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SRW-SEED_ビアンSEED氏_第36話2

Last-modified: 2013-12-26 (木) 21:24:08

第三十六話 刃折れて 中編4

 ドルギラン、タマハガネ、カタールでも各MSの発進準備が整い、動きを見せた。ドルギランにはWRXチームとサーベラス。
 タマハガネにはガームリオン・カスタムがアルベロ、ジャン、スティングの三機、アーマリオン、ガームリオン・カスタム飛鳥、ラーズアングリフ改、ランドグリーズ改、エムリオン、バレルエムリオンV、それにゼオルート用のM1カスタムがある。
 ゼオルートの使用していたPTジンだが、無明との戦闘によるダメージが致命傷となり廃棄される事になった。その代りとしてゼオルートが選んだのがM1だった。正確に言えばリオン・パーツをパージしたM1部分だ。
 剣戟戦闘を重視し、デッドウェイトや火器の類を減らし、固定武器であったイーゲルシュテルンさえも除外し、ビームサーベルとジンの使う重斬刀をジャン・キャリーの開発した超精度研ぎ機と、シシオウブレードの技術の応用で鍛え直した両刃の実体剣を装備している。
 他にもビームサーベルが二本。一応の火器としてオクスタンライフルを腰にマウントしている。もともと軽量だったM1をさらに軽量化し、重量は五十トンを切るまでになっている。
 OSも繊細に調整しているから、ゼオルートの技量を遺憾なくとまではいかないが発揮できる筈だ。
 カタールには、今回トロイエ隊からの出向組が三人、その中にはレオナ・ガーシュタインも含まれており全員がガームリオン・カスタムに搭乗している。それとエムリオンが一機。さらに目玉は修復し終えたジガンスクードだろう。
 これのパイロットには改めて適性検査を行い、見事パスしたタスク・シングウジが搭乗している。レオナとタスクにもまた念動力の素質が認められ、二人の機体には密かにカルケリア・パルス・ティルゲムが搭載されている。
 これにクルーゼ隊からはジンが十二、ゲイツが二。ウィクトリアからはジャスティスとフリーダムが一機ずつと、シグーが二機出撃している。
 合計三十八機に及ぶ戦力だ。連合、アークエンジェル側の戦力を一度に相手にする位ならこなせる質と量を誇る。ただし、今まで息を潜めていた巨神と黄泉の巫女を除けば、の話ではあるが。

 いつも通りの発進シークエンスを終えて、メンデルが視界いっぱいに広がる宇宙に飛び出たシンは、今回のターゲットであるアークエンジェルを感慨深げに見ていた。
以前、アークエンジェルとザフトがオーブ近海で戦闘を行っている事がニュースになり、その時のシンは、それをどこか現実離れした光景の様に見ていた。
 それが今はどうだろう? こうしてMSのコックピットに乗り込み、あの時テレビのモニター越しに眺めていた戦艦に攻撃を仕掛けようとしている。
 運命と言うものがあるしたら、なんとも数奇なものだ。未来と言う奴もどうなるか分からないようにできているものだ。
 アルベロの指揮の下、DCのMS隊が陣形を取ろうとした時、ヴェサリウスから全周波で通信が送られてきた。確かマドラスの時と同じ隊長が指揮を取っているらしい。ラウ・ル・クルーゼと言ったろうか。
『地球連合軍艦アークエンジェル級に告げる』
 しかし、なんだってこんな戦闘の直前にわざわざドミニオンやゲヴェルに向けて通信を送るのだろう? エターナルに降伏勧告をするならまだしも……。
『戦闘を開始する前に、本艦において拘留中の捕虜を返還したい……』
 ますますおかしい。停戦を求めるでもなく、MS隊に戦闘の用意をさせておいたら、相手がこちらを疑うのは火を見るよりも明らかだ。そんな状況で捕虜の返還など出来るものか。シンは、クルーゼと言う男が何を考えているのか分からず首を捻りたくなった。
