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SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第16話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 00:48:27

第16話「熱風!疾風!サイバスター」

 

突如現れ、ストライクフリーダムのサーベルを受け止めている謎の機体。
その機体が持つ、触れるもの全てを音もなく切り裂きそうな、目には見えぬ威圧感を帯びた銀色の刃の輝きがガーリオントロンベのカメラを通じてシンの眼に突き刺さっている。
その眩しさに思わずシンは片目を閉じ、その光を手で遮断した。

 

「よう、エルザムのオッサン!苦戦してるようじゃねえか!」
「だ、誰だ、アンタ…」
「ん?なんだ、エルザムのオッサンじゃねえのかよ」

 

入ってきた通信から聞こえる若い男の声。
だがその声は、エルザムのことを知っているようだが、目にも留まらぬスピードで現れ、ストライクフリーダムの斬撃を容易く受け止めたほどの力とは対称的に、ずいぶんと口調が軽く思える。
男の名前はマサキ・アンドー。彼はテロにより両親を失った後、地球内部に存在する地底世界ラ・ギアスに召喚された。
そしてラ・ギアスの国家ラングラン王国滅亡の予言を阻止すべく建造された魔装機、そして魔装機神サイバスターの操者となり、今日に至るまで戦いの中に身を置いている男である。
そしてマサキはラングラン王国崩壊につき裏で糸を引いていたと思しきシュウ・シラカワを追って再び地上に出てきた後、DC戦争、そしてL5戦役を戦い抜くこととなる。
今回も、シュウ・シラカワを追って地上に出てきたものの、持ち前の超弩級の方向音痴により地球を数周する羽目となってしまっていた。
だが、普段であれば15周は地球を回るのであるが、北アメリカ大陸に差し掛かった辺りでサイバスターがわずかに示した反応を手掛かりに、シュウ・シラカワがいるのではないかと考えこの場に現れ、現在に至っている。

 

「マサキ、私はこっちだ。その機体に乗っているのは私の仲間だ。だが、おかげで助かったぞ」
「へっ、気にすんなよ。ってか随分派手にドンパチやってんじゃねえか。何なんだ、こいつらは?」
「…タチの悪いテロリストだよ」
「テロリスト?よし、ならここはさっさと…」
「いや、今我らがなすべきことは輸送機を安全なところまで連れて行くことだ。できるかはわからないが、私が今から交渉をする。シン、お前はいったん輸送機まで下がれ。その状態で戦闘の継続は無理だ」
「あいつらと交渉!?何言ってるんですか!」
「お前の気持ちもわからなくはない。だが、ここはまだインスペクターの勢力下だ。冷静に今の状況を考えればいたずらに戦闘を継続することがどれだけ危険なことかはわかるだろう?」
「………」
「今の事態はお前の個人的な感情を許しておけないのだ。すまんな」

 

ストライクフリーダムに完膚なきほどまでに敗れ傷付いたガーリオントロンベは辛うじて輸送機までなら辿り着けそうな状態であり、シンはそれ以上は何も喋らず、ただ歯をきつく、きつく食いしばって機体を輸送機へ向けていた。
マサキの問いに対するシンの「タチの悪い」という言葉には様々な意味が込められてはいたが、今のマサキにそれを知る由はない。
だがその連中に敗れたのはシン自身であるし、今現在置かれている状況が自分ひとりの怨恨のみを罷り通せるものでないことは理解している。
だからこれ以上エルザムの言うことに反論はできなかった。
現時点においては、覇王の軍勢によってもたらされる新西暦の世界への害悪より、異星人の侵略によりもたらされる害悪の方が大きいことは明らかでそれをシンもわかっていたからである。

 

彼はまたも己の無力を感じざるを得なかった。

 
 
 

「聞こえるか、エターナル。そしてラクス・クライン。私の名はレーツェル・ファインシュメッカー。少々、そちらと話がしたい」
「エターナルの名前を?エターナルのことは名乗っていないはずだが…どうして僕達のことを知っているのか?…どうする?」
「……この世界の方がどうして知っているのかはわかりません。ですが話をしたいというのであれば応じてみましょう。何かわかることがあるかもしれません」

