時代の推移を見守っていた。
 そんなある日の事であった。コーディネイター系の反連合組織や、民族的な問題から連合・ザフトと敵対しているレジスタンス達をまとめあげる者達がいる事に気付いたのは。
 瞬く間に経緯も価値観も違う彼らを統率し、一つの勢力として合併させる手腕に、ある男を思い描いたバンの予想は的中する事となった。
 そう、世界各地で弱小勢力や現状の情勢に反旗を翻す者たちを一つにまとめ上げた男は、かつて彼が忠誠を誓った男――ビアン・ゾルダークその人であったのだ。
 ビアンとの合流以降、士気が低下しつつあったノイエDCの兵達も新たな世界で生きる事を決め、彼らはアフリカ共同体の軍部へと潜り込んだ。
 元々持っていた統率力と政治的手腕、ビアンの知己であるサー・マティアスというある男の力添えもあり、バンはアフリカ共同体軍部の中で急速に力をつけ、その影響力は多大なものとなっている。
 打っておいた布石が、徐々に効果を表し始めていた。
 南米アメリカ合衆国出身の連合兵などにも手をまわし、切り裂きエドの名声を利用する形で南アメリカ大陸での連合に対する反攻の準備も整いつつある。
 ザフトも、地上戦力の宇宙への引き上げの為の時間稼ぎとして南米や、ユーラシア連邦の反連合感情の強い地域での工作を行っていて、これを利用する形で着々と用意は整っている。
 なおザフトもそれほど余裕はないのか、これらの工作は半ばで放棄されていた。
 後はそれを仕掛けるタイミングだろう。

『遅くなったが、連合艦隊との戦い、勝利したそうだな。おめでとうと言わせてもらおう』
「ふっ、更なる闘いの幕開けに過ぎん。これで連合の戦争スケジュールは大幅に後退した。月のプトレマイオス・クレーターを始めとした各拠点でもMSの生産は進んでいるが、ビクトリアポートの再建までは宇宙で大きな動きはあるまい。気になる事がないではないが」
『カガリ・ユラ・アスハか? それともラクス・クラインか?』
「耳聡いな。砂漠の砂嵐には宇宙の情報も混ざっているのか?」

 アフリカ北部にあるアフリカ共同体の外に出ていない筈のバンの情報網に、ギナは感嘆の意を表する。有能なものに対して賞賛を惜しむような性格ではない。

『プラントで反戦を訴えるラクス・クライン、オーブを離れオーブという器を受け継いだカガリ・ユラ・アスハ。年若いが、不思議と彼女らの起こす行動の影響力は大きい。それに彼女らを結ぶ線が無いわけでもない。
両者が手を組んだ時、ひょっとすれば、我らの想像も着かぬ事態が巻き起こるかも知れん』
「予言か? バン中将」
『さてな。だが耳に届いていないわけではないはずだが? 月のコペルニクスを始めオーブ所有のコロニー、在外オーブ人を一つにまとめて、宇宙にオーブ政府樹立の動きがある事を』
「カガリか。先を見ぬ愚か者と思っていたが、それなりに賢くなったものだ。この時勢、オーブを名乗ろうともザフト、連合共に大局に影響を及ぼさないと判断して手は下すまい。
だからこそ今、オーブ政府を樹立しておく。戦いが終わった後の事を見据えた上でな。父の庇護を離れた事が、成長を促したか」

 どこか感慨深く、ギナはカガリが今いる宇宙を見通す様に、天井を見上げた。

 所変わり、行政庁のビアンの執務室にて、山積みの書類と格闘していたビアンは、紙束片手に、筆の名人でも人生においてわずかにしか描けぬ秀麗さを湛えた眉を顰めて入室してきたミナに気付いた。
 ……まさか、ヴァルシオン大改修計画その2がばれたか? 
 両腕から圧縮した空気をパンチと共に打ち出す『ヴァルシオン・サドンインパクト』や、発射したクロスマッシャーを纏い体当たりを敢行する『クロスマッシャー・クラッシュ・イントルード』、発生させた特殊な磁力で敵を引きよせてベア・バッグで胴体を真二つにする『ヴァルシオンブリーカー』。
 両腕部に展開した歪曲フィールドと相反する位相の歪曲フィールドの二つを反発させて生じるエネルギーで対象を破壊する『デス・アンド・ライブ』、空間歪曲の応用によるエネルギー転位兵装『マオウ攻撃』、メガグラビトンウェーブを照射後、重力を反転させて固定した敵に正拳突きを叩きこむ『殴殺! 重圧正拳突き』……。
 ビアンは諦めない事を、スーパーロボットから学んだのだ。学んだ事の使い所を間違えているような気がしないでもないが。
 ミナの一言目は何だろうかと、書類を処理する目と手とは別に耳を澄ましていたビアンに届いたのは、ミナの呆れた溜息であった。まだ当たりかはずれか分からないので、ビアンは気を抜かなかった。