 しかし、ヴェサリウスからもMSが発進し始め、クルーゼが攻撃を命じた以上、今回ばかりはこの仮面の男に従うしかない。アルベロも承服しかねる色をわずかに表情に浮かべていたが、シン達に攻撃命令を告げる時には、何時もの軍人の顔をしていた。
 となればシンのやる事は変わらない。ステラのアーマリオンと共に先陣を切り、しっちゃかめっちゃかに敵をひっかきまわして、混乱している所を一気に叩くのだ。
「ああ、もう! シンたらまった無茶して!」
「愚痴を言っている暇はない! 援護するぞ、カーラ、テンザン一尉」
「ホ! あれがあいつらの持ち味だってのよ」
 最初から全力で飛ばして行くアーマリオンと飛鳥に気付き、カーラが心配そうな声を挙げるが、その暇さえ惜しめとばかりにユウが叱咤を飛ばす。すでにFソリッドカノンの照準をつけていた。
 テンザンはテンザンで、シンとステラの凹凸コンビの特攻を楽しげに揶揄する始末だ。個性的と言えばいいが、それなりに問題児が揃った部隊である。

 アークエンジェル側でも、負傷したムウと被弾したストライクがフリーダムによって運びこまれ、キラはそのまま休むことなく出撃する。
 心にクルーゼによって暴かれた自身の闇を抱えたまま。
 また地球連合側でも、アズラエルの言っていた援軍が到着し、レフィーナの号令の下再度の攻撃が行われようとしていた。
 援軍のアガメムノン級とネルソン級はストライクダガーではなく全機105ダガーで揃え、ジェニファーが搭乗していたのと同型のヴァイクルが搭載されていた。
 更に、赤をメインにしたカラーリングの50メートル近い人型のスーパーロボットがあった。アズラエルの言っていたミタール・ザパト博士が作り上げたTEアブソーバー・ガルムレイドだ。
 アガメムノン級の専用格納庫の中で専用パイロットである青年が、出撃に備えコックピットで待機している。
 明るいオレンジ色の髪を逆立て、炎のような形の太い眉が印象的な青年だ。十分に二枚目で通用する顔立ちだが、少しばかり無愛想とうべきか、無表情で人を近づけない雰囲気がある。 
 臍や胸筋が露出した黒いラバーの様な服の上にジャケットを身につけ、パイロットスーツ無しで出撃するらしい。
「着いた早々出撃とはな」
『不安でもあるのかね? ヒューゴ・メディオ少尉』
 ガルムレイドのモニターに、眼付の険しい4,50代の研究者風の男が映る。俗人の欲望と稀な知性を併せ持ったタイプだ。研究一筋に暴走しがちなこの手の人種にしては珍しい方かも知れない。
「ミタール博士か。多少はな。だがおれの仕事は完遂する」
『それでいい。ガルムレイドが有能な兵器である事を存分に証明してくれたまえよ。そうでないとスポンサーに資金援助を打ち切られてしまうのでね』
「あまり、出撃する前のパイロットに言うのには相応しい言葉ではないな」
『そうかね? ではガルムレイドのおさらいでもしようか? 新型のTEエンジンの搭載で、出力調整と操縦を一人のパイロットでもこなせるようにしてある。コ・パイロットの事を気にせず操縦できるから、要らぬ煩わしさは無いだろう?』
「それはそうだが。……何故だろうな。このシートに随分と長く座っていたような……。そんな感覚がする。馴染んでいる、といえばいいのか」
 馴染んでいる、ヒューゴの言葉に、ミタールはわずかに眉を動かしたが、内心の思考を表には出さず、どこか含むようになにか言葉を誤魔化した。
『……ふむ。君の機動兵器への順応性が高いのかも知れんな。とりあえず生きて帰ってきてくれたまえ。最悪、機体さえ無事ならそれで構わんよ』
「言ってくれる。悪いが出撃のようなのでな、ここで切らせてもらう」
『ああ』
 モニターが暗転し、ミタールの代わりにオペレーターの顔が映る。青い髪の、ヒューゴと同じ位の女性士官だ。ガルムレイドの運用試験で、何度か言葉を交わしている。言葉の少ないヒューゴのどこが気に入ったのか、何かと差し入れてくれる。
『ガルムレイド、発進どうぞ!』
「ガルムレイド、ヒューゴ・メディオ出撃する!」
――例え、ブルーコスモスの盟主の命令だろうが、ミタールの欲望の駒であろうが、おれが戦場でするべき事は一つ。生き残る事だ!