 

突然のコンタクトにエターナルのブリッジクルー達の間には少なからぬ動揺が走っていた。
そんな中で覇王は眉を1つ動かしただけで現在の状況を冷静に分析し、接触を決断する。
目の前にいるのはガーリオントロンベを除けば、ヒュッケバインMK-Ⅲ、アステリオン、グルンガスト弐式、そしてサイバスターという、
自分達が今までこの世界で接触してきた量産用の機体とは大きく異なるものばかりである。
そうだとすれば、今まで量産機のパイロットなどから得た情報以外の情報を獲得できる可能性がある。

 

情報はモノによっては何百何千もの兵力やMS以上の力となる。

 

それは実質的に覇王の諜報機関であったターミナルにCE世界の各勢力の情報を集めさせ、結果的にストライクフリーダムはインフィニットジャスティスという
当時のザフトで極秘裏に開発されていた機体を盗み出すことにより自軍の戦力として、
メサイア・レクイエム防衛戦において完膚なきまでにギルバート・デュランダル率いるザフト軍の撃破に成功したことからも明らかである。
情報の重要性を覇王は天性のセンスにより理解していたからこそ、彼女はCEの覇道を遂げるまであと一歩というところまで至ったのである。
それに、上手くすれば大きな代償もなくその戦力を自軍に組み入れることも可能かもしれないと考えられる。
何にせよ、今までいた自分達の状況と比べれば風向きが変わってきたことは確かであると、乱世の覇王には感じられていた。

 

「お待たせいたしました。私がラクス・クラインです。どういったご用件でしょうか」
「…応答に感謝する。こちらの者が仕掛けておいて言うのもおかしいかもしれないが、我々の目的は貴艦と交戦することではない。
 そちらが手を出さないというのであれば我らは直ちにこの場から離れるつもりだがいかがだろう?」
「その前にこちらとしても伺っておきたいことがございます。どうしてあなたは私達の艦が『エターナル』という名であることを知っているのです?」
「我々の仲間の中に、そちらの世界から来た者がいる。貴艦たちのことはその者から聞いた」
「ちなみにその方の名前は?」
「…………シン・アスカだ」

 

シンの名前を聞き、覇王は音もなくエターナルのブリッジクルーであり、アスラン・ザラとともにザフトを脱走して覇王の軍勢に加わった元ミネルバCICメイリン・ホークの方に目をやった。
覇王もシン・アスカの名前と大まかな立場は当然知っている。
間もなくメイリン・ホークから自分の手元にシン・アスカに関するデータが送られてきて、覇王はそれにざっと目を通し、内心で、やはりな、と頷いた。

 
 
 

CEにおいて絶対無敵の存在であり、自らが与えた剣であるフリーダムとキラ・ヤマトを撃破しただけでなく、
ギルバート・デュランダルの直属の特務隊フェイスとなり、覇王の軍勢に立ち塞がった愚かなパイロットであると同時に、
人々の自由や未来を奪い世界を滅亡へ導かんとするデュランダルに利用された哀れな男―それは覇王の持つ、シン・アスカに関する認識である。
だが、それ故に今通信を入れてきたゴーグル姿の怪しい男達も、まんまと騙されて自分達のことを悪いように誤解しているのであろうことは容易に理解できた。
だが、そうなると打つべき手は限られてくる。

 

「そうですか。ではあなた方は先ほど追撃部隊と思しき部隊と戦闘を行なっていたようですが、どちらからいらしたのです?」
「……テスラ・ライヒ研究所だ。異世界から来たそちらとしては信じられないかもしれないが、研究所が異星人に占拠されてしまい、そこから脱出してきた」

 

