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SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第06話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 00:31:34

第6話「人の業」

DC残党軍のユウキが率いる部隊にビルトファルケンを強奪された特殊戦技教導隊を回収したシロガネは補給と修理のためにいったんハワイのヒッカム基地に寄港していた。
機体の整備を終えたシンは一息つくべくブリットとともにブリーフィングルームに入っていく。
するとそこでは、シロガネ艦長であるリーに報告を終えた現教導隊の3人がおり、カイ及びライが重苦しい表情を浮かべながらラトゥーニの話に耳を傾けていた。
隊長のカイが強奪されたファルケンに搭乗していたラトゥーニから強奪部隊に関する聴取を行なっていたのである。

「では強奪犯のDC残党の中にかつてのスクールのメンバーがいたというのか?」
「はい…アラド、そしてゼオラ…」

驚きの表情を隠さないカイに対して、ラトゥーニは一見何の驚きもないような表情で応える。
だがそれは予想できていたパターンの1つ。
生きているということだけで最悪の結末でこそなかったが、かつての仲間が敵の中にいた、その仲間が自分に向けて発砲した、これらの事実がラトゥーニの心に重くのしかかる。信じたくない現実が彼女を覆っていた。

一方でブリーフィングルームの端っこに腰掛けていた異世界からの来訪者であるシンには彼らの話の内容が当然ながらイマイチ理解できない。

「なあブリット、スクールってのは何なんだ?」
「あ、そうか。お前は知らないよな。スクールというのは…」
「それについては俺が説明してやってもいいが、お前がビルトシュバインのパイロットか?」

部屋の中心にいたヒゲの男がシンに話しかけてきた。伸びた背筋にやや低い声、広い肩幅に漂う大人の貫禄。
いかにも軍人、といった感じがする男である。
どうしてかつての自分の周りにはこのような典型的な軍人風な人間が1人もいなかったのか。
シンのいた部隊が新型艦であるミネルバで、議長であるデュランダルの息のかかった部隊だという特殊な事情はあるが、仮にも一国の軍隊としての位置付けをされるべきザフトにいたシンの周りにはまことに奇妙なことに軍人っぽい軍人が1人もいなかった。
シンは実に今更ながらではあるが、そのことが不思議に思えた。

「はい。シン・アスカです。ビルトシュバインのデータ集めのためにシロガネに来たマオ社のテストパイロットです」
「特殊戦技教導隊隊長のカイ・キタムラだ。よろしく頼む。ブリット、久しぶりだな」
「はい。お元気そうで何よりです。またこんな形での再会になってしまいましたが…」
「ああ、例の事件以来だな。お前も元気そうで何よりだ」

カイ・キタムラ。どこかで聞き覚えのある名前だな、と思いながらシンは自分の記憶を遡る。
やがてその名前がエルザムやゼンガーから聞かされたことのある名前だということを思い出す。
それを思い出すと、さきほど見た戦闘記録-旧式機である量産型ゲシュペンストmkⅡでユウのガーリオンと互角以上に渡り合った記録―の奮戦振りも納得がいった。

「ライディース・F・ブランシュタイン少尉だ。よろしく頼む」
「シン・アスカです。よろしくお願いします」
(ブランシュタイン…そうか、この人がエルザムさんの…確かにどことなく似ているな)
「スクールの説明だったな。スクールというのは…」
「カイ少佐、スクールについては私が説明します」

カイを遮ったのは先ほどまで事情を説明していたまだ顔に幼さが十分に残っている少女であった。

(こんな子がどうして戦艦に?いや、メイリンもあのくらいだったか)

スパイ容疑のかかったアスラン・ザラの脱走の手助けをしてザフトを裏切った上にミネルバの前に立ち塞がったかつての仲間の1人をシンは思い出すが、それをラトゥーニが知る由もない。
そして彼女は語り始めた。彼女自身が味わってきた数々の非道な所業の数々も含めて…

「…以上が私の知っているスクールについての全てです」

「クソ!!!」

シンが拳を壁に叩き付ける。彼の中に渦巻いているのは怒りであった。
スクールで行なわれてきた非人道的な実験等に対する、たいていの人間にある正義感から来る怒り、自分達の世界で出会ったエクステンデットと呼ばれた少女を救えなかった自分の非力さを思い出しての怒り、その少女の敵を討つことすら出来ずにオーブで敗れ去った挙句、異世界に飛ばされた無力な自分への怒り、そして世界を跨ぎ、2つの世界で何の関連もないのに同じような所業を行なう者達への怒りがシンの心の中で渦巻いていた。