 ザフト、連合の両方に挟まれた形になるアークエンジェル側は一見、絶体絶命の危機に陥ったかの様に思われた。
 だが、ここで彼らは最後の切り札を切って見せた。それは、後に両軍の一部の兵士達に伝説として語り継がれる事になる巨神の出撃だった。
 先行するシンとステラ、ジガンスクードに乗っている事でアウルに突っかかられているタスク、それを呆れながら聞いているレオナ、ラーズアングリフ改とランドグリーズ改で支援砲撃を行っていたユウとカーラの脳裏に、圧倒的なプレッシャーがのしかかる。
「ゆ、ユウ!? なにこの感じ……重い? ううん、何か剣? 斬られるの?」
「くっ、非科学的な。姿も見えぬ相手から重圧を感じているのか? 一流のパイロット達は確かに相手の殺気や気配を感じると言うが、それにしてもこれは!」
「なんだか、ヤバイ感じがして来たぜ。レオナちゃん、いざとなったらおれとジガンを頼ってくれよ」
「こんな時にでも、そんな口が聞けるのは大したものではあるけれど。貴方にもそんな余裕はないのではなくって?」
 物理的な圧力さえ伴う途方もない存在感が、メンデルから出現しようとしている。
 それまでメンデル内部で温存されていたエターナルとシュリュズベリイが姿を見せ、シュリュズベリイの中央の巨大な格納庫が上向きに開き、膝をついていた巨人がゆっくりと立ち上がる。

 太陽の光と戦闘の爆光に照らされながらそれは雄々しく立ち上がる。人よ聞け、天よ知れ、世界よ慄け。この人機一体の巨人こそは星をも薙ぐ刃ぞ。
 巨大なショルダーアーマーを飾る赤い菱状のクリスタルを埋め込んだ黒い突起状のパーツが、伸ばされた巨人――スレードゲルミルの掌に引き寄せられるようにはずれ、虚空で旋回する。 
 みるみるうちにその片方から長い柄をはやし、それをスレードゲルミルの両手が掴み取るや否や、柄とは反対の方向へと向かい、青い流れがぐんぐんと伸びてゆく。
 それを目撃したシンは、我知らず興奮と共にそれを口にした。
「刃、でかくてすごい、青い刃だ!!」
 液体金属を用いた参式斬艦刀が自律金属細胞マシンセルによって変貌した一撃必斬の刃“斬艦刀”。スレードゲルミルの全長を悠々と超える斬艦刀を片手で握り、スレードゲルミルはそれを一振りした。
 耳をつんざく轟音。シンは聞こえぬ筈のそれを確かに聞いた。真空の宇宙を薙いだ斬艦刀のひと振り。それはシュウ・シラカワのグランゾンとも、ビアンのヴァルシオンとも異なる途方もないプレッシャーを前に感じた錯覚であったか?
 否。戦士、そして剣士としての性がスレードゲルミルとそれを駆るパイロットの技量を本能的に感じ取り、そのイメージとして、宇宙を薙ぐ刃の音をシンは聞いたのだ。
 途方もない敵だ。有り得ざる敵だ。二度とは巡り合えぬ敵だ。
 我知らず飛鳥の操縦桿を握るシンの腕が震える。ムラタと相対した時と同様、それ以上の戦慄が背筋を走り、武者震いへと脳が変えた。アドレナリンが一生分分泌されていそうだ。あいつは、とんでもなく強い。
 スレードゲルミルが全周波で通信を開いた。直後、混迷する戦場に轟いたのは、巨大な山脈が言葉を発したかと思うほどの強く、大きい叫びであった。
「我はウォーダン、ウォーダン・ユミル!! ラクス・クラインの剣なり!! 命惜しき者は我が前に立つな。立塞がりし者は森羅万象すべてこの斬艦刀の露となって果てるのだ!! 咆哮巨神スレードゲルミル――推して参る!!!!」
 ウォーダンの口上が終わると同時に、スレードゲルミルの背に回された巨大な鮮血色のドリルが回転を始め、火花を挙げて猛烈な勢いでスレードゲルミルの巨体を加速させる。
「!? ほ、咆哮巨神? 何を言っているんだ」
「か」
「シン?」
「カッコイイ!!」
「ちょ、お前!?」
「あー、ビアン総帥がすんごい喜びそうだな。アレ」
 ウォーダンの言葉に呆然とするアウルと、逆に感銘を受けるシン。スティングはどこか遠い目をしながらスレードゲルミルを見たビアンの反応を想像していた。