レーツェルが言い終える前に覇王の下に今度はテスラ・ライヒ研究所に関するデータが贈られてくる。
この世界に来てから取り得る手段を駆使して集めた情報であり、その量・質ともにまだ心許ないものであったが、
テスラ研という存在は手元にあるデータのみでも覇王の関心を大きく引き寄せるにあまりに十分なものであった。
そしてちょうど同時に、目の前にいる機体に関して存在するデータも併せて送られてきて、覇王の関心はさらにレーツェル達へと向いていくことになる。

 

「いえ、私達もこの世界の情報は集めております。異星人の存在とそれによる侵略。にわかには信じ難いことですけど、現実に起きたことは受け止めなければなりません。ですから私たちもそれを防ぐために戦力と情報を集めておりますのよ」
「!?………異世界から来たそちらがなぜそのようなことを?」

 

覇王の言葉にレーツェルは、嫌な予感がした。
少なくともシンから聞いていた情報を信じるならば、目の前にいる女は目的の内容は別問題として、目的のためには戦闘行為などへの介入を躊躇しないはずである。
そうとなると、ノイエDCの蜂起とインスペクターの襲来で混沌の中に突き落とされているこの世界が、最悪の場合には更なる大混乱の中に包まれてしまいかねないからである。
しかし、覇王はそんなレーツェルの危機感をよそに、さらに言葉を続けた。

 

「私達と一緒に来ていただけませんか?今の私達では異星人に備えることはおろか、連邦軍とDCの戦いを止め、さらなる争いが生み出されてしまうことを防ぎきることができないのです。その点、テスラ・ライヒ研究所からいらした方がいれば私達も心強いですわ」
「誠に申し訳ないが我らはテスラ研に残った我が友から託された物を届けなければならない。そちらの申出に応じることはできない。
 それに我らだけの判断でそちらに与するかを判断するには判断材料が少なすぎる」

 

やはり来たか…レーツェルはそう思わざるを得なかった。
ある意味、シンの情報通り、ピンク色の戦艦にのった異世界の覇王はこの世界への軍事介入を既に決意している。
実際には既に決意どころか介入を開始し、北米のタコヘッドたるケネスが派遣した部隊や交戦中の連邦軍及びDC残党を撃破し、それらの機体を自己の戦力に組み込み、
それらや雇った技術者等から得た技術を用いてストライクフリーダムの改良なども進めているのである。

 
 
 

「シン・アスカ…わたくしの記憶が正しければデュランダル議長の下にいた方でしたわね。どのようなことを聞いたのかは知りませんが、私たちは人々の未来のために戦っていたのです。ご心配はいりませんわ」
「先ほども言ったように今の段階では判断材料が少なすぎる。この話は後ほど検討するとしてこの場は刃を交えることなく済ませたいのだが…」
「…そちらの『特機』。グルンガスト弐式でしたわね。とすればあなた達は連邦軍のハガネの関係者…このままあなた達を行かせてはあなた達の機体や輸送機の中身はDCとの戦闘でも使われるのではないですか?」
「連邦軍がDCと戦っていることは確かだが、我らの機体はそのためだけにあるわけではない」
「ですが人類同士で戦うのでしょう?私はそれを放置することはできません。異星からの侵略が現にあるのであれば連邦もDCも戦いをやめ、手を合わせて事態に備えるべきでしょう」
「理想としてはそうだろうが現実はそう上手く行くものではない」
「ならば私達がそれを実現させますわ。わたくしが世界をまとめあげ、異星人からこの地球を救って差し上げましょう。
 それが縁あってこの世界へとやって来た私がなすべきことなのです。そして、そのためにもあなたの乗るデータにないヒュッケバインや特機、そしてあなた方の力が必要なのです」

 

覇王は一度やると決意したことを決して曲げることはしない。
実際には、普通の人間にとっては、これは言うは易いが、なすことは極めて難しい。だがこの覇王の場合は別である。彼女は本当に成し遂げてきたのであるから。
そして彼女のこのような行動原理はその言葉にもよく現れている。

 

まず決める。そしてやり通す。

 