「どいつもこいつも…そんなに戦争がしたいのかよ!?」

1人、誰に対してでもなくそう吐き捨ててシンは部屋を後にした。

「シン…」

シンの肩に手を伸ばして止めようとしたが断念したブリットが呟いた。

「ブリット、彼がマオ社のテストパイロットだということ以外に何か知っているか?」

今まで沈黙を保っていたライディース・F・ブランシュタインが腕を組みながら口を開いた。
その視線は兄であるエルザムと同様に鋭く、シンの言動から何かを読取っていた。

「いえ、自分は…何か気になることが?」
「いや確たる根拠がある訳ではないからなんとも言えんが…」
「構わん、言ってみろライ」
「何というか彼の怒りはスクールで行なわれていたことに対するものだけではないような気がする。
 まるで似たような経験をしてきたか、体験もしくは機関を知っているかのような…それを軍需産業とはいえマオ社のテストパイロットという民間人である彼が知っているとは考え難い。それに…」
「何だ、まだあるのか?」
「はい。彼がビルトシュバインに乗っている理由です」
「それは俺とギリアムが提出したゲシュペンスト強化プランの一環だと聞いたが?」
「そうだとしたらゲシュペンストに乗った方がいいでしょう。
 ビルトシュバインがゲシュペンストの系列機だとしても量産機ではありません。ブリット、彼の腕はどのくらいかわかるか?」
「はい。彼のパイロットとしての能力は自分と比べても遜色のないものだと思います」
「ならばなお更だな。ATXチームに遅れを取らずに機体を扱えるような腕のパイロットならばマオ社では他の機体、まだロールアウトこそしていませんがビルトビルガーを始めとしてパイロットが決まっていない新型機はいくつもあります。
 それにヴィレッタ隊長が乗っていたビルトシュバインに突然、民間のテストパイロットが搭乗するというのは…」

量産機と言い切られたゲシュペンストをこよなく愛するカイも、やや複雑そうな顔を浮かべながらライに続く。

「む…確かによく考えてみればゲシュペンストの系列機のテストならば俺達、現役の軍人がやればいいしな。
 わざわざ民間のテストパイロットにさせなくても喜んで強化プランに参加する軍人は多いはずだ。
 民間のテストパイロットがしかもビルトシュバインに乗っている、というのも不自然と言えば不自然だな」
「でも…悪い人じゃないと…思う」

意を決したようにラトゥーニが言った。

「そうだな。俺もいろんな奴を見てきたが、どうにも人を騙したり裏切ったりするのが得意なタイプとは思えん」
「同感です。どちらかというと、どこぞのロボットバカに近いタイプのような気がします」
「そ、そうですよ!自分はあいつと一緒に戦ってきましたが背中を預けられる人間だと思います」

(とすると、ますますわからんな…一体何者なんだ?)

怒りに身を任せてブリーフィングルームを飛び出したシンであったが、特に行くべき所もない彼の足は格納庫へと向かっていた。
自分に出来ることは戦って誰かを守ることだけなのだということをシンは無意識のうちに自覚していたのである。
そして格納庫に到着するも、彼の意識はまだその内面に向けられており、視線の先にはない。

(こっちの世界でもステラみたいな子が…くそ!どうしてあんな酷いことができるんだ!?)

「やはり機密通信装置は使えんか…どうしたものか」

格納庫の隅にいたラミアが苦々しい表情をしながらも、
正常な機能を既に失った機械を無駄とわかりながらも操作し続けている。
だが、それにより生じた小さな音が、自分のトラウマの1つを思い出していたシンの耳に入ってしまう。

(なんか音がしたな…誰かいるのかな?)

音がした方向に人の気配を感じ、シンはその方向へと向かった。
蒸し蒸しする薄暗い格納庫の隅では、自分の背丈よりも高い幾つものコンテナが積みあがっており、視界はあまりよくない。
一歩、二歩、先へ進んでいく。自分の所属する艦とはいえ油断はならない。
集中力は自然と高まり、喉にわずかばかりの乾きが生じる。高い湿度は汗を生み、シンの衣服を濡らし始めていた。
その時、無音の背後に気配を感じたシンは、咄嗟に懐に忍ばせていたナイフを突如現れた気配の主へ向けた。
ナイフを向けられた気配の主は動きを停止し、シンの目がやがて薄暗さに慣れてきた。
まるで戦場で流される血のような色をしたその瞳に映るのは、人類の半分近くを魅了してやまない、
男の夢とロマンが余すところなく詰め込まれたマスクメロンである。

「ラミアさん!?こんなところで何をやってるんです?」
「そ、それは…」

まずいところを聞かれた。まさか本当のことを言うわけにはいかないし、かといってこんな格納庫の片隅で特にすることなどない。
(しまった…!だがここで始末する訳には…)
ラミアは造物主から与えられた性能をフルに使ってその場から逃れる術を模索する。

「そ、その…軍艦なんて乗られる機会なんてそんな滅多にございませんでございましょう?
 ちょっと探検なんてものをしちまおうだなんて思っちまいやがったのですわ。アスカ様はどうしやがったんですか?」
「ははは、やっぱラミアさん敬語が変ですよ。俺は人の気配がしたから気になっただけです。何か面白いものは見つかりましたか?」
「そ、それは…」

少しだけ意地悪そうなシンの質問に再びラミアが言葉に詰まってしまう。
(まずいな…なんとかして話の話題を逸らさねば…)

「ところでアスカ様はどうしてDCの残党と交戦したときにあんなことを?」
「あんなこと?」
「ブルックリン様とガーリオンのパイロットの通信に乱入しくさったことです。
 私たちは軍人でこそありませんが、上の指示で戦えと言われれば戦わなければなりませんし、戦争が広がればマオ社も利益が増加すると思ったりするんですけど」

戦争が広がり軍需産業の利益が増加する、シンのいた世界にも同じ構図があった。
憎き仇と裏切り者に邪魔をされ、鎮魂歌の名を冠した大量破壊兵器による戦争に関係のない数多くの民間人の犠牲の末に、ロゴスと呼ばれた軍需産業複合体の首領ロード・ジブリールを討ったのは他ならないシン達である。

「戦争が始まれば軍人だけじゃないでしょ、関係のない人達が必ず巻き込まれる。それが嫌なだけです」
「そ、そうでございますか。でもあまり艦長さんのご機嫌を損ねない方がよろしいかもしれなかったりですよ、はい。
 では私はアンジュルグの調整がまだ残っておりますので…」

(解せんな。パイロットをしている人間の台詞とは思えん。
 確かに民間人にも犠牲がでるだろうが、その上で得られるものもあることくらいわかるだろうに…)

その場を気まずそうにしながらも急いでラミアはシンから離れていく。
戦争と混沌の中でこそ人類の発展はある、という信条の下に作られた人間である彼女にはシンの考え方が理解しがたかった。
しかし、理由こそ不明だが悪い気はしない、造物主にインプットされた彼女の価値観、思考回路のには少しづつではあるが変化が生まれてきていた。
そしてそのやりとりをやや離れたところから見ていた人物が他に約2名。

「あらキョウスケ、私たちハガネにうつるって決まったっていうのにブスっとしちゃってどうしたの?」
「…エクセレン、お前はシンの動きを見てなんとも思わんのか?」
「動き?」
「前から気にはなっていたんだが、やはりあいつの動きはどうも軍人臭いし、民間のパイロットにしては娑婆っ気がない気がする。
 だが奴の経歴に軍にいた、という記録はない。ラミアともども胡散臭い連中を引き取らされたらしいな」
「上司にも部下にも恵まれないってやつかしら?」
「茶化すな。ハガネに移ればダイテツ艦長達の手助けも得られるかもしれん。しばらくは様子見だ」

数時間後、ヒッカム基地に到着したハガネにATXチーム、教導隊は移ることとなり、戦場は極東へと移っていく。
伊豆基地へと到着する直前、同基地を襲撃したユウキ率いるDC残党を撃退した
リュウセイ・ダテ、イルムガルド・カザハラをハガネは加えることとなり、混乱は一層深みを増していくのであった。