 あのいい年したDC総帥なら、絶対に喜びそうな相手である。なんというか、スパロボ魂? とか言いながら。
「喋る余裕はないぞ! ああいう手合いは途方もなく強敵か、底抜けの馬鹿かのどちらかだ」
 叱咤するアルベロの声にスレードゲルミルを振り返れば、既にその巨体はシン達の間近にまで迫っていた。
「な、この巨体でこのスピード!?」
「チェストオオオ!!」
 シンの動体視力を持ってしても、かろうじて青い光が流れたと見えたほどの神速で斬艦刀が翻る。ほとんど直感に従い、機体を後方に下げたシンは、わずかに斬艦刀の刃圏から逃れる。
 かわせたと理解すると同時に一気に冷や汗が噴き出した。かすめただけでも真っ二つにされると、一撃で理解できてしまったからだ。
「そいつに接近戦を挑むな! 距離を置いて戦うぞ」
 言うが早いか、スティングは既にスレードゲルミルから距離を置き、オクスタンライフルの引き金を引いていた。
 アウル、テンザン、シンもそれに倣い、一斉に銃撃の雨を降らす。
「その様な小細工では、このおれとスレードゲルミルを討つ事能わず! わが拳に砕けぬもの無し! 貫け、ドリル・ブーストナックル!! 煌け、斬艦刀・電光石火!!」
 斬艦刀を右手一本で握り、背のドリルを前方に展開し左手に装着。赤いネルギーを飛沫を零しながらドリルは凄まじい勢いで回転を始め、ウォーダンの叫びと共に射出される。
 さらに斬艦刀を右手一本で引き絞り、霞んで見えるほどの高速で前方に突き出すと、エネルギーに変換されたマシンセルが、まさしく電光の如き光となって射出される。
 シン達はそれをかわしたが、射線状の先に居たクルーゼ隊のジンが直撃を受け、ドリル・ブーストナックルで瞬く間に三機、電光石火で二機のジンが撃墜される。
「なんて無茶苦茶な攻撃力だ!? ヴァルシオン並か、それ以上じゃないか!」
 あんなの反則だと、シンは叫ぶ。ヴァルシオンを前にした連合の兵士の気持ちが今ならよく分かる気がする。飛鳥で接近戦を挑むか? 頭の片隅でそんな思考が湧いたが、即座に真っ二つにされた自分のイメージが湧き起こる。

「くそ!? あんな隠し玉ってありかよ!」
「彼の相手は私に任せていただこう!」
「え!?」
「駆けよ、トロンベ! その名の如く!」
 その瞬間、シンの飛鳥の傍らを漆黒の機体が駆け抜けた。放った拳を再装着したスレードゲルミルに無謀とも言える勢いで漆黒の竜巻は迫る。
 シンの脳裏に両断される機体の姿が瞬時に描かれた。
「む! 来るか、その意気や良し!」
「ふっ、いただく!!」
 それは黒いジャスティスだった。ブリッツ辺りのPS装甲の電圧を参考にして、PS装甲の電圧を調整する事でフェイズシフト後のカラーリングを意図的に変えているのだろう。機体の一部に赤や金色のパーツも見て取れた。
 黒いジャスティスが背に負っているのはファトゥム―00では無かった。もともと誘爆の恐れがある機関砲をやたらと備え、よく意味の分からないリフターと言う装備だ。 せいぜい体当たりか、長機飛行用の足場位にしか使えない。第一ザフトには既にグゥルがある。
 他にもジャスティスはファトゥム―00を失うと極端に射撃兵装がなくなるという欠点がある。ビームライフルと頭部の20mmぽっちの機関砲だけだ。
 逆に接近戦での装備は充実しているが、フリーダムとの運用を前提にしているだろうからまだいい。
 しかし撃墜される恐れのあるリフターや、同じく撃墜された場合や、戻ってこない可能性もあるバッセル・ビームブーメランを嫌ったエルザムの意向で、ファトゥム以外のバックパックが開発され、このジャスティスにはそれが装備されている。
 端的に言えばフォルティスビーム砲をジャスティス本体に半固定式に装備して、エールストライカーの様な高機動戦闘を可能にする大型のスラスターに赤外線誘導式のホーミングミサイル12基を収めたコンテナが二基装着されている。
 アスランに与えられたジャスティス一号機よりも、整備性や稼働性と言った信頼性も増し、全体的な性能もわずかだが上昇している。