覇王はまず何をなすべきであるかを、正常な通常人とは異なり、既存の価値観や法規範などに全く囚われることなく、己の中に絶対のものとして存在する彼女の価値観のみに基づいて、決定しことができる。
そして彼女は決めたことを達成するために、他の意見を聞き入れることはしないし、その過程で一切の妥協もしない。
最初に決めたことを鋼鉄の意志を持って頑なに曲げることをせず、己のみが絶対的に正しいのだと確信して行動することができるのである。
これが彼女をCEの覇王たら占めている原因なのであった。

 

遺伝子を改良して生まれてくるコーディネーターは、自分が他人より優れている、自分が正しいと考える傾向があることを否定できない。
だが、実際に社会において人間の中で生きていくのであれば、それを貫くことは極めて困難であることは想像に難くない。
こうして多くのコーディネーターがこうした理想と現実の狭間においてフラストレーションを抱えて生きている。
そんな中で、コーディネーター達にとっては自らの覇道を鋼鉄の意思と凄まじいまでの力により進む覇王の行動はまさに自分たちの理想であり、そこに痺れ、あこがれるのであった。
平和を唱え、戦争の停止を呼びかけ、実際にプラントを守りきり戦争を止めたことで、それまでもプラントのコーディネーター達から支持のあったラクス・クラインは、
多くのコーディネーター達の崇拝に近い羨望の対象となり、彼女の意思の強さも相まって覇道の道を歩き始めたのである。
そしてコーディネーター達の崇拝は、覇王が戦争を止めるために当時のザフトに対しても敵対行動をとっていたという矛盾点に目を向けさせない結果を招き、
覇王の息のかかったアイリーン・カナーバらによってフリーダムやエターナル強奪の責任が全て戦死したラウ・ル・クルーゼに擦り付けられたことと覇王達こそがフリーダムやエターナルを使っていたという矛盾点にすら気付かせないという凄まじい事態をももたらした。

 

仮にユーレン・ヒビキが持てる技術の全てを持って作り上げた「キラ」という存在を、コーディネート技術により最高の肉体的能力を与えられた、いわば肉体面におけるスーパーコーディネーターだとするならば、
覇王ラクス・クラインはコーディネーター達が持つメンタリティの最高到達点であり、精神面に
おけるスーパーコーディネーターであると言っても過言ではない。

 
 
 

そして覇王は自身の決意に従って、新西暦の世界においても自分の目的を果たそうとしていた。

 

「…それはつまり我々をこのまま行かせるつもりはない、ということでよろしいか?」
「いいえ、あなた達の機体と輸送機の中身を私達に渡していただければことを構えるつもりはありません。連邦とDCの争いを止め、異星人の侵略に対処するために私達が正しく使わせていただきます」

 

だがこの覇王をよしとしない者も当然存在する。

 

「ふざけるんじゃねえ!黙って聞いてりゃ好き勝手ぬかしやがって!要はてめえの言ってることは、自分達の言うこと聞くか、そうじゃなけりゃ持ってるもんよこせってだろ!
 大層なこと言ってやがるがそこいらの山賊とやってることは同じじゃねえか、このテロリストが!!」
「待て、マサキ!まだ…」
「そうですか。それでは仕方ありません…残念ですわ。」
「御託を並べるな!てめえらが何者かなんて知ったこっちゃねえが、あっちこっちにちょっかい出して力づくでしか世界をまとめられねえ奴が地球を異星人から救えるか!!」

 

両親をテロで失ったマサキにとっては、もっともらしく聞こえはする目的のために、無茶無謀無法な行動を取ろうとするCEの覇王はテロリスト以外の何者でもない。
だからこそ、成り行きな部分が含まれていたとはいえ、偉大なる天才ビアン・ゾルダークの前にも立ちはだかり、真紅の魔王、究極ロボヴァルシオンを打ち破ったのである。
このことからすれば、マサキの根底には、大事のためという大義名分の下に、小事を犠牲にすることを厭わない者への怒りが存在するといえよう。
もっとも、ビアン・ゾルダークは、EOTI機関をディバイン・クルセイダーズとしてまとめ上げて地球連邦政府への宣戦布告を行なう前に、自らが解析した異星人の超技術EOTを連邦政府に提供し、政府上層部に徹底抗戦を働きかけ続けたという背景を持つことに対して、
覇王は自らが決めたことを、自分以外の何ものにも制約されることなく、それを実現するための手段を電光石火の如く、早きこと風の如く行動してきたのであり、両者が同じであるとは断じて言うことができないが。

