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SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第10話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 00:36:24

第10話「取り返せないもの」

クレーンに吊るされて、傷つきながらもハガネに帰還した機体が寝かされようとしている。
艦内のメカニックたちの怒声が格納庫中に響き渡り、工具やパーツがあちらこちらに散乱しており、慌しく動くメカニックらの邪魔をしないように歩くのは少々骨が折れるところであった。
そんな中で着替えを終え、機体の整備を手伝いに来た者達がある機体を見上げている。
左腕はみごとに吹き飛ばされただけでなく、至近距離からミサイルの爆発に巻き込まれたゆえに
機体の各部に大きな損傷が認められる。
いうまでもなくこの機体はランドグリーズとの激戦を繰り広げたビルトシュバインである。

「あらら、随分とやられちゃったのね」
「ははは…やっぱりまずいですよね、ザンバーまで壊しちゃったら…」
「ビルトシュバインはヒュッケバインとゲシュペンストの中間点の機体だ。本体のパーツならあるだろうが、
 ザンバーはな…高性能ゆえの扱い辛さで1機のみの生産だからな」
「これからどうするんだ、シン?これじゃあビルトシュバインはしばらくは使い物にならないぞ」
「一応、俺の仕事はこいつのデータ取りと外付けテスラドライブのテストだから五体満足に直せば仕事にはなるけど…」
「ならこれを機にとことん改造してスーパーロボットみたいにしちまったらどうだ?」
「そ、それはさすがに…」

シンにキョウスケ、エクセレン、ブリットにリュウセイが集まってビルトシュバインの行く末について話し合いが行なわれていたが、ビルトシュバインの未来はいまだ闇の中である。

「わーお!レッツマ改造ってやつね!」

リュウセイの提案に乗ったエクセレンが、他の人間には聞きなれない単語を出して反応する。

「なんですか、マ改造って…?」
「ブリット君、柔軟な男ポイント10ポイントダウンね。マリオン・ラドム的改造、略してマ改造よん」
「また減点ですか…でもラドム博士のように、ってことはアルトアイゼンのようにってことですか?」
「えっ!?ビルトシュバインにもステークを付けるんですか!?」
「そうじゃないけどこんなこともあろうかと、エクセレンお姉さんがいくつかプランを考えてあるのよん」
「『こんなこともあろうかと』かぁ。くう~俺も一度言ってみたいぜ!」
「…ところで少尉。そんなこと言って、実はL5戦役が終わった直後にラドム博士に相手にしてもらえなかったヴァイスリッターの強化プランを使いまわそうとしてるんじゃないんですか?」
「そこ、余計なことは言わない!」
「まあいい、どんな計画なんだ?参考までに言ってみろ」
「あらキョウスケ、珍しく乗り気ね。まずプランAの方は…」
「なんか嫌な予感がする…」

にんまりとした表情を浮かべたエクセレンを見てブリットが呟いた。
気のせいであろうか、エクセレンの視線はビルトシュバインの両足の付け根、やや真ん中付近、下半身のあたりに向けられているように思える。
ブリットの過去の経験上、エクセレンがそうした何かを企むような顔をしているときにロクなことを言われた記憶がなかった。

「却下だ」

そんな空気を察したのかキョウスケが口を挟んだ。

「えーどうしてー?」
「勘だ。俺も深くは考えていないが、見たところシンの得意な距離は接近戦のようだから日本刀のようなもの、PT用にシシオウブレードがあればな」
「いやん、手にもたせるんじゃ面白くないわん。それにシンちゃんがドSに目覚めちゃいそう」
「あの…」
「ならハンマーを持たせてみるってのはどうですか?ラドム博士が開発してるらしいですし」
「そのハンマー、巨大になったり、伸びたり、叩くと火が出そうだな」
「パイロットの俺の意見は…」
「なら逆にライフルや銃火器、ミサイルはどうだ?無骨なフォルムが通のハートをがっちりロックオンだぜ!」
「うーん、そうしたらシンくんが答えを聞いてくれなさそうだわん」
「ははは…」

あんた達が俺の話しを聞いてくれてないじゃないか!という突っ込みがシンの喉の奥まで出掛かっていたが、パイロットである自分を置いたまま急遽始まったビルトシュバイン改造プラン談義に圧倒されながらシンは苦笑いを浮かべる他なかった。
結局、白熱する4人を格納庫に残して自室に戻ることにした。

「あ、ラトゥーニ」

エクセレンらの危険なプランの話を聞き終え、シンは部屋に戻るべくハガネの艦内を歩いていた。
そして医務室の近くを通りかかったときにたまたま医務室から出てきたラトゥーニと遭遇した。