「どうした、ミナ」
「なに、一部の兵と将校からフェアリオンの運用について抗議が来ている。内容は下らないのだが……。数がな」

 どうも繊手に抱えた紙全てが抗議書らしい。しかしフェアリオンの運用法についての抗議とは何だろうか?
 フェアリオンについては夢の産物という事もあるが、あまり深く考えずにいる。
 W-³INKシステムといったマン・マシン・インターフェイスシステムを含む機体の仕様については、ビアンにとっても画期的なものだったし、どことなくそれらの装備が一人の天才――ある意味奇才を思い浮かばせていた。宇宙への夢を見続ける一人の青年を。
 まあ、今は寄せられる抗議について耳を傾ける事にした。
 椅子に座ったまま手に届く範囲に置いたサーバーから、ブラックコーヒーを淹れて一口飲む。ミナにも勧めたが、辞された。

「簡潔にまとめれば、パイロットであるソキウス達の事が気に入らんようだ」
「問題はないはず……あの服装か?」
「そうだ。私が選んでやったあの服装が気に入らんらしい。なぜ、男があんな服を着せられてMSに乗っているんだと言う事だ。MS管制官を中心に抗議が来ている」

 ソキウス達の来ているフリルとレースの神に祝福されたかの如きあの恰好が問題視されているようだ。

 ソキウス達の外見はほっそりとした線の細い、色白の美少年だ。
 ただし戦闘用コーディネイターという出自もあり、ほっそりとした体は、より合わせた鋼のワイヤーの強靭さと鞭のしなやかさを併せ持ち、屈強な兵士や格闘家を素手で制する戦闘能力を内に秘めている。
 退廃的で子悪魔的なゴシックロリータ調の服が、あの無機質な無表情と、ともすれば危うい背徳感を見る者に与える病人の肌の白さ、揺らがぬ瞳とが合わさった時えもいわれぬ妖しさを醸し出しているのだ。
 ミナは抗議書の内容の一部を読み上げ始めた。

「『ソキウス達にぜひ綾波レ○と長門○希の格好を、あるいはS○S団の女子三人で! から始まり、ソキウス君にはショタメイドが似合う、巫女服が似合う、バニーが似合う……。
 嫁にくれ、弟にくれ、むしろペットにしたい、いや逆にご主人さまになってもらって甲斐甲斐しく世話をしてあげたい……』
 我がDCの兵もおもったより腐った脳髄の持ち主がいるものだ」

 やれやれと深い溜息をつくミナに、きっかけをつくったのはお前だろう、とビアンは思ったが口にはしなかった。今更言っても仕方ないし。

「オーブにそのような土壌が出来ていたという事だろう」
「それを言われると返答に困るな。これでは、いささか我が民と呼ぶのも気が引ける」

 そんなわけで、ビアンはしばらくミナの愚痴を聞いて時間を過ごした。それだけを言いに来たらしい。
 ミナが愚痴をこぼす相手がビアン唯ひとりなのは、さてどんな意味があるのやら。

 執務室での一日で腰痛や近眼を発症できそうなデスクワークを終えたビアンは、オノゴロ島のスペースノア級用の地下ドックの更に下層にある、極一部のものしか知らない特殊秘匿フロアにいた。
 更にそこから何重にも隔壁が下ろされ、核シェルターを凌駕する堅固さを誇る地下通路を通り、オノゴロ島沿岸、数十キロの地点にあたる場所に辿り着く。保管する物質の危険性が、これだけの設備を要求したのだ。
 海底に突き出た岩に偽装された展望室から、執拗に隠されて海底に眠るソレを見下ろし、ビアンは先客の横に並んだ。目の前では強化ガラスと膨大な量の海水を経て、巨大なソレが今も眠っている。
 タマハガネの艦長に就任したエペソが先客だった。横に並ぶビアンを一瞥して、再び眼下のソレに目を戻す。