 

そして、マサキの切った啖呵を聞き、覇王は次の指示をストライクフリーダムに向けて発する。

 

「キラ、輸送機をお願いします。それと、いつも通りにできれば他の機体も破壊はしないで回収してください」
「わかったよ、ラクス。こんなに君が世界のことを思っているのに…悲しいね」
「仕方ありませんわ、あの方たちはデュランダルに利用された方からの誤った情報を信じてしまったのですから。ですがいつか私達の話をきっと信じてくれますわ。キラ、あなたの無事を祈っていますわ」
「ありがとう。じゃあ行って来るよ!」

 

覇王の言葉を背に、覇王の聖剣たるストライクフリーダムが輸送機の方へ向かって動き出した。
それに続きエターナルから覇王の指示を受けた十数機のガーリオンや量産型ヒュッケバインMK-Ⅱが出撃してゆく。

 

「あの野郎!結局やる気満々なんじゃねえか!こうなりゃ一気に吹っ飛ばしてやる!」
「待てマサキ!雑兵の相手はこっちでする。お前は目の前に白い機体を頼む」
「そりゃどういうことだよ!?」
「あの白い機体。我らが持つ情報が確かならば奴らの切り札だ。少なくともインスペクターとの連戦で消耗している我らの機体よりも、万全のお前とサイバスターが相手をした方がいいだろう」
「わかったぜ!じゃあ取り巻きはオッサン達に任せたぜ!」

 
 
 

通信が切れ、サイバスターが神鳥の翼を模したウイングを展開させてストライクフリーダムの方へと向かったのを確認すると、レーツェルの下に敵機から通信が入ってきた。

 

「あんた達3機であたし達をなんとかするつもりなのかい?はっ!なめられたもんだね」
「ほう、黒いガーリオンが3体…我がトロンベと姿は似ているようだが中身はどうかな?」
「ならたっぷりいいもん見せてやるよ!マーズ、ヘルベルト、行くよ!ラクス様のために!」
「よかろう!ゆくぞ!トロンベよ!」

 

ヒュッケバインMK-Ⅲトロンベが、黒のパーソナルカラーで塗装されたガーリオン3機との戦闘を開始した頃、輸送機へ向かったストライクフリーダムにサイバスターが追いつこうとしていた。

 

「もう追いついてきた!なんて速さなんだ!?」
「てめえらの好き勝手にはやらせねえぞ!」
「僕やラクスの邪魔をしないでくれ!君達は騙されているんだぞ!!」
「御託はいいっつったろうが!」

 

太陽の光を受け、銀色に輝く刀身を持つディスカッターがストライクフリーダムを横薙ぎにせんと振りぬかれる。ストライクフリーダムはそれを機体を上昇させてかわすと、両腕にビームライフルを構えさせ、サイバスターに向けてビームを放つ。

 

「へっ!当たらねえな!」

 

サイバスターは、連続して発射され、上方から雨のように降ってくるビームの間をジグザグに動きながら潜り抜けていく。
それを見たキラはビームライフルだけでなく、腰部の両サイドに備え付けられたクスフィアスを展開させると、
発動させているSEEDの力を最大限に発揮させる、俗にいうフルバースト攻撃を開始した。それをサイバスターはなおも潜り抜け、外れた弾丸は大地へと降り注ぐ。
そして、ここでキラ・ヤマトにとって予想外のことが起きてしまう。サイバスターに命中させるべく行なったフルバースト攻撃が全て地表に命中した結果、土煙が大量に上がりサイバスターの姿を隠してしまったのである。
これによりサイバスターの姿を見失ってしまったため、一瞬ではあるが、キラ・ヤマトのトリガーを引く手が止まった。
大量に巻き上がった土煙とそれを動かす風の流れに目を凝らし覇王に弓を引かんとした者の姿をキラ・ヤマトは探す。だが見つからない。
こうして今度はマサキとサイバスターが仕掛ける番となった。上空から大地を見下ろすストライクフリーダムのちょうど真下からわずかに薄い青紫色を帯びた銀色の機体が飛び出してくる。