「シン…アラドを助けてくれてありがとう」
「そっか、あいつも仲間だったんだよな。でもごめん、もう1人の仲間は助けてやれなかった…俺が隊長機を倒せなかったから…」
「そんなことない…ゼオラをあと少しで助けられそうになったのはみんなのおかげ…」
「じゃあ今度こそ助け出してやろう、きっとまた戦場に出てくるだろうし」
「うん…」
「じゃあ、俺はこれで」
「あ、待って…」

シンがその場を去ろうとしたとき、彼をラトゥーニが呼び止めた。

「どうしてそんなによくしてくれるの?それにスクールの話を聞いた時の態度…」

ラトゥーニにはシンのもろもろの行動に疑問点が残っていた。
スクールでの非人道的な行いを聞いた時の怒りを露わにした態度やゼオラを助け出そうとしたときの接し方、まるで自分たちと似たようなケースを知っているかのような振る舞いであった。
だが、彼女が知る限り、連邦にもDCにもスクール以外に自分たちがいたような環境が他にあった、という話は聞かない。
シン・アスカという人間も知らないし、データも残っていない。
彼女はシン・アスカという人間がなぜ今までのような態度をとるのかがまったくわからなかった。
「…俺は守れなかったんだよ。ラトゥーニと似た様な境遇の子でさ、俺が守るって約束したのに…」
「…」
「だからかな。昔の俺と同じで、無理矢理戦わされてる誰かを助けようとしてるのが放っておけなかったんだ。
 俺が勝手に、俺の都合でやっただけだからさ…余計なお世話だったかもしれないけど」
「そんなこと…ない」
「よかった…………じゃあ俺、データとか整理しなくちゃならないから行くよ」

そう言ってシンは足早にラトゥーニの下を後にした。つい自分のいた世界のことを話しそうになってしまったのだ。
新西暦と呼ばれる世界に来てから数ヶ月が経過したが、シンはようやくこの世界の情勢が肌を通じてわかってきた気がしてきた。
自分のいた世界には異星人の侵略こそなかったが、似たようなことをする連中がいることもたしかであり、少しずつではあるが、いつしか今後の自分の身の振り方を考えるようになってきていたのだった。

一方その頃、アラドをはじめとする犠牲者と認定されたものに関する報告を終えたユウはキラーホエールがアースクレイドルに到着するまでの間、時間があればシミュレーターにこもってあるデータを研究していた。
そして連日に渡って根を詰めていたユウの姿を確認した自称パートナーのカーラがユウの下にやってくる。

「またあのビルトシュバインのデータ?」
「…奴の接近戦、特に剣撃周辺のデータだ。あのパイロットの動きが気になってな」
「動き?」
「メキシコ、ハワイ、中国、それに今回と4回ほど見てきたが、先日の戦闘でビルトシュバインは途中で動きが変わった…
 いや、早くなったというべきだな。あんな奴は初めてだ。それに…」
「それに?」
「今回は犠牲が大きすぎた。失った部下はアラドだけじゃない…俺の力が足らなかった」
「…」

撃墜されたアラドには、ユウも気に掛けていたし、カーラも弟のように目をかけていた。
期間は短かったとはいえ、幾度も機体を並べて戦った仲間であったし、守るべき部下でもあった。
さらに底抜けの明るさをもつアラドがユウの部隊のムードメーカーになっていたことも確かであり、アラドがいなくなったことによる喪失感は小さいものではなかった。

「奴らとはまた戦う機会があるかもしれん。そうであるならば次に備えるべきだろう。
 特に俺に突っかかってくることが多いビルトシュバイン、ヒュッケバインのパイロットとの戦いには特にな…
 そしてできればランドグリーズにも翼が欲しいところだ…ランドは悪くはないが、今のままでは…サナギといったところか」
「要はユウも空を飛びたいんだ?」
「………………………ところでゼオラはどうしている?」
「博士のところだよ。あの子も大丈夫かな…」

2人の間にしばしの沈黙が漂うが、ここでユウがゼオラのことについて、シンが言っていたことを思い出した。

「ビルトシュバインのパイロットが言っていた。記憶を弄られて戦わされてる人間がいるって知ってるのか、とな」
「ゼオラたちがそうだって言うの?」
「断定はできん。だがスクールの出身だということと2人のあの若さ、引っ掛かることがないわけじゃない」
「このあとアースクレイドルに戻ったらどうなるのかな…それに私たちも」
「…人事は俺達の役目じゃない。それにこれから連邦との戦闘はさらに激しくなる…
 それならば俺達にできることは次の戦いに備えることだけだ」
「強いね、ユウは…」
「そうしなければやってられん」