 それが、このジャスティス・トロンベだ。
 スレードゲルミルに向けられたルプス・ビームライフルが信じ難い速度で立て続けにビームを放ち、斬艦刀の腹でスレードゲルミルは受ける。
 オートではなく、マニュアルによって高速で引き金を引き、照準を補正するエルザムの神技の如き連射である。
「むん!」
 ウォーダンは構わずビームの雨にスレードゲルミルを晒しながら、加速させ、スレードゲルミル頭部のドリルが赤く発光しながら回転を始める。
 両腕が使えぬ際の非常用の装備か。
「我が猛撃を受けよ――ドリル・インフェルノ!!」
「かわせ、トロンベ!!」
 下手な高機動MSを上回るほどの加速でスレードゲルミルは迫り、エルザムは普通なら左右上下に回避する所を逆にスレードゲルミルめがけてジャスティス・トロンベを突進させた。
 まさか敵からこのドリルの地獄へ突っ込んでくるとは想定しなかったウォーダンは、予想よりも早く詰まった間合いを修正するのに、わずかな時間を浪費した。
「いただく!」
 スレードゲルミルとすれ違いざま、ほぼ零距離からルプス・ビームライフルを撃ち込み、すれ違ったと同時にバックパックのミサイルコンテナからすべてのミサイルをスレードゲルミルに撃ちこむ。
 たちまち、スレードゲルミルは爆発の中へと飲み込まれた。ヤキン・ドゥーエの防空隊を歯牙にもかけず圧倒したウォーダンとスレードゲルミルを相手にここまで!
 アークエンジェルに帰艦し休む間もなく出撃していたキラと、連合の新型G三機を相手にしていたアスランが、黒いジャスティスの戦いに驚愕の表情を浮かべる。
「黒い機体、あの操縦技術。間違いない、あのジャスティスのパイロットは“黒い竜巻”エルザム=V=ブランシュタイン隊長」
「知っている人なの、アスラン?」
「ザフトのトリプルエースの一人だ。“グリマルディの白い悪夢”ラウ・ル・クルーゼ。“ザフトの青い剣”ラルフ・クオルド。そして“黒い竜巻”エルザム=V=ブランシュタイン。確かにあの人ならジャスティスやフリーダムを任されてもおかしくはない!」
「でも、ウォーダンさんもあの程度じゃないよ。あの人は……」
「ああ」
 ジャスティス・トロンベのコックピットの中で、エルザムは爆発のわずかなら揺らぎを見て取った。やはり、あの程度では落ちてくれないらしい。
「まだ、おれの刃は折れてはいないぞ!!」
「やはりな!」
 大地にしっかりと根を張った大樹の様に揺るがぬスレードゲルミルが、両手に握った斬艦刀を横薙ぎにジャスティス・トロンベに叩きつけた。
 エルザムは持ち前の反射神経でそれを回避して見せる。刃の起こす風があったならば、コックピットまでをも揺るがしていただろう。
 PS装甲など、この刃の前では薄紙の様なものだ。気休めになればまだマシだろう。まさに一撃必殺、否、一刃必斬。受ける事叶わず、ただ避ける他はない。
「各機へ、この男は私が抑える。諸君らはエターナルと地球連合を!」
「了解!」
「させん!!」
「ここを通すわけには行かぬ。今しばし私に付き合ってもらうぞ。駆けよトロンベ。その名の如く!!」
「むう!?」
「ふっ、言った筈だ。私の相手をしていただくと」
「……よかろう。我が斬艦刀の露と果てるが良い」
(――やはり、この声。そしてなによりこの気迫。我が友ゼンガー・ゾンボルトのもの。いや、彼以上か? だとするならばこのウォーダンと名乗る男は一体? それにこのスレードゲルミルと言う機体も、この世界ではあり得ぬ代物だ。
 他にも、あのゲシュペンスト。あれは、カーウァイ隊長と共に消えた筈のゲシュペンスト二号機。ふっ、どうやら死人であるはずの私がここに居る以外にも何かが、この世界にはあるようだな)
 いくつもの疑問が脳裏をよぎるが、眼前のウォーダンとスレードゲルミルを前にすればそれは死につながりかねない余計なモノだ。エルザムは、詰まる所全力で戦う以外にないと、決意を固めた。
 果たして、このトロンベでどこまで戦えるか。久しぶりに腕が鳴る思いだった。