 

「行くぞ!ディスカッター、霞斬りぃっ!」

 

背部のウイングから光り輝くエメラルドの粒子を撒きながら、キラ・ヤマトも完全には反応し切れないスピードでサイバスターがストライクフリーダムへと迫り、
真っ直ぐに向けられたディスカッターの刃が一筋の光を描いて振り下ろされて、右側の腰部レールガンクスフィアスの砲身を切り裂き、
さらにサイバスターは猛スピードで旋回しストライクフリーダムの上空から、先ほど振り下ろした刃を振りぬいてビームライフル2丁を真っ二つにした。
レールガンは固定兵装であるが故に機体を真下へと向けない限り真下に撃つことはできない。
サイバスターレベルの、見たこともないスピードと、フルバーストを掻い潜るパイロットがCEにはほとんどおらずその弱点を知る機会がなかったこととが相まって、
キラにとっては直撃を回避することが限界であった。
スーパーコーディネーターとして与えられた最高クラスの能力をもって、辛うじてわずかばかり機体をずらして斬撃の直撃を回避したキラであったが、
クスフィアスとビームライフルの爆発で崩した体勢を整え直す前に、2撃目の斬撃とともにストライクフリーダムの下方から背後に回りこんだサイバスターがそのまま背後からディスカッターで斬り付けてきた。
とっさに腕でそれをガードしてボディへの直撃を回避し、VPS装甲のおかげで腕まで跳ね飛ばされることは免れたが、斬撃の衝撃はストライクフリーダムを吹き飛ばす。

 
 
 

「何!?ボディは無傷だと!?」
「マサキ、信じられないかもしれんが敵の装甲は特殊なもので、ほとんどの物理攻撃を無効化される!気をつけろ!」
「なんだそのプチ無敵モードは!?」
「冷静になるにゃマサキ!エルザムさんは『物理攻撃』は、としか言ってないニャ」
「そうか!それなら!」

 

他方、弾き飛ばされたストライクフリーダムは一瞬のうちに3つの飛び道具を失うこととなっていしまったが、ストライクフリーダムの強さはその火力にある。

 

「あの機体…ホントになんてスピードだ…機体が追いつかない…でもこれなら!あたれええぇぇ!!」

 

キラは吹き飛ばされながらも体勢を整えなおし、背部のウイングを展開してドラグーンを全機射出した。全機を出さなければ追いつけない、そう考えたのは理屈ではなく、戦士としての勘であろう。
誰にでも使用できる第2世代型のドラグーンであり、空間認識能力者のみが使えるドラグーンよりは精度などが劣るものの、
CEにおいては多くは見かけられないオールレンジ攻撃を繰り出してなんとか突破口を開く。それがキラの立てた作戦であった。
だが、主からの指示を受け、サイバスターの周りを囲み始めるストライクフリーダムのドラグーンであったが、
マサキはその正体がとっさに頭に浮かび、サイバスターをドラグーンから引き離そうとする。

 

「ファミリアだと!?奴が魔装機なハズはねえが…」

 

地底世界ラ・ギアスに存在する4機の魔装機神には、操者の使い魔たるファミリアにより操られる遠隔誘導兵器ファミリアが備わっている。
ストライクフリーダムの射出したドラグーンはマサキにファミリアを連想させ、本能的に回避行動をとらせたのである。
そのおかげでサイバスターはドラグーンに周囲を囲まれることこそ避けられたものの、ファミリアよりも遥かに多い数で、ファミリアほどの柔軟性こそないものの、
獲物を追跡しながらビームを放ってくるドラグーンはサイバスターのスピードを以ってしてもなかなか厄介なものであった。
フルバースト攻撃と同じように回避するビームも多いが、何発かのビームはディスカッターの刀身で防がざるを得なくなり、再びサイバスターは防戦を強いられることとなってしまう。