「故郷を思っていたのかね?」
「気にならんとなれば嘘になる。余を打ち倒したαナンバーズとて、創世神ズフィルードの裁きには抗えぬだろう。……だが、彼らならばと、思わずにはおれぬ。故に、パルマーの未来がどうなるか、考えられずにおれようか」
「αナンバーズ、か。私の知らぬ希望の旗の名だ。君にとっては複雑かもしれんが私には朗報に近いものがある。ゼ・バルマリィ帝国、ゾヴォーク、ゼントラーディ、メルトランディ、STMC、バッフクラン……。
 私の知る以上の脅威が宇宙に満ちている事は驚きであったがな。この宇宙ではどうかね?」
「それは余にも分らぬ。ヘルモーズは沈み、ズフィルードもまた倒れている。貴公の観測データを見せてもらったが、まだ不十分と言うほかあるまい。
 なにより、余のいた宇宙でもそうであったが、コーディネイターとナチュラル、愚かな争いが宇宙を塞いでいてはな。余の知るのと、この世界の争いもさして変わらぬ状況になっているようだな」

 その言葉には地球人への侮蔑が混じり、この世界でも行われる地球人同士の争いに、エペソは嘲笑を向けている。
 宇宙存亡の事態に陥ってさえ地球圏内での地球人同士の戦いが続いたエペソの宇宙の地球。
 その一場面で描かれた戦争図がこの地球でも行われていようとは。争いこそが人の本質だろうか。
 そしてそれはDCを結成したビアンにも当てはまる事ではないだろうか?
 エペソの視線はそれをビアンに問いかけていた。
 お前の行いは、プラントのコーディネイターやブルーコスモスらとどれほど違うと言うのか、と。
 ビアンは甘んじてその視線を受け止めた。そうだ、戦いという手段を選んだ以上、ビアンもさして変わりはしないのだから。

「宇宙を塞ぐのは人か。母星を傷つけ汚し、何を得るのか。そう考えされる事もないではないがな。だが、一度踏み出した足を止める事は出来ん。その道の行き着く先まで行くのも踏み出したものの責務ではないかな?」
「よかろう。世界は違えども地球という星に産まれたものの未来、見届けさせてもらおう。地球人が愚かな存在であるか否か……。パルマーの民が手を取り合うべき存在であったかを知るために」

 もう、遅いのかもしれないがな、小さく呟き、エペソは再び海底に眠るソレに視線を戻した。
 深海の静寂をビアンもまた共有して、ソレを今一度見つめた。暗い海のそこで眠る巨大な……。

 マルキオ導師や孤児院の子供達、オウカはDCが連合艦隊の撃退後、避難用のシェルターからヤラファス島にあるホテルへと宿を移していた。
 ビアンの手配で、孤児院にいた全員が、温かい食事と寝床を十分に満喫する事が出来た。
 夜も更け、むずがる子供達を寝かしつけたオウカは、暗くなった窓の外の風景を少しだけ見つめてから、リビングのソファに腰を下ろし、短くため息を吐いた。
 心あるものなら、オウカの胸の内にある暗いものを取り除いてあげたいと思うような、重い溜息だった。
 しなやかな足を組み、ミネラルウォーターの瓶を一本冷蔵庫から持ってきて一口だけ口をつける。
 オウカが落ち着くのを待っていたのか、リビングにもう一つ別の人影が入ってきた。
 極上の絹糸を純白に染め上げたような髪に、小ぶりな造りの顔に気品をたたえた美少女だ。オウカと年はさほど変わらないだろう。
 髪の色に合わせたのか、白いワンピースというシンプルな服装だ。顔を上げたオウカが何か言うよりも早く、向かい合うようにすわり、意志の強さが伺える瞳で真っ直ぐオウカを見た。

「悩み事がある、そういう顔だなオウカ。宇宙に上がるプレアが心配か?」
「そうね、あの子は体も弱いし、気にならないといえば嘘になるわ」
「……どうやら心配の種はプレアだけではないらしいな。オウカ、なにを恐れている?」