今のDC残党を統率しているバン・バ・チュンが、シンが言っていたようなことを承知の上で軍を動かしているとは考え難いが、
アーチボルドのような素性が読めない者がDCにいることも確かであるし、クエルボやエキドナ、ゼオラのようにアースクレイドルからの人間の一筋縄にはいかなそうな者がいる。
ユウは自分の立ち位置を変えるつもりはない。今までの連邦を見る限り異星人から地球を守ることが出来るとは思えないからだ。
だが、それと同時に自分たちの軍勢に潜む闇がわずかに気になりつつあった。

ラトゥーニと別れて再び一人になったシンは特に行くあてもなく、ふらふらと食堂によっていた。
テーブルが幾つも並んだ食堂内を見渡すと、1人、見覚え・さわり覚えのあるマスクメロンを実らせた女がいる。
脇に積みあがったドンブリを余所に、女はただ黙々と活動に必要な栄養素を摂取し続けていた。
だが、やがてシンの存在を確認すると少々顔を赤らめ、
胸部のマスクメロンにも負けるとも劣らぬ柔らかさと弾力を持っていそうな唇の周りをハンカチでぬぐい出す。

「あら、アスカ様。ほほほほ、偶然でございますですわ」
「ら、ラミアさんってよく食べるんですね…」

なるほど、このマスクメロンを育んだのはこの食欲であったのか、と勝手に納得したシンであったが、それはラミアの知る由ではない。
他方のラミアは、彼女の造物主から伝授された男の心を擽る200の仕草の1つを実行しながら、先ほどの戦闘でシンが取った行動について尋ねたかったことがあったことを思い出す。

「ところでどうしてさっきは敵のパイロットを助けるなどということを?私達の役目は敵を倒すことでしょう?」
「…あの敵は自分の意思と関係なく戦わされてたかもしれないんです。
 それにラトゥーニの仲間だったのかもしれないって言うし、助けられるなら助けてやりたいって思ったんですよ。」
「戦争が起きて戦場で軍人が死ぬのは当たり前でございましょう?」
「戦争で死ぬのは軍人だけじゃないですよ。戦争に関係ない人間だってたくさん巻き込まれて死んでいきます」
「でもPTや特機のように、戦争があったからこそ発達した技術も多いのではありませんのでは?」
「………たしかにそうかもしれませんね」

ここでシンは言葉に詰まった。だが、同時に自分のいた世界のことを思い出す。
地球・プラント間の戦争が始まって、最初にMSが使用されてから数年しかたっていないのに彼の世界の技術はデストロイやストライクフリーダム、デスティニーなどの高性能なMSを生み出すほどに至っている。
自分の機体に外宇宙を探査することを任務とした機構の技術が使われていると聞いたこともある。
それらを考えるとラミアの言葉は実に的を得ているものであった。
しかしシンには、その見解が間違ってはいなくとも、賛同することはできない。
シンの両親と妹は戦場でのフリーダムの戦闘に巻き込まれて命を落としたが、彼の家族は軍人や戦争とは無縁であった。
そして技術が発展する影では、その発展のために苦しむ者が存在する。
彼の世界では、最高のコーディネーターという人の夢を叶えるべく、何人ものクローン人間が作り出されてきた。
その作り出された人間がいかなる宿命を負っていたか、いかなる想いを持って生きていたか。シンはそれをよく知っている。
だからこそ、激しく悩んだ末に最終的に彼は小さからぬ問題をも孕むデスティニープランを進めようとするデュランダルに、アカデミーの頃からともに歩み、逃れられない短い寿命という枷を背負ったレイ・ザ・バレルとともに、戦争をなくすために戦うことを決意したのだ。

「でも…技術はそのうち発展したかもしれませんけど、死んだ人は帰って来ないじゃないですか。
 発展した技術や新しく得られたものがあっても人は生き返りません。亡くなった人は帰ってこないでしょ?
 戦いが続けば否応なく関係ない人まで巻き込まれていきます…」
「そ、それは…」

今度はラミアが言葉を詰まらせる番であった。
なぜならば彼女の造物主達こそが、戦争の継続による人類や技術の発展を目的として戦争をコントロールしようとして敗れた者達なのであり、彼女達を否定した世界へ再び戦いを挑むためにこの世界に来たのであるから。
その後シンがその場を去ってからも、ラミアはシンの言葉の意味を考えていた。

(戦いが続けば人類はさらに進化し、腐敗や衰退も起こりがたい。…だが戦いが続けば悲しみが増えていく…
 くっ!どうして私はそんなことを考えている!?本当に私の回路には異常が生じているのか)

そして与えられた任務と自分達の本懐、シンの言葉に挟まれ、彼女は苦悩し始めることになるのであった。

「そうか、ラトゥーニ11がブロンゾ28をな…」
「はい…」
「ハガネと接触したと聞いた時、よもやとは思ったが……」
「…」
「これでブロンゾクラスはお前だけになってしまったが…これからもDC再興のために戦い、よいデータを残しておくれ」
「はい…セトメ博士」
「ゼオラ…」
「オウカ姉様…!」