 

「クロ!シロ!奴のファミリアを叩き落せるか!?」
「無茶よマサキ!ちょっと数が多すぎるニャ!」
「でもこのままにしておけニャイよ!オイラ達でできるだけ…」
「いや、いい!こうなったら全部まとめて叩き落してやるぜ!」
「やっぱりアレをやるの!?」
「あの羽みたいのを落とすだけだ、威力も範囲も抑える!」
「やれやれ、言い出したら聞かにゃいんだから…」
「うおおおおおぉぉぉ!!!!!」

 

ドラグーンの追跡から逃れながら地面スレスレを飛行していたサイバスターがマサキのかけ声とともに上空へと急上昇していく。
そしてマサキは、横にしたディスカッターの刀身の根元付近に意識を集中させ、己の生命力の源であり、魔装機神の力の源でもあるプラーナを愛機に注ぐと、
下方からサイバスターに向かってくるドラグーンとそこから放たれるビームを掻い潜りながらストライクフリーダムへと迫っていった。

 

「全部避けて突っ込んで来る!?」

 
 

無謀にも突っ込んでくるサイバスターに驚き、冷静に対処すべくビームサーベルを両手に構えさせたキラであったが、それと同時に彼の戦士としての勘は危険を知らせ続けている。
だがそんなキラの状況とは当然関係なく、サイバスターの上下でプラーナのエネルギーが渦を巻き始め、さらにその周囲には蒼い霧雨のようなエネルギーが広がり出す。
そして、ウイングからこぼれ出し始めていたエメラルドの輝きはサイバスターの機体全体から溢れ出し始めると、今度はアクアグリーンに輝く高密度のエネルギーが機体の各所から噴き出し始めた。
プラーナが織り成すエメラルドとアクアグリーンの輝きはやがて絡み合い、それによりまたさらに輝きを増してゆく。そしてサイバスターがその輝きをいったん収束させるべくディスカッターを天へと突き出した。

 

「喰らえ!サイフラァァァァッシュ!!!」

 

マサキの叫びとともに、収束していたエネルギーがディスカッターの根元から、すべてを焼き尽くす稲妻のような形となって周囲へ広がっていく。
同時に刀身からはその稲妻すべてを包み込むような光が広がっていき、サイバスターを取り囲んでいたドラグーンの全てを飲み込み、そして稲妻とともにドラグーンを破壊していった。

 

「み、味方も巻き込むのか、クソ!」

 

サイフラッシュの光は周囲にいたヒュッケバインMK-Ⅲトロンベやグルンガスト弐式をも飲み込んでいくのだが、その効用を知らないキラにとってサイフラッシュはとてつもなく非人道的で破壊的な兵器に思えた。
とはいえ、そんなことを意識する前に彼の本能は、広がり行くサイフラッシュの光から逃れることをキラに命じ続けており、光から逃れるべくその本能に従ってストライクフリーダムを後方へと逃がす。
もう既にドラグーンの反応はロストしている。残っているのは腹部のカリドゥスとビームサーベルに、クスフィアス一門である。
だが無情にもサイフラッシュの輝きはストライクフリーダムの足先を呑み込み、その存在を否定した。

 

「左足がやられた!?逃げ切れなかったのか!?」
「まだだ!風の魔装機神の力、見せてやるぜ!」

 

ストライクフリーダムは足先を失ったことによりバランスを崩したため、ここで再び動きが鈍ってしまった。しかし、それとは対称的にサイバスターの攻撃はなおも続いている。

 
 
 

サイバスターは手にしたディスカッターを頭上で腕ごと大きく振り回すと、刃の先端を何もない空中に突き立てた。
続いて、目で見る限り何も存在しているはずのない空中に突き立てられた剣の先に巨大な六芒星が描かれてゆき、サイバスターが両手をディスカッターの柄に添えた瞬間、
万物を焼き尽くしてその存在を否定するかのように真っ赤に燃え上がる炎の鳥が六芒星の中から天へと飛び出して行った。
そしてサイバスターが巡航形態であるサイバードへと姿を変えて突っ込んでいくが、間もなく先に飛び出した炎の鳥と一体になると、
炎の色は燃え盛る赤から、さらなる高温とエネルギーを内に秘めた蒼へと変わる。

 

「アァァァカシック・バスタァァァァァッ!!!!!!」

 

マサキの咆哮と共に、蒼き炎の鳳凰と化したサイバスターが咆哮を上げた。巡航形態となったことでさらに増したスピードとともに風を切り裂き、
焼き尽くし、蒼き炎の翼を羽ばたかせながら鳳凰はストライクフリーダムへと迫っていく。
他方、目の前で起こる物理法則を完全に無視しているとしか考えられない現象にキラも驚きを禁じえない。
なんとか頭をクールダウンさせ、正面から向かってくるサイバスターにカウンターとして当てるべくカリドゥスのトリガーを引いた。
金色のフェイズシフトをしている腹部のカリドゥス発射口から赤の中に黒みを帯びた高エネルギーがむかってくる鳳凰に向けて放たれるが、サイバスターは機体をロールさせてそれをかわす。
もはや阻むものなしと、鳳凰がストライクフリーダムへと激突するのをキラは咄嗟に2本のビームサーベルで受け止めはしたものの、それはあまりに心許ないものであった。
サイバスターの蒼き炎がビームサーベルの刃を食い破り、ストライクフリーダムに喰らい突く。

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ…!」
「うおおぉぉぉぉ!!でりゃああぁ!!!!」

 

アカシックバスター。プラーナと魔術、そして風の高位精霊サイフィスの力が一体となった標的の存在を否定する超エネルギーは容赦なくストライクフリーダムの装甲を食い破っていく。
かつて真紅の魔王究極ロボヴァルシオンをその聖なる剣ディバインアーム諸共に屠ったこの超エネルギーは、覇王最大にして最後の加護ともいうべきセーフティシャッターをも抉り削り取っていく。

 

その中では、もはや叫ぶしかできないキラは真っ赤に覆われた視界で己の最後を迎えようとしていた。自分のやるべきことは残っている、
唯一にして最大の無念は最愛の覇王に最後まで寄り添うことができなかったこと。だが、彼の頭の中に1つの映像が瞬間的に蘇った。
何十本ものケーブルに接続され肉体の一部を機械と融合した男がガラスケースの中にいる。否、ガラスケースにいるのはその男だけではない。自分もである。
さらにガラスケースの中の男の顔は鏡で見る自分にそっくりである。その脇でニタリ、と笑みを浮かべているのは…………彼の主の覇王であった。

 

(え…これ…な)

 

「キラ・ヤマト」の意識はそこで途絶えた。

 

マサキの魂の雄叫びと共に蒼き鳳凰と化したサイバスターが再び咆哮を上げ、ストライクフリーダムのボディを突き破ると同時に、エメラルドの光がストライクフリーダムを覆いつくした。
さらに次の瞬間、聖剣までと呼ばれた覇王の剣が起した爆発の爆煙がその光の中から漏れ出し始め、その爆煙の中からサイバスターが飛び出してきて、ディスカッターを構えると同時に、
ストライクフリーダムは最後の爆発を起こし、爆煙を背景にサイバスターのエメラルドに光るツインアイが一瞬、輝きを放った。

 
 

そしてこの光景を少し離れたところで見ていた男がもう1人。そうシン・アスカである。
あの日、家族を失ったあの日に見たような爆発が、今、目の前で起こっていた。
彼から様々なものを奪っていった男、キラ・ヤマトの最後は思っていたよりもあっけなかった。
そして自分がそれにはほとんど関係していない。怨敵が討たれたことの喜びはあっても、
自分の無力によって生み出されることになった虚しさと喪失感があることは否定できないものであった。