 少女の言葉はオウカの、心の悩みの本質を突いたようで、オウカは均整の取れた体を強張らせた。
 それも一瞬で解くと、オウカは観念したように背もたれに体を預けて、憂いをたたえて瞳を半ばまで下ろした。

「この前、私はMSに乗ったわ」
「勇気があると私は思ったが?」
「気休めを言うのも下手ね……。違うのよ、戦いが怖かったことではなくて、怖くなかった事。懐かしさのようなものを感じたことが、私は恐ろしいの。
失った記憶の中で私がいったい何をしていたのか、それを知る事になりそうで私は怖い。私はいったい何者なのか? その答えが、私は怖い」
「なるほどな。知らない自分の行いを知る事が恐ろしいか……。だが子供らと過ごす日々の中ではそのようなことを知る事にはなるまい。では、なぜお前がソレを恐れるのか。オウカ、お前戦場に立つのだな?」
「ええ。プレアと一緒に宇宙に上がるわ」
「マルキオに言われたか?」

 不愉快さを隠さず少女は苛立ちをこめて言う。オウカは弱弱しく、しかし確かに首を横に振った。

「いいえ、私の意志よ。あの子達が戦争なんかに巻き込まれない為に私が出来ることをするだけ。その為になにをすべきなのか、私なりに考えた結果なだけ」
「……馬鹿者め。お前が死ねば子供達が泣く」
「そうね、自分でもそう思うわ」

 少女はどうしようもない運命を前にしたもののように嘆息した。梃子でも動きそうにないオウカの意思を感じ取ったからだ。
 一瞬、マルキオを罵りたい衝動に駆られたがかろうじて喉の奥に飲み込み、代わりにこう言った。

「仕方ない、私もお前に付いて行ってやる。抗議及び質問は受け付けんぞ。もう決めたからな」
「だめよ、貴女まで私に付き合うことなんて」
「受け付けんといったはずだ。それに私はお前ほどあの子達に懐かれてはいないしな。それに戦いには慣れている。お前が死んであの子達が悲しむことの無い様、私がお前を守ってやる」
「そんな、そんな事……」
「ふふ、お前や子供達には感謝しているのだ。本当に久方ぶりの安らぎを与えてくれたことにな。その恩を返さぬとあっては、黄泉の父と母に叱られてしまうのだ」
「……貴女も馬鹿ね、ククル」
「今に始まったことではないさ」

 ククルとオウカ、二人の少女は、どこか淋しげに笑いあった。
 それから数日の後、泣きじゃくる子供たちと別れて、プレア、ククル、オウカの三人を乗せたシャトルが、宇宙へと飛んだ。

 エペソ・ジェデッカ・ゴッツォが仲間になりました。

 ズフィルードクリスタルを入手しました。
 αナンバーズを始めとするαシリーズのデータをおおよそ入手しました。

 こんばんわ、今回はここまでです。結構キャラも出ましたので、簡単な早見表も考えました。載せ忘れはいない……はず。
 オウカ姉様、ククルが戦場へ。……ところで二人の乳はどんなレベルでしょうね? 普通でしょうか、無難に?

 スパロボ系登場キャラ所属一覧

ディバイン・クルセイダーズ
 ビアン・ゾルダーク(OGs)
 クエルボ・セロ(OGs)
 テンザン・ナカジマ(CE生まれ)
 エペソ・ジュデッカ・ゴッツォ(第三次α)
 マイヤー・V・ブランシュタイン(OGs)
 リリー・ユンカース(OGs)
 ユーリエ・ハインケル(OGs)
 ロレンツォ・ディ・モンテニャッコ(漫画版)
 バン・バ・チュン(OGs)※現在はアフリカ共同体に所属
 ユウキ・ジェグナン(CE生まれ)
 リルカーラ・ボーグナイン(CE生まれ)
 ローレンス・シュミット(CE生まれ)※エイリアン魔獣境より

AAおよびクサナギ(オーブ艦隊)
 ダイテツ・ミナセ(OGs OR CE生まれ?)
 カーウァイ・ラウ(OGs)
 オウカ・ナギサ(OGs)
 ククル(第二次α)

地球連合
 アードラー・コッホ(OGs)
 ジーベル(OGs)

ザフト
 ????

ラクス・クライン
 ????