アースクレイドルにあるアギラ・セトメの研究スペースから1人の女性が姿を現した。
オウカ・ナギサ。スクールとよばれた機関に属していた者達の中でも最高峰の能力を持つ優秀なパイロットであると同時に、他のスクールのメンバーから姉のように慕われていたまとめ役のような存在でもあった。
彼女は全てを呑み込む様な黒髪を腰の辺りまで伸ばしながらも、その黒髪は毛先まで真っ直ぐに伸びている。
やや小ぶりな唇は、ほんのりと上品で奥深い感じのする淡い桃色をしており、ひとたび微笑もうものなら男どもは虜となるであろう。
そして開かれた胸元からは、2つのオレンジが衣服から3割ほどこぼれ出ており、その女性が豊かなバストの持ち主であることを物語る。
そのオレンジは確かにゼオラのグレープフルーツやエキドナのスイカ、ラミアのマスクメロンのよう激しさを感じるような大きさはない。
だが2つのオレンジは形の美しさと大きさ、その両方が絶妙なバランスで釣り合っており、道行く男達の視線を縛り付けて動かさない。
ゼオラたちの果実が暴力的に男達を打ちのめし、引き付けるのだとすれば、オウカのオレンジは、形と美しさが芸術的均衡を保つことにより生まれた特殊なエネルギーで男を絡め取るものであろう。

「話は聞いたわ。辛い想いをしたようね」
「…」
「あの子が…ラトが生きていて私の弟を殺しただなんて…」
「私のせいです、姉様。アラドを守ってあげることが出来なかった…」
「ゼオラ、自分を責めては駄目。そして、ラトも」
「え?」
「私の可愛い妹が…ラトが自分の意思でアラドを殺したとは思えない。きっとあの子は連邦軍の人間に再教育され、そうするように仕向けられたのよ」
「…」
「だから、あなたとラトは悪くない…悪いのは連邦軍…ラトを操っている者達…アラドの仇はラトじゃない。だからあの子を恨んでは駄目」
「はい、姉様がそう言うのなら…」
「…母様、私を出撃させてください。ラトを連れ戻したく思います」
「いいじゃろう。ちょうどヴィンデルの配下の者達が出るところじゃ。
 奴にはワシが話を付けておく。ウォーミングアップも兼ね、ともに出撃するがいい」
「承知いたしました」
「ならば私も同行させて下さい」

アギラの研究スペースの奥から今度は男が現れた。
耳の下まで伸びた青い髪、やや侵食が進んでいる生え際を持ち、静かにオウカやアギラ達の下へ歩いてくる。

「アスラン・ザラか…」
「セトメ博士、こちらの方は?」
「私が紹介するわ、ゼオラ。こちらはアスラン・ザラさん。本来はイーグレット博士の助手をなさっているんだけど、今は母様の研究を手伝って下さっているのよ。紹介しますね、この子はゼオラ・シュヴァイツァー曹長。私と同じスクールの出身の者です」
「アスラン・ザラです、シュヴァイツァー曹長。アギラ様にはよくしていただいております。よろしく」
「はい、よろしくお願いします」

当然、オウカによる紹介の内容は真実ではない。オウカやアスラン自身は真実であると思い込まされているものの、それはアギラの手により刷り込まれた偽物の記憶に過ぎない。

「アギラ様、彼女たちが言っているラトという者の救出、是非私にも手伝わせてください。
 人を操って戦わせるなどという卑劣な真似をする者達からは一日も早く救出すべきです」
「フェッフェッフェ、ならばお前もいくがよい。エルアインスの準備はできておろう?」
「ハッ!ありがとうございます」
「それではラトゥーニ11を頼んだぞ、アウルム1、アスラン・ザラ」

そう言い残してアギラはクエルボを連れて自分の研究スペースへ向け歩き出した。
そしてアスラン達の姿が見えなくなったころ、随行するクエルボがアギラに尋ねる。

「彼は例の…?」
「そうじゃ、調整の末、目を覚まさせた」
「ですが本当なのですか、異世界から来たなどというのは…」
「それはあやつの乗っていた機体を調べればすぐにわかったことじゃろうが。
 今のところ、訳の分からんかった装甲を外してエンジン周りとともに普通のものに代えとる最中じゃが修復はもうじき終わるじゃろう」
「そうですか…」

クエルボはスクール関係者でもDC関係者でもない人間の使用に言い知れぬ不安感を感じていた。
しかしその不安は彼の気の弱さゆえに他のものに伝わることはなかった。
新西暦の世界は徐々に激動の時を迎え